同人誌即売会へ規制の動き



 幕張メッセで10月2日に開かれることになっていたコミック同人誌即売会「コミックシティ」が中止になった。これは千葉西警察署からエロ同人誌について厳しい注意の通達があり、主催者側がトラブル回避のために自主的に中止を決定したというもの。で、同人誌界は大騒ぎになっている模様だ。この事件に続いて企業主催による「コミックライブ」「ミニコミフェア」などが自粛や身分証明の提示など規制に向かっているようで、また書店や印刷所経由のエロ同人誌も同時に締め出されていく方向にある様子。
 対して、自主系の「コミケット」や「コミックレヴォリューション」はこうした動きに批判を強め抵抗していくものと伝えられ、パソコンネットなどではこうした規制について賛否激論が沸騰しているようだ。
 自主的で自由な表現が統制されることは好ましいことではない。しかしながら、エロ同人誌が本当に「自主的で自由な表現」であるかどうかには疑問がつきまとう。それはたいていがパロディであったり、金儲けが目的であったりするわけで、殆どが「エロ」というものめぐって真摯に対峙した結果とは言えない。また、「表現の自由」を叫ぶのであれば「表現」というものが何かということを考えてみなければなるまい。「表現」とは「伝達」でもあり、作品は観賞者に開かれている以上、表現者のみにその権利が帰されるものではない。売買して取引されるならばなお、何らかの社会的束縛は不可避である。本来ならば、批評の存在がその役割を果たす。だが、こうしたまともな批評や観賞が疎外され、放置されてきたところに同人誌界の不幸があり、今回の規制を呼び込む原因がある。つまり、同人誌界とは本当の意味で「自主的」な世界でもなんでもなかったということがここにきて露呈されたということだ。この機会に、まっとうな自律へと進むことを期待する。
 ヘアヌードが世間への挑戦でも反抗でもなく、単なる媚びであるのと同様に、媚びとしてのエロ同人誌には抵抗の名目が立たないだろうし、作家にそこまでの芯もあるまい。こうした自主規制が提起した問題は、むしろこの部分にある。


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