セレスタイト







スコールはクラウドを探して星の体内にやってきた。
軽く上方を眺めればライフストリーム織り成す翡翠色の空間をながめているクラウドが視界にはいる。

「なにしているんだ・・・・・・?」

何もせず、物思いにふけっているかのようにみえるからこそスコールの疑問が発せられる。

探しにきた以上は声をかけてつれて帰りたいと思う気持ちと
邪魔をしてはいけないのではないか、という気持ちがせめぎあう。

本当であればクラウドの都合など気にせず連れて帰れば良いものを、
邪魔をするという行為以上に邪魔をしたことで嫌われることが正直恐ろしい。
この程度のことで逃げ腰になっている自分が信じられず、また、情けない。
周囲の人間の自分への評価や気持ちなんて関係ないからと、自分の心が表情に表れ難いのをいいことに我関せずの意思を貫いていたころの自分はどこへいったのだろう。
確かに周りの人間の気持ちが気になるからこそ、あえての振る舞いだったことを今の自分は自覚している。
だからこそ虚勢でもいいから格好つけたいというのに、仲間とみとめ頼ってしまった今ではそれすら難しい。

せめて、クラウドが自分の存在に気がついてくれたらと一歩一歩近づく。
でも、彼の時間を邪魔したくない自分は足音を殺し気配を消して歩いているのだから、いったい何をしたいのだろう、と
スコールは片手で顔を覆いため息を吐いた。




思わず漏れてしまったため息にクラウドが振り返りスコールを見た。

星の体内にあふれる緑の光と、その光を映したクラウドの真青の瞳が緑色に揺れる。
常とは違うクラウドの瞳にスコールは息をのんだ。
そして、その光に誘われるように距離をつめると相手の顔を正面から覗き込んだ。
先ほどまでの遠慮がどこへ消失したのか。

「邪魔をしたか?」

悪かったなとつぶやきながらもスコールは相手の顔を両手で包み込むと。

光をあてると蛍光色に光るフローライトのように輝く青でもあり緑でもある瞳に見惚れ、その光の中に映る自分のいつもの姿に安堵する。
不安定に瞬く瞳のどこに心落ち着く理由があるのかは解らない。ただ、視線を逸らすことができないだけだ。


「美味そうだ」

予想外の相手の言葉にスコールが瞬きするとタイミングを見計らっていたかのようにクラウドが瞼にチュッと軽く口付けた。
「なっ」
スコールの身体が咄嗟に後ろに逃げるのを、クラウドは面白そうに笑っていう。

「食べたくなった」

「・・・・・・」

「スコールの瞳はまるで天青石みたいだ。この綺麗な灰色かかった空色が何かに似てると思ったんだ。―――――― そう、シーソルトアイス」

「なんだ、それは」

自分の知らないものの名前だが、それがアイスの名前であることはわかる。
そして、自分が相手の瞳を見つめていたということは、すなわち、相手も自分の眼をみていたのだと。自分の瞳を表現したものだと悟ったスコールは不満そうに口を引き結んだ。

「知らないか?しょっぱくて、でも甘いアイス」

「甘くて、しょっぱい?(それはアイスといえるのか)」

「今ここにあればな。スコールにも食わせてやりたい」

「(遠慮する)パラメータでもあがるのか?」

「いや、ただのアイス。当たりつき。どこか高い所で、そう次元城あたりで下を見下ろしながら食べたら格別だ」

「残念だな」

「この戦いがおわって、戻ったら食べさせてやる」

「それは」

「いいから。約束だ。スコールはアイス食べさせろと俺を訪ねてくればいい」

「俺が行くのか?」

「仕方ないじゃないか、溶けたら終わりだ」

「じゃあ、仕方ないな」

スコールが微笑み、クラウドは約束だと再び言った。











「で、あんたはここで何をしていたんだ?」
スコールが問いかける。

「なんとなく空間を眺めていた。ここは落ち着くような、逆に心騒ぐような不思議な感じがするんだ」

禍々しい緑の光、俺の瞳と同じだからだろうかとクラウドが自嘲する。

「あんたの瞳は禍々しくなんかないっ!!」

こんなに綺麗なのに!とスコールが声を荒げ、右手を大きく振りぬいて拒絶する。
おもわず言われたクラウドはキョトンと呆然の体を隠せない。

「おまえそんなに俺の目が気に入っていたのか?」

「瞳だけじゃない」

スコールが相手へ一歩踏み出す。そして左手をクラウドの顔のほうへ差し出すと彼の右頬に触れる前髪の一房を思い切り握りこみ

「この金髪も気に入っている」

といった。

どこが?と視線だけで訴えればスコールが答えていう。

「無駄に輝いていて目立つところが良い。暗闇でもそこにいることが即にわかるから」

いなくなってしまったらどうしようと常に不安に思ってしまうスコールにとっては大切なことなのかもしれないが。

「暗闇というが。一緒に寝ているときはこんなのじゃなくて触れ合う肌でわかるだろう」

クラウドが苦笑して言うと、

「それでも気に入っているんだ。悪いか」

スコールはふんっと鼻を鳴らした。

「他には?」

「他?」
スコールが問い返す。

「そう、他に。俺はスコールのどこが好きかなんて両手の数程言える」

じゃあ、言ってみろと口を開きかけたスコールだったが、少しの間考える様子を見せると相手の背中に両手を回して抱きついた。
そして背中に手を這わせ。

「背筋。きれいに鍛えられて引き締められた背中」

「バスターソード背負っているからな」

「上腕の形もいい。そして胸も」

いいながらクラウドの腕にふれ、最後に胸を拳でたたいた。
軽く叩いたようでそれなりに力がこめられていたのか、ケホと一度咳き込んだクラウドが言う。

「俺がスコールの好きなところは・・・・・・」

「言わなくて良い」

「なんでだ?」

「それはクラウドだけが知っていればそれでいい」

ふむと唸ったクラウドはスコールの耳元に唇を寄せると言った。

「つれないことをいうな。今夜、じっくり教えてやるよ」

みじか!口調きにしだしたらドツボにはまったか。ぎゃくに、まったくわからなくなってきてしまった。。。ごめんよ、クラウド。
ほんとうは、クラウド結構いろいろ悩んでいたのですが、スコールが叫んだので他の愚痴がいえなくなったのです