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泣きたいくらい、寒い夜がある。
 昼間、誰と会っていても、いやというほど、自分を思い返させる夜がある。
 こんな時に限って、誰からも、電話もない。テレビも、ラジオもうざったく、ただ、蛍光灯が薄暗く瞬いている。
 吸いかけの煙草から、ゆったりと紫煙がたちのぼる。少し、目に染みる。
 空缶や空瓶の群れが行き場を失って転がっている。ヒーターのうなりと、置時計の時の刻みだけが、僕自身をまた確認させる。
 遠くで救急車のサイレンが聞こえる。僕とは関係はないんだと考える。ぼんやりと、部屋を見渡す。
 (いつの間に、こんなに物が増えたんだろう)
 感心と呆れの入り交じった妙な感覚だ。最近、よく感じる。
 (意味なんて無いんだろうな)考えることに少し疲れ、目蓋を閉じてみる。
 頭の奥で、ごしゃごしゃと何かが引っ繰り返っている。幾つかのシーンがフラッシュバックする。縁の無い日溜りのなかに佇んでいる自分を見付ける。
 (夢・・・?)どっちでもいい。
 何かを探してる?見つかったか・・・なくしたのか?
 日溜りに埋もれて、消えていきそうだ。懐かしい笑い声が聞こえる。
 ふと気付くと、色の無い天井を見上げていた。
 置時計の音がする。煙草は、消えていた。
 なんとか、布団にもぐりこむ。
・・・今は何も考えないでおこう。せめて、今くらいは・・・