天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

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ギフト番外編45話『チケットを届け、られるか!?』

今日の教訓
「梅雨である。このうっとうしい梅雨の朝、自転車で滑ってころんだ女がいる。それは私である。皆さんも気をつけよう」

yukio
 

「あ、ひろちゃん、メールで依頼が入ってるわー」
「え?どんな?」
「チケット取り」
「チケット取りぃ?」

「何ですって?」
「プラチナチケットが欲しいって依頼が」
「・・・うちは、腰越『人材』派遣センターなのよね?何でも屋じゃないの。いい?」
「そうですよねぇ」
そんなことを言われても、と思った正広は、社長である腰越奈緒美に、きちんきちんと報告をして指示を仰ぐ。
「でも、社長。この人、タガ外れてますよ」
最初にメールを見た典子が言う。
「何、タガが外れてるって」
「成功報酬、30万って」
「30万!?」

奈緒美は目の色を変え、正広は、だったらダフ屋に言った方が早いんじゃあ?と思った。

「という訳で、明日の10時電話発売だそうなので、全員で電話します!」
「・・・無駄だと思うんだけどなぁ・・・」
「だよねぇ」
某大物アーティストの突発ライブ。チケット数わずかに2000。電話受けつけのみ。
「これがさぁ、店頭売りありだったら、何日か前からでも並ぶけどさぁ」
「電話じゃあねぇ・・・」
由紀夫は当然ながら、野長瀬も正広も、そりゃ無理だろうとたかをくくっていた。
しかし奈緒美には隠しだまがある。
「今回、無事チケットをGETした人には、成功報酬として!なんと!20万円をご進呈!」
「えっ!」
正広の目の色が変わった。野長瀬の目の色も変わった。
由紀夫は、なんで10万も取られるんだ!と思ったが、目の前に20万をぶら下げられた正広の耳には聞こえないだろうと確信した。
当然典子の目の色も変わったし、なぜかいる千秋の目の色も変わり、遊びに来ていたジュリエット星川の目の色も変わり、菊江の表情は変わらなかったが、多分、目の色を変えもしただろう。

「どうするぅっ!?」
「なんでしたっけ!つながりやすい電話があるって聞いたことがあるんすよ!どれだっけぇ!赤電話だっけな!」
「はいはい!俺、病院の電話ってつながりやすいって聞いたことある!」
目の色が変わったチームは噂だか、なんだか、解らないような事をわやわや言いあう。
そして、はっ!と正広が顔を上げた。
「田村さん・・・!」
「田村ぁ?」
野長瀬がイヤな顔をする。
「ねぇ、兄ちゃん!田村さんならできるよね!」
「何が」

それは電話のパイパス。
正広は、もちろんテレビっ子なので、火曜日の9時は古畑任三郎を見ている。ちなみに木曜の10時は魔女の条件ではなく、当然、アフリカの夜。さらに、土曜の8時はめちゃイケではなく、プリズン・ホテル(笑)
いや、とにかく、古畑任三郎でやっていた、電話のバイパスが使えるのでは!?とひらめいたのだ。
「あ、やってたよねっ!電話、途中で出ちゃうんでしょう?」
「そう!あれどうかなぁ!」
「・・・いや、無理だろ」
「えぇ〜・・・、田村さんでもできないのぉ〜?」
「できるよ。あれと同じことならできる。でも、意味ないだろ?」
「・・・なんで?」
首を傾げる正広、千秋に、由紀夫は言って聞かせる。
「あれは、電話をかけた時に、相手につなげるより先にバイパスするんだぞ」
「うん。だから、受付の回線があくでしょう?」
「違う。あれは、どこに電話しようと関係なく、自分とこに引き込んでんだよ」
「ん???」
頭の上に80個くらい『?』を飛ばした正広と、300個くらい飛ばした千秋を見て、由紀夫は小さくため息をつく。
「だから、あれはぁ、正広がかけた電話、全部をここで受けるようにしてるもんなんだって」
「・・・つまり?」
「つまり。あれと同じ手法ですると、日本中の電話回線をバイパスしなきゃいけないって事」

今一つ納得のいかない顔で、正広は『できないの?』と千秋に尋ねる。たずねられた千明は、日本中をバイパスって、どゆこと?と典子に尋ね、よしよしと頭をなでられた。

「バイトで入っちゃえば?」
ジュリエット星川が言う。
「電話を受けるバイトになっちゃって、自分の分取っちゃえばいいんじゃない?」
「あそっか。そぉねぇ。じゃあ、典子と、千秋と、菊江と。あんたたち、バイトで入りなさい」
「入りなさいって、今日行って明日のなんて、バレバレじゃないですかぁ?」
「バッカねぇ、うちは腰越『人材』派遣センターよぉ?御用聞き御用聞き!野長瀬!あんた交渉してきて!」
「え、でもぉ」
典子が手を上げる。
「そういうのできないって聞いたけど・・・」
「できない?」
奈緒美に聞かれて典子は答える。
「自分の分とかは取れないって・・・」
「でもぉ〜・・・」
正広が言った。
「電話がオープンになった時に、逆に電話したら?」
「逆に電話?」
「だから、たとえば典子ちゃんがバイトで入ったら、こっちに電話かけてくれるの。そしたら繋がるでしょ?」
「ひろちゃん、賢い!」
奈緒美が拍手する。
「それよ!バイトで入って、こっちにかけてくりゃいいんじゃない!」
「えー!?普通受信専用の回線とかになってんじゃねぇのぉ〜?」
「とにかく!」
奈緒美がうきー!となる。
「バイトで入っちゃえばなんとでもなるわよ!野長瀬!GO!」
「はいっ!」

45分後。

『バイト募集してないそうですぅー!』
「あんたはガキの使いなのぉぉ〜〜〜!?」

「20万よ!20万!」
しっかり対策立ててきなさーい!!
帰り際の奈緒美の怒声に、20万!そうだよっ!とお金好きの正広は気合を入れなおす。
20万あったら、何しようかなぁ〜、何買おうかなぁ〜・・・。
しかしそれには、電話をつなげなきゃいけないのか。

家に帰った正広は電卓を叩いてみた。
「何?」
由紀夫に聞かれて正広は計算結果を見せる。
「36」
「秒」
「36秒?」
正広はため息をつく。
「こないだ、GLAYのコンサートチケットがね、20万枚あったんだけど、1時間で完売したんだって」
「そんで?」
「だから、2000席だったら、36秒で終わり」
「・・・36秒ねぇ」
由紀夫もそりゃちょっとなぁ、と重たい気持ちになった。
「・・・やっぱ田村かなぁ・・・」
「兄ちゃんもそう思うでしょー!?」
「この番号から、回線がどうなってるのかを調べさせて、割り込みできるようならさせて・・・。でまぁ、10万くらいやっときゃ働くんじゃない?」
「田村さんが取ったんなら、田村さんに20万でしょお」
「・・・ん?おまえはどっちが目的なの?20万じゃなくて?」
「・・・どういう仕組みで、チケットって取れるのかなァ〜・・・って思って」
「あ。好奇心ね。俺ね、多分おまえが死ぬんだとしたら好奇心で、だと思うな」

言われてきょとんとした正広が、その言葉の意味に気づくのは、10日ほどして、とあるマンガに、「好奇心は猫も殺す」と書いてあるのを見てからだった。

「うん、うん・・・。そう。え?10万?10万じゃねぇよ。正式報酬は20万。そ、俺らに権利くれたら、そっくりそのまま20万渡すって。マジマジ。うん。じゃな、うん」
「何?10万って」
電話とFAXで手早く連絡をすませた由紀夫は、正広に言う。
「野長瀬が10万で仕事しませんかって言ってきたってよ。あいつにしちゃあ勇気だしたよなぁ」
田村、苦手なのに、と由紀夫は笑った。
「んで・・・、なんだこの晩飯!」
「精進潔斎しようかと思って」
「何のために!!」
「チケットの神様に失礼がないようにだよぅ!」

ハイテク犯罪専門の田村に頼んでおきながら、最終的に神頼みも忘れない正広の手によって、一見懐石風の、ぶっちゃけて言えば味の薄ぅ〜い野菜の煮物中心の夕食が作られていた。
「味しねぇ・・・」
「何いってんの!これが野菜本来のうまみでしょ!?」
ハウス栽培の野菜とかに無茶言うなよなぁ〜・・・と思いながら、ごはんばかりをわしわしと食べた由紀夫だった。

 

「さて、みんな」
翌朝、9時半。腰越人材派遣センターに社員以下、関係者が集まった。
「各人、様々なリサーチをしてきたと思います。ここからじゃまずいって人は外に行ってもらってもかまいません。とにかく電話をつなげて頂戴!」
「ラジャっ!!」
「それで、あんた。菊江は?」
「あら?まだ来てないわねぇ」
ケロっとした様子でジュリエット星川が辺りを見まわす。
「菊江ちゃん、どこかよそからかけるんじゃないのぉ〜?」
そう言った千秋は、携帯2台、PHS4台を手にしていた。
「あのね、ここの事務所って、結構電波の状態がいいんだって。田村さんが、なんかしてるみたい。だからここからなら繋がるかなぁ〜って」
「私、とりあえず病院行ってみます。緊急回線がオープンになってるって聞いたことがあるんです!」
野長瀬が元気に出かけて行き、典子は近所にいまだ残っている赤電話のところへ行く。(昔ながらの公衆電話は回線が絞れないという噂がある)

9:57。

「ちょっと、かけてみよー・・・」
ドキドキしながらかけた正広は。
「うわー!!もう繋がらないー!」
「何ぃー!?」
すでにもうかけ初めている人間が多いらしく、応答メッセージはNTTの大変繋がりにくくなっております、になっていた。
「嘘だぁ!」
慌てる正広。そして一同。そこへ。

「おはようございます〜」
菊江がやってきた。
「あんた何してたのよ!電話!電話しなさいよ!」
「え、でもぉ〜・・・」
「ぎゃー!!どーしよー!!」

10:00

聞こえてくるメッセージはNTTのものばかり。
「話中にもなんねぇじゃん!」
「田村さんどーしてるかなぁ〜!!」

10:18

由紀夫の携帯がなった。
「もしもしぃ!?あ、田村ぁ!」
正広の手が止まる。
「えっ!?あ・・・、っそぅ・・・。うん、OK、サンキュ・・・」
「どっ、どしたの!?」
「完売。もう終わったって」
「嘘ぉ・・・!」
腰越人材派遣センターは重たい空気に押しつぶされる。
「あいつ、電話回線じゃなくて、コンピューターに直接アクセスしたんだけど、間に合わなかったみたいだな」
「かー!!!その手があったかぁー!!!」
「あーん!20万〜っ!!」
PHSを放り投げて千秋が宙を仰ぎ、正広は、コンピューターに直接かぁ・・・とぶつぶつつぶやく。

そこへ。

「ですから、これ」
ずっと入り口に突っ立ったままだった菊江が、伸ばした手の先で、何かをひらひらさせる。
「何、それ・・・」
「チケットです。ライブの」
「えぇ〜〜〜〜!?」

ささ!菊江様!と菊江は社長の椅子に座らされた。
「何お飲みになります?それともお召し上がりに?」
「お抹茶お願いします」
「ひろちゃん!お抹茶!上手にいれてね!」
「はぁ〜い!」
「ちょっと、菊江。あんたこのチケットどうしたのよ!」
「これはですねぇ」

お抹茶を受け取り、丁寧な作法で飲み干した菊江は、長い話を始めた。

「私の父は、平凡な公務員です。なんて言いましょうか、大人しいだけがとりえの口数の少ない人でして。でも、手先は意外に器用で、折り紙を作るのがとても上手なんです。ですから、公務員というよりは、小学校の先生とか、まぁ、本当は幼稚園の先生とかになりたかったみたいなんですけど、父の時代に、幼稚園の先生って言うのは女性の職場と決まってたようなものですから、そうもいきませんで、役場の職員を黙って務めてます。そういう大人しい父なので、近所づきあいとか、親戚づきあいは、全部母がやっています。母は、まぁ、昔はご近所に一人はいた世話焼きで、猫の出産から、若い女の子のお見合い、公民館の踊りの会、法事、お祭り、およそ顔を出さない場所はないって人なんです。それで、その母の知り合いに、歯医者さんがいまして、この歯医者さんが、まぁ、人気がないんですよ。痛いって。最初は母も患者だったんですけど、こんなに痛くてどうするの!と叱ったんですね。まぁ、母は甘いものも大好きで、歯磨きも適当なものですから、虫歯になって当たり前。悪いのは母ですから、先生が叱られる義理はないんですよ。でも、ぴしっと言われた先生は、前向きな人だったので、一時的にご自分の歯医者をよその先生にお願いして、修行に出られたんですね。でまぁ、先生はその修行先で、信じられないような出来事に巻き込まれることになるんですけれども、でもまぁ、これは週刊誌にも載ったことだから皆さんご存知でしょ。それで、問題は、新しくきた先生なんです。これが、腕はいいんですけど、お年寄りだったんですよね。怖いでしょ!お年寄りの歯医者さん!手はね、震えたりってことはないんですけど、目が悪いんですよ。もぉ、怖くて、怖くて、ますますその歯医者がはやらなくなったんです。それで、これではいけないって事で、その歯医者のおじいちゃん先生が、ご自分の親戚に宣伝をしてもらおうと思ったんです」
「それが、あのアーティストなのね!?」
こめかみピクピクさせていた奈緒美が言うと、菊江はおっとりと首を振った。
「いえ、全然一般の方ですけど、口コミって感じで、駅とか、バス停とかで、あの歯医者はいいね、って言わされてたみたいです。そしてそれを偶然聞いたのが、」
「あのアーティスト!?」
ジュリエット星川もテーブルをひっくり返したいのを必死にこらえながら尋ねる。
「いいえ」
しかしまた菊江は首を振った。

こうして、後8分ばかり話は続き、歯医者から美容院、美容院から、近所の公園、近所の公園から、お父さんの役場、まで話が戻ってきて。

「そういう訳で、やっと印鑑証明が取れたんです。その人が」
「そのアーティストなのねぇぇ!???」
「はい」

そのつてでもらってきました。
とニコニコと菊江は言い、チケットと引き換えに20万を手にしたのだった。

「もうこういう仕事は受けません」
奈緒美の言葉に深くうなずく一同だった。

が。

もう無理ね、とあきらめた典子はともかく、いまだにNTTのメッセージしか聞けないの長瀬は、ひたすら病院で電話をかけまくっていたのだった。


あぁ、そんな菊江みたいなつてが欲しい、と多くの人が思っているコントライブのチケット発売日!みんなぁ!電話は繋がったかい!?あぁ、菊江・・・!そして田村・・・!ハッキングしてくれぇ!田村ぁ〜(笑)!!

てことで、次回は来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずってことを人々はもう知りすぎている!

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