南極大陸〜神の領域に挑んだもっちーとひむろっくの物語〜

第7話

お願いするもっちーとひむろっく

もっちー「先生、セスナ飛ばして下さい。先生お願いします。基地にまだあいつらが残ってるんです。このままだったら置き去りなるかもしれないじゃないですか」
岩城「この状況じゃセスナは飛ばせられない。宗谷はスクリューが壊れていて前に進めない。もう八方ふさがりで、氷のない安全な場所に避難するしかにないんですよ。宗谷は100人以上の命を乗せてるんです」
星野リーダー城島「(あせあせっ)これあの、どのへんまで行けば安全なんですやろ」
船長「海岸線は厚い氷に埋め尽くされていますが、大陸から100kmほど行けば」
もっちー「100km」
ひむろっく「となると第二次観測隊も上陸できないかもしれなませんね」
岩城「これしか道はないんだ。宗谷にはこれしか道はない」
ひむろっく「先に人を基地に送り込んでおくべきではなかったでしょうか」
岩城「今更言ってもしかたないだろう。政府の方針だったんだ」
きっ!
なんですって!と睨むひむろっく。
白崎「バートンアイランド号と直接話して来ます。最悪のことを想定して犬たちを一旦避難させる時間をもらえないか、交渉してきます」
岩城「そんなことして」
白崎「私の判断です」
もっちー「先生」
白崎「岩城さん、宗谷の残りの燃料はどれくらいあるか調べておいて下さい」
岩城「白崎さん」
出ていく白崎先生。その先生のところには内海たちが。
バートンアイランド号が離れるため、最悪、犬が南極に取り残されるかもしれないんです。
えええ…!一同驚愕。
星野リーダー城島「そうするしかなかったんですよ。この氷の読めへん状況ではそうせざるをえんかったんです。宗谷はスクリューも壊れて自力で脱出できへんそうですわ」
白崎「ただ、犬たちを置き去りにしてしまう可能性が。こうなった責任はすべて私にあります」
星野リーダー城島「白崎はん」
白崎「でも、最後まで希望は捨てません。なんとしても犬たちを救わなくては」

犬舎のもっちー

犬塚「ちゃんと食べてますかね、あいつら。最悪あいつらを…」
もっちー「先生を待とう」
思いつめがすぎるもっちー。
内海とも犬の写真を見てお話を。
内海「タロとジロってさ、カメラむけると絶対に一緒に映りに来たよな」
子犬がうろうろしている犬舎。はふーん。
もっちー「大丈夫ですよね」
内海「あぁ」

ひむろっくはあれこれ状況確認中

燃料計算してる人々を、ひむろっくは見ている。
もっちー「氷室、先生は」
ひむろっく「いやまだ」
もっちー「そっか」
ダリ鮫島「大将、犬の食糧ってどうなってるんです」
もっちー「念の為1週間分置いて来ました」
ダリ「1週間分。1週間分だって…」
厨房の山里も心配。そこにうどん大盛り!の声。
よくこんな時に食べられますね!犬とうどん関係ねーだろ!関係ねーってなんだよー!うりゃー!投げられる椅子!揉める人たち!
もっちー「鮫島さん!」
止めるもっちー、入ってくる星野リーダー城島、白崎先生。
星野「何をしてはるんですか」
もっちー「先生」
そして先生が言うには。
内海「ここを離れる」
白崎「バートンアイランド号もこの氷で体力を消耗している。この宗谷は、スクリューの一部が破損していて、氷のなかではバートンアイランド号についていくのがやっとです」
ひむろっく「残された犬たちはどうなるんです」
白崎「越冬計画も犬たちも、諦めた訳では決してありません。一旦この氷を脱出して、外洋に出てから空輸で必要物資と第二次隊を送り込む作戦で行こうと思います。規模はかなり縮小されますが」
もっちー「最悪、越冬隊も送り込めないってこともありえるんですよね」
白崎「今は、この作戦にかけるしかない。外洋に出てからが我々の勝負です」
内海「何日くらいかかるんですか」
白崎「2・3日で」
ひむろっく「燃料は大丈夫ですね?」
岩城「後1週間は大丈夫だと思います」
白崎「ではこれより宗谷はバートンアイランド号の先導で外洋に向かいます。第2次隊も、犬たちも、絶対に諦めません。以上」

食堂に残る、第一次越冬隊の人々。

横峰「やっぱり、あそこには戻れないんですね…」
山里「僕、のれんを忘れて来ちゃいました」
横峰「こんなことなら、あいつらの首輪外してやればよかったですね。いやだって最悪の時、自由に走り回って自分たちで餌を探せるじゃないですか」
星野リーダー城島「犬塚はん、諦めたらあきまへんよ」
もっちー、手をぎゅっと!
内海「どうした」
もっちー「いえ…」
どーん!
ジャックー!ローズー!あー!きゃー!
そんな船上あるあるに従って、宗谷はただちに外洋に向かうのであった。

なおもお願いするもっちー

もっちー「先生、やはり、セスナを飛ばして下さい。第二次越冬隊がつくまで、僕はあいつらと一緒に残らせて下さい」
白崎「気持ちは解るがこの天候では」
もっちー「いやでも!」
白崎「倉持くんまだ終わった訳じゃない。終わったわけじゃないんだ」
でも、手が。あぁこの手が!

甲板に出て南極を見ているもっちー

その後、また先生の元へ。
もっちー「氷から脱出するのに手間取ってるみたいですね」
白崎「こうなると基地での引き継ぎは無理かもしれない」
もっちー「解ってます」
白崎「そうだ、これ、高岡美雪さんから預かって来たんだ」
千羽鶴を出してくる白崎先生。
もっちー「会ったんですか?」
白崎「子供たちがみんなで折ったんだそうだ。犬たちのために」
もっちー「すいません」
よいしょ、と赤ちゃんみたいに抱っこするもっちー。
もっちー「今は、信じるしかないんですよね」

しかしその頃

岩城「200トン?もう一回計算しなおしてくれ。もう一度全部だ!」
燃料の残りがおかしいと再計算。そこにひむろっくも来ている。
また、日本では、はるおが、また、永遠に大きくならない子供を背負っている。

犬舎でへこたれるもっちー

犬塚「餌って無くなってますよね、もう。氷ってまだ抜けられないんでしょうか。倉持さん、最悪…」
もっちー「最悪なんかないだろ」
犬塚「でも」
もっちー「でもじゃないよ!」
きゅきゅんっ!
もっちー「悪い」
犬塚「いえ…」
へこたれるもっちー

書類仕事のひむろっく

部下「最初から全部やり直しました」
燃料計算を見ているひむろっく。
岩城「なんでだよ」
ひむろっく「脱出に手間取ったから、余計な燃料を消耗してしまったんです」
岩城「このままでは空輸すら…」
どーん!
じゃっくー!ろーずー!きゃー!
いえいえ、大丈夫。これは横揺れ。宗谷は、安全な海洋にようやく到達。
白崎「やっと出られましたね」
星野リーダー城島「バートンはんともお別れですね」
無線でお礼を言って、はー、やれやれ、だったんですが。

報告に来るひむろっく

ひむろっく「先生!ちょっといいですか」
白崎「どうしました」
岩城「実は、予備の燃料がもうほとんど残っていません」
白崎「燃料が?」
星野リーダー城島「あと3日分はあるんと違いますか」
岩城「消耗が激しかったようで、明日1日だけしか停泊できません」
どうなるんだと、海を見ている乗組員たち。
内海「本当は基地に行きたいんじゃないのか」
もっちー「いや、そんな余裕があったら、第二次隊が一人でも多く行けた方がいいですよ」
ダリ鮫島「大将」
もっちー「こんなんだったら、あいつらにちゃんと挨拶してくればよかった…」
日本からの電文も到着。
ひむろっく「どうしました?」
星野リーダー城島「外務省に犬を心配する手紙と電報がぎょうさん届いてるみたいです。くれぐれも、犬を見殺しにするなと」
ひむろっく「今更何言ってんだ…!犬を散々道具として!」
どん!とその辺叩くひむろっく。
星野「白崎はん」
白崎「みなを集めて下さい」

食堂に集合のもっちーとひむろっく

白崎「宗谷の燃料が残り少なくなりました」
内海「燃料がないって」
白崎「実は、ここに来るまでに燃料を消耗してしまったため、宗谷が南極にとどまっていられるのは、明日、1日だけになりました」
内海「けどそれって」
犬塚「明日行けなかったら犬は置き去りになるってことですか?」
もっちー「そんな…」
白崎「私は、決して、諦めてはいません。…諦めてたまるか!1年間とともに戦ってくれた犬たちの命と日本の南極観測のために、なんとしてもこの勝負に勝たなくてはいけません。唯一の救いはブリザードが収まってくれてることです。明日は必ずいける。夜明けとともに、空輸を開始します」
もっちー涙の落ち方がキュート!
内海の肩をぎゅっと!いやっ、可愛い!この可愛子ちゃんめ!
よわよわちゃんめぇぇ!

子犬もふもふしているひむろっく

子犬セラピー中のよわよわもっちー。
犬塚「倉持さん、テツとベックの形見の首輪です」
首輪をぎゅー。首輪セラピー。
犬塚「ベックもテツも天国で応援してくれますよね。明日行けるようにって。置き去りになんて絶対に…。リキのことだってちゃんと約束したんですから」
なお、子犬をもふもふしている。
いいなー、子犬もふもふーー。

お願いばっかりね、もっちー

もっちー「岩城さん、やっぱり、セスナ機に乗せてもらえませんか。…解ってるんです、解ってるんですけど」
岩城「申し訳ありませんが、観測機材の輸送とこっちの人員で精一杯なんです。お気持ちは解りますが、ここは私たちに任せて下さい。明日だって実際何回飛べるか解らないんです」
もっちー「…そうですよね、すいませんでした」
岩城「こちらこそすいません」
ひむろっくは見ている。

もっちーは甲板に。そして内海も

あぁ、手が。
手をわきわきさせているもっちー。
もっちー「俺、あいつらの、首輪締め直して来たんです。この手で。きつく締め直して来たんです。逃げないように。こんなことになるんだったら…」
そんなもっちーを、ひむろっくは見ている。
ちなみに南極では、リキも諦めてはいない。あいつの目は、まだ生きてるぜ。
内海「風だ。まずいな」
もっちー「…頼む!」

横並びでベンチに座る第一次越冬隊の人々

船木「このまま天候が悪くなったら」
ダリ「おいやめろよ」
船木「最悪なんですけど、もしそうなったら、僕ら、犬たちに何してやれるのか」
犬塚「何勝手に諦めてんです」
船木「俺だってそんなこと考えたくないけどさぁ!」

ひむろっくは、もうちょっと実のある話の最中

岩城「遭難?」
ひむろっく「はい。ボツンヌーテンに行った帰り。その時助けてくれたのが、犬だったんです」
岩城「犬が」
ひむろっく「僕も最初は信じられませんでした。けれど、犬たちが、僕を生かしてくれたんです。その犬を、北海道中駆け回って集めて、訓練し、育てあげたのがあの倉持です。あいつね、基地を出る時、一頭一頭、首輪を締め直して回ったんだそうです。それって、岩城さんたちがすぐ来てくれるとあいつが信じていたからだと僕は思うんです」

医務室を訪れるもっちー

谷「おぉ、倉持さん。どうしました」
もっちー「ちょっといいですか」
厨房に山里、医務室に谷。…第二次の厨房の人は?医務室の人は!?
それはそれとして。

食堂に何度も集まるもっちーとひむろっく

星野「まだ起きてはったんですか」
はっ、と医務室からもらってきた薬をぽっけにしまうもっちー。
星野「この1年ちょっと、いろんな事がありましたなぁ。基地の設営やら、カブースの火事やら遭難やら。この宗谷で日本を出発してから、今日までずっと、勝負の連続でしたなぁ。私らはそれになんとか勝って、ここまできたんですよね。あぁ、みなさん。考えることは一緒ですなぁ」
入ってきた内海たちを、ぽんぽんする星野リーダー城島。
星野「皆さん。明日は、ほんまに最後の大勝負です」
ひむろっくもやってくる。
ダり鮫島「大蔵省、お前も眠れないのか」
ひむろっく「ええ。僕だけじゃないですけどね」
ダリ鮫島「何だよおまえら」
岩城「倉持さん。私たちはこの1年間、本観測のために必死になって準備を重ねて来たんです。南極への思いは皆さんに負けないくらいある。そう私たちは思っています。だから、最後、皆さんの力を借りたいんです」
なんだなんだの一次隊。
岩城「倉持さん」
呼びかけられて、きょとんのもっちー。
こらー!!この顔かーー!ぎゅーー!
岩城「明日最初の便で一緒に飛んでもらえませんか」
もっちー「でも」
ひむろっく「天候が不安だから、明日行けた場合、観測機材の輸送をやめて、やらなくてはいけない引き継ぎをすることにしてくれたんだ」
岩城「思いは同じです」
もっちー「ありがとうございます…」
頼りない顔〜〜!可愛い〜〜!
そして、ひむろっくは見ている。

ところが、翌朝6時はまさかの吹雪。

もっちーがっくり。
ていうか宗谷動けず。
夜のうちに飛んどや。
というか、外洋に出た瞬間、飛んどけや。
ここまでか、と、白崎先生から重大な発表。
白崎「申し訳ありません。
この状況では、セスナを飛ばすことはできません。燃料も底を付き始めています。諦めるしか、ありません。第二次越冬隊を断念し、今から宗谷は、帰国の途につきます」
ひくろっく手をぎゅうーー!そして立ち上り、前に出て。いきなり白崎先生の胸ぐらをぐわっ!と。る
ひむろっく「こんなことが許されていいんですか。僕は、犬たちに命を救われました。今僕が生きているのはあいつらのおかげなんです」
星野リーダー城島「氷室はん…」
ひむろっく「それなのに!たった15頭の命をどうして助けにいけないんだ!」
星野リーダー城島「氷室はん!」
白崎「申し訳ない」
もっちー「…先生。セスナ飛ばして下さい。1回でいいんであいつらの所に行かせて下さい。たった1回でいいんです!セスナ飛ばして下さい。これで、あいつらの命を絶ってきます」
薬を出すもっちー。
内海「倉本おまえ!」
もっちー「どうせ助けられないんだったら、鎖に繋がれたまま飢え死にさせるくらいなら、苦しませずに死なせてやりたいんです」
星野「倉持はん、それは間違ってます!」
もっちー「間違っててもそうするしかないんです!先生お願いします。セスナ飛ばして下さい。お願いします」
ぺしーん!あんたなにゆーてるの!ぎゅー!
星野リーダー城島「南極憲法第2条、誰も死なへんこと!みなで決めたやないですか、倉持はん!あきまへんよ!」
お母さん!がしっ!としがみつくもっちー。
白崎「本当に申し訳ない。宗谷には、もう力が、残ってないんだ」
ひむろっく「じゃあ犬たちは」
もう我慢できないーーー!
うえーーーん!
走り出るもっちー。
内海「倉持!」
甲板で、リキー!タロー!ジロー!を声を限りに叫んでいる、その頃南極では。

『人間なんかよりもずっと犬の方が方向感覚も、生きのびる力も強い』と評された犬たちが、まんかと首輪抜けに成功しておりました。

もっちー「ごめんな…ごめんなー!」
その後南極大陸は、再び長い厳冬期に入っていった。

以下、妄想でございます。未来を想像するのがいやなら妄想すればいいと誰かも言っています。

あー、首いた、と首をこきこきしている樺太犬たち。
「首輪くらい抜けるっつーの」
「そうそう。こういう時はね、骨を外せば楽勝」
「いや、さすがに首の骨はまずいし」
「つかさ。人間どんくさくね?」
「どんくさいでしょ。物資は流すわ、火事は起こすわ」
「物資流した時も、早いうちに飛び移って、荷物運べばよかったのに」
「どんくさいから。泳げないから」

「そもそも、仲間だ仲間だっていうんなら、首輪つけて、鎖でつなぐかね」
はっ!
リキを見る樺太犬一同。
「あんたいいこと言った!」
「そしてもっとそもそも。寒いところで生きてけない体質なら、なんでわざわざこんな寒いとこくるかね。」
「あんた天才だ!」

「でも、比布のクマ帰ってきませんでしたね」
「あいつ、性根の底からアホだな」
「じゃ、ま、とりあえず」
「ペンギンでもいっとくか」

逃げてーー!ペンギン逃げてーーー!
次回、南極大陸vsハッピーフィート2をお楽しみに。


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