天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

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ギフト番外編47話前編『オーストラリア旅行を届けたい』

前回のあらすじ
「早坂兄弟のうちに忍び込んでいたのは、なんと、由紀夫の父、岸和田であった。岸和田は、父の日に何もしてくれなかった息子たちを怨んでいたのだ!頭おかしいんか!岸和田(笑)!

yukio
 

「正広くん」
満面の笑みを浮かべる岸和田に呼ばれ、はい?と正広は顔を上げる。
「正広くんはいくつだっけ」
「え、俺ですか?俺17ですけど」
「17ね」
ふんふんとうなずいた岸和田は、由紀夫にも聞いた。
「あのな。長男の年も覚えてないって事か?」
「すいませんなぁ、年を取るとなぁ〜」
「25!」
「朝ごはんは、まだですかいなぁ〜」
「まだだよっ!」

岸和田が忍び込んできたのが解った、その翌朝。
緊張と心配であまり眠れていなかった正広はもちろん、由紀夫は父親のアホな仕業に呆然として意識を失ってしまっていたので、起きるのが遅かった。
だから急いで朝食の準備をしているところ。
「メニューは何かな」
日本のお父さんらしく、どっかり座ったままの岸和田がノンキに聞く。
「シリアルに、カフェオレ、スクランブルエッグ、シーザーサラダ」
「朝からそんな腹にたまらないもん食べるもんかぁ!!」
由紀夫のセリフに正広が文句を言い、どん!とごはんをお味噌汁を置く。
「そうそう、日本人ならごはんに味噌汁!」
さらに、卵焼き、焼き魚、納豆が並び、美しい日本の朝食となった。
「いただきまぁーす!」
親子3人で手を合わせ、わしわしわしっ!!と掻き込む朝ご飯。
しやわせってこーゆー事なのかなぁ・・・と正広は思ったが。

「後1分ででないと、多分遅刻」
「やばいじゃーん!!」
慌てて準備する正広と由紀夫をただ見ていた岸和田が立ち上がった。
「あ!?」
由紀夫が振り返ると。
「息子たちがお世話になっている会社に、ご挨拶にいかないと」
「はぁっ!?」
由紀夫は頭のてっぺんから声を上げる。
「何言ってんだよ!?どのツラ下げて、奈緒美に会うつもり!?」
「親として」
あぁぁ・・・・、頭痛いぃ〜〜・・・!
頭を抱えた由紀夫だったが、今は頭よりも正広を抱えて会社に急がねばならない!ということを思い出し、自転車にダッシュ。
「あ〜〜のぉ〜〜、戸締まりお願いしますぅぅ〜〜」
岸和田の耳には、連れ去られる正広の声だけが残った。

「戸締まりお願いって!」
自転車で快調に走りながら、由紀夫は荷台の正広に言う。
「あいつに戸締まりさせるくらいなら、ドア開けてでかけた方がマシなんじゃねぇか?」
「また、そんなぁ。そんなはず・・・」
しかしドアそのものを外し、鍵を無効化するほどの男だった。
「うち帰っても、ドア開かなかったりして・・・」
「笑えないからやめよーなー」

「おはようございますー!」
「ちーす」
事務所に入りながら言うと、口々にいつもの朝の挨拶が帰ってくる。3分遅刻だが、まぁ、それはそれでいいとしよう。
コーヒー飲みます?あ、麦茶にしようかな。昨日のテレビが、などたわいのない朝の光景。
それは、ありふれた、微かな幸せの情景だったが。

「ぎゃーーーーーー!!!!!!!!」

絹、のスカーフを30枚まとめて引き裂いたってそんな声はでんだろうというほどの声で奈緒美が叫んだ。

「あんたなにしてるのよぉーーーー!!!!」
「よぉー、久しぶり、久しぶり」
今にも卒倒しそうになっている奈緒美に岸和田は近づき、ラテンアメリカンらしい動作で、彼女を抱いて、背中を叩く。
「久しぶりじゃないわよ!何してんの!!」
「こいつこいつ」
由紀夫がうんざりと親指でさした。
「うちに入り込んでたストーカー」
「はぁ!?怨みますの!?」
「ひどいんだよ、こいつら。ちょっと聞いてくれよ」
奈緒美の社長の椅子に座り、岸和田は辛そうな顔をする。
「この世にたった一人のお父さんだというのに、父の日になんのプレゼントもなかったんだ・・・」

「あんた、バカ?」

自分のデスクの前に立ち、奈緒美は言う。
「プレゼントしようがないでしょう!居場所もしらないのに!」
「探せるだろう!探せよ!父親なのに!」
あぁ、俺ってなんて可哀相な男・・・!という演技を続ける岸和田を無視して、仕事の指示を出していると、突然、ウェストをつかまれた。
「きゃっ!何よっ!!」
「相変わらず細いねぇ」
「えっ?」
「奈緒美は、スタイル変わらねぇなぁ」
「え、そ、そぉ・・・?」
今日は、タイトなスーツ姿の奈緒美は、そうかしら、と自らの体を見直す。
「体力年齢も若そうだ」
「まぁねぇ、使えない連中抱えてるから、自然にねぇ」
それ誰のことですかぁ!!と使えない野長瀬が声を上げるが無視。
「で、何なのよ。おだててどーするつもり?」
「おだててなんかないだろ。ホントの事を言ってるんだから」
「もぉ!いいからっ!」
ちょっと嬉しい顔をしながらも怒ってみせる奈緒美を、にこにこと岸和田は眺め、おもむろに事務所中に目をやった。
「えーっと、なんだっけな。そうそう、野長瀬くん」
「はい!?」
「君はー、いくつになるんだったかな」
「は?」
「年は」
「え、36、ですけど・・・」
「よし!OKこれで大丈夫!」
「OK?」
奈緒美が首を傾げると、岸和田は立ち上がり、彼女の肩にぽん、と手を置いた。
「オーストラリアに二人で旅行に行かないか?」
「オーストラリアぁ?」
驚く奈緒美をそのままに、岸和田は由紀夫たちに言った。
「100万円、欲しくないか?」
「「欲しい」」
素直に正広と野長瀬が言い、由紀夫は、何のことか解らず瞬きをする。

「この夏!スーパーバスケに挑戦だ!!」
「アホかい!!!!」
びしぃ!と宙を指差す岸和田に、由紀夫は怒鳴り声を上げたが、他の人間は聞いていない。

「あー!スーパーバスケー!27時間テレビだぁー!」
「そうそう、27時間テレビ、愛は地球を救う」
「おとーさん、それ違うー!それ他局〜」
「何よ、スーパーバスケって・・・」
「えっ!?社長知らないんですか!?スーパーバスケですよ!スーパーバスケ!」
「知らないわよそんなの!まぁ、毎年NBAを見に行くくらいで」
「でも、何で?社長って、バスケ上手なんですかぁ?」
もっともな疑問を典子が挟んだ時、岸和田が重々しくうなずいた。
「カップルじゃないとダメなんだ」
「カップルぅ?」
未だ肩に手を置かれたままの奈緒美ににらまれ、今度はウェストを抱き寄せる。
「カップルと、そのゆかりの人、3人を合わせての5人。さらに5人の年齢が170歳以上」

「だから私かいー!!!!」

合わせて170歳、というのを聞いた瞬間、5で割って平均を出した奈緒美が怒鳴る。
「何を言ってるんだ!」
心外だ!といわんばかりに、岸和田は両手を広げ、肩を竦める。
「カップルだからだろう?」

由紀夫は軽い頭痛を覚えながら、今日の仕事の準備をする。おそらくこれを届けて帰ってきたころには、ユニフォームの柄まで決まってるに違いない。

そしてその由紀夫の危惧は現実のものとなった。

<つづく>


時事ねた。って遅いんじゃわ!!ごめんなー、忙しくてなー、あんまりあれこれ考えられてないねーん(笑)

てことで、次回は来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずってことを人々はもう知りすぎている!