天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

ギフト番外編51話『乾電池を貰った』

今回は
1月から、木村拓哉がドラマに出るが、それは、車椅子の常盤貴子と、介助する木村のラブストーリーという、どーしよーもない、30年前くらいの設定だそうだ。1周回って面白いかもしれんが、脚本家が例のナニなので期待はできない(笑)。なので、私好みの車椅子の女の子を出してみた。・・・車椅子の必然性はどこにもなかった(笑)

yukio
 

「ににに、にいちゃあんっっ!!!!」
「なななななんだっっ!?」
「乾電池どこにあるっ!?」
「乾電池?」
「あぁ、乾電池っ!どぉこぉぉぉーー!!」

ごく当たり前の夜、由紀夫が家に帰ったら正広がパニックしていた。
「買いにいけば?」
「えっ、でも時間が・・・っ!」
「コンビニ、そこじゃん」
そこ、というほどではないが、2・3分も歩けばコンビニはある。時間は9時半を回ったところ。
「うーーー・・・!自転車、貸してっ!?」
「あぁ・・・」
いいけど、何をそんなに急いでるんだ??
と言おうとした時には、正広は由紀夫の横を摺り抜けて部屋を出ていっていた。
「・・・どーしたんだ?」
荒れた部屋を見て、由紀夫は呆然と呟いた。

正広は急いでいた。
慣れない兄の自転車だったが、正広のスーパースペシャルデラックスけったマシーン正広号よりも入口近くに置いてあるし、なにしろ早い。
コンビニの入口までダッシュをかまし、しかし丁寧に自転車を止め、ちゃんと鍵をかけた正広は、明るい店内に飛び込んだ。
飛び込んで、乾電池の棚を見て、嘘・・!と目を丸くする。
単一がない・・・!
正広が求めている電池は、単一。
一ってくらいだから、基本サイズなのに!なんでないんだ!このコンビニ!!
どんなに思っても、単一電池が入っていたと思われる空間は、ぽっかりと空気だけを置いて正広を嘲笑う。
この辺りに別のコンビニは・・・!
以外にコンビニが少ない地区で、他の店が思い浮かばない。もう時間もないのに・・・!
慌てて自転車を走らせていた正広は、小さな四つ角に無造作に突っ込んで行き、
「おっとぉ!」
「あっ!ごめんなさいっ!」
「びっくりしたぁ!」
明るい女性の声がケラケラ笑う。
「危ないよぉ、交通事故しちゃうじゃない」
「すみません、ほんと大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫、大丈夫。どしたの?すごい慌ててる?」
ニコっと笑った女性は、ちょっと猫みたいな、ちょっと釣り上がった目をしていて、綺麗だった。
見上げられて正広はドキっとする。
「あの・・・、えぇ、えっと、電池を・・・」
「電池?コンビニにあるんじゃないの?」
「この辺、コンビニありますっ?」
「いや、あそこだけど・・・」
彼女が指差したのは、さっき自分が出てきたコンビニ。正広は肩を落とし、あそこにはなかったんです、と告げる。
「あら」
それは困ったわねぇ、と首を傾げた彼女は。
「でも乾電池くらいだったら、うちの商店街にもあるんじゃないかな」
「商店街?」
「この裏手あたりになるんだけど、あるのよ、しょっぼい商店街が。でも、店閉まるのが早いから、あたしはもっぱらコンビニ利用なんだけどね」

正広は、てきぱきと場所を指示された。
駅とも、事務所とも逆方向になるため、今まで行ったことのない場所。
「多分〜・・・酒屋とかが開いてると思うのね、そこ行って、貴子から聞いたけど、乾電池ないかって言ってみて」
「タカコさんって言うんですか?」
「そうよ。貴族の貴で、貴子。ぴったりだと思わない?」
「あ、そうです、ねぇ」
「君は?」
「溝口正広です」
「ミゾグチマサヒロかぁ。マサヒロくんね。OK。それじゃあ急いだ方がいいんじゃない?あたしもすぐおっかけるけど」
「え!いえ、押しますよ」

「押す?」
「え、だって・・・」

不思議そうに貴子に首を傾げられつつ、正広は自転車を降りた。
シンプルな長袖のTシャツに、ゆったりしたパンツ。化粧っけのない、でも綺麗な顔をした貴子は、車椅子に乗っていた。

「・・・あぁ!これ!?大丈夫、大丈夫。だって、時間かかっちゃうわよ。自転車乗ってたら押せないし、歩いて押してったら、自転車取りに戻ってこなきゃいけないじゃない?あ!じゃあ、自転車はあたしが押す!?」
「え!?いや、自転車なんてどうでも・・・」
「どうでもって!この自転車高そうじゃない!乗っとかないと危ないって。あたしは近所だから全然平気。慣れてるから」
ほらほら、と自転車に乗せられ、もう1度場所を指示される。
「多分ねー、酒屋の親父、かなりいい調子になっちゃってると思うんだけど、すぐ行くから安心してね!」
GO!と言われて、大丈夫かなぁ、と振り向いた正広は。

「いい自転車っぽいのに、遅いわねぇ!」

隣に並ばれていて、死ぬほど驚いたのだった。

驚いた正広のスピードは最後まで復活せず、ほぼ車椅子と並走。酒屋についたのは同時だった。
「おじちゃーん!」
「ん?おっ!貴子どーした!どこで誘拐してきた?」
「ふふふ、白金のお屋敷の裏口で。するかい!」
「白金のお坊ちゃんって感じでもねぇけどなぁ!」
酒屋は、夜には立ち飲み屋になるらしく、野長瀬を120%おっさんっぽくしたようなおじさんたちで賑わっていた。
「あんた、お坊ちゃんっぽくないって言われてるわよ!」
きぃっ!と貴子が振り向き、正広は真剣な顔で言った。
「僕、白金じゃなくて、成城のお坊ちゃんなんです」
「そうそう。この子は成城で、ロールスロイスから降りるところを誘拐した!って、あんたもノッてんじゃないわよ!」
もぉ!と正広を叩いた貴子は、正しい酔っ払いの顔色をしている店主に、乾電池ない?乾電池、と尋ねる。
「乾電池ぃ?」
「マサヒロくんがいるっつってんの、乾電池」
「成城のぼっちゃんなら、店中買い占められるだろう〜、乾電池、乾電池・・・。お、あったわ」
カウンターの下から、新品の乾電池が一組出てきた。
「あ!よかったじゃん。乾電池!」
二本パックでシュリンクされている。

しかし単3だった。

「・・・すいません。僕、あの、単一を探してて・・・」
「単一?」
「単一ってどんな??」
きょとんとした貴子だったが、あぁ!おっきいヤツね!と手を叩く。
「おじちゃん、違う、違う。もっとでかいヤツ!あの、懐中電灯とかに入ってる・・・・・・」
そして貴子の視線は、店の柱にぶら下げられている懐中電灯に向かう。
「・・・あれに入ってるんじゃないのぉ?」
「あれ出したら懐中電灯使えねぇだろ!」
「何も起きないわよ!」
「そんな!いいですいいです!あの!こちらの商店街って、電気屋さんは・・・」

まさかよその人の懐中電灯からでも乾電池を抜きたいほどのことではなく、正広は慌てて仲裁に入る。
「電気屋さん・・・」
貴子は呟き、店主は時計を見る。
「9時55分だなぁ」
「・・・無理ねぇ・・・」
「閉まってますか?」
「店が閉まってるのはもちろんなんだけど、あそこのおばーちゃん、8時には寝るのね。そんで5時までは何があっても起きないのね。1回、電気屋のとなりのうちが小火騒ぎした時も、起きてこなかったのよ。今度火事があったら、運び出さなきゃやばいって感じだから、乾電池くらいじゃ起きてくれないと思うなぁ・・・」
命かかってても起きないからね、と笑う一同だったが、正広は青くなっていた。
10時まで後5分しかない・・・!
貴子は時間を聞いた正広が青ざめたことに気づき、時間がないの?と尋ねてくる。
「えぇ・・・。あ、でも。いいんです。ご親切にありがとうございました」
ぺこん、と頭を下げ、店を出る正広に貴子がついてくる。
「乾電池ねー・・・。時間、後ちょっとだけ、いい?」
「え?」
「ちょっと。1分半くらい」
何だ?と確認する間もなく、貴子は軽々と車椅子を操って、近所の家のドアを叩き、単1の乾電池持ってきて!と声をあげている。
「た、貴子さん!いいです!いいですってば!」
「乗りかかった船よ!すぐ集るから!ほら!自転車のって!」

「貴子ちゃーん?」
最初に顔を出したのは、ざ・おばちゃん!という名に恥じない、立派なおばちゃんだった。
「何、単一って。どれ?」
「えー・・・、あ!これだ!ちょっと貸しといて!」
そうして次々に乾電池をGETしてくれた貴子は、そのすべてを正広に渡してくれたのだった。

「ありがとうございます・・・!」
「いいからいいから!とりあえず急いで!」
「でも、この乾電池・・・、あ!!」
「何!?単一じゃないのまざってる?」
「いや、僕、財布忘れてて」
「お金もいるの!?いくら!?」
「じゃなくってぇ!」
ぽっけから財布を取り出そうとしている貴子を押しとどめる。
「そうじゃなくて、この乾電池のお金です!」
そう言われて、あぁ!と貴子がうなずいた。
「じゃあ、また、乾電池返しに来て」
にっこり笑った貴子の後ろで、赤い顔の酒屋店主が、「お父さんをつれてこい。成城の社長を」と言っている。
いつの間に成城の社長の息子になったんだろう・・・。
「すぐ返しにきます!あのー、兄と一緒に!」

お礼をしたくても、財布も何ももってない状態では、あまりに中途半端だと想った正広は、まずうちに急いだ。
すごい素敵な人に会ってしまった!と思いながら。

 

正広がうちに到着したのは、10時4分。
「ただいまぁーー!!」
「おかえり・・・。あったか、乾電池?」
「あった!えーっと、ラジオぉぉーー!!」
「ラジオ?」
由紀夫は、かけていたCDを止めた。
「ラジカセじゃダメな訳?」

・・・・・・・・・・・・・??????????
正広の頭の中に、「?」マークが200個踊った。
「そのラジカセ・・・、電源コードが壊れちゃって、聞けなかったんだ・・・。だから、電池で聞けばいいやって思って・・・・・・・・」
「電源コードは、規格とかが合えば、別のコードでもいけるぞ?」
「ほんとにっ!?」
「ホント。ほら」

由紀夫の手によって、ラジカセからラジオの放送が流れてくる。
正広が聞きたかった、「今夜GLAY4人生登場!絶対聞かなきゃ後悔する!」といった風情の番組だった。

「・・・・何してたんだろ・・・」
貴子たちから借りた乾電池が、コンビニ袋の中でかさかさと音を立てた。

<つづく>


次回、貴子と愉快な商店街の人たち再登場!!

てことで、次回は来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずってことを人々はもう知りすぎている!

今までのGift番外編へ

What's newへ

SMAPレポートへ

SMAPメニューへ

トップへ