天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

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ギフト番外編47話中編『オーストラリア旅行を届けたい』

前回のあらすじ
「早坂兄弟のうちに忍び込んでいたのは、なんと、由紀夫の父、岸和田であった。岸和田は、父の日に何もしてくれなかった息子たちを怨んでいたのだ!頭おかしいんか!岸和田(笑)!
その頭がおかしい岸和田は、27時間テレビ愛は地球を救う、もとい!照れずに楽しく照れずに愛してのスーパーバスケに出るという野望を持っていたのだった!」

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スーパーバスケにおいて重要なのは、メンバーの順番である。
最後に一番うまい人が来た方が、とりあえず安心。だからといって、4番手が下手すぎては、フォローがきかない。
そのため、岸和田と四匹の小猫チームは、下手な順にならばせる、という方式を取った。

「ってことは、先頭は誰なんです?」
野長瀬の言葉にとりあえず全員の目が野長瀬に向けられる。
「ぼっ、僕ですかぁっ!?社長でしょーっっ!?」
「いや、おっさんじゃねぇの」
「由紀夫、野長瀬くんは仮にもおまえの上司なんだから、おっさん呼ばわりは」
「あんただよ!あんたのこと!!」
「まぁまぁ、おっさんにおっさんって言ったらおっさんが可哀相よ」
「そうだよな、おばはんにおばはんって言うようなもんだしな」
「うるっさいわねぇ!!ちょっと!あんたが先頭行きなさいよっ!」
「俺がぁ〜?俺のボール受け止められるのかよ、おまえらに」
ぶつぶつ言いながらボールを持つ岸和田は、スーツのまま。軽くボールをつきながら、次は?と由紀夫たちを振り返る。
「次は、じゃあ、愛のボールリレーってことで奈緒美が行って、野長瀬、正広、ラストが俺」

「んまっ!腰越の奥様お聞きになったっ!?」
「えぇ、えぇ、聞きましたわ、岸和田の奥様っ!」
「ご自分が最後なんて、どーゆーお積もりなのかしらっ!」
「まったくですわ!図々しい!親の顔がみたいってなものですわねっ!」

「いいから、早くやれ」

地を這う重低音で由紀夫に言われ、最年長から数えて二人は、ぶつぶつ言いながら定位置につく。
「そんじゃ、いくぞー」
スーツに運動靴、という不思議な姿の岸和田が走り、バックボードにボールをぶつける、続いて飛んだ奈緒美が。
「きゃー!!」
「どこ投げてんだよ!おまえー!」
「お父さん、意外に・・・」
正広が驚くほど、変な方向にボールは飛んでいった。
「あれ?」
岸和田も不思議な顔で、手首をひねっている。そして、あぁ、とうなずいた。
「これが重くてなぁ、バランスが・・・」
「趣味悪ぃぃーーー!!!」
金無垢、ダイヤちりばめ時計が手首から外された。
「趣味悪いったって、プレゼントされたもんはつけてなきゃ申し訳ないだろー」
「それにしたって、センス最悪!」
「プレゼント・・・?」
不審な顔をする奈緒美の頬を岸和田は軽く叩いた。
「おっさんだよ、おっさん。田舎のおっさん」
「あぁ、田舎の・・・。って、別に気になんてしてないわよっ!!」
「社長・・・、素直じゃないなぁ・・・」

バシン!!!

野長瀬の顔面をバスケットボールがヒット。たり、と、右の鼻の穴から真っ赤な鼻血が垂れた。

金無垢時計を外した岸和田は、スピードはなくとも、綺麗なボールを綺麗に元の位置に戻すことができるのを証明。どこにおいても大丈夫だろう、と由紀夫の認定を貰う。
「ん?でも問題は受け取れるかだよな。じゃあー、岸和田、奈緒美、野長瀬で続くかやってみっか」
「由紀夫っ!おとおさんにむかって、岸和田とはなんですかっ!岸和田とはっ!」
きぃぃっ!といきなりハンケチをきりきりとかみ締めている岸和田に、軽いどころか、重大なめまいを覚える。
「正広・・・」
苦しい息の下から弟を呼ぶと、兄の気持ちを敏感に察したよい子の弟が言ってくれた。
「おとおさんっ!がんばってっ!」
「おう!がんばるよ!ひろちゃんっ!」

んが。

「野長瀬下手すぎ!!」
由紀夫の声が飛ぶ。
「そっ、そんな事言ったってっ!社長のボールがっ!」
「あー、そーなんだよなー、奈緒美もなー・・・。おまえもっと力あんだろー!なんでそんな弱いボールしか投げられねんだよ!戻ってこねぇだろー!?」
「あら。あたし、力なんかないわよ」
「男の前だからって今更猫かぶったって3000年遅いんだよっ!」
「なぁんですってぇーっっ!」
「奈緒美。俺は、おまえの力強いところが好きなんだ」
「うるっさいわねぇ!!今更そんなこと言われたって知らないってのぉー!!」
「まぁまぁまぁまぁ」
間に割って入った野長瀬は。

「あんたが取らないのが悪いのよっ!!!」

厳しく叱責され、くすん、と膝をかかえてしまった。

「野長瀬さん・・・」
「ひろちゃん・・・っ!ひろちゃんは、ひろちゃんだけは、俺の気持ちを・・・っ!」
「ボールをちゃんと見てないと取れないんですよ?」
「あぁ、ひろちゃんまで・・・っ」
実は浮遊感恐怖症で、トランポリンでジャンプすることがすでにダメな野長瀬は、ほろり、と心の中で一筋の涙をこぼした。

ジャンプすれど、ジャンプすれど、我が居心地楽にならざり。ぢっと手を見る。野長瀬定幸心の短歌。ぱくり編。

「正広は誰のボールが取りやすそう?」
由紀夫に聞かれ、正広は、お父さん、と答える。
「そりゃそうだよな。でも、あれは取り易すぎるから、ちょっとでも下手な方に渡すとして、岸和田は2番手だよなー・・・。だから、奈緒美か野長瀬」
「うーん!野長瀬さん、かなぁ・・・」
奈緒美のボールは確かに力がなくて、すぐ真下に落ちそうになるのが怖い。自分の軽さを利用して高く飛べる正広だとタイミングが合わない。
「そーすっと・・・」
由紀夫は立ち上がり、まだまだもめてる3人を呼んだ。
「それじゃあさぁ、奈緒美、岸和田、野長瀬、正広、俺でやってみっから!」

「んまぁ!野長瀬の奥様おききになりまして!」
「えぇえぇ、聞きましたわ!岸和田の奥様!」
「まるで監督気取りじゃあ、ありませんこと?岸和田の奥様、野長瀬の奥様!」

「楽しいお茶会がしてぇんだったら、外のベンチでやれよー。アフタヌーンティーでも、飲茶でもー」

「あら!アフタヌーンティーよろしいわね!」
「どうなさる?これから銀座にでも・・・」
「いいえ!いっそ香港まで参りまして?」

バコン。

野長瀬の後頭部をバスケットボールが襲う。
「成功率9割を越えたら、香港でも、イギリスでも好きに行って、二度と帰ってくるな」
「二度と帰ってこなかったら、あんたスーパーバスケ出られないわよ?」
誰が出たいって言ったよ!!と思った由紀夫の隣で悲痛な声がした。
「えぇー!!出たい、出たいぃー!」
SMAPファンの弟であった。

何度かの練習の末、なんと、このオーダーでは9割5部を越える成功率を由紀夫たちはものにした。
「ふふふ。さすがに私が見込んだチームに間違いはない!」
得意げな岸和田は、さらなる手を考えていた。

 

「ユニフォームができたぞ!」
それは、予選当日の事だった。
お台場バレットタウンに思い思いの服装で現われた岸和田と四匹の小猫チーム一同は、そんなもんも作ってたのね、くらいの感覚で岸和田からユニフォームを受け取り。

絶句した。

「・・・・・・・・・・バカだバカだと思ってたけど・・・・・・・正真正銘のバカだなっ!!!!」
「ベタすぎるぅぅぅ〜〜!」
「え。何が。これ、すごいんだぞ。ほら、動く」
ユニフォームにつけられていたのは、四匹の小猫にふさわしい猫のしっぽ。
「しかも今回はこれだけじゃあなくだね。さ、どうぞ」
呆然とする一同の前に、大荷物の男女二人がやってきた。
「何だよ!」
怒鳴る由紀夫に、岸和田はにっこりと笑いかける。
「怒った顔も魅力的だけど、もっと魅力的にしてあげよう」

 

「それじゃあ、岸和田と四匹の小猫チーム・・・・・・おわっっ!?」
「あ、可愛いでしょう、うちの小猫たちは」
予選ゲーム司会者、および、対戦チームをびびらせたのは、岸和田と四匹の小猫チームのユニフォーム。
いや、ユニフォームというのは、1つのフォームといった意味あいなので、厳密にはユニフォームとはいえない。
岸和田と、四匹の小猫たちは、別々のユニフォームだった。岸和田は、黒で、燕尾服をイメージさせたユニフォーム。そして四匹の小猫たちは、鮮やかなカラーリングで、猫のしっぽつき、さらに。

「このメイクは、某劇団四季のメイクさんにやってもらった、特製キャッツメイク、スーパーバスケ風味」

スーパーバスケ風味とは、顔を完全に猫にしてしまうのではなく、雰囲気猫にするものである!本来の顔も分かって、なかなか素敵だぞ!

顔やら、髪やらをキャッツ風にされ、由紀夫はふつふつと沸き上がる怒りを必死にこらえていた。
「やっぱりね、この子が猫っぽいなと思ったんですね。正広です。このおっきな釣り目が小猫ちゃんって感じで可愛いでしょー!」
「やめんか変態オヤジっ!!!」
「いやいや、由紀夫も可愛い、可愛い。おっきな垂れ目が可愛いよー」
「死ね!東京湾に浮かべっ!!」
「こっちは、典型的な日本猫ですけども、風情あるでしょー?」
「なんであたしたちが日本猫よー!!」

司会者に口を挟むすきを与えないまま、岸和田と四匹の小猫たちは、パーフェクトゲームで予選を勝ち上がり、フジテレビの代表選手の座を勝ち得た。
「よし。まずは予定通り」
「予定通りじゃねぇだろぉ〜〜・・・!」
さすがの舞台メイクで、由紀夫は一切崩れていない猫の顔で岸和田を睨む。
「後は、フジテレビ内の入るために、がんばるってことだな!」

「それでSMAPに会うんだー!きゃー!!」

確かに可愛い正広がきゃいきゃい喜ぶ。

が。

由紀夫は、岸和田の言葉に不穏な何かを感じとってしまった。

このクソバカオヤジ、ぜってーなにかたくらんでる・・・!

そしてその由紀夫の危惧は現実のものとなった。

<つづく>


無事にフジテレビまで入れるのかしら!ひろちゃんは、大好きなSMAPさんに会えるの!?合わせてあげたい!SMAPさんと(笑)!

てことで、次回は来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずってことを人々はもう知りすぎている!