「あれ?」 火と荷物の番をしていた…要するに一番楽な仕事をしていた…三蔵と合流し、 とれたての魚やキノコをメインに昼食を終えたあと、火の始末をしようとした 八戒が怪訝そうな声を上げる。 「どうした?」 食後の一服を楽しんでいた悟浄がそんな八戒の声に振り向くと、その手元を背 後からのぞき込む。 そして同じく訝しげに眉根を寄せる。 「なにそれ。」 「あの、これって…。」 そう言いながら、八戒は木の枝でなにやら銀の物体を炭の中から寄り出す。 それはどうやらアルミホイルに包まれた何かのようで。 包みを開ければ、中からは香ばしい香りと共に、こんがりといい色に焼けた さつま芋が出てくる。 「芋…ですよね。」 「芋、だな。」 二人確かめるように呟くと、そろってその視線をとある人物へと向ける。 状況を考えれば、これをたき火の中へ入れた人物はひとりしかいない。 ただ、それが予想だにしない相手なだけに、悟浄も八戒も驚きを隠せない。 「それがどうした。」 意外そうな視線で見つめられ、三蔵は不機嫌そうに言う。 否定しないどころか、多少屈折してはいるがあっさりと認めたのだ。 「いえ、まあ。」 「意外っつ〜か、なんつ〜か…どしたの?」 面白いものを見た、という表情を隠そうともせずに悟浄がにやにやと笑いなが ら三蔵の側へと移動する。 「悪いか。」 「べっつにい?」 不機嫌そうに三蔵が言えば、悟浄は相変わらず悪ガキのような笑みを浮かべた まま、銜えたままの煙草をわざとらしくふかす。 「…ふん。」 眉間の皴を浮かべたまま三蔵も煙草を口に銜えれば、さりげない動作で悟浄が ライターを投げてよこす。 無言でそのライターを使って火をつけると、三蔵が投げ返す。 「なあ、それ食ってもいいのか?」 食べ物の匂いを嗅ぎつけたのか、悟空がわくわくという擬音が聞こえてきそう な表情で、八戒の側へすり寄ってくる。 「え、ええ。熱いうちがおいしいですよ、こういうのは。」 待て、を命令されているようなワンコのような表情に、八戒は思わず苦笑しな がら大きい方の芋をふたつに折ると、悟空と悟浄にそれぞれ手渡す。 「熱いですから気を付けてくださいね。」 「あふ、あふい…けどうめ〜!」 「お、意外にいけるなこれ。」 はふはふと心底嬉しそうに焼き芋をほお張る悟空に対し、悟浄は物珍しそうに 一口齧るとそう感想を漏らす。 「はい、どうぞ。」 残った方の芋をふたつに折ると、八戒は片方を三蔵に渡そうとする。 「いらん。」 「三蔵が焼いたのに食べないんですか?」 差し出された焼き芋を見ようともせず三蔵がそう言えば、八戒はいかにも不思 議だと言わんばかりの態度で小首を傾げて見せる。 「…ふん。」 依然として不満そうな顔のまま、手を伸ばし片方を取ると口に運ぶ。 くすりと笑って、残った半分を肩に乗ったジープに与えながら八戒も食べる。 「おいしいですね。」 「…ああ。」 「お師匠さん、ですか。」 「まあな。」 短い会話を交わし、あとはただ黙って二人焼き芋を口に運ぶ。 対照的に少し離れた場所でにぎにぎしくケンカをしている二人もいたが。 「あいかわらずですね。」 「ふん、バカ二人が。」 最後の一口を無造作に口に放り込んだ三蔵がそう言えば、八戒はジープを車へ と変身させる。 「行くぞ。」 「はい。」 それだけ言うとさっさと助手席に乗り込む三蔵に、八戒も同じく残りを口に入 れると、手についた汚れをはたき落としながら苦笑する。 「はいはい、二人ともいい加減にしないと置いていきますよ。」 「へ〜い。」 本当に遣りかねないその言葉に、おとなしく悟浄と悟空が後部座席に乗り込む と、八戒も運転席に座りエンジンをかける。 「それじゃ、出発しますね。」 「れつつご〜!」 軽快なエンジン音とともに、ジープは再び走り出した。 *第6話 たき火のあとで END* |
食料採取に三蔵が参加するとは思えなかったので、えらく出番が 少なかったかな?という訳で出番を作ってみました。(笑) なんか江流って、竹箒もって庭掃きしているイメージが強くって。 きっとお茶目なお師匠さんが、集めた落ち葉で焼き芋作ってるに 違いないです。 |