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摂食障害治療段階における掲示板の役割について

山(課題) 谷(危機)
こころ こころ
急性期 救命、安静臥床による身体保護 初期指導の徹底、治療同盟を結ぶ、治療の構造化 飢餓死、心不全、再栄養症候群、治療拒否行動、非可逆的身体変化 患者・家族の疾病否認、精神病的意識障害、疎通性欠如
回復期 規則正しい栄養バランスのとれた食事への回復、 食行動の改善、 データの改善 身体感覚・自己感の獲得、正直にいやといえる、本音で相手とやりとりできる、けんかしても仲良くなれる 心タンポナーデ、再栄養症候群、過食嘔吐、盗食・捨食、下剤・利尿剤 不安抑欝などの気分変調、易刺激性、脱院・家出・家庭内暴力など行為障害、被虐的不安など
社会復帰期 周期性月経・排卵の確立、健やかな食行動 対人スキルの向上、心の育てなおし(母親に甘える、本音を表現できる、葛藤の言語化、動揺から早く立ち直れる、取捨選択できる、マイペースで活動など) 日常のストレスによる拒食・過食嘔吐の再発、無月経・月経不順、多臓器障害の悪化 万引き窃盗などの行為障害、適応障害、不安障害、感情障害、強迫性障害、人格障害、精神病障害
厚生労働科学研究研究・思春期やせ症と思春期の不健康やせの実態把握および対策に関する研究班「思春期やせ症の診断と治療ガイド」(文光堂)105ページより

 厚生労働科学研究研究・思春期やせ症と思春期の不健康やせの実態把握および対策に関する研究班による「思春期やせ症の診断と治療ガイド」では摂食障害の治療段階(治っていく過程と読み替えてよいと思います)を上記のように3つにわけています。

 急性期すなわち病初期はやせによる飢餓状態による身体的危機が治療の中心となります。従って、治療は救命や、安静臥床による身体保護といった構造化した内科的治療が中心であり、自助グループには限界があります。まずは一般内科医や小児科などでもかまいませんので、医療機関に一度受診して身体的機能の評価をしてもらう必要があります。とくに、この時期は、体重減少は進んでいても、元気そうに振る舞える時期があるため、本人や保護者に病気の進み具合が正しく理解できていないことも多いですので、安静など医療機関の指示に従うように心がけてください。この時期の、掲示板の役割としては、表で示したように、患者・家族の疾病の受容と、医療機関での治療同盟を結ぶためのきっかけづくりに役立つとおもいます。厳しすぎると感じる治療者も病気の行く末を考えてならではのことかもしれません。先輩が乗りこえてきた、出会ってきた多くの医師たちの話をききながら自分に会う医師探しをしていってください。
 まずは、行きつけの医院・病院で身体管理をはじめ、その先生のすすめられる精神科、心療内科医にまずはかかってみて、会う会わないを判断していくのをおすすめします。この時期の治療の主目的は身体的危機の克服にあります。しかし、一方で、長期的なこころの治療戦略の第一歩でもあります。是非、急性期のうちに信頼できる精神科、心療内科医を見つけておいていただければと思います。

 回復期は身体機能が徐々に回復し、脈拍数が正常下限にもどった時期と定義しています。脈拍数をはじめとする自分の身体機能と相談しながら徐々に規則正しい栄養バランスのとれた食事へ戻していく時期です。主治医とも相談しながら、掲示板で他の参加者の方法を参考にしたり、あるいは「宣言」することで食行動の改善に結びつけてみてください。また、正直にいやといえる、本音で相手とやりとりできる、けんかしても仲良くなれるなど、徐々に自分の感情をおもいやる方法を身につけていきましょう。
 不安抑欝などの気分変調、易刺激性など、まだまだ気分は安定しない時期です。この道を通ってきた先輩たちの意見やなぐさめも、この時期を乗りこえるための糧になると思います。

 そうして、身体機能はほぼ正常になったあとは徐々に社会復帰していきます。この時期においては日々を振り返る中で健やかな食行動について洞察を深め、他人の力を借りなくても自己洞察の中で対人スキルの向上、心の育てなおしが出来るようになってくると思います。日々の出来事を振り返り、自己洞察することで、日常のストレスによる拒食・過食嘔吐の再発を防ぎ、こころの安定を保つのに役立ててください。そういう、社会復帰期(〜治癒した時期)の参加者の洞察が急性期〜回復期の参加者の参考にもなっていきます。
 摂食障害の最終的な目標は、摂食障害的なもののとらえかたをなくし主体的な生き方を身につけることです。治療をとおしてこころが成長していけます。この掲示板と主治医、信頼できる精神科、心療内科医を利用して、より明るい人生を過ごせるようになっていただければと思います。


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