天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

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ギフト番外編50話中編『そういえばあの日は』

前回までのあらすじ

「正広は8月18日の誕生日を比較的あっさりとすごした。が、9月26日、いきなりた誕生日プレゼントとして、SMAPのコンサートに連れてきてもらい興奮!しかしそのためには、水面下で大変なことが行われていたのである!」

yukio
 

「む!」
「どうしました社長!」
「お茶がまずい!」
「えっ!?そんなバカな!」
正広がお使いで出ていたため、代わりにお茶をいれた野長瀬がすっ飛んでくる。
「社長の好みはこの野長瀬、完璧に把握しています!お湯加減から、その濃さ、量にいたるまで・・・!一体何が!何がお気に召さないんです!」
「そこまで解ってるって言うんなら、解るでしょう」
「・・・いれてる人間の顔が悪い」
「解りゃあいいのよ、解りゃあ!」
がっし!と湯飲みをつかみ、一気に飲み干した奈緒美は、かなりやさぐれていた。

正広の誕生日プレゼントとして、これ!というものが見つからない上、いつパーティするのか、の具体案が出てこないからだった。
「ちょっとー、由紀夫、あんたさー」
「えっ?俺?俺がいれんのか?」
「誰がお茶の話してんのよ!ひろちゃんの誕生日!考えてんのぉ!?」
「・・・もう9月も中旬まできちゃってんじゃん・・・」
「だから急いでるってのにぃー!!」
きっ!と奈緒美は由紀夫を睨んだ。
「大体、あんた!自分がもうプレゼントあげたからって、全然本気で考えてないでしょっ!」
「意見だしたじゃん!高級焼き肉食べ放題って!」
「そんなの!そんなのありきたりよぉぉーーー!!!」

ありきたりでも、全員嬉しいじゃねぇか!!
そんな由紀夫の気持ちが伝わったのか、典子、野長瀬はこくこく!とうなずいていた。

「だめね!」
ばーん!とドアが開き、ジュリエット星川がづかづか入ってきた。
「焼き肉はだめ!」
「何でだよ」
「菊江!」
さっ、と菊江がタロットカードを差し出す。
「ほら、死神のカードが」
一番上をめくり、厳かにジュリエット星川は言った。
「食中毒で誰か死ぬかも!」
踊るステップ、歌のリズムで彼女は言ったが、単に、食べ放題の焼き肉屋でたらふく食べたばっかりだったので、違うものがいいなぁと思っていただけだった。
しかし野長瀬は、おそらく食中毒で死ぬとしたら自分!と判断したので、焼き肉はやめてもらおうと硬く決意した。
己の役柄をよくわきまえている男だった。

「じゃーさー、どーすんだよー」
自分はちゃんとプレゼントを渡し、とりあえずちょっと豪華に食事にもいった由紀夫は、おっそろしく投げ槍になっていた。
とりあえずもう3時が来るし、おそらく正広がお菓子とともに帰ってくるはず。
その話はやめた方がいいんじゃねぇの?と言おうとしたら。

「ただいま戻りましたー!社長!お客様です!」
『社長?』
正広の声に全員が入り口を向いた。正広は基本的に奈緒美のことを『奈緒美さん』と呼んでいるのに、なんだ『社長』って、と。

「あぁん、ここだったのねぇ〜〜!!」
「げっ!!」
「あんたっ!!」
奈緒美とジュリエット星川の顔色が変わった。
「やだやだ、ひーさーしーぶーりぃー!」
「ひっ、ひろちゃん!あんた、なんてもん拾ってきたのよっ!」
「あら、拾ったなんてひどぉい。ねぇ、ひろちゃぁ〜ん、違うわよねぇ〜」
うふふぅ、と笑いかけてくる女性は、言うなれば千明を奈緒美の年代にして、しかし服装は千明よりも派手といった感じ。
こーゆー人、見たことある・・・。
由紀夫は思った。そして、脅威の記憶力は、ぱっ!とその場面を思い出させた。
『あぶない刑事の、浅野温子だ・・・』
そして、そういえば、顔立ちだの、体型だのも似ているのだった。
「ほっそー・・・」
典子が呟き、そっと、自分の二の腕に触れた。

「ね、ね、すごい久しぶりねぇ〜、ねぇ、元気だったぁ〜?」
「あぁ、元気元気、元気だったわよ、何よあんた!あんた日本にいたの?」
「昨日帰ってきたのぉ〜、それで奈緒美やさなえちゃんに会いたくってぇ〜」
「さなえって言わないでよっ!」
奈緒美、ジュリエット星川、そして昔からの大親友なのぉー!誰が親友じゃー!と、どうも会話の噛み合わないお客様、れい子は、非常に高いテンションでしゃべりつづけた。
「女が3人よると」
「姦しい」
そんな古典的なネタが誰の頭に浮かぶほどの騒ぎっぷりだった。
「・・・どしたの?あの人。拾ったの?」
典子に尋ねられて正広は小さくうなずいた。
「・・・落ちてたんだよね・・・」
「あのカッコで!?」
日本中探しても、原宿でしか見られないようなごちゃごちゃとした色使いの、不可思議なスカートに、不可思議なブラウスに、不可思議なベストに、不可思議なヘッドドレスを身につけていた。
「それで、『奈緒美ー!さなえちゃーん!!』って叫んでたから・・・」
「まぁ、そんなおかしなヤツが呼んでる奈緒美ってのは、まぁ、うちの奈緒美だよな・・・」
びしっ!ライターが飛んできたが、由紀夫は華麗なフットワークでよける。そして野長瀬の顔面に直撃。
「いたたー!どーして俺なんですか!!」

そして女3人の話は終わる様子すらなかったため、他の面々は、自分たちの仕事を終えて、それぞれ勝手に帰ったのだった。

翌日。
れい子はまたやってきた。
その時事務所には、正広以外の全員が揃っていて、出勤前にコーヒー飲ませろとジュリエット星川と菊江までがいた。れい子は由紀夫に投げキッスをしながら、しゃなりしゃなりと入ってくる。
今日は着物だった。
しかも振り袖。
柄は、キューピーとクマ。
頭には漆の塗り箸が何本も刺さっている。
「・・・・・・どこにいきゃあ、そんな着物が手に入るのよ」
「デザインbyれ・い・子♪」
ソファに座ったれい子は、ねえねえと由紀夫を手招きする。
「ねぇ、この子!この子貸してくれないっ?」
「はぁっ!?」
腕をつかまれ、由紀夫は驚いた。
「この子、この子ー!」
「ちょっとあんた!何よ、貸せって!手ぇ、離しなさいよっ!」
「ねー!だめぇ〜?この子と出かけたら楽しそうなのにぃ〜!」
奈緒美のとこ、人材派遣でしょう?と首を傾げるれい子の手から、さっさと腕を抜き取った由紀夫は、
「俺は、違うんです。俺は届け屋ですから」
「届け屋?」
「そうそう。由紀夫は届け屋なんで、デートクラブみたいな真似はできないの!」
「あーん!違うわよぉ、ちょっと一緒に行ってもらいたいだけなのにぃ〜。個人的にどぉ?」
首を傾げられ、下から見上げられる。
年の割にチャーミングな人だとは思うけれども、それはあくまでも距離をおいた時の話。この人と一緒に出かけるのは、ちょっときっついなぁ・・・と思った時。
「SMAPのコンサートなんだけど」

その言葉に、事務所中の人間が集中した。

「え!?あんたチケットもってるの?」
「もってるわよ。2枚貰ったの」
「貰った!?」
「うん。ダーリンが貰ってきてくれたの」
れい子は胸の前で手を組み合わせた。
「一緒に行こうねってゆったのに、彼、仕事でこれなかったの・・・」
「それじゃ、香港!?」
「そう。でも、チケット無駄にするのもどうかなぁ〜、と思ってぇ、それで日本に戻ってきたのぉ」

全員の頭の中に、SMAPのコンサートチケット、という言葉がぐるぐる渦を巻いた。
それは間違いなく正広が喜ぶ!
どうにかしてこいつから巻き上げ・・・いやいや、譲っていただかなくては!
「でも、うまく言わないと譲ってなんかもらえないわ・・・」
「そうだね。何か考えないと・・・」
典子と野長瀬がこそこそ話し合う。
由紀夫は、そのチケットと引き換えなら、デートクラブくらいしちゃってもいいなと思ったし、奈緒美は、死ぬほど派手な服を売ってる店を連れ歩いてもいいと思った。ジュリエット星川は、素晴らしい結果の占いをしてやろうと思った。(世間ではそれをいかさまという)
「れ・い・子、ちゃぁ〜ん♪」
「ん?何っ?」
奈緒美の声音がいきなり変わったので、れい子は、目をぱちくりさせながら振り向いた。
「そのコンサートってぇ、日はいつなのかなぁ〜」
「コンサート?えーっとねぇ。9月の、26日」

「その日はいいですね」
菊江が静かに言った。
「菊江?」
振り向いたジュリエット星川も、あ、そうか、とうなずく。
「うん。その日はいいわよ。その日はいい」
「え?いい日なのっ?」
喜んだれい子は、きゃー!と由紀夫に抱き着く。
「それじゃ、ご一緒しましょー!」
「え、いや。でもまだ日がありますよねぇ」
一転愛想よく由紀夫は言う。
「そうよ。大体、なんで26日がコンサートなのに、15日からとか来てんのよ」
「里帰りくらいいいじゃなぁ〜い!」
「まぁまぁ、れい子、それはそれでいいじゃない。まだ日は先なんだしさぁ。久しぶりの日本でしょ?日本らしく、ちょっと、今日はそばでもどう?」
「あー、食べたぁ〜い!」
「由紀夫もいくでしょ?」
「行きます」
「あら嬉しー!」

こうして、香港マダムれい子から、SMAPのコンサートチケットを奪還せよ作戦が発動されることになったのだった。

<つづく>


誰なんだ香港マダムれい子!えっと、あぶない刑事のかおるちゃん風の人です(笑)いや、なんとなく(笑)なんかかわゆいかと思って(笑)
ひろちゃんのコンサート風景はなんか解るけど、由紀夫はどうしてるんだろう(笑)気の毒だな、由紀夫(笑)

てことで、次回は来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずってことを人々はもう知りすぎている!