伝説の教師
第3話
<休日の南波先生>
先生は、お休みの日も仕事。一体何急便かと思えば、ブーちゃん急便で荷物を運んでいた。
しかし!55kmなんてスピードで走ってたのに、警察に止められる。なんだとぅ!?免許を見せろだとぅ?そんなもん、こんな見通しのいいまっすぐな道を40kmで走る方が迷惑なんじゃあ!?
「規則ですから」
「規則!?あんた今、規則言うた!?」
あぁ、南波先生は規則という言葉が嫌いなのだ。すぐに規則規則言いやがって、そんなんやから野茂は大リーグに行くし、中田はイタリアへ行ってしまうんだ!やるならやる!やらないならやらない!そういう白黒はっきりさせないという、そういう中途半端な正義が一番の悪だと!南波先生は主張したんだけども、全然聞いていない警官に、あんた絶対聞いてないよね?聞いてないって野茂のくだりから!ときぃーーーーー!!!なってしまう南波先生だった。
<休日の風間先生>
もちろんデートだ。また新しい彼女は、美白な彼女。間違いなくポンズWホワイトを使っている。
「世の中ってグレーなんだよね。何でもかんでも白黒つけたがる傾向ってよくないなぁ」
凶悪な上目遣いで彼女にそんなことを言い、だから、ホントに好きかって聞かれても正直グレーなのだ。
「グレーゾーンの中にこそ、ホントの愛があると思うんだ。解るだろ?」
解らない。
彼女はそう思ったかもしれないが、きらりと輝く瞳で見つめられてまで、解らないと言う度胸はなかった。
じゃあ、行こうかと席を立った風間先生は、しまった、財布が車の中!なーんてことを言い、じゃあ、出しとく、という当たり前の反応を引き出す。「いいなー、その感じ、大人の女って感じ!」
うひゃうひゃとエスコートする風間先生。そう言えば、風間先生は貧乏なのか、ケチなのか、遊びの女には一銭足りとも使わないぜ!主義なのか・・・。
けれど、そんな自分が風間先生は気に入っている。一銭にもならない理屈をこねる南波先生なんて全然意味ないじゃんと思っている。
そして、エレベータに乗り、すっと彼女の肩を抱いた風間先生は、チュ、とキスなんて!キスなんて!!
あぁぁぁ!!!!!今まで風間先生役の中居正広と言えば、どっか腰の引けた、何びびってんねん!というようなキスシーンがほとんどだったなのに!!
あぁ・・・!!大人になったねぇ!なったねぇぇぇ!!!!!いいねぇぇぇぇーーーー!!!
<朝の事件>
えー!!同僚の佐々木先生が電車で痴漢を!!これがもし教育委員会に知られたら学校の存続問題になる。風間先生は、かりかりと首筋を掻いているが、ちょっと傾げた首もいい感じ!
そこに理事長、校長などがやってきて、対応についての指示が出る。大きな手で、小さな顔を支えていた風間先生(グゥ!!)は、問題をグレーゾーンに持ち込む、という理事長から、2Dで審議会をやってもらうと言われたのだった。
当然のことながら、グレーゾーンと言った時の顔も、痴漢された生徒は2Dの生徒だったと聞かされた時のびっくり顔も、またこいつと・・・?と南波先生を見たうんざり顔も、それぞれに素晴らしかった。
<トイレ長いよ・・・>
女の友情はトイレからだが、男の友情もトイレから?
放課後残ってまで審議会をしなくてはいけない。二人はうんざりとしていた。なんでよりにもよってうちのクラスの生徒に手を出すかなぁ、とちゃっちゃとやって早く帰りたい南波先生に、珍しいですね、始めて意見があいました、と風間先生は言うのだ。
「これは、もしかすると・・・!始めて担任と副担任の意見が一致して、今まさに一つになった瞬間なのかもしれないねぇ〜」
「一つにはなってないですね」
「・・・一つにはなってないけども!一つっぽいということは言え・・・」
「言えないです」
「言えないですね!誰がゆーてるのそんなこと!一つっぽくないけど、一つ風、だと言うことは」
「ないですね」
「ないですね!これはないです!ただ、一つタッチだ!ということは、声を大にして叫んでも!」
「届かないでしょうね」
「届かないですね」
「ということで、行きます」
「淡白な締め方やな!おい!」
ほとんどずーっとトイレしっぱなしの風間先生・・・(笑)
<生徒自治制度とは>
審議会は、生徒自治制度で定められた制度だ。生徒の中から無作為で選ばれた12人が陪審員となり、他の生徒は傍聴人。この12人に、今回は、風間、南波、両先生も1票を持ち、14票で有罪・無罪を決めることになる。
学校サイドとしては、この自治制度に目を向けさせ、痴漢問題からをうやむやにしたいところだが、風間先生、南波先生はそんなことは一切知らず、ともかくさっさと終わらせたくてしょうがないのだ。
二色のボールの入ったボックスを使って12人を選ぶのだが、そのボックスはめちゃ熱心に作っていたが。
南波先生なんて、「ドキドキ感がアップするやろ?」と入り口を工夫するほどに(笑)
<審議会スタート>
ホッホッホッホッ!と元気に階段を走り降りる風間先生は、出来上がったボックスを持っており、そして教室の準備もなされ、審議会がスタートした。
この様子は全校に放送されることともなり、モニターの中の風間先生は、かなりカッコよく映っている。
そのカッコいい風間先生は、カッコよく事件のあらましを説明。ともかく、佐々木先生が、生徒のユカリに痴漢をしたということで、ユカリを好きな男子生徒もエキサイト!
この時まで、風間先生、南波先生は、有罪は間違いないとさっさと済ませたい気持ちで一杯だった。担任と副担任の目的が一緒というのはいいものだと思っていたところ、携帯電話がなった。
携帯は切っとけっていっただろー!という風間先生自身の携帯で、先生が授業中に電話していいのー?と生徒から言われ、いいんだよ!大人なんだから!と電話に出たら。
それは南波先生への電話だった。
<南波先生危うし>
もちろん、それは借金取りからの電話だった。学校に金を取りにいくと言われ、これはまずい・・・!
しかも校門で待たれてもホントに困る・・・。
おろおろしているうちにもう一度電話がかかってきて、うわあ!と出ると、それはりえちゃん。
<今日のデート予定>
風間先生は、5時半にりえちゃんと東京ドームで待ち合わせていた。「りえちゃんが東京ドームで5時半、41番出口で待ってるわ、ゆってたよ。今日は上原が先発だから遅れないでね。違うわ、ごめんごめん、14番やったかな」「どっちですか!」
ここで、せっかく一致していた担任と副担任と利害が、はっきりと離反した。
上原が投げる巨人戦。そんなもん、見たいに決まっている風間先生は、さっさと有罪か無罪かを挙手させる。生徒たちが全員上げ、自分も上げ、もう、完全決定間違いなし。風間先生が、ぐずぐずと棄権しても、もう0対13なんだから、問題なし!
<多数決って>
しかし、そこで終わられたらまずい南波先生。審議のやり方に問題がある!と動議を提出する。
そもそも多数決がイヤだ。問題があるんちゃうかな、と。
例えば、1万人が間違えてて、一人が正しかったらどうなるか!でも、風間先生は1万人の判断を認めないのは身勝手で傲慢だといい、生徒たちは帰ろうとする。
「あーーーっ!!ちょとちょと待て!座れ!おまえら!座れ!えーー!!5000人対4999人で、今まさに可決されようとしていた時!たった一人が、やっぱり向こう行くわ、ゆーたら、4999と5000で秘訣させるってことねんぞ!?」
「なんて?」
きょとんとする風間先生。しかし南波先生は、なお言うのだ。
大体、生徒たちは真面目に考えていない。バイトに行きたいだの、ユカリに肩入れするだの、そういう生徒と、一生懸命考えてる生徒との1票の重みが一緒というのは、アホな意見が賢いヤツの考えを抹消してしまうシステムに他ならない!
うんざりした顔でそれを聞いている風間先生は綺麗だった。そしてじゃあ、全員一致ならいいんですか?と代案を出したのだ。
まぁ、もちろん、最後に残った南波先生が有罪をいえば、これで全員一致。なのに、南波先生は今のままではなんとも言われへんと・・・!
かぁーーっ!!!
教室の隅に南波先生を引っ張っていく風間先生。なんせ風間先生は5時半に東京ドームに行かなくてはいけないのだ!しかしすでに間に合いそうにはない・・・。まじぃ〜・・・?
<審議会は続く>
それならなぜ無実なのか、南波先生に語ってもらおう。どうぞ、と言われても、南波先生としても、時間稼ぎだけなので、細かなことまでは考えていない。
ユカリよりもフェロモンむんむんの女性も乗ってたろうに、なぜユカリだったのか。趣味だったのか。好きだったのか?そう言ってるうちに佐々木先生の様子がおかしくなってきた。
む!南波先生のカンが告げている!
「議長!所持品検査を要求します!」
そして抵抗した佐々木先生の定期入れの中から、ユカリの写真が!!!
先生が生徒のことを好きだったなんて!!騒然とする審議会!
なおこの頃、職員室ではうまい具合に話がそれてる!とよろこんでいたのだが、風間先生は、ともかく上原が見たくて見たくてしょうがない。とっとと採決を取ろうとして、あぁぁ・・・と先生たちをがっかりさせてもいた(笑)
この時の採決では、有罪10に、棄権4。だから有罪なんだけども、南波先生はこれでは終わってします!と無罪を主張したのだった。
その上切れかけて、えらいことになってしまった。
「俺に言わせたらおまえらみんな有罪じゃ!!何がソウルメイトじゃぼけ!寒い日に裸で殴り合うな!おまえ、さっき俺のこと呼び捨てしたなぁ!今度緑のカーディガン買ってこい!!なんで引き戸ややいねん!!!」
そう、教室のドアは引き戸ではなく、開き戸。そのドアを開けて、放り出された南波先生だった。
<巨人戦は今>
2階裏が終了。上原は展開が早い。待っててな、怒んないで。んじゃな、はいよー、と風間先生が電話を切ったところで、電話がかかってきた。
それは南波先生への電話で、人の携帯勝手に使うなと文句を言ったのだが。
・・・代わりに死ぬか?といわれちゃあねぇ・・・。
退席してるってゆってと頼まれたって、今来ました、と電話渡すしかできないしねぇ・・・。
もちろん、電話相手の借金取りが死ぬか?というのは冗談ではない。恐ろしい恐ろしい・・・!さらに、じっくり審議会を続けようと言われ、不平そうな風間先生だ。
<衝撃の目撃証言>
生徒の一人が、二人につげにきた。
ユカリと佐々木先生がラブホテルから出てくるということを!
ユカリに尋ねると、その事実は本当だと言い、それは無理やりってこと?と永作博美が聞く。シャレにならないと憤る風間先生。しかもユカリはそんなことを議題にしてもいいと言い出すのだ。
<荒れる審議会>
そんなもん、痴漢されたというだけで大激怒だった橋本は、佐々木先生に殴りかかる。
風間先生は橋本をつまみ出そうとするが、生徒自主制度なんだから、生徒に決めさせたらええがな、と南波先生は止めた。
事態は紛糾する。ユカリは日本史が苦手だったのに、急に成績があがったという事実があり、それは、その見かえりではないのか。
ここでの採決は、傍聴の生徒までが手を上げ、39票の有罪。それに風間先生は、懲戒免職まで含めて1票を入れ、40対1。
「それでも南波先生はこの採決を認めないんですか?無罪を主張するんですか?」
大きな目でじっと見つめながら言う風間先生・・・!
けれど、南波先生は何も言わなかった。これでやっと審議会を終えられる・・・!
<気がついた南波先生>
「なんか納得いかんなー。うーん。なんで一両目やったんやろうな。だってな、うちの学校のもんなら、出口は、一番後ろのはず。なんでわざわざ先頭車両のこんなところ(さらに先頭)に二人はおったんや?・・・あれ?・・・もしかしたら・・・・二人は、あそこで落ち合ってたんとちゃうか?痴漢とかレイプじゃあなくて、和姦やったんちゃうか?」
はぁっ!!!
それじゃあ、ユカリも佐々木先生のこと好きだってこと!?痴漢じゃなくて、いちゃついてたってこと!?
ユカリは違います、というのだが、さっきまで大騒ぎしていた橋本が、「もういいよ、ホントのこと話せよ」と言い出したのだ。
・・・・・・・・・・え?
このあたり、話が解らなくなっている。ユカリと橋本はどういう話になっていたのか・・・。謎だ・・・(笑)。
ともかく橋本は、ユカリのかばんから日本史の教科書を出してくれと言い、風間先生はそれを見て、その書き込みの多さに目を剥いた。
「勉強したんだよ、こいつ。佐々木先生のこと好きで、いい成績とろうとして勉強したんだ。そうだよね、ユカリ」「・・・橋本くんの言う通りです。私、佐々木先生を好きでした。だって好きだんだもん。もうウソなんてつけないよ」
あぁ、なんということ!
そして先生も、私たちは愛し合っております、と。
しかし、女生徒たちは引いた。先生に自分が女として見られてると思ったら安心して学校なんかこれないと。
でも、佐々木先生は真剣だった。先週離婚までして、ユカリと結婚するつもりだった。
えーー!なんてことーー!!!
さらに生徒が引く。奥さんがいるのに自分は高校生と浮気して、そっちがいいから別れてくれだなんて、なんてことをーー!!
でも、佐々木先生は、ユカリにさえ解ってもらえればそれでいい・・・!
そう思っていたのだが。
ユカリは、そんな急に!と拒否するのだった。結婚なんて言われても困る。年相応の人見つけて、普通に結婚したい。両親とか、友達とか、祝福されて結婚したいと。
生徒たちも、すっかりバカバカしくなってきた。そんなバランスの悪い恋愛なんて、どーだっていいじゃん。
そんなわるーーい空気の中、永作博美はユカリに言った。
「ユカリちゃん、それ本気なの?自分を悪者にして佐々木先生をかばおうとしてるだけじゃないの?」
先生を好きになったっていいじゃない。そりゃあそうだ。でも、先生を尊敬すればそれが愛情に変わったって当然のことよ、というのはどうかと思う。
でもともかく、ユカリは、もっと自分に素直になっていいのよ、と説得され、ホントに佐々木先生のことが好きだと言うのだった。
それを受け、佐々木先生。
「ホントに申し訳ありません!教師たるものが、聖職者たるものが著しく道を踏み外し、生徒を愛してしまい、皆さんには大変ご迷惑をおかけしましたことを!」
と謝る。
それを聞いていた風間先生は、教卓に持たれ、段さに足をかけていて、そのポーズがいい感じだった。
だったが!
南波先生は、キレた。
「教師たるものゆーた!?聖職者たるものゆーた!?勘違いすんな!何カッコつけてんじゃ!教師もエロ本も見るし、ヘルスにも行く!ムラムラもする!おまえの生殖器はどうなっとんじゃ!!ぴっちり横分け黒ぶち眼鏡か!!見たるわ!!」
佐々木先生に襲い掛かる南波先生を止める風間先生も思わず笑ってしまっていた。おかしくてしょうがないようで、カーディガンの腕を引っ張って、びよーーーーーん!!
ぴよぉーーーーーん!!!!!ってなって(笑)!!そののびっぷりは、ものすごいものがあった。
「なんで引き戸ちゃうねん!!!」
と騒ぐ南波先生を外に放り出し、もうこらえられない笑顔の風間先生。可愛い笑顔の風間先生。
生徒たちも無罪を採択し、それを聞いて笑う顔がまた可愛い。先生も、無罪、かな?という笑顔がこれまた可愛い。
これで、全員無罪で、めでたしめでたしとなったところ。
「有罪!!」
と帰ってきた南波先生。
な!なんだとぉーー!!!!!!!
いや、まだ時間が・・・・・・・。しかし強引に審議会は終わり、二人は理事長および教育委員会の人から呼び出しを食らった。
<理事長室で>
悪いのは議長のこいつです!と風間先生に罪を押しつける南波先生。しかし教育委員会の先生(多分元刑事。目の見えない娘がいる)は、素晴らしい。と絶賛。拍手までされて、よかったよかった、というところだ。が。
<その後の風間先生>
黒板に書いてあった状況説明図を消しながらリエに電話をすると、もう九回裏ツーアウト。でも、食事くらいは!待っててよ!って言ったのだが、他にいい男がいたらしく。「おい!ふざけろよ!行くから!(ぶつっ)かー・・・・マジかよぉ、もぉ〜・・・」
<その後の南波先生>
そりゃもう、校門には借金取りが待っているに決まっている。
スピード違反の罰金に使いたいなーと思っていたものも取り上げられたのだ。だって、警察は命まで取らないしな(笑)
「この関係だけはグレーゾーンに持ちこみたいなぁ〜!!」