「おーーい・・・・早くこっち来いってっ・・・」 俺の前を走っていく…奴がいる 「待ってくれよ〜〜っ」 結構俺は足が早い方だと思うし、俺より早く走る奴なんか知らないけど あいつに全然追いつけない… 『あいつ・・・だれだっけ?』 俺はあいつを知っているし、あいつも俺を知っている。 気取らなく一緒にいて楽しいあいつを俺は好きだった。 「ほら、この木すっげーキレイだろ?」 木には葉っぱが付いているもので… いや、おいしい実が葉っぱと付いていたり… あ、木だけってのも見たことあるなぁ… あいつが指差している木には淡いピンクの花しか付いていなかった… でも、その木の根元から頭上を見上げるとスゴイ景色だと心から思った… タメイキをつくだけで風が起こり花を散らすように儚げで… でも、幹を枝を飾るように咲き誇る花は何故か力強くも思えた… 「俺のお気に入りの木なんだぜ」 すでに彼はよじ登ろうと木にしがみついている… 「すっげーーー、キレェ〜〜〜」 「登ってこいよ〜〜太いトコなら折れねーから〜」 俺は彼に続かなかった。 下から見上げているだけで充分だとおもったから… 「コレ…サクラって言うんだぜ…」 「すげ…まるで雪みたいだ… 「・・・・・・・・・」 微笑んで教えてくれた彼の顔には影がかかりはっきりと見えなかった… 名前を呼ぼうと思ったのに俺はあいつの名前を思い出せなかった… 眼を開けた時、夢を見ていたんだとやっとわかった… 薄暗い部屋の中、金の光が僅かに揺れる。 「さんぞー、俺・・・」 「まだ夜中だ。もう少し寝てろ」 「ン…」 ゆっくりと俺は目を閉じた… 『・・・いつか、またあいつに会えるといいな・・・ あいつ、きっと俺のことをずっとあそこで待ってる・・・』 …たしか…約束した…か…ら…… *END* |
《春眠さまのコメント》 一応全部制覇しましたが、4人で全部って感じで…58だけでは無いんですが… 梅雨時に書くとなんか湿っぽいものになっていくのは不思議な物で… 相変わらずヘタレですが、今回はシリアス路線を狙ってみました (狙っただけで外しているようにも我ながら思います) 雨の降る日、それぞれが自分を見つめ何かを思っている様子が とっても原作っぽいなぁと思います。 傷や痛みを抱えたまま、それでも彼らは前へと進んでいくんでしょうね。 四部作という大作、ありがとうございました! |