天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?
『Gift番外編』
このページの画像は、すべてyen様の作品です♪
ギフト番外編50話プロローグ編『そういえばあの日は』
今回の話が出来上がった経緯。
赤い怪獣と電話していたら、こう言われた。
「言わなきゃいけないと思ってたんですけど」
「何?」
「忘れてたでしょ」
「何を」
「ひろちゃんの誕生日」
・・・・・・・・・・・・・(汗)
今年の夏、腰越人材派遣センターはなんだか忙しかった。
そんな腰越人材派遣センターの8月18日はこんな感じ。
「社長ー!コンパニオンが来てないって連絡がー!」
「どのパニオン!?」
「あっ、えーっと、ビールです!」
「ビールぅ〜?」
典子から報告を受けた奈緒美は、宙に目線をやり、げっ!と顔をこわばらした。
「それ!千明に行かせてるヤツ!」
「あっ!千明ちゃんの分か!それじゃあーーー・・・!」
「とりあえずすぐ出られる人がいるかどうか確認してっ」
「はいっ!」
イベントが目白押しのシーズンで、腰越人材派遣センターからは、4つのイベントに同時に人を派遣していた。
その中でもそこそこ大きなビール会社のイベントに、千明が緊急で派遣されることになっている。
「あー、でもなー」
「ドタキャンかまされたから、千明ちゃんに行ってもらうことにしましたからねー・・・」
「許せーん!!何が見合いだから行けねぇだぁーーー!!」
「人生かかってんだから、しょうがねぇんじゃねぇの?」
「あんたも電話しなさーいっ!」
「それより千明つかまえろってー!」
腰越人材派遣センター派遣コンパニオンリストを押し付けられた由紀夫は怒鳴り返した。
「奈緒美さーん!ナレーション原稿の手直しFAXがきちゃいましたぁ〜!」
「えーっ!?」
「うわー、どーします?覚えきれないですよぉ・・・」
「野長瀬じゃないんだからどーにかなるわよっ!えっ、でもどうしよっ」
「なんだよ、FAXすりゃあいいじゃん」
「彼女、FAX持ってないのよーー!」
「・・・今時・・・」
情報家電の展示会もあり、そこにナレーターを派遣していた。
しかし、本番は明日だというのに、ナレーション原稿の手直しが!しかもナレーターのうちにFAXはない。
「あんた!そっちいいからこれ持ってってっ!」
「住所どこ?」
うだうだ電話かけるより、荷物を運んだほうがずっと楽な由紀夫が正広からFAXを受け取り、さっさとバックにつめた。
「そっちは進んでんのっ!?」
「ず・ず・ん・で・ま・すぅ・・・・・・」
「ちゃっちゃとやるっ!」
野長瀬の姿は書類の山の向こうに微かに見えた。
緊急の仕事として舞い込んだ、DM作りに、すでに19時間従事している。
「あっ、すぐ手伝います!」
正広も朝7時に出社し、せっせと手伝っていたが、野長瀬はもちろん帰っていない。
「どーしてこんな変形を・・・!」
そのDMは普通に四角に折る訳ではなく、そこがまた手間暇がかかる部分だった。
「えーっ!?違う!全然違うとこいっちゃってるよー!?」
「千明っ!?」
奈緒美も詰問にこっくりうなずいた典子は声をさらにトーンアップさせた。
「違うよ!そこ全然違うって!急いで戻ってー!えーっ!?」
「どしたの!」
「・・・迷ってます・・・」
「ったく・・・!」
奈緒美はイライラと歩きまわりながら、典子の肩に手を置いた。
「はい?」
「・・・行って来て」
「あたしですかぁっ!?」
「だっていないんでしょー!?他のコンパニオンがぁ!」
「いないですけど、だってそんなあたし・・・」
「大丈夫!あんたなら行けるわよ!ねっ、ひろちゃん!」
「うん!典子ちゃんならバドガールもいけるっ!」
「えぇ〜・・・・・」
困り果てた顔で眉間に皺を刻む典子を、奈緒美と正広がせっせと説得をした。ら。
「いや、そんなこと解ってるんですけどぉ〜・・・」
「え?」
「あたし、昨日も遅かったから、顔色がイマ8ってゆーかぁ〜」
「典子ぉ?」
「髪もなぁ〜」
「ビールの試飲缶を配る仕事に、顔色も、髪も、関係あるかい!!いけ!とっとと!!」
典子がいなくなると、正広の仕事は倍以上に増える。
由紀夫は、ナレーターに原稿を届け(うそぉーーー!!!とこの世の終わりのような悲鳴をあげられた)会社に戻ってきたのだが、すぐさま別の仕事で出ていった。
典子はいないし、野長瀬はぐったりとして動きが遅い。奈緒美は人の流れの調整であたふたしている。
DMの納期は19日。
「奈緒美さーん!これ、タックシールもこっちで貼るんだったら、もうちょっと納期伸びますぅ〜・・・・?」
「えぇ〜・・・?えーっとそれだったら、終わった分をどんどん流せるから・・・。ちょっと待ってっ!」
すちゃっ!ぴぴぴぴっ!客先に電話した奈緒美は、普段より1オクターブ高く、上品なトーンで、短い間に季節の挨拶から、ごきげんのおうかがいをすませ、不自然にならない流れでタックシールの話を持ち出す。
「はい、はぁ〜い、それでは、えぇ。いぃえ!受け取りに参りますわ。えぇ大丈夫です。おまかせくださいませぇ〜、ホホホ〜♪」
がちゃん。
「由紀夫!タックシールとってきてっ!」
「兄ちゃん、まだ帰ってきてません!」
「帰ってきたよ・・・」
こうして由紀夫がタックシールを引き取りに行き、18日の22時まで作業は進められた。
その後は、夜食、仮眠、郵便局。また作業が始まり、第2回夜食、第2回仮眠、第2回郵便局の繰り返しで。
溝口正広のお誕生日は過ぎ去っていった。
しかし、果たして本当にそれだけで終わってしまうのか!
作者はともかく、腰越人材派遣センターの面々は心が優しいぞ!?
<つづく>
ふふ、ほんまにうっかりしてたよ。
でも、ひろちゃんは一生懸命仕事してたんだもんね!ねっ!がんばってひろちゃん(笑)!