sin and punishment

俺は一度死んだ。
しかし俺は今こうして言葉を吐き出している。
死んだはずの俺が何故今こうして存在しているのだろうか?
それは簡単な事だ。肉体的、精神的に完全には死に損ねたからだ。
今の俺は死に損ねた無様な抜け殻にすぎない。
生きる意味さえ解らず、死ぬ事さえ許されなかった虚ろな魂の器だ。

俺はただ死にたかった。死ぬべきだと想っていた。
生きていてはいけない罪を犯してしまった。
それに耐えられるほどの強さは持ち合わせてはいなかった。
だから死ぬべきだと想った。死ななくてはならないと・・・

死を望み、安楽を願い、俺は永遠の眠りへと堕ちていった。
深い眠りの中、俺は夢を見た。

俺は現実と虚実を分かつ川岸に独りたたずんでいた。
そこは何も無い虚無の世界だった。
川岸には石ころだけが転がり、向こう岸にも華など咲き乱れてはおらず、
ただ、暗い水面だけが静かに流れる暗黒の世界だった。
俺は改めて死の淵にまでたどり着いたのだという現実を感じていた。
この流れを越えれば俺は確実に死ねる。夢にまで見た世界にたどり着ける。
そしてその世界には俺を待っている奴がいる・・・と。
俺は静かに水面に足を踏みいれた。
その流れは緩やかで、まるで俺の歩みを邪魔しないかのように優しく流れていた。
その流れを中程まで進むとやがて微かに向こう岸が見えてきた。
その中に奴は立っていた・・・。
俺は心が踊った。やっと逢えた歓びに我を忘れて走った。
しかし、奴は違った。目を閉じうつむいたまま身動き一つしなかった。
俺は足を止めた。いや、動けなくなったといったほうがいいだろう。
俺は奴の名前を叫んだ。精一杯の声で奴を呼んだ。
二人の間にとても重苦しい沈黙が流れた。時間すら止まってしまったような沈黙・・・
そして奴は瞳を開き顔を上げ静かに呟いた・・・「何故・・来たんだ・・」
俺をしっかりと見据えたその瞳は涙に濡れていた。
俺は戸惑い叫んだ。「お前は俺に逢いたくなかったのか?俺は逢いたくてここまで来たんだぞ?」
奴は静かに応えた。「逢いたかったよ・・・決まってんだろ・・・でも・・・」
「じゃあ何故・・・俺を迎え入れてはくれないんだ・・」俺も泣いていた・・・。
奴は涙を流しながらも努めて冷静に語りつづけた。
「後ろを見て見ろよ・・・何が見える?あんたには見える筈だろ?」
奴に促され、俺は振り返った。そこに見えたのは俺の日常だった。
仲間達がそこにいた。俺が愛した全ての人間がそこにいた。
みんな泣いていた。泣きながら俺を見据えていた。俺は言葉を失くした・・・。
そんな中、奴は静かに言葉を続けた。
「俺はあんたが全てを捨てる事を望んでなんかいない・・・全てを手にしたあんたに逢いたかった・・・
 そんな強いあんたに逢いたかったんだよ・・・」
俺には何も言えなかった・・・ただ黙り込むだけだった。
そんな俺に奴は最期の言葉を突きつけた。
「俺はそんなあんたに逢いたくない・・・今のあんたは最低だよ・・・」
最期通告をうけた俺は力なく水面に倒れ込んだ。そして意識を失っていった。
薄れ逝く意識の中、俺は確かな声を聞いた・・・「もっと・・・強くなってくれ・・・」

目覚めた俺は病院のベット上で縛り付けられ涙を流してたい。
死を望んでから三日が過ぎていた。

眠りつづけた俺が見た夢はいったいなんだったんだろう・・・
死にたくないと思う俺の心が生み出した幻だったんだろうか?
でも俺にはあれがだたの幻だったとは思えなかった。
あの瞬間に見た光景、交わした言葉には嘘があるとは思えなかった。
それは勝手な思い込みなのかもしれない。弱い心が作り出した幻影なのかもしれない。
だとしても、俺にとっては紛れもない真実だった。確かに俺は奴に逢ったんだ。
きっとそんな事は誰も信じないだろう。だとしても俺は構わない。俺は確実に奴に逢えたのだから。

現実世界でも俺は奴に逢った事がある。
その時の俺はただ、奴に逢いたい一心だけだった。そんな俺を見越して奴は逢いに来てくれた。
その時の奴のメッセージを俺は間違って受け止めてしまったんだろう。
お互いに逢いたいのだという事だけを受け止めて行動に移してしまった俺を奴は許さなかった。
奴はそんな俺には逢いたくなかったのだろう。もっと強くなった俺に逢いたかったのだろう。
俺は一番大事な事を忘れていた自分に、今、初めて気が付いた。

今の俺は死に損ねたただの抜け殻にすぎない。
人から見たら哀れで情けない愚者の象徴のようなものだろう。
だとしても、俺は今生きている。確実に鼓動を刻み続けている。
命在るものとしてこの世に歴史を刻み続けている。
今の俺に出来る事、それはこの先も生き続けていく事だけだ。
そしてもっと強くなる事だけだ。
もう何も怖れる事はない。何も失うモノなどないのだから。
俺は強く生きる。そして全てを手に入れる。
例え手に入れられなくとも、俺は胸を張って奴の元に逝きたい。
その時こそ、奴は俺を受け入れてくれる筈だから。
そうなる事だけが俺の唯一の生きる意味だ。

笑いたければ笑うがいい。無様な俺の生き様を。
蔑むならそれもいい。それも間違ってはいない。
生きる事を諦め、死を選んだ愚か者が、それすら許されず今ここに生きている。
ただそれだけの事だ。深い意味など何も無い。

これから先、俺はこの道を生き続けて行くだろう。
誰の為にでもなく、ただ己の為にだけ。
俺の罰はまだ始まったばかりだ・・・・。


追記・ふぃくしょんだぞ?真に受けるなよ(笑)



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