伝説の教師

第11話

<前回のまとめ>

「ゲームという名の元と、2年D組の生徒が全員爆死破の恐怖にさらされた時、命のタイトロープを握っていたのは、心ならずもこの人だった」
南波先生はあの時、「何もかもにせもんづくしや」という言葉を使った。

「あれは、南波先生が自分自身に投げつけた言葉じゃなかったか。そして今、一つの伝説が終わろうとしていた」

<最終回のオープニング>

お互いを潰そうとして潰せない。

<すっかり調子を取り戻した風間先生>

そう言えば、昔の女だか、今も切れずに続いてる女だかに借りていた赤い車があったが、風間先生は今でも貰っている。なんだろう。そのまま続いているのか、慰謝料で貰ったのか、手切れ金としてもらったのか・・・。
ともかく、風間先生はまだあの赤い車に乗っていた。当然オープンカー。
たとえ駐禁を取られてる時だって、あくまでもクールでスタイリッシュ。オープンカーに寄りかかり、長い足を軽く組んだ風間先生は、その余裕の表情とあいまっておやおや!まるで口説かれている最中のよう!
「標識見えませんでした?」と言われても、
「あぁ、ごめんなさい。君しか見てなかった。君のことをレッカーしちゃおっかなぁ〜♪」
と、婦警の帽子を、キュ、と直したりする。
そのままカラオケに乱入だ!

「あの騒乱の最中、忽然と姿を消したあの人は、それから三日を過ぎても、僕たちの前に姿を現わさなかった。それは僕にとって、とてもありがたいことで」

「マミー、もうちょっとでできるからなー」

「おかげで僕は、また前の僕に戻ることができた」

風間先生は目玉焼きを作っていた。婦警は、もちろん風間先生の部屋に泊止まったのだ。
風間先生に朝ご飯を作ってもらいながら、けだるさを撒き散らしている婦警に、風間先生は大喜び。男の風邪引き、女の寝起きというのが一番魅力的に見えるといわれているところなのだ!
それを聞いた婦警は、ふーん、そうなんだぁ、とソファに座って髪をかきあげる。
「ちょと、今何やったっ?わわわわ!やっぺぇよそれ今、やべやべやべ!!もっかいやって!」
そして、もう朝ご飯なんかどうでもいいわ、と、抱き着いていくのだ。

「あの人がいなくなってからの僕は。精神的にも安定し、すごぶる体調もいい」

朝、生徒たちから挨拶されて、にっこりと幸せそうな風間先生。南波先生の無断欠勤は続いており、これが続けばクビ間違いなし!
ナガノ先生に、ヘタするとクビだな、と話しかけられても、嬉しそうなピカピカの笑顔なのだ。
「いよいよ風間先生、担任カムバックかもしれませんね」「いやあそれはないですよ」

「そう。やがて僕は、正式な担任に昇格するだろう。そしてそれは先生がたも生徒たちも、みんなが望んでることに違いなかった」

手をくんで、神様ぁ!と、幸せそうに天を仰ぐ風間先生。
ちょうどそこに、理事長室からの呼び出しがかかった。
ついにきた・・・!口元を押さえ、くぅーーー!!!と喜びを噛み締める風間先生。周囲の先生たちも、ついに辞令だ!と色めき立つ。
そんなことないんじゃないですか?降格して副担任なんですから、と口だけで言う風間先生は、魅力的な満面の笑みを浮かべ、ターンまでしちゃっていた。
が、理事長室ですざましい笑顔の風間先生を待っていたのは、このまま南波次郎が見つからなかったら、自分も懲戒解雇を受けることに同意する、という同意書だった。
「おぉい!!!」
と思わず大声の風間先生。しかし、連帯責任なんだから、とにかく探せと言われてしまう。
クラっ、とソファに座り込み、ぐったりする風間先生・・・。

<南波先生を探す風間先生>

「なんなんだよ一体!連帯責任っていう名目のリストラじゃねぇかよ!」
家の中でもあれこれ手がかりを探す風間先生。
「いなきうなってまで迷惑かけんじゃねぇっつんだよ。探せっつったって、何の手がかりもねぇ。誰も想像つかねっつんだよ!」
コロン、と転がる赤い、ポスト型貯金箱。ふとそれを取り上げた風間先生は、その軽さに、あの野郎、俺の金持っていきやがった!ふざけんな!と怒りを掻き立てられる。
しかも、中から出てたのは、「風間ちゃんちょっと借りるね」という南波先生のイラスト入りメモ。
「うわーーー!!!むかつくあいつー!超ムカつくよ!」
きぃ!とそのメモをひっくり返すと、それはつばめクリーニングの引き取り証だった。カーディンガンが、ブルー・レッド・イエロー・グリーン他5着出されている。他5着って、4着まで書いたらもう1着も書いてあげてもいいようなものだが、ともかく5着。
そこにつばめクリーニングがやってきて、スーパー仕上げに配達料など込みこみで、5460円も払わされる風間先生!

ぜって!見つけてやる!と勢いこんでやってきたパチンコ屋。坊主頭にカーディガンの男をとっつかまえると。それは似ても似つかぬこわぁ〜〜い別人で、あ、すいませんっ、と頭かりかりってやって許してもらおうとする風間先生なのだった。
それから、カーティガン屋を当たり、見つからずにバスに乗る。
慌てて乗ったバスで、200円払おうとして、ふと、あの日のことを思い出した。

あの日、先にバスにのった南波先生は、後のヤツが払いますとさっさと奥へと向かう。なんで僕が払わなきゃいけないんですか!と400円払った風間先生に、200円分楽しませてやろう、というのだった。
物まねでもなんでもいい、という南波先生に、風間先生は百面相を注文した。

お題その1「沖縄の人間が、42歳にして、初めて雪をみたときの顔」
おまえやってみぃやと言われた風間先生。手のひらを上に両手を上げて、うわ、雪だぁ・・・。
「最悪やな。なんやそれ。なんやその幼稚な発想。ありえへんやないか」
もちろん、正解はこうだ。沖縄から来てる42歳が、初めて雪を見た時の顔は。
「猪木」

お題その2「ラーメン屋の前を通りかかって長い行列がありました。その行列をみることによって、食べたくなります。でも、ラーメンを食べるには、8時間もいるんです。テンションも高くなります。ならびました。8時間がたち、その店にはいりました。食べました。『あれ?そうでもないなぁ』、という時の顔」

こういうのはうまいですよ、と、箸を歯で割って、ずずっと食べてみて、あれ?とやる風間先生。しかし。
「ひどいなおまえ!。押そうかな。降りよかなもう。最悪やないか!」
8時間待っていたのに!それじゃあ、こ一時間だ!!
8時間まってたいしたこと無かったらこうなるのだ!という見本は。
「三枝」

ふふ、と思いだし笑いの風間先生は、お客さん?とバスの運転手から注意され、慌てて200円払うのだった。こんなことをしている場合じゃあないのだ!ふふ、と笑っている風間先生もとても可愛いのだ!

そんな捜索中。不動産屋を訪れた風間先生は、南波先生が偽名で契約をし、履歴書の実家の電話もでたらめだったことをつきとめた。
経歴詐称だったのだ。
カウンセリングルームでキヌカ先生とそんな話をする風間先生。
キヌカ先生には、考えない方がいい。こっちの方がノイローゼになっちゃうという風間先生は、自分がノイローゼになりそうだった。
ホント迷惑なヤツですよね、とやさぐれる風間先生に、キヌカ先生は、前の高校を回ってみたらどうかと進めるのだった。

まずはあの開英高校からスタートし、キレっぷりをいかんなく発揮していたことを知る風間先生。

「いくつかの学校を回っているうに、なぜ南波先生が伝説の教師と呼ばれるようになったのか、次第に明かになってきた。マニュアルもセオリーもまったく無視して、事件を解決してしまう、南波先生のインパクトはどこの高校でも同じだった。ところが」

派手なカーディガンなんか着ていなかったという高校があった。キレないし、屁理屈もいわない。じろっと睨みをいれるだけで生徒たちは震え上がった。
しっかりしていたけど、顔は怖かった。

「そして僕はついに、南波先生の居場所をつきとめた。時代を遡っていくうちに、当時の、南波先生は、今とはまるで別の人格を持つ人物だということがわかってきた。なぜ、いつ、南波先生は変わってしまったのだろうか」

こそーーっとドアを開けると、そこは、狭い、打ちっぱなしの通路。なんだこりゃ・・・とおびおびしている風間先生は、奥にあるドアをそっとあけると、中には、あきらかに日本人ではない男がいて、「いっしゃっさい」なんて言われた。
あう!?と混乱する風間先生は、南波次郎さんがいるとうかがって・・・・・ともごもご口にして、いきなり部屋に吊れ込まれた。
ごめんごめん!と騒ぐ風間先生はフェンスに押し付けられ、身体検査をされる。
当然、こんなよわっちい(でも不死身)の風間先生が武器を持っているはずもなく、そこ座っとけ、とソファに座らされた風間先生。そして男は、ジロウさんを呼んだ。

<南波次郎って?>

ソファに、ちょこんと借りてきた猫のように座っている風間先生は、でもおどおどと当たりを見まわす。不思議な空間を眺めていると、ついに南波次郎が現れた。
が、そこにいるのは、あの借金取りだった。
思わず立ちあがった風間先生に照明があたり、綺麗な顔が際立つ。
「何」と聞かれ、人違いみたいでした、と帰ろうとする風間先生。しかし、借金とりは、自分が南波次郎だと言うではないか。
え!?
あ、同姓同名か。
納得してびくびく帰ろうとすると、「風間先生だろ」と声をかけられた。
「はい?」どうしてもびびりが入ってしまう風間先生。
「風間大輔。慶応大学英文科卒。十二社学園教師、教師暦5年独身。モットーはサラリーマン教師。女グセ悪し、尊敬する人は長嶋茂雄、血液型はA型」
確かにその通りだった。借金取りは、「あいつ」に関わっている人間は調査済みだという。
「あいつって?」
「次郎だよ」
「次郎っていうのは・・・」
「おまえが南波先生って呼んでるヤツ。あいつの本名は、木下次郎」
「本名?木下次郎?」
「そう」
軽く微笑まれ、風間先生は混乱した。
「いや、ちょとあの、ちょっと待って下さい。あれ?じゃ、僕が知ってるカーディガンの南波先生っていうのが・・・」
「木下次郎」
「本物の南波次郎は」
「俺だよ」
「いやでも、世間で、伝説の教師とか言われてますけど」
「それも、俺だ」
「え・・・」
「あいつも最近少し噂を残しているとみえるな」
「あなたが、伝説の教師・・・」

借金取りは教師だった。かつて、いじめを受けていた生徒に、どんな手を使っても殴り返せとゆったことがあり、その時、その生徒がやりすぎて、いじめられていた生徒を殴り殺したことがあり、教師を辞めた。

「それじゃあ、あの男は一体何物なんですか。木下次郎ってのは、どういう男なんですか!」
「借金を抱えたただのおちこぼれだよ」
南波先生は、前から借金を抱えていたが、ある日、取立てにいった借金取りの前で、駐車違反取締り中の警官に食ってかかっていたことがあった。
昨日は駐車しても何も言われなかった場所が、今日ダメだという中途半端さはどうなのか。今日取り締まるのであれば、明日もあさっても、警官辞めても、子供を警官にして、「先祖代々」守りつづけなくてはいけないのではないのか!中途半端な正義が一番の悪なのではないか!!
「子々孫々」の方が合うような気もするが、南波先生(当時木下)はまくし立てていたのだ。
これは面白い。
借金取りは、そこで南波先生に高校教師をやるように言ったのだ。

「どうしてあんなやつに・・・」
「直感的におもしろいと思ったんだろうな」
「あの人が?」
「あの小汚ぇツラから出ている屁理屈に妙な説得力があるだろ。それでな、あいつの教師の姿を見てみたいと思ったんだ。それともう一つ」
「なんですか」
「僕と名前が同じだったってことだよ。南波次郎と木下次郎」
なんだって!?風間先生は怒った。名前が同じだって言うだけで、あいつを高校の教壇に立たせたのか!と。
怒っている風間先生の顔は恐ろしく綺麗なのだが、借金取りには通用しない。
怒っているところを、ずい、と前に出てこられ、びくっ!とひいてしまう風間先生は、毛並みを逆立てておびえている様子が見てとれる。
「風間先生。あの男から何かおそわらなかったか。教師として大切ななにか。おそわっただろう」
そう言われ、考える風間先生の横顔。綺麗だ。そして向かい合う借金取りの横顔。
顔の大きさ違うなーー(笑)

「おちこぼれの無免許教師だからこそ、学ぶことがあったはずだ」
その言葉を最後に、風間先生は追い出されてしまった。ごめんごめん!とまたびびりながら。

<今日はキヌカ先生とデートですか、風間先生>

事態をキヌカ先生に報告しつつ、飲んでいる風間先生。
南波次郎だなんて二度と言えないくらいボコボコにしてやる!って気持ちで一杯だ。しかしキヌカ先生は、本物でも、偽者でも、その人の口から出た言葉はその人のものだし、あの人の言葉は紛れも無く本物だったと。
「残念ながら、もう南波先生は学校にくることはできないですけど、言葉までリセットする必要ないんじゃないですか」
「僕はキヌカ先生ほど大人じゃないですから」
「え?」
「人をダマして、いい気になって、影で笑ってるようなやつを許せない。いくら素敵な言葉を残したからって許せないんです。僕は絶対許せません」
風間先生は、それなりに必死だったと思うというキヌカ先生の言葉にも耳を傾けないのだった。

<くしゅん、となっちゃう風間先生>

そうやって怒っているはずなのに、風間先生はお弁当を開いても食べる気がしない。ひじきが入っているからだろうか。そして先生たちは、南波先生の悪口で異様に盛り上がっているのだ。
盛り上がりのままに、同意を求められた風間先生は、そんなに悪くいうことはないのかなぁ、と思いまして、と職員室を出ていくのだ。
家に帰ってきても、ほったらかしにされているカーディガンを見て、なんだかせつない気分の風間先生。一度持ち上げたカーディガンを落とし、ソファに座ったところで、風呂上がりの婦警登場。
ちょうど駐車違反の取締りをしていたという婦警にも、南波先生のことをボロカスにいわれ、風間先生は相当怒ってしまうのだ。
「おまえ帰れ。そいつのこと解らねぇクセしやがって、勝手なことぬかしてんじゃねぇよ。おまえ。帰れ。帰れつってんだよ!」

あぁ、夜は一人で寝たくない風間先生なのに!
そして夜の街を車で飛ばす風間先生。

「どこだ。どこにいるんだ、南波先生。名前なんて過去なんてどうでもいい。とにかく、俺の前に姿を現わしてくれ」

風間先生は、思い出していた。ふんころがさせられ、な南波先生。ヤギ・テツヤな南波先生。嫌いかな、な南波先生。ハーレー停めてあんだよ、な南波先生。友達って言葉は相手の欠点10個言えて初めて使え、な南波先生。

「言えるぞ俺は、あんたの欠点。100個でも1000個でも」

<翌朝の風間先生>

結局一人じゃ寝たくないものだから、一晩中探しまくっていたのか、風間先生はとっても眠たそうだ。運転しながら眠たそう。めちゃ危険なので、ブラックブラックガムとか噛むといいのだが、辛いのが苦手なのかもしれない。
やはり流行っているのか、道には、やたらとあの手のカーディガンが多く見うけられる。でも、本人は見つからず、どうしてもスピードの遅れる風間先生の車は、ちんたら走ってんじゃねぇよ!などと怒鳴られたりもするのだ。
せっかくの赤いオープンカーなのに!
ムッ!としたところで、前方不注意になってしまった風間先生。ふらりと道路に出てきた男をひいてしまう!!

<ついに見つかった伝説の当たり屋>

やっべ!と車を降りた風間先生が見たものは、あたたたた!骨が!内臓が!家にかえれば12人の子供が!!と騒いでいる南波先生だった。
このまま車に乗り込み、前進して轢いて、バックして轢いて、前進して轢いて、バックして轢いて、と轢いて、轢いて、ぺっちゃんこにしたいという強暴な気持ちに襲われる風間先生。この番組がトムとジェリーであれば、まちがいなく南波先生はぺらぺらにされていた。
しかしこれは「伝説の教師」なので、南波先生は、風間先生にしかられ、車にひきずりこまれるだけだ。

「どうして俺に一言もなくいなくなったりしたんですか。どういう思いで探したか知ってんのかよ!社会の落伍者、脱落者。ダメ人間」
「そんなに言わんでもええがな」
「何度でもいいますよ。社会の落伍者、ダメ人間、最低男、うそつき男、はげおやじ、ひげおやじ。最低男だな、どうしようもねぇよ、おまえは!やってらんえんぇよこっちはな!」
車に放り込まれた南波先生は、驚いて風間先生を見る。
「どないしたんや、風間ちゃん。・・・まさか、俺と友情してるんちゃうやろな」
「そんなことしたくもねぇな!!」
風間先生は、車を発進させる。教室で待ってる生徒たちがいるのだ。当たり屋なんかやってる場合じゃない。学校にもどらなっくては。
しかし南波先生は、もう自分が南波先生であることを告げようとしていた。もう、風間先生は知っていた。本当は木下次郎であることを・・・。
「本名なんかどうでもいいんだよ。そんなことよりちゃんと責任取れよ」
「責任いわれても」
「あなたは伝説の教師南波次郎として、2年D組の教壇に立った。そして生徒たちと触れ合った。そうだろ。だったら!・・・だったら、最後の別れくらい、きっちり挨拶しろよ。それが人間としての、最低限の礼儀だろ?」
「礼儀いわれても・・・」
「木下になんか用ないんだよ。南波次郎は俺にとっても、生徒にとっても、必要な人間なんだよ!」
「ややこしいこと言うなよ・・・」
おびえたように大人しくなる南波先生に、キツく、風間先生は言う。
「学校いきますよ。力づくでも連れていきますからね、気をつけてくださいよ!!」
ぶいーーーーん!!と赤いスポーツカーが吠え、そして険しい顔も素敵な風間先生だったのだ。

<学校に戻ってきた風間先生たち>

連行される南波先生は、痛いな!離せ!と腕を取り戻す。生徒の前で土下座でもして、涙ポロポロ流せばそれで納得できるんかい!!と悪ぶる南波先生だが、風間先生は冷静だ。ただ、自分の言葉を選んで喋ればいいんですよ、と静かに言う。

そこをキヌカ先生に発見され、南波先生がニセ教師であることが学校側にバレたことが判明。
しょうがないな、と退散しようとする南波先生を、風間先生はあくまでも止める。
「教室に行きますよ」
「そんなこと言われてもな」
「2年D組の担任だろ?最後まで教壇に立つ義務がある。教室に戻って、三日間無断欠勤を謝ってください」
「俺は教師なんかやる気ない」
「ほんとはやりたいんだろ?ほんとは教師、続けたいんだろ?とにかくこれからみんなに最後の挨拶くらいしていけよ。みんな、あんたを待ってるんだから」

<2年D組で>

生徒たちは、南波先生が帰ってきた!ということで急いで席につく。しかし入ってきた先生たちの表情はシリアスだ。

「えーと、これからちょっと。大事な話がある。南波先生のことだ。この話は、南波先生の方から話してもらいたいと思う」
風間先生は言い、南波先生、と声をかけるが南波先生は無言のまま。
「解りました。南波先生から話されないご様子なので、俺から話す。何から話せばいいんだ?混乱するかもしれないけど、話を聞いてくれ。まず。この人は、最低の教師だ」
最初に言い切った風間先生の顔は、とてつもなく綺麗だった。生徒たちも見とれてしまう。え?違う?
「正確に言えば、この人は教師じゃないんだ。そしてもう一つ、この人は、南波次郎じゃない」
生徒たち驚愕!
「こいつの名前は、木下次郎。木下次郎って言うただのおっさんだ。そしてこの学校に潜入してきたニセ教師なんだ」
何だ、何だ。何がどうしたんだ!とざわつく生徒たち。
「よく聞けよ、俺たちはこのおっさんにずっとだまされつづけてきたんだぞ」
そんなことを言われても、え?何が?何がどう?解らない!と騒ぐ生徒たちに、風間先生は言う。
「話してればムカムカしてくるよな。今から思えば、早く気がつけばよかったんだよ。こいつが教師になんかなれるはずなんだよな」
キツいセリフを綺麗な顔で言い続ける風間先生。
「こいつの目的は給料だけだったんだ。金だけだったんだ。自分の借金を返すために金が必要だった。たたそれだけのために教師になりすましたってことだ。そして、突然姿を消した。俺たちになんの謝罪もなくな!」

「その通りですみなさん」
入ってきたのは教頭たち。教頭たちは、南波先生には、教員免許がないなんて、教師じゃないといい、それが、静かな、整いすぎた顔で聞いていた風間先生の激情を駆り立てた。

「なんなんだよ!あんたらのいってる教師ってのは!大学いってりゃ先生ですか教員免許もってりゃ先生ですか!先生ってなんですか!教師ってなんですか!学校ってなんですか!たかが教員免許を持ってないだけで、あなたがたは、こいつのことを教師じゃないっていえるんですか。いえるんですか、教頭!」
どっちの味方なんだ!とおびえる教頭だったが、なおも、資格がない、と言い張る。
再び、風間先生は激情を爆発させた。
「資格!?なんじゃいそりゃ!おまえ!!え!?さっきから黙って聞いてりゃよ!!」
ペーパードライバーと、10年無免許のタクシードライバーの運転どっちが安全か。調理師免許があるからといって、おふくろの味より美味いのか。人生経験のない、ただ免許を持ってるだけの教師と、人生経験のある無免許教師。どっちがいいのか。
「あぁ確かに、だめ人間だよ!でもな、くやしいけどな、こいつらにとって、俺たちにとって心に残るのは、あんたたちじゃねぇ!俺じゃねぇ!南波次郎なんだよ!!」
風間先生は、教壇に体を預ける。
「・・・やっと解りましたよ。こいつが誰だってかまわないんだよ。俺にとっての南波先生は、南波次郎はこいつなんだよ・・・。俺にとっての、理想の教師は、こいつなんだよ・・・。2年D組の担任は、こいつしかいなんだよ・・・」

風間先生がここまで語っているのに、まだ教頭はわからないことを言う。せっかく落とした瞬間湯沸し機の火をまた入れなくてはいけなくなる風間先生!

「おまえさっき俺の話聞いてたか!?じゃ、なんだよ、生徒から見て、あんたは自分は理想の教師だっていえるのかよ。俺たちみたいに肩書きの教師より、こいつの方が、よっぽど教師らしい教師だと思わねぇのか!!」

はぁ・・・!とガス切れする風間先生。
その風間先生の言葉を受け、生徒たちも、辞めなくていいよと言い始める。辞めんなよ先生!という生徒たちの言葉を聞いている風間先生も綺麗だった。
南波先生た担任で、風間先生が副担任で、面白かったじゃない、なんて言う生徒もいる。

「南波先生」
風間先生は促した。
「いい加減、何か話したらどうですか」
ふふ、と微笑むような風間先生だったが、南波先生はそれでも喋ろうとしない。

こんな時こそ、スクールカウンセラー、キヌカ先生の出番。
キヌカ先生は、教頭の意見に賛成し、教員免許は、世間一般に通用する普通の感性を持っている人が、教師にふさわしいとして、教員免許を手にいられられうようになるのは。
「そんなことは・・・。そんなことは、常識です」
と断じた。

「常識ぃ?」
びょんびょ〜んびょんびょ〜〜ん♪
「あんた今常識っていうたか」
「いいました」
「その常識、一体誰がきたんじゃこりゃーー!!!!!」

キヌカ先生、登場11話目にして、ついに、策略がうまくいったという記念すべきシーン。
南波先生はまさしく吠えたのが。

「そんな免許やったら、こっちから願い下げじゃ!おまえらみたいなぼんくら教師が存在するから、おまえら学校がつまらんつまらんって、嘆いてるんやろが!なんで免許が無かったら教師になられへんのじゃ!なんか一つでもええ、学びたい気持ちがあったら、原っぱだろうと、どこだろうと、そこが学校になるんと違うんかい!!逆に何か一つでもええ、与えられるもんがあったら、おじいちゃんやろうが、幼稚園児やろうが教師になれるんちゃうんか!!!こいつら学びたいと思うこと、おまえらがなんも学ばしてやられへんから、学校がどんどんつまらなくなっていくんちゃうんか!!俺に言わしたらなぁ!おまえらのやってることは、教育じゃない!学校の押し売りじゃ!!そんなヤツらがよってたかって、ガタガタ何ぬかしとんじゃ!!!!」

風間先生は、教壇に手をつき、手で顔を支えつつ、微笑みながらそれを見ていた。ニコニコと、楽しそうな笑顔は、とても可愛い・・・!

「このときの彼らは、それぞれの思いにふけっていた。それぞれの持ってる南波先生の思い出に。
それは、借金取りにボクシングのチケットを取られたからといって、生徒たちに殴り合いをさせる考えの浅いおっさんで。
それは、生徒に友達いるのって聞かれたことにキレて、その生徒を監禁しちゃうような人間のちっちゃいおっさんでもあり。
それは、借金取りから逃れたい一心で、屁理屈いって、クラス裁判を長引かせようとする姿で。
いじめがなくならないとかいって、自分からいじめ当番制を提案しておきながら、自分が当番の時は、学校をズル休みするし。
コンドームをつけないセックスのほうが気持ちいいって、コンドームに穴をあけて配っちゃうし。
生徒のカンニングを見逃してやるかわりに、そいつにブルマを盗ませようとするし。
食堂でタダ飯を食うために、そばにゴキブリの死骸を入れ様とするし、人はなんのために生きているのって聞かれたら、こんなことを答えるし」

「笑うためや。笑いながら生きるということが、人間としての証や」

「普段は、ちょっと常識とかいわれと、キレるくせに、相手がヤクザだと大人しくなってしまう。
借金を変えるためなら、と、平気で教師になりすます。
まだまだ言える」

風間先生は・・・。風間先生はとても可愛らしい表情で思っているのだ。

「あんたは基本的に人間ってやつを信じていない。だから将来有望な17歳を前にして、おまえらのほとんどが不幸になるって言ったり、趣味の悪いカーディガン着てるし、髪の毛は台所でさっと洗うだけだし、いびきはうるさいし・・・」

風間先生が走馬灯のように駆け巡る思いでと戯れていた間、南波先生は吠え続け、すっかり疲れてしまっていた。生徒たちは、なおも、辞めないで、とお願いする。ハルカのお母さんは、PTAの会長だかなんかだから、お願いすれば多分大丈夫のはずだ(笑)
しかし、南波先生はうんとは言わなかった。

「ぞれはでけへん。飽きてもた。・・・普通のおっさんが、おまえらに教えることはなんも残ってないねん。先生ごっこはこれでしまいや。色々だまして、・・・ごめんなぁ」
そして、南波先生は静かに2年D組を後にしたのだ。
涙ぐみ生徒たち。
風間先生も、押さえた表情で言う。
「仕方のないことだ。あの人は多分、いや、二度と、この教室に戻ってくることはないだろう。あの人からの教えを絶対に忘れるな。解ったな。これで、南波先生の、最後の授業を、終わりにする」
すっと持ち上げられた手が、ばん!と教卓を叩いた。
綺麗だった・・・!

ところで、理事長は、キヌカ先生に代替わりすることになったのだが、この理事長とキヌカ先生のシーンは、まるで白雪姫と魔女のようで怖かった。
白雪姫、というのは、親子関係の物語だっただろうか?ん?あれ??

<これからどうなる風間先生たち!>

風間先生は廊下でタバコを吸っている南波先生を見つけることができた。
「南波先生らしい、最後の別れでしたね。木下次郎さん」
「やかましわ」
照れる南波先生をからかいながら、風間先生は、
「もう二度と、南波次郎はこの学校に戻ってこないんでしょうね・・・」
とちょっとおセンチな気持ちになった。
「ま、男に二言はないからな」
「最後、涙ぐんでませんでした?」
「泣くかぁ、あほぉ」
へんっ!とタバコを捨て、火をふみ消す南波先生。
「今度、あなたはどうするんですか?」
「なるようになるやろ。それよりおまえはどうするんや」
「ま、僕はあなたがいなくなったことによって、担任に昇格するんじゃないですかね」
うふふ。
楽しそうに風間先生が微笑んだ時だった。

<ヤツがやってきた>

がん!ががん!!!ものすごい音をさて、階段から鼻血をたらしながら下りてくる怪しい男がいた。
南波先生が普通に見えるほどの、ラメいりカーディンガンが目を射る!
風間先生は慌てた。このおっさん、どこから入り込んだんだ!うちは部外者立ち入り禁止だ!!
しかし、部外者ちゃうがな、と言った男は、いきなり南波先生の頭を力いっぱいはたいた!
・・・見ていたのがいけなかったらしい・・・!
南波先生も、何さらしとんじゃおまえこらーー!!とキレる。そしてもみ合う二人だが、この二人のもみ合いは、子供並!
間に入った風間先生まで叩かれながら、どうにか引き離し、一体誰なんだ!!と聞いたところ!

「今日から赴任して来た2年D組の担任やないか!!」

担任!!!!
驚愕する風間先生、南波先生!
「おまえみたいなやつが新しい担任か!」

風間先生も驚いた。そして、ちょっと後ろにいったのか、なんなのか、突然、右足をひっかけられ、すてん!と可愛らしくもお尻から転んでしまったのだ!

<ヤツがホントにやってきた>

「あいって!!いってぇな!また部外者!!!」
階段を上ろうとしている、てめぇ!うちの学校は屋上に海なんざねぇぞ!!という男に、怒鳴る風間先生。
そして、
「あぁ!?」
と不機嫌そうに振り向いた男は。

しまった。十二社学園一の美貌と愛らしさを誇っているのが自分だとしたら、男前度ナンバー1を持っていかれる・・・!
日焼けはしていたが男前だった。
そして不機嫌丸だしな顔。

しかし、雰囲気に飲まれてたまるか!と3人は同時に、なんやおまえ!!!と怒鳴り始める。
「何見てんだよ!」
男は、不機嫌な顔で3人を見下ろし、はっ、として降りてくる。
「誰だよこれ」
男が示しているのは、さっき南波先生が捨てた吸殻。
「誰これ」
当たりを睨みつけんがら、そのタバコを拾い上げる。
「真似すんだろ?ちっちぇえ子がよ!」
3人を叱り飛ばし、一度は階段に向かったにも関わらず、さっと振り向いた男は、
「書いてあんだろ!?」
と柱に貼ってある注意書きをばん!!!と叩いた。
びくぅう!!となる風間先生、南波先生。

その注意書きには、「廊下は静かに」と書いてあり、騒ぐな、と言いたかったようだ。

びくぅぅ!となった風間先生だったが、しかし、睨まれなければそこまで怖くはない。階段を上がっていく背中に向かって、怒鳴った(また叱られるぞ!)!
「あ!おい!!待て!誰なんだおまえ!」
「・・・2年D組の副担任だよ」

ぎゃーーーーーーー!!!!!!!
驚愕のあまり、言葉が出なくなる風間先生。南波先生だけじゃなく、自分まで担任首になるなんてぇーーー!!
「俺は聞いてねぇぞ!副担任なんか!」
ラメカーディガンが言う。
「誰だよあんた」
世にも不機嫌な顔を崩さず若い男が尋ねた。

「2年D組の担任やがな」
ここで、若い男の機嫌は、最低ラインまで落ち込んだ。

「男かよ」
言い捨てて上がろうとする若い男。まてハゲ!!と怒鳴るラメ・カーディガン。

「ハゲてねぇよ!!!」
と機敏に言い返し、そして二人は争いながら二階にと上がってしまったのだ。

<どうする!どうなる!風間先生たち!>

「あぁ、クビ・・・!なんで僕がクビなんですか。教頭先生は、南波次郎を見つけてくればクビにしないって約束・・・」
大人の言葉を信用するだなんて、俺って、俺って・・・!反省しきりの風間先生に南波先生は言った。
「おい風間よ、俺に勉強教えてくれ。俺な、がんばって、教員免許とったろって思ってるねん。だってせやないか、あんなやつらが教師になれるねんぞ。俺の方がよっぽど!」
「あんなヤツが副担なんだぁ!!」
二人は、勢いよく2年D組の突入。
しんみりしていた生徒たちを驚かせる。
南波先生は言った。
「はじめまして。木下次郎です。恥ずかしながら帰ってきました!」
敬礼する南波先生は、俺、もっかい教師やるぞー!!と宣言、風間先生に教えてもらって、教員免許を取る!と生徒たちを笑わせる。
風間先生も副担任クビになったことを報告し、クラスは爆笑の渦。
はしゃぎまわる二人に、今や理事長となったキヌカ先生は、必ず戻ってきてください、とお願いするのだった。風間先生には、南波先生が逃げ出さないように見張りも頼んだ。
お二人と教師をやってすごく楽しかったです。二人が大好きになっちゃいました、なんて言葉を貰い、おほほーーーい!!と教室を走り出る愉快な二人組なのだった。

「そして、僕らの伝説は、終わった」

<エンディング>

「いや−、疲れたな」
「疲れましたか」
「お疲れお疲れ」
「お疲れ様でした」
「正直悩んでるよなぁ。いや、まぁ、もっかいやるって言ったけど、どぉしようかなっと思って」
「やるって言うたら、やってくださいよ。1年たってもいいですし、2年かかってもいいですし」
「この仕事って大変やん。拘束時間長いし」
「あぁ、生徒たちが事件おこしたり」
「早終わるゆーてたクセに、遅なったりするやんか」
「終わる時間は大体決まってますけどね」
「どうなんかな、ゆうのは、思うほど、銭が、やらしいはなし・・・」
「あぁ、まぁ・・・それはあるかもしんないですけども・・・」
「あれやなー。自分、打ち上げどうすんの?」

「え?」

「打ち上げ?お別れ会ってことですか?え?打ち上げって、なんの話してるんですか。なんのつもりで話してるんですか?」
「教師やんか。学校でのはなし」
「教師で打ち上げ・・・」
「ワンクールやってきて」
「ワンクール?それを言うなら、1学期とかじゃないですか?」

「・・・・・・」
「教師ですよね。違う何かの話してます?」
「教師以外、何があるねん。緊張感途切れるわ」
「教師でしょう?」
「そうやで?まぁまぁ、よかったな。ただもう、ズームインサタデーにでなあかんってのはどうなのかなって」
「出たんですか?学校行く前に後ろでわーーって手ぇ振ってやったんですか?」
「番宣や」
「番宣?学校宣伝ですよね?」

「なんかおかしい」
「何?」
「おかしいこと言ってますよ。キャラとかが、次郎じゃないですよ」
「いやいや、次郎よ?」

そして、新宿副都心をどこまでも歩いていく二人なのだった。
しかし、伝説は、今ようやく始まるのだ。ふふふ・・・・・・・・・・(笑)


What's Newへ

SMAPレポートへ

SMAPメニューへ

トップへ