天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

ギフト番外編46話中編『恨みます、が届いた』

前回のあらすじ
「早坂家の穏やかな朝をぶっこわした『恨みます』一体誰が、なんのためにこんな紙を貼っていったのか!大丈夫なのか早坂兄弟!そしてかぎもチェーンかけた翌朝、その紙は再び現れたのであるぅーーー!(アホっぽい)」

yukio
 

鍵に異常なし。
「ほぉ〜・・・?」
由紀夫は、目を細めてドアと、「恨みます」の紙を交互に見る。
「に、兄ちゃん・・・!」
「おぉ、来たぞ」
「だって、チェーン・・・」
「なぁ」
正広の顔から、ざぁーーーーっと血の気がひき、ふらっ、と足元を震わせた正広は、そのまま、と・と・と・と、とベッドまで行き、ばったり倒れ込んだ。
「いやぁぁ〜!!」
「どーゆー事だぁ?」
とにかく、鍵はかかっているし、チェーンもかけられている。他に人間が入れそうな場所なら、窓があるが。
「・・・正広」
「何ぃっ!?」
「おまえ、寝てる時に、頭の上、歩かれたら目ぇ覚めるか?」
「え・・・?」
「この部屋で、一番大きい窓はここだからな」

正広は、ベッドのすぐ上にある窓を見上げる。
「ここぉ・・・?」
「鍵はかかってるけど・・・」
「いくらなんでも、俺気が付くと思うけど・・・」
「あー、でも正広なー、寝つき悪いけど、寝たら寝起き悪いしなぁ〜」
「それ言うんだったら兄ちゃんだって、『おやすみー!』1・2・3『ぐぅ』って、のび太じゃないんだからぁ!」
「うるっせぇなぁ。でも寝起きはいいんだから、ここを歩かれたら・・・、解るわ」
「解るよねぇ・・・」
何せ、頭のすぐ側だ。
「うーん・・・」
「あ。しーちゃん、しーちゃん、なんか見た?」
急に訪ねられた白文鳥のしーちゃんは、『えっ!?私ですかっ?いや、私、鳥だから、鳥目ですし・・・』と困惑するばかり。

うーん、と兄弟揃って腕を組んでいたら。
「あ」
「何っ?」
由紀夫が手を叩いた。
「おまえ夢遊病なんじゃん?」
「夢遊病ぉ〜!?」
「だから、自分で起きて、自分でやっちゃってる」
「・・・なんで、俺なの!」
「繊細な少年時代を病院で過ごした正広少年は、その柔らかな心に、見えないほどの小さな傷を抱えていた。けれど、その小さな傷は、深く、深く浸透していき、そして正広少年は!!!」
「・・・なんの映画見たの」
「いや、なんとなく」
「なんとなくで人を夢遊病にしないでよー!!!」
「でもなー、この几帳面な置き方とかがおまえっぽいんだよなぁー」

昨日も今日も、置かれていた恨みますペーパーは、測ったようにきちんと張られていたし、置かれていた。
実際に計測はしていないが、ドアなり、テーブルなりに平行に設置されていたことは想像に難くない。

「だぁかぁらぁ!うちにはワープロもないのに、どーやってこれを打ち出しすんだよぉ!」
「まぁなぁ。夢遊病のヤツが、指紋もつけずにテープを貼るなんてことはしないだろうしなぁ」
さらに、うーん、と早坂兄弟は考えこんだ。

「あ!それじゃあ、さぁ。みんなに相談してみよ!」
「みんなぁ?」
「事務所の」
「・・・事務所か・・・」
「田村さん、とかさぁ」

言われた由紀夫はふいに黙り込んだ。
「今日も別に取られてるもんはないんだな?」
「うーん・・・、ないと、思うけど。探す?」
「いやまぁいいや。多分ないはず。犯人は、ただこの紙を置きに来ただけだ。こういうことをしそうなヤツと言えば」

「だから、兄ちゃんにダマされた女の人とか」
「正広にたぶらかされた女の子とか」

二人はうきー!!と文句を言い合う。

いつたぶらかしたんだよぉー!!、いつダマしたよぉー!などという不毛な言い争いの後、そうじゃなくて、と由紀夫が止める。
「まぁ、例えばそういうことが考えられる訳じゃん。実際俺たちに、なのか、どっちかになのか、恨みがあるヤツ」
「うん・・・。それ、で?」
「でも、確かにドアにカギはかかって、チェーンもちゃんとかかってる。ベッドのとこの窓だけじゃなくて、他の窓もかぎは閉まってる」
「うん」
「・・・入りたくても、入れないだろ。普通は」
「・・・そうだよねぇ」
「そりゃーなぁ〜?魂になって千里の道を駆けてきたんなら解んねぇけどさぁ〜」
「たっ、魂っ!?」
「でも、魂は、ワープロで『恨みます』なんて打って打ち出ししたあげく、それをテープで貼り付けたりはできないだろうし。書かなくったって、枕元に立って、恨みますって言えばいいんだし」
「やぁめぇてぇぇぇ!!!!」

「だから、動機があるヤツより、可能性があるヤツの方が怪しい」
「可能性?」
「こんな部屋の中に入ってくる技術があるヤツ。例えば」
「例えば・・・」
「田村」

兄の言葉に、正広は深く、深く、うなずいた。

田村は、めったに外出をしないが、変質狂的な犯罪マニアだ。古今東西の犯罪について、いろいろと詳しい。
「あいつがその気になれば、こういったことはできるんじゃないかと思う。方法は解らないないけど・・・っ!」
『そうかぁ・・・』と続けようとした正広は、突然由紀夫に口を押さえられて、ふがふがっ!?と苦しむ。
「まぁ、とりあえず」
正広の口を押さえたまま、由紀夫はあっさりと言った。
「会社行くか」

なんでなんでなんでっ!?
大きな目に、『なんで!?』と書いてある正広に向かい、由紀夫は、人差し指をたてて、シー、と合図する。
黙ってと言われ、天井を指差され、そして正広は、大きくうなずいた。
「そ、だねっ。また奈緒美さんに怒られ、ちゃう!」
「とにかく、これはこれとして、仕事仕事!」
「それじゃあ、兄ちゃん、朝ご飯のお願いしまーす!」
「はいっ!・・・って何で俺がぁーー!!」

三文芝居は、しばらく続いた。

いつもより早めに家を出た早坂兄弟は、自分たちの荷物の中に不振なものがないかどうかチェックして、ようやく話し出す。
「ねぇ・・・、盗聴器ぃ・・・?」
「あった訳じゃねぇけど、もしかしてあるのか!?って思ってさ」
「田村さん〜〜?」
「実行犯は別だろうけど、あいつには技術はあるんだよなー」
「なんで別?」
「・・・あいつ、どんくせぇもん。どたばたうるせーし。すぐ気が付くよ」
「そうだね」
きゃはは!と笑った正広だったが、急にくらい顔になる。
「でも、田村さん・・・、何の恨みがあるんだろ・・・」
「田村は、技術を貸してるだけかもしれないしな」
「人に恨まれるのって、辛いね・・・」
「いやいや」

しょぼん、とする正広に由紀夫は言った。
「文句があるって言えないくらいだったらほっときゃいいんだぜ?」
「だって・・・」
「それに、自分の名前も書いてないって、そりゃダメだろ。うちの会社、差出人の書いてない手紙なんか、開けてもねーじゃん」
「そだけど・・・」
「名乗れないヤツの言い分まで聞いてやる必要ねーよ。文句があるんだったら、直接言いにくりゃいんだって」
「そかな」
「そうそう。どう考えても不法侵入してる方が悪いに決まってんだろ。だから、誰がどっからどう入ってくるかを調べなきゃいけないんだけど・・・。とりあえず奈緒美たちには、様子を見るって言っとくか」
「様子見る?」
「・・・イタズラのにおいもすんだよなぁ〜」
「イタズラぁ!?」
「これイタズラだったら、やるのはあいつらだろ」

 

そして正広と由紀夫によって、部屋の鍵は全部しまっていたといかの細かい現象は巧みにぼやかしながらの、侵入者の話は事務所中の話題を独占した。

「いやーん!!そんなの聞いたら、あたし一人でいられなぁーい!泊めてえぇ!!」
「やだー、千秋ちゃんったら、とんでもないとこまで侵入してきそうなんですものぉ〜」
字にすればはしゃいで見えるオカマ言葉で、しかしごく冷静な声色と表情の由紀夫は、千秋をぐいぐい押しやる。
野長瀬は、自分はどうなってもいい!でも、ミニ白ウサギ(大)の智子だけは助けてくれ!と神に祈った。
「あぁでも!!でも、もし僕がいなくなったら、智子ちゃんは・・・っ!ひろちゃん!僕にもしものことがあったら、智子ちゃんを頼みますぅ!」
「の、野長瀬さん、落ち着いて・・・っ」
両肩をつかまれて、がっくん、がっくん、前後に振られている正広だった。

様々な予想が立てられ、立てられ、立てられ、正広は頭を120倍くらい膨らまして帰途についた。仕事先から直帰する兄と合流するため、待ち合わせのスーパーをウロウロする。
「はー・・・、疲れた・・・」
思わず言葉が漏れ、首をクキクキと鳴らしていると、背後に何かの気配を感じた。
誰かが、自分を見ている。
正広の背筋に冷たいものが走った。
つけられていたのだろうか。
陳列台の前で、かきーん!と固まった正広は、落ち着け、落ち着け・・・!と自らに言い聞かせる。
夕方のスーパーは大変な人出で、こんなところでどうこうされるはずはないし。
第一。
正広が立っているのは、今日の売り切れごめんの特売品コーナーの前。
ここに行きたい人かも・・・!

すすすす、とその場を離れ、特売コーナーから離れた正広だったが、その視線は消えなかった。

『うっそぉぉーーー!!』

魚コーナーでも、肉コーナーでも、牛乳コーナーでも、その視線は正広の背中に張りついたままだった。
スーパーの中をグルグルしながら、どうしても振り返る勇気がない。
振り返っても解らないかもしれないし、逆に知った人がいても恐いし!
どーしよー!!
にーちゃーん!!!早く来てぇーーー!!!

<つづく>


田村ネタを引っ張っちゃった(笑)あぶなーい!正広くんがあぶなーい!兄ちゃん早く助けに来てぇ〜(笑)!!

てことで、次回は来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずってことを人々はもう知りすぎている!