I LIVE (ANOTHER VERSION)
2001年12月8日復讐の時は来た。
ライブが決まった時、俺は一つやらなければならない事があった。
前回のライブでの敗北の復讐・・・・これは避けて通れない道だった。
あの場所で感じた確実な敗北感、それは見ていた人間にはほとんど解らなかっただろう。
共にステージに立った人間ですら俺の敗北感には気がつかなかっただろう。
しかし、完全に負けていた・・・・あの場で「Uのテーマ」とは・・・・
とりあえず敗北感を与えた当のバンドは解散してしまったらしく、
このままでは勝ち逃げされてしまうので今回のライブでなんとかするしかなかった。
幸い今回の会場ではオープニングにスクリーンとSEが使えるということなので俺は一計を案じた。
「Uのテーマ」に優るインパクトを与えるべき手段の模索が始まった。
まずは方向性の確定から始めた。一口にインパクトと言っても多種多様なインパクトが存在する。
単純にバカバカなインパクトを目指すのか、渋く決めるのかによって方向性はまるっきり変わってしまう。
俺としてはバカバカも嫌いではないのだが、それだけに傾倒してしまうのはどうもキャラと合わないので、
ライブそのものがアンバランスになってしまう怖れがあった。
そこで考えたのが、知らない人が聴くとかっこ良くあり、知ってる人が聴くとかなりバカで笑えるというポイントだった。
これはかなりピンポイントな上に、外すとどっちつかずのだだ滑りになってしまうというリスクはあったが、
これ以外に「Uのテーマ」に勝つ手段は無いと思ったのでこの路線で行く事に決めた。
方向性が決まったので次は曲の選定に移った。
曲の選定には必然的にいくつかの条件が付く事になった。
まずライブのオープニングである以上、曲へのつながりが非常に重要だった。
あとは時間的制約もあり、あまり長い曲は使えなかった。
他にも細かい条件はあったが、なんとか2曲にまで絞り込みデータ入力に移った。
時間的制約がなければCDまる流しでもいいのだが、なんとしても2分以内に納めなければ使い物にならないので、
新たにMIDIで打ち込むしかなかった。
仮データを打ち込んで見て判ったのだが、候補曲の一つはあまりにもアコースティック感が強すぎて、
今の俺の実力では満足するデータにすることは不可能だった。
よって曲は必然的に決まった。「エクソシストのテーマ(TUBULAR BELLS)」だ。
曲が決まれば本データの入力である。
そこで重大かつ致命的な欠陥に気付いた。俺は耳コピーが大の苦手だったのだ。
苦手というか出来ないと言った方が正しいようなレベルだった。
しかし、ここまで来てはもう後には退けなかった。退路は常に断って来たのだから・・・
人はそれを「引っ込みがつかなくなった愚か者」といふ(笑)
まぁなんにせよやるしかないのでとりあえず一番判り易いメインリフの音符拾いから始めて見た。
しかし音程はなんとか拾えるのだが、符割りが何故か合わない。何度拾ってもずれるのだ。
しばらく聞いてみると変拍子であることが判明、これまた厄介・・・と、普通はなるところなのだが、
俺の場合元々の知識がないのでこれはたいして困らなかった。
音拾いに苦闘しながらもだんだん馴れてきたのか適当に拾ってもなんとか合う様になってきた。
俺ってもしかしたら天才かもしんないっ、などとのたまっていたところで新たな問題発生。
途中のオーケストラヒットの音色がどうしても納得いかないのだ。
ほかの音色は後で直すつもりで仮音色にしておいたが、この音色だけは今何とかしなくては作業が進まない。
ただ単に俺の気持ちがノらないといふ稚拙な理由なのだが・・・超気分屋の俺には重大問題だった。
事実、この問題だけで数日間、作業が停滞した。何度か気分を切り替えて先に進んでみたのだが、
結局はすぐに気になって戻ってしまう、そんなことの繰り返しだった。
巨大な壁の前、ただ立ち尽くす俺がいた・・・・というより
「がっでむっ!ふぁっくっ!なんかちげーんだよっ!」といった逆ギレ状態だった(笑)
何はともあれ、手詰まり状態だった。
そんな時、一つの言葉が脳裏を過ぎった・・・「それならネット上にデータがありそうだけどなぁ」・・・
これは他の曲をコピーしていたときにちゃぼが俺に言った言葉だったが、この言葉を思い出したとき、俺の中で悪魔が囁いた。
「ぱくっちゃえっ・・・」これは甘美な響きを含んだ誘惑だった。
俺の中で葛藤が始まる・・・「人のデータでいいのか?」という俺と「ぱくっちゃえばもうコピーしなくていいんだぞ?」という俺。
「自分の力でやらないで何になる?」という俺と「おまえに出来るのか?」という俺。
事実、時間もそんなには残されていなかった。迷う俺に悪魔はとどめを刺した。
「ぱくって自分が作ったことにしちゃえっ・・大丈夫、誰も気づかないし、気にしないさ・・・」
俺は何かに取り憑かれたかのようにネットを検索していた。
「違う・・参考にするだけだ・・・何かのヒントになればいいんだ・・・」そんな言い訳を必死で考えながら・・・
ネットで検索してみるとわりと有名な曲ということもあってけっこうたくさんのデータがあった。
そのうちのいくつか製作者が自信をもって出していそうなのを選んで落としてみた。
そして落としたデータを聞いてみて俺は驚愕した・・・。慌ててデータを見てさらに驚愕し言葉を失くした・・・。
なんとか絞り出せた一言、それは・・・「クソがっ・・・」それだけだった。
一言で言ってそれらのデータは俺にとってまったく使えない代物だった。
「なんじゃこりゃ?なんでこうなるの?嘘だろ?」そんな疑問しか出てこなかった。
肝心の俺が迷ったオーケストラヒットの一音もたった一つのオルガンの音で済まされていた。
なんでそんな程度の音で納得して人前に出せるのかが俺にはまったく理解できなかった。
他のリフやらも俺が拾った音とは明らかに違っていた。
まぁここまで違えば普通は「自分が間違ってたのかな?」と思うものだろう。
事実、落としてきた他のデータはどれも似通っていたし、リフも大体同じだった。俺のを除いては。
しかしそこは俺の俺様たる所以、「おまえらの耳はおかしいっ!俺が本物の音を聞かせてやるっ!」などとのたまってしまうのだった。
そんなこんなで「ぱくって楽しちゃおっと作戦」はあえなく頓挫した。
しかし、この一連の回り道で俺は変な自信をつけた。現時点での仮データですら俺は巷に氾濫するデータには勝っていた。
「その程度のデータでいいならいくらでも出してやる。ただ俺は出さんっ。俺のデータが出る時、その時おまえらのデータはただのクズだっ」
俺はそんな確固たる自信を得て作業に戻る事となった。
ちなみに人はそれを「誇大妄想の勘違い野郎の戯言」ともいふっ(笑)
まぁ変にしろ何にしろ自信をつけたことで俺の作業はまた順調さを取り戻してきた。
気になっていた一音も完璧とまでは言わないまでも、気分の妨げにはならない程度にはなっていた。
音拾いのほうも難なくこなせる程度にはなった。しかし相変わらず音色に関しては難点だらけだった。
何かが違う、それはわかっているのに何をどうすべきかがわからない。そんなジレンマの連続だった。
しかし時間的な制約がせまっていたので、ある程度の所で見切りをつける必要があった。
気分を害さない程度のクオリティーにまで仕上げたら後は最終調整でなんとかしようと決め、全体の制作に重点を置いた。
そしてついに概略は完成した。トータル2分に収めるためのアレンジも終了し、ライブに繋げるエンディングもばっちりだった。
後はクオリティーアップと調整の後に録音という予定だった。
しかし、ここまでの作業が思いのほか早く上がった事で新たな欲が出てきてしまった。「もっといい音にしたい・・・」
俺の使っていた音源というのはかれこれ10年ほど前の音源で、それぞれの音がやっぱりいまいちだった。
そこで目をつけたのがさっちゃんの持っていた音源だった。俺の音源の上位互換機種でもあるし、音も格段にいいのだ。
とりあえずそれを借りてクオリティーアップに取り組むことになった。
しかしここで問題発生。俺が使っていた作曲ソフトではこの音源は制御しきれないのだった。
この音源を制御できるソフトももらってはいたのだが、気に入らないという理由で使っていなかったので、今更覚える事は難しい。
それに俺には長年慣れ親しんだソフトを裏切る事はできなかった。
まぁ、「音源は裏切ったぢゃん?」という突っ込みはこのさい無視しよう(笑)
幸いなことに制御できないとはいっても完全にできない訳ではなく、いくつか使えない機能や、呼び出せない音源があるという程度なので、
そこはそれ、持ち前の強引さでエラーすれすれの所で動かす事に成功した。
「鳴かぬなら泣かしてしまえホトトギス」ってやつだ。ん?なんかちげー?
とりあえず強引でも制御が可能になったので作業を続ける。
ちなみにこの作業は「それ、何か変わったの?」って程度のすごく微妙な手直しの連続だった。
しかし、その微妙さを繰り返すことによって全体のイメージが明らかに変わっていくのだった。
それによって俺のテンションもだんだんあがっていった。作業の後半の方には「アンタ、クスリやってる?」って程だった。
実際、俺の頭の中では音楽と映像があふれ、そのままライブになだれ込む風景が見えていた。
しかしその程度の幻覚幻聴などクスリなど使わなくても日常茶飯事だった。
まぁ、それもいかがなものかとは思うのだが・・・(笑)
余談ではあるが、ライブのオープニングで使った画像もこの時のテンションの中で出来たものだった。
元々、あまり人目に触れなかったがチラシで使ってた画像が元になって、構想もある程度練っていたものだったが、
ある種、異常なテンションの中であの形になったものだった。
画像を作りつつ、「火だっ!燃やせっ!」などとのたまいつつ、新聞紙に火をつけてデジカメで撮るなどという暴挙に走ったり・・・
あぁ・・・若かった(笑)
さらなる余談だが、あの画像はあれを中心にしたSEとリンクする映像が出来あがっていたのだが、そこまで実現する設備がなかったので、
その案はお蔵入りとなった。今後の課題かな?
さて、話戻して最終調整。難航しつつも大体の調整を終え録音作業に移る。
これもまた悩みつつ進行する。録音媒体も限られていたので試行錯誤の末、カセットテープに落ち着いた。
レベル調整などでかなり悩んだが、現時点で出せる精一杯のものを詰め込む事が出来た。
後は出たとこ勝負、どう転ぶか、それはまさしく「all is "god only know"」だった。
ライブ当日、さぁ、ショーの始まりだ。
静かに流れるイントロダクション・・・ゆっくりとしたフェードインからベースの重厚な響き・・・
次々と重なっていくメロディー・・・どこか異様な怪しさを含みながら上がっていくテンション・・・
俺はこの数週間の作業を想い起こしていた・・・俺は間違ってはいなかった・・・
あの日胸に刻みつけた十字架の意味・・・自らに巣食った悪魔退治の意味を込めたテーマ・・・全てが絡み合っていた
そして突然の雷鳴にかき消されるSE、一瞬の静寂の後、俺達はドラムに導かれ光の中に溶け込んでいった・・・・
今回の試みは俺にとって冒険だったが結果には満足している。
かなり気分よくライブに突入する事が出来た訳だし、満点ではないが合格点だった。
ちなみに評判としては・・・・
「長いっ」その一言で終わってしまった(苦笑)
あぁ・・・俺の数週間の苦悩と格闘の日々がぁ・・・たった一言で崩れてゆくぅ〜(苦笑)
あったまきたっ、もう二度とやんねぇ(笑)
といいつつ、また俺はやるのだろう。
基本的にバカだからなっ。無駄?無意味?上等だっ(笑)
あるこほる・せんさー 主犯 神風
おまけ
よろしかったらどーぞ。重いけど(笑)
SE(MP3) OP画像(jpg 800×600)
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