I LIVE

2001年12月8日復讐の時は来た。

  待ちに待った運命の日、この日が決まってからも俺はまだ迷っていた。
自分が忘れてきた何かを求め、ただ暗闇の中で独りもがいていた。
いい知れぬ不安の中、確実な欠乏を感じ、それでもあの場所に向かう意味を考えていた。
かつて俺を完全に叩きのめしたあの場所に必ず戻らなければならないのは判っていたし、俺もそれを望んでいた。
それでも何かが足りなかった。まだ何か大事な事を忘れている気がした。

  ライブが決まってからのバンドはそれまでの停滞が嘘のように動き始めていた。
俺も何かを探しながらもその動きに従った。無駄にできる時間など残されてはいなかったからだ。
限られた時間の中、メンバーとも色々話し合った。正直な不安をぶつけた事もあった。
そうしているうちに俺の中で一つの想いがゆっくりとだが確実に形を成していった。
そして、その想いは俺の中にしっかりと光りを灯した。
道は見えた。後はやるだけだった。

  当日、ステージに立つまでの緊張は前回と何ら変わりはなかった。しかし確実に違ったのは己の中に宿った光だった。
その光はとても強く、熱く、優しく、遥か彼方を照らし、俺自身も照らしていた。
そしてSEが鳴り響く中、復讐の幕は静かに開いた。

  今回のステージは演奏としては全くひどい物だっただろう。
でも俺は楽しんでいた。動かない指の焦りを楽しんでいた。緊張から来る膝の震えを楽しんでいた。
訳の分からない血の逆流を楽しんでいた。音の洪水に飲み込まれる事を楽しんでいた。
なによりあの瞬間と空間とを心の底から楽しんでいたんだ。
かつて俺を苦しめた全てのモノに、やっと復讐を果たす事が出来た。

  あの日、あの場所で、俺は求めていた答えを一つ見つけた。しかしそれは独りで見つけたモノじゃない。
俺が今まで生きて来た時間と、俺に関わった全ての者達が見つけさせたに過ぎない。
独りで何かを求めるにはやはり限界がある。仮に何らかの答えを見つけたとしても、それは結局のところ独りよがりでしかない。
共に見つけた答えこそが真実ではないかと、俺は思う。

  俺が見つけた答え、それがあのステージだ。
もちろんそれが到達点ではない。まだ通過点に過ぎない。永い旅路はまだ始まったばかりだ。
これから先も様々な問題や迷いが続く事だろう。それでも進み続けなければならない。
否、進まずにはいられないだろう。所詮はそういう人間なのだから。

  最後に、俺を司る全てのモノ達と、俺が認める全ての仲間達へ、
限りない愛情と最大限の感謝を込めて、

    Thanks ”I LIVE”

                                      ALCOHOL  SENSOR  神風

追記・ちょっと忘れ物をしてきたんで、取りに行ってくる。
      またあの場所で逢いましょう。




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