南極大陸〜神の領域に挑んだもっちーとひむろっくの物語〜

第5話

心配していたひむろっく

ひむろっく「星野さん!倉持から連絡あったんですか」
ざくざくざくざくっ!と足音荒くやってくるひむろっく。
星野リーダー城島「それで今迎えに行こうとしていたとこです」
いらいらしているひむろっくを見て、微笑む星野リーダー&内海・
しかし、迎えに行こうにも、雪上車が寒さで、バッテリーもオイルも完全にいかれてしまってます。
でも大丈夫。
もっちーたちは自力で戻ってきました。
星野リーダー城島「長の旅お疲れ様でした」
もっちー「なんとか無事かえってきました。あでも」
嵐山「ちょっと凍傷になっちゃって」
犬塚「谷先生、シロコを見てやって下さい」
凍傷だの、体調不良だの、谷先生大変です。
そして、わーわーやってるもっちーたちを、ひむろっくは見ている。
しかし今日は見てるだけでは収まらず、さくさくさくさく!とやってきて。
ひむろっく「昨日帰ってくるはずじゃなかったのか」
もっちー「あぁ、珍しい鉱物見つけてさ、採取してたらつい遅くなっちゃって」
ひむろっく「天候が荒れただけでここじゃ命取りだ。計画にないことはするな」
もっちー「悪かった」
内海「倉持、実は氷室が一番心配してんだよ」
え、と、ひむろっくを見るもっちー。
もっちー「気をつけろ」
つんっ!
と、去っていくひむろっく。か、可愛いっ!

誘われるひむろっく

正体不明の氷山を発見していたもっちーですが、渡っては見ませんでした。
その話を聞いているひむろっくの手を組んでる様子とかがすーてーきー。
もっちー「迷ったんですが、今回の目的はボツヌーテンまで雪上車で行ける安全な経路を探すことだったので」
星野リーダー城島「そら残念でしたなー」
ひむろっくは見ている。
そこにシロコおめでたのニュースもやってきて、盛り上がる一同。
谷「南極ベイビーです」
もっちー「だったら、シロコは留守番にするか」
犬塚「はい」
内海「留守番って何だよ」
もっちー「すぐにでもボツヌーテンに行こうと思ってまして」
そしてひむろっくを見る。
ダリ鮫島「あ、大将。実は雪上車がいかれてしまって、時間かけてエンジンごと直さねぇとダメなんだよ」
ひむろっく「倉持。ボツヌーテンは諦めろ。雪上車が出せないんだ。諦めるしかないだろ」
もっちー「…星野さん」
星野リーダー城島「はい」
もっちー「犬ぞりだけで行かせてもらえませんか」
星野リーダー城島「犬ぞりだけですか」
ひむろっく「倉持、ボツヌーテンまで200kmだぞ、しかもブリザードが多発する危険な時期だ。監査役として認める訳にはいかない」
星野リーダー城島「安全のために倉持はんは何カ月も調査して来たわけですしここは任せて」
ひむろっく「まさか星野さんまで行くなんて言わないでしょうね?」
星野リーダー城島「犬ぞりだけで行くとなると、荷物を入れて、せいぜい、3人が限界です。倉持はんと犬塚はんは犬ぞりから離す訳にはいきませんから」
嵐山「後俺っすか!」
でも、凍傷で手がやられてますんで、ピッケル握るのは無理。
内海「代わりに俺が行く」
もっちー「内海先輩」
内海「冬山なら任せとけって。それにボツヌーゲンに登ったら人類史上初の快挙だろ?いい記事になるもんな」
もっちー「あの…」
星野リーダー城島「(あせっ)倉持はんは、冬山を経験してるだけでは足りないと思ってはるんですよ」
内海「えっ?」
もっちー「いやあのー、ブリザードのこととかもありますし、慎重に天気を、注意していかないといけないなーっと思ってるんですけど…」
と、向かいに座るひむろっくを見るもっちー。
ん?と気づくひむろっく。
ひむろっく「…」
もっちー「氷室。一緒に行ってくれないか」
ひむろっく「…」
もっちー「一緒に、ボツヌーテンに登ってくれ」
ひむろっく「…断る。星野さん。この時期にボツヌーテンの調査をするのは危険です、僕は反対です」
去るひむろっく。
ダリ鮫島「じゃ雪上車修理してくるか」

電文受け取るひむろっく

星野リーダー城島「外務省からですか。いつもいつもご苦労様です」
ひむろっく「第二次観測隊が結成されたそうです」
星野リーダー城島「ほー。では、いよいよ後、6か月ですなぁ。私ら越冬隊は、第二次観測隊のために、何をなすべきなんでしょうね、氷室はん」
ひむろっく「犬ぞりでボツヌーテンは自殺行為だと思います」
星野リーダー城島「倉持はんが言うてました。自分と同じようにしらせ探検隊の血を引いたタロやジロやクマとボツヌーテンに行けたら、それはまさに運命やと。私も隊長の立場で無理にいかせてやってくれとは言えません。ただ、氷室はんもなんかしら運命みたいなものを感じたから残ったんやありませんか?」

犬と向かい合うひむろっく

犬と触れ合うでなく、ただ、前にしゃがんでいるひむろっく。前にいるのはタロジロか。
足音に、はっっと立ち上るとやってくるのはもっちーに決まってる。
もっちー「何やってんだよこんなとこで」
ひむろっく「…」
もっちー「さっきはいきなり誘ったりして悪かった。…あれ以来、山には一度も登ってないんだってな」
ひむろっく「それは関係ない」
もっちー「登らなくていいから、一緒に行ってくれ」
ひむろっく「倉持。やはり犬ぞりだけで行くのは不可能だと思うんだ。安全を考えれば…」
もっちー「だからおまえが必要なんだ!ボツヌーテンの登頂に成功できれば世界中が日本を見直すんだ。あの山の向こうに、俺は日本の未来があると思ってる。だから力を貸してほしい。こんな機会二度とないかもしれないんだぞ氷室!」
腕をつかむもっちー。ぎゅっと目を閉じてるひむろっく。
ていっ!と腕を離したもっちーですが、ひむろっくは事故のことを思い出してます。
ひむろっく「倉持!俺を置いていけ!」
内海「なに言ってんだ!」
もっちー「後少しだ、諦めるな!」
落石の4点セット。
あぁ、目に涙が…。
ひむろっく「南極に運命を感じたのはおまえだけじゃない。おまえだけじゃないよ。倉持」
もっちー「…」
ひむろっく「付き合ってやるよ。ただし、昔の登山仲間としてじゃない。監査役としてだ。おまえがまた判断を間違わないためにな」
肩ぽん。
もっちー「ありがとう」
ぽんぽんして、犬のところに行くもっちー。
もっちー「いくぞボツヌーテン。ん?」
行くのね、行ってしまうのね…!
夜の向うにボツヌーテンをそれぞれに見ている二人。
その頃、美雪のところには越冬隊員の写真が届いておりました。

ボツヌーテンに向かうもっちーとひむろっく。あ、犬塚もいた

内海「氷室に何か言ったんですか?」
星野リーダー城島「何も言うてません。氷室はんは安全のために行ってっくれて」
内海「けど氷室は、事故で仲間は」
星野リーダー城島「ボツヌーテンは一人で登るみたいですよ」
内海「え?」
そんな、ひむろっくのツンっぷりにによによしていた二人が話しておりますなか、美しい風景を犬ぞりは進んでおりました。
犬塚「大体40kmくらい過ぎましたね」
もっちー「今日中にもうちょっと稼ぐか」
ひむろっく「いや、今日はここまでにしよう」
もっちー「は?」
ひむろっく「気圧が下がってる。吹雪になるかもしれないな」
もっちー「だったら後5kmくら行った所に岩場があるからそこで休もう」
ひむろっく「犬の足じゃ巻き込まれるのがおちだ」
もっちー「融通が効かないのは昔のまんまだな」
ひむろっく「悪いが犬に命を預けるつもりはないんだよ」
もっちー「おまえには解らないかもしれないけど、今日は犬の調子がいいんだよ」
犬塚「倉持さん、アカが!」
もっちー「どうした」
あぁ、血が!
もっちー「しもやけができたか」
ひむろっく「答えは出たようだな」
もっちー「アカが怪我したからここで休む」
ふーんってひむろっく。
愉快なやりとりだわ〜。
その場にテントを立てて、あれこれ作業中のもっちーたち。
もっちー「大丈夫か?」
犬塚(←しゅるん、とテントに入ってくる様が愉快)「アカに靴下はかせてるんですか」
もっちー「これで少しは楽になるだろ。なぁアカ」
犬塚「倉持さん。氷室さんて、何で一緒に行く気になったんですかね」
ここまでの40qで、もう疲れたんでしょうね、犬塚もね(笑)
もっちー「探してるからだよ」
犬塚「何をですか?」
もっちー「…」
ひむろっくは外で気圧計を見ている。
わーー綺麗な空!
もっちー「氷室。そろそろ飯にしよう」
ひむろっく「ブリザードが来るぞ」
はい。ブリザード来ました

基地と通信するもっちー

現在は、カイル島?の手前、8kmの地点。予定の経路を少しはずれた模様。
内海「経路を外れた?」
そこで電波が乱れて通じなくなってしまって、がーーーーって。
星野リーダー城島「予定より、3日ほど遅れてますね」
内海「3日ですか」
なんということでしょう。これまでボツヌーテンと思ってましたが、ボツンヌーテンでしたよ…!

犬ぞりを押すもっちーとひむろっく

引っ張るのは犬塚。前方に何やら黒いものが見えて停止。ひむろっくぜいぜい。
もっちー「なんだこれ。まさか小屋じゃないよな」
犬塚「こんな所にですか?」
もっちー「まさか…」
入って見ると。
もっちー「やっぱりくじらの残骸だ」
犬塚「すげー」
もっちー「ちょっと前まで、ここは海だったんだ」
ピノキオ気分の3人ですが(←そうか?)外では犬がきゃんきゃん。
ロープが絡まって、犬がくるーん、回転してますよ!?犬がくるーん(笑)!
犬塚「解いてやるから待ってろ」
って、解いたら。
犬塚「テツ!」
もっちー「テツ!」
もうこんな生活やだーーー!と突如走り出すテツ。
おいかける二人。テツ止まれ!止まれ!といっても止まることなく、一目散にかけていくテツの姿はあっという間に見えなくなっていくのだった。
どこにいきたいんだ、テツ!

くじらのおなかの中のもっちーとひむろっく

ひむろっくはくじらの背中を見ている。
もっちー「犬塚、荷物で塞げ」
犬塚「はい」
ひむろっく「犬はどうした。見失ったのか」
もっちー「このブリザードが治まってから探す」
ひむろっく「いや、ブリザードが治まり次第、すぐ出発した方がいい」
もっちー「おまえ、テツどうするんだよ」
ひむろっく「もうすでに3日も遅れてるんだぞ、この状況だとブリザードはすぐまたやってくる。おまえだって解ってんだろ」
犬塚「何行ってるんですか、犬だって仲間でしょう」
ひむろっく「犬よりも人の命の方が大事じゃないのか。倉持、判断を誤るな」
前髪!あぁ、そのもっちーの前髪好き!
もっちー「…前へ進もう」
犬塚「倉持さん!」
もっちー「犬は、帰巣本能があるからテツはまた必ずここに戻ってくる」
犬塚「でも」
もっちー「大丈夫だよ。あいつの餌をここに置いておけば、俺たちがここに戻ってきた時に、ばくばく食ってると思うから。人間なんかよりもずっと犬の方が方向感覚も、生きのびる力も強いから。大丈夫だよ」
ひむろっく「お前、本気で犬が戻ってくると思ってるのか」
もっちー「当たり前だろ」

なお進むもっちーとひむろっく

ひっぱる犬塚、押すもっちー&ひむろっくという布陣のまま雪原を行く犬ぞり隊。
その頃、基地では犬ぞり隊と連絡取れない!と大騒ぎ。
内海「そろそろボツンヌーテンについてるはずですよね(注:ここよりボツンヌーテンに変更させていただきますが、これ以前のものを修正するつもりは毛頭ございません♪)」
星野リーダー城島「予定だとそうですねー」
内海「あいつら犬ぞりで行くために、ぎりぎりの食糧しかもってってないんだよ。どこにいるんだよ!」
10月24日、連絡が途絶えております。
それにしても、うわーー、これまた綺麗な風景だ!
もっちー「犬塚!」
方位磁石をチェックするもっちー。
もっちー「ちくしょ」
ひむろっく「どうした」
もっちー「え?ちょっと」
ひむろっく「ちょっとなんだ」
ひむろっくが見に行こうかと思ったら、先頭にいる犬塚に異変が。
もっちー「どうした?」
犬塚「手が」
もっちー「見せてみろ」
ひむろっく「凍傷か」
そろそろ手よりも、心に凍傷を負いそうな犬塚です(笑)
テントを設置して治療などもしたのでしょう。犬にも靴下をはかしてあげるほどのもっちーですが、犬塚にはそれほどでもなさそうな(笑)
犬塚「またブリザードですね」
ひむろっく「この時期はしょうがない。まだ痛むか」
犬塚「我慢できます。でも、まだなんですかね、ボツンヌーテンは。倉持さん」
もっちー「あ?うん」
ひむろっく「やはり方角が違うのか」
もっちー「これ、見てくれ」
しゃきっ!と近づくひむろっく。
もっちー「ほんとだったら現時点から真南にボツヌーテンがあるはずなんだが、ちょっと前からコンパスの針が2・30度偏ってる」
ひむろっく「経路はどうだ。間違ってるのか」
もっちー「いや解らない。ひょっとしたら、このあたりに磁気帯の鉱物が埋もれてて、それで針が振れてるのかもしれない」
ひむろっく「(うーん、と腕を組んで)しょうがない。ボツンヌーテンは諦めよう」
もっちー「まだ道間違えたってわけじゃないだろ」
ひむろっく「間違えたかかどうかも解らないんだ。このまま彷徨ってれば食料が尽きて、俺たち全員生きて帰れなくなるぞ」
犬塚「そんな…」
もっちー「はー…」
とん、と方位磁石を地図の上に置くと、くるくるーーーっと回ると。

谷岡ヤスジの朝ーー!みたいな朝のもっちーとひむろっく。

寝袋で3人転がって寝ていたら、犬たちが犬騒ぎ。
もっちー「おーい!なんだよ朝から…。まだメシの時間じゃないだろ」
と、まぶしっ!という風景が。まぶしっ!
もっちー「氷室!犬塚!」
犬塚「…何ですか」
よれよれ犬塚が出てきて、ひむろっくも出てくると。
目の前にボツンヌーテン。
上には雪ないのね!
もっちー「やっと会えたな、ボツンヌーテン…」
犬塚「間違えてなかったんだ…。昨日は暗くて解らなかったけどすぐそばまで来てたんですね、俺たち」
お父さんの写真にボツンヌーテンを見せるもっちー。
犬「きゅーん」
もっちー「タロジロクマ。あれがボツンヌーテンだ。来ちゃったぞ、ほんとに来ちゃったぞ」
ひむろっくは見ている。
そして、テントの中に。
もっちー「どうした氷室」
ひむろっく「お前も手伝え。登る」
もっちー「登る?」
ひむろっく「一人じゃ無理だ、俺も登る」
わあ、と、笑顔の犬塚。だって、ひむろっくが一緒に山に登ってくれたら、二人っきりにならなくていいものね(笑)
ひむろっく「早くしろ。天気が荒れたら大変だ」
もっちーも笑顔。

ボツンヌーテンに登るもっちーとひむろっく

犬塚から、昭和基地に連絡。
すでに二人は登り始めてます。
氷室も登っているということでウキる内海。
テツの行方不明も、俺たちが探してやるからな!と天気がいいのもあいまって、あー、よかったーーな空気に。
そんな綺麗な青空の下、ボツンヌーテンに登っている二人。
あーー、素敵だわーー。
風景綺麗だわーーーーー!!
手を出すもっちー。
つかむひむろっく。
ファイト一発。
そうして、頂上へ。
もっちー「すげえ」
ひむろっくをがし!っとするもっちー。しばらくじっとしてたけども、腕をつかんで引き離す。
ひむろっく「何すんだ」
もっちー「いいじゃねぇかよ、うるせぇな。おまえも笑えよ。すごいだろこれ」

うんってうなずくけ笑わないひむろっく。ひむろっくはめったに笑いません。
もっちー「すごいじゃねぇかよ!」
いやー、綺麗ですわー。
もっちー「ありがとうな。一緒に来てくれて」
ひむろっく、泣きそう!そんなひむろっくを肩組むもっちー。
あぁ、ちょっと涙が…。
ボツンヌーテン初登頂のプレートを残していくもっちー。日付のところは事前に作れませんので、27は、その場が彫りました風ですね。
そのプレートの下に、お父さんの写真を置き、手を合わせるもっちー。
ひむろっくは遠くを見つつ、俺は…、と言いかけたところで喜びの人々に。
昭和基地でも、日本でも、いやーやったなーーとなってたんですけども。

しかしそのころもっちーたちは

ブリザードの中、犬ぞりを引っ張り、押しているもっちーたち。
もっちー「氷室、もう一度あのくじらのとこまで行くぞ。ひょっとしたらテツが戻ってるかもしれない」
ひむろっく「おまえまだそんなこと」
と、ゆっていたら、足元がおかしくなって。
もっちー「氷室。おい!」
なんと、そりごと滑落!そりごと犬ごとなんもかんも滑落。
もっちー「犬塚!大丈夫か!」
犬塚「はい!」
もっちー「氷室!」
ひむろっく「あ…」
もっちー「どうした」
アイコンタクトのもっちーとひむろっく。あぁ、これは、と解ったのです。

捜されるもっちーとひむろっく。

連絡が途絶えて3日。雪上車は直ったので今すぐにでも助けにいけます。
いそげーって内海ですが。
星野リーダー城島「内海はん、もし遭難したとすれば、まず、場所を絞りこまなあきまへん。捜索はそれからです」
内海「くそー!」
捜されてるもっちーらは、くじらの残骸の中に。
いったー…ってひむろっく。
もっちー「骨折してる。我慢しろ」
犬塚「戻ってこなかったですね、テツ」
餌はそのまんま凍ってます。
もっちー「犬塚。食糧って、後どれくらいある?」
犬塚「これで最後です」
しょぼっ!
もっちー「そうか」
犬塚「あの、倉持さん」
もっちー「大丈夫だ。今頃、雪上車が直って、俺たちのこと迎えに来てくれてるかもしれないだろ」
犬塚「でも、ここって予定の経路外れてるじゃないですか。最悪、僕たち…」
もっちー「落ち着けって」
ひむろっく「倉持。俺を置いて二人で先に行け」
もっちー「あぁ?」
ひむろっく「予定の経路に戻りさえすれば、後は雪上車が見つけてくれる」
もっちー「何言ってるんだ」
ひむろっく「俺を犬ぞりに乗せて運んでいけるのか。犬塚は凍傷で手は使えない。この状況の中で3人で犬ぞりを扱うことは不可能なんだよ」
もっちー「他に方法あるはずだ。少し黙ってろ」
ひむろっく「俺は、もういい。本当なら、とっくの昔に死んでたんだ。倉持。今度こそ判断を誤るな」
もっちー「…犬塚。飯にしよう」
ひむろっく「俺の言うこと聞けよ!」
もっちー「何勝手に諦めてんだ!あぁ!?死んでただ?おまえそれ死んだあいつに言えんのか!必ず、助かる方法は絶対にある!今はそれを考えればいい」
その空気を破らねばと外で犬がワンワン。
犬塚「どうしたんだよ」
そそくさと見に行く犬塚(笑)
っもうこんな生活やだーー!と逃げてたテツが、腹へったーー!と戻ってきました。
犬塚「倉持さん、テツです!テツが帰って来ました!」
出て行くもっちー。
テツ「きゅんきゅん」
犬塚「どこ行ってたんだよ、テツ」
もっちー「何だおまえどこ行ってた、お前」
いやー、もうやだったんです、こんな生活。
もっちー「…おい。これだ」
ここでもっちー思いつきました。
犬塚「犬を離す?」
もっちー「上手く行けば基地にたどり着けるかもしれない。身軽な犬だけだったら時間もかからないはずだ」
ひむろっく「俺を置いておいけばいいだけの話だろ。おまえ本気でこの犬たちに命預けるつもりか!」
もっちー「こいつらはただの犬じゃない。俺たちの仲間だ」
ひむろっく「倉持!」
倉持「よし行くぞ。タロジロこい」
ひむろっく「なんでいつもおまえはそうなんだ!」
そのひむろっくは置いて、外に出るもっちーと犬塚。
もっちー「リキ。タロ。ジロ。いいか?基地に戻るんだぞ?仲間が待ってる。いいなリキ!ジロタロ、頼んだぞ。よしいけ!」
ダッシュ!するリキタロジロ。
その頃、昭和基地でも、遭難ポイントを絞り込んで雪上車スタート。
ダリ鮫島「内海ー!行くぞ」
内海「あーーーっし!」
こけつまろびつのタロジロ!無事に犬と雪上車は会えるのか!

最後の晩餐、もっちーとひむろっく。

犬塚「これでおしまいです」
かっかっとクリームシチューをちょっとずつ分けて最後の晩餐。
もっちー「でも犬の餌はまだまだあるんだろ。じゃ悪いけど、これ食ったらやっといてくれ」
犬塚「はい」
もっちー「よし食べよ」
いやん…、残る…とそっぽむくひむろっくの手に器を持たせるもっちー。
もっちー「手ぇ焼かせんなよ。じゃ、いただきます」
でも、食べないひむろっく。
もっちー「言っとくけど、これ美雪ちゃんの好物だからな。食わねぇと日本に帰ってから怒られるぞ」
もう耐えられない!と、最後の晩餐でも、ががっと食べて、
犬塚「餌あげてきます」
と逃げる犬塚。つらいな。おまえ、何も悪くないのにな(笑)
ひむろっく「おまえ美雪ちゃんとはどうなってるんだよ」
もっちー「どうもなってない」
ひむろっく「あの時と同じだな」
もっちー「食えよ」
思い出の4点セットに前後がつきました。
ひむろっくは足をやられており、俺をおいてけ!の後には、
もっちー「おまえを置いてくんだったら俺も残る!あと少しだ。諦めるな!」
が追加。
ひむろっく「全く同じだよ、あの時も俺が」
もっちー「おまえのせいだなんて誰も言ってないだろ。あの時だって、責任は隊長やってた俺にあったんだから」
ひむろっく「おまえはいつでもそうだ」
もっちー「いつもなんだよ」
ひむろっく「あの後な、時間が止まったような気がしたんだよ。だから山をやめた。俺なりの供養だと思って。だけど、ダメだった。やっぱり止まったままなんだよ、時間が」
もっちー「俺もおまえのことは気にしてたんだ」
ひむろっく「お前の顔なんか二度と見たくなかったよ。だからまったく別の道に進んだんだ」
もっちー「官僚になって…」
ひむろっく「ほんとに会いたくなかったんだ、おまえに。なのにまたのこのこと俺の前に現れやがって。最初はおまえが言ってる南極観測なんて夢みたいな話が実現する訳はないと思ってた。だけど、俺も、子供たちが募金を始めて、国が動く、その瞬間を目の当たりにした。結局、おまえの夢につきあって俺まで南極に来ちゃってる」
もっちー「そういえば、おまえの前に言ってた、運命なんたらかんたらってあれなんだよ」
ひむろっく「…」
かつかつと、シチューをかき集めるひむろっく。
もっちー「言いたくないなら別にいいけど」
ひむろっく「倉持。頂上のさ、南極の景色、すごかったな」
もっちー「あぁ」
ひむろっく「あぁ生きてるんだって、そう思ったよ」
もっちー「…今生きてなかったら、俺は誰と喋ってんだよ。勝手に死に場所探すなバカ」
ちょっと微笑んだひむろっくですが、犬塚がもどってくるので真顔に。。
ひむろっく「倉持。お前本気で戻ってくると思ってるのか」
もっちー「ああ」
ひむろっく「おまえが言う帰巣本能は、こんなブリザードの中じゃ無理だ」
もっちー「絶対に戻ってくる」
ひむろっくを見て笑うもっちー」
もっちー「信じようぜ」
ひむろっく「強いな、おまえは」
もっちー「強くなんかない。…強くなんかない」

雪山遭難あるあるのもっちーとひむろっく

美雪は、もっちーからの手紙を読んで涙しておりますが、その間、遭難3人組も大変です。
もっちー、手が痛いですが、先にぐったりしている二人の上に上着をかけてあげる。
ひむろっく「倉持、おまえは…」
もっちー「俺は大丈夫だ」
一番弱っているのは犬塚で(気づかれでしょうね…)、ぐったりを目を閉じる。
ひむろっく「犬塚寝るな…、寝るな!」
犬塚「はい…」
もっちー「氷室」
そうゆってたけど、ひむろっくも目を閉じる。
もっちー「おい、氷室…!」
目、開ける。
ひむろっく「大丈夫だ」
手ぽん、としたけども。
もっちー「犬塚。氷室」
もっちー体起こして、
もっちー「南極憲法で決めたろ、誰も死なないって。あいつらが、必ず
来るから…」
と言いつつ、二人の上に、ごろーーんとなるもっちー。
もっちーたちの明日はどっちだ!


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