天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

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ギフト番外編50話前編『そういえばあの日は』

前回までのあらすじ

「自らの誕生日を忙しさにかまけてスルーされた正広。しかしそんなことを気にする正広ではなく、夏中元気に働いて、残暑にもめげず働いて、そして台風が来ても働いた。えらいぞ正広!がんばれ正広!そんな正広くんを神様はみているぞ!」

yukio
 

その日曜日、台風一過で、東京の空は晴れ渡っていた。
「気持ちいー!」
昼前まで寝ていた正広は、窓を開けて晴れた空を見上げる。
「台風、どっかいっちゃった?」
「日本海か?」
「かー、いい天気ー!洗濯日和!」
「主婦か!」
「あらっ、おかーさんは忙しいのよっ。ほら、由紀夫ちゃんっ、由紀夫ちゃんもパジャマ・・・・・・」
「パジャマ?」
「えーっと、それは洗濯できませんね・・・」
由紀夫のパジャマはグッチのシャツ。
「それよっか、飯でも食ったら?」
「ご飯?あれっ!もうできている!?」
「マァマ〜、ゆっくん、パパとは違うからぁ〜」
「あぁ、そうね、そうね!ゆっくん、えらいわっ」
ベッドから降りて、えらいえらいっとソファにいる由紀夫の頭をなでて、ごはんっ、ごはんっ!とキッチンに向かう。

「マァ〜マァ〜」
「なぁにぃ〜?ゆっくーん」
お味噌汁を温めながら振り向くと、ゆっくんこと由紀夫は、ドアの陰から半分だけ顔を覗かせて、うるうるのお目々で正広を見上げていた。
「ゆっくんねぇ、ママとお出かけしたぁ〜い」
「あらぁ、そぉなのぉ〜?って、これいつまで続けんの?」
「え?ゆっくん、可愛くない?」
「可愛いけどぉ〜。出かけるの?」
「おぅ、ちょっと遊びに」
「わーいわーい!パパとお出かけだぁ〜!まぁくん、嬉しいぃ〜!」
「・・・味噌汁飛び散ってるし」
わーいわーいと飛び跳ねる真似をした正広は、まだおたまを持っていて、そこから飛び散った味噌汁が由紀夫の顔と、パジャマ代わりのシャツを直撃。顔はともかくシャツが!と正広を慌てさせた。
「待て!なんだ顔はともかくって!」
「そんなほっぺにちょっとついたくらい洗えばすむけど、これはー!これはまたクリーニングに出さないとー!そんで、シルクのシャツに味噌汁ってあわないしー!」

遅目のブランチどころか、遅目のランチと化した食事の後、二人は出かけた。
由紀夫が少々不機嫌で、正広はご機嫌とりに忙しい。
「そんで、おととい野長瀬さんがね」
「あ、知ってる。でもそれ失恋だろ?」
「ウソ!デートするってゆってたよ?」
「デートして、フラれたんだよ」
「そーなのー?」
「野長瀬、デートのつもりで出かけたら、女の方、3人くらいで来てて、おごらされた挙げ句、それぞれ彼氏と消えたってさぁ〜」
「何それぇ!」

夏はイベントシーズンなので、人材派遣業をしているとコンパニオンとお知り合いになるチャンスも多い。1999年7の月を乗り切った野長瀬は、あぁ!あぁこれで!楽しい夏を!新しい人生を満喫!と思い、積極的だった。
積極的だったが。

「玉砕。最近の若い子は怖いねぇ〜」
自分は最近の若い子の範疇に入れないらしい。
「兄ちゃんの若い頃の方が怖いと思うけど・・・」
「はっ!なんか今、可愛くないことゆった!?まぁくん、可愛くないことゆったっ!」
ぐりぐりとこめかみにげんこつをくらいながら、正広はいたたたたと逃げ惑う。
「いたっ!でも、なんで兄ちゃんそんなこと知ってんだよっ!野長瀬さんから聞いたのっ?」
「いや?本人から」
「本人?野長瀬さんでしょ?」
「いや、そのコンパニオン本人から」
「本人・・・?」
どゆこと?と考えた正広は、はっ!と顔を上げた。
「兄ちゃん!携帯の番号教えあいっこしたねっ!?どの人どの人?あの綺麗な人ぉー!?」
「あの綺麗なって、どの綺麗な、だよ」
「え、あの。ほら・・・」
「ん?あ、正広好みの。足の綺麗な」
「あぁ!あの人足長かったねー!!」
そして早坂兄弟は、この夏に知り合ったコンパニオンの数々を懐かしく思い出し、論評し、それぞれの部門別ベスト3、総合ベスト3を語り合った。

「・・・なんか、俺と兄ちゃんって、好み全然違うねぇ」
「取り合いにならなくていいんじゃん?」
これ以上兄弟になっても、というお上品ではない言葉は、由紀夫の胸にしまわれる。
「うーん、そーだなぁー・・・、ってねぇ!」
いきなり腕をつかまれて、先を歩いていた由紀夫は前につんのめる。
「何っ!」
「だから、なんで、コンパニオンさん本人から、兄ちゃんに連絡が入るんだよっ!」
それは、正広の中で総合2位に輝いたコンパニオンだった(由紀夫は選外)。
「あぁ、だからそれは、野長瀬から聞いたって」
「野長瀬さん、一押しだったのに・・・」
「人の携帯の番号勝手に教えんなってんだよなー」
お気の毒に。
そっと野長瀬の家の方に向かい、手を合わせる正広だった。

二人はそんな風にあれこれ喋りながら、駅に向かう。
「どこいくの?」
イオカードを使う早坂兄弟なので、行き先を知らなくても駅には入れた。
「えっとねー」
「うん」
「横浜」
「横浜かぁ!」
横浜と言えば、中華街、横浜と言えば、みなとみらい!横浜と言えば八景島!ってそれは遠いのかなぁ。
わくわくしている正広は横浜駅で電車をおろされ、そこからタクシーに乗せられた。
「この先、混んでるからさ」
由紀夫がいい、混んでるんじゃあ、タクシーだってダメじゃん。と思った正広がみたものは。
「ど!どしたの!あれ!」
ぎゅうぎゅう詰めの電車だった。
「桜木町から先が大混みなんだよなー」
「何で?何が?」
「みんな横浜スタジアムにいくからね」
「横浜スタジアム?中日・巨人戦?」
「それもう終わったんじゃねぇのか?」
「あ、直接対決は終わったんだ。あ!横浜・巨人戦!」
正広の中で、球場にたくさんの人が集る=巨人戦だった。
「まぁ、それもあるけど・・・」

わーい!巨人戦っ!
とタクシーを降りた正広を迎えてくれたのは。
「・・・・・・・・・これって・・・・・・・?」
「すっげー!なんだこの人数!」
大量の、どこから沸いて出た!と言わんばかりの女の子たちだった。
「何?あれ?」
「正広くん」
「ん?はい。何?だって、あのうちわ・・・」
「そう。今日の横浜スタジアムでは、SMAPの99年夏のツアー、ファイナルコンサートをやっとります。そしてこれが、チケットです」
「えっ!?」
正広は目をぱちくりとさせた。
「チケット手に入らないってゆってたよ!?」
「入ったんですねー。はい、遅れたけど、誕生日プレゼント」
「うわーーーー!!!!ホントにぃぃーーーーーー!!!!??????」

本当だった。
正広はグッズ(うちわ、携帯ストラップ、パンフレット)を買い、席につき、ドキドキしていた。
うわー。うわー。うわー・・・・・・。
うわー・・・・・・・・!

あまりのことにちょっと脳に血が行き渡らなくてぼーっとしてきた。

そんな正広の隣で、死ぬほど場違いだ・・・と思っている由紀夫は、今日までの長い日々を振り返っていた。

「パーティーしてないわ!!」
奈緒美が突然立ち上がり怒鳴ったのは、8月も終わろうとしている頃だった。
「なっ、何がですかっ?」
当時、コンパニオンたちとまめに連絡を取り、ちょっとウキウキしていた野長瀬が驚いて立ち上がる。
「ひろちゃんの誕生日パーティよ!あんたどーすんのよ!由紀夫っ!」
「えっ!?パーティーしてないって、しなきゃいけねぇのかっ?」
「いけないわ!大体、プレゼントだってまだ・・・っ!」
「俺はあげたけど・・・」
「えっ!由紀夫ちゃんあげたんですか!?」
「ウソ!何?何あげたのっ?」
「・・・どこでもいっしょ」
「つっまんなーい!!!」
奈緒美は大袈裟に天を仰いだ。
「子供じゃあるまいし、ゲームじゃないでしょー!!」
そんなこと言ったって、あいつは相当喜んだぞ、と思う由紀夫。しかし、口を挟む隙はなかった。
「とりあえず計画建てなきゃ。プレゼントも、もっとこましなもんね。オーダー間に合うかしらー」
「間に合うかどうかは、いつするってのが決まってからなんじゃあ・・・」
「それを考えろってゆってるのよ!」

「何をですかぁ?」
そこへお使いから正広が帰ってきたため、話は中断。
奈緒美、由紀夫、野長瀬、典子、あとから加わった、ジュリエット星川、菊江、とで、水面下での仕事が続けられたのだった。

そんなある日!

<つづく>


やなとこで続くなー(笑)
そっかぁ、ひろちゃんもコンサート来てたんだぁ〜(笑)

てことで、次回は来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずってことを人々はもう知りすぎている!