天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

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このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

第8話『秋の紅葉を届ける』

めっちゃ短い前回までの話。

「腰越奈緒美の夏バテは翌朝にはすっかり解消。しかし、彼女の広いリビングには、酒盛りの果てにぶっ倒れた人でなしがごろごろしていた。そして季節はすっかり秋」さて楽しい秋の行楽はどう!

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今日の由紀夫ちゃんのお仕事

その1.届け物「紅葉」届け先「溝口正広」

「うわぁ」
キッチンで朝食のスクランブルエッグ(オムレツより急遽変更)を作っていた由紀夫は、正広の素っ頓狂な声にひかれて顔を出す。
「すげー!」
さっきまで起きてるんだか、寝てるんだがよく解らなかった正広が、パジャマの上着を半分脱ぎかけのまま、ポカンと口を開けてテレビに見入っていた。
ん?と由紀夫も覗き込むと、紅葉の山が映っている。
「どした?」
「すごくねぇー?これ、ヘリの映像なんだけど、すっげー、綺麗―っ!」
確かにオレンジを基調にその山々は鮮やかな明るい色で埋め尽くされている。
朝のワイドショーのよくある映像で、バックでは天気予報が流れている、ただそれだけの画面をえらく感動したように正広は眺めていた。

入院してた頃出歩けなかったのはもちろんだが、元気だった小学生時代にも正広はあまり遠出をしていない。グレて家に寄りつかない由紀夫(当時、武弘)より、素直な正広(しかも実子)の方が可愛いのは当たり前で、溝口の両親は正広をあちこちに連れ出したがったのだが、正広は滅多に首を縦に振る事はなかった。
「そんな顔して」
呆れたように由紀夫は言う。
「遠足とかでも行ったことあんだろ」
「あるけどぉ!こんな綺麗なの見たことねーもん!」
そうかぁ?と由紀夫は首を傾げる。自分がまだ小学生で、正広が生まれてなかった頃、溝口の両親は休みの度ごとにどこかへ連れて行ってくれた。
「おまえも連れてってもらっただろ」
「あー、でも、俺―…。ずっと野球の練習あったから」
『もー、盆も正月なくってぇー!』と正広は言ったが、そんな強いチームじゃなかった事を由紀夫は知っている。
多分、自分のせいなんだなと由紀夫は思う。自分に気を使って、ろくに出かけもせず…。

「行ってみるか?」
「え?」
「今度の休み」
何時の間にか飛んで来ていたしーちゃんを頭に止まらせたまま、ぽけーっと画面を眺めていた正広は、くるん!と兄の方を向く。
「行く!行きたい!!」
「解った。解ったから、脱ぐんだか着るんだかはっきりしろ」

そして由紀夫は、持ったままのフライパンから、余熱でいい感じに出来上がったスクランブルエッグを皿に移す。半分パジャマを脱ぎかけにしていた正広は、あわあわと着替えてしーちゃんともども朝食のテーブルについた。

「兄ちゃんって、ホント器用だよねぇ」
トーストと、コーヒー、スクランブルエッグ、トマトサラダという朝食を前に、正広は感心したように何度もうなずく。
正広は朝に弱く、目覚ましをかけて必死に起きようとはするのだが、その目覚ましがなってる事に気付くより早く、由紀夫が起きてしまう。その度に、正広はごめんなさいっ!と謝った。元々朝食を食べていなかった由紀夫は全然気にしていなかったのだが、あんまり言われるもんだから、それじゃあ、と言い出した。
『寝る前にじゃんけんして負けた方が翌日の朝食を作る』
それが最近の早坂家の約束事になっている。
「そうか?これなんて、崩れオムレツだぞ?」
「でも、ふわふわじゃん」
「お世辞はいいから、トマト食え?」
にっこり笑って由紀夫は言い、にっこり笑った正広は、ゆっくりと横を向き、しーちゃんに向かって小さく舌を出し、しーちゃんは、諦めたら?というように、小首を傾げた。

「のっながっせさーん!」
腰越人材派遣センターのオフィスで、正広はリサーチに励んでいた。
「秋の行楽!お弁当と言えば!?」
「えっ?」
ここで打てば響くような答えを返してくれないのが、野長瀬であろう。
「お弁当?ひろちゃんお弁当作るの?」
「そう。だからぁー、秋の行楽だよ、行楽。何持ってく?」
「行楽…。秋の芋掘り?」
「そじゃなくってぇー!お弁当でしょ、お弁当―」

「どこ行くのー?」
書類整理に飽きた典子が口を挟む。
「えっとねー」
嬉しそうに正広は言い、ふと、そーいや場所を知らないって事に気がついた。
「んーーーーー、とぉー…??」
「由紀夫さんと行くの?」
「そう」
「じゃあ、千明ちゃんには内緒にしとかないとね」
と典子は笑う。
「何で?」
「行きたがるからに決まってるじゃない」
ケラケラと言われ、あ、あ、そっかと、兄と千明のコントのようなやり取りを思い出して、正広も笑う。
「そっかぁ、秋の行楽ねー」
「典子ちゃんは?」
「お弁当?」
「うん」
んー…、と典子は考える。
「…そーゆーのはあんまやった事、ないなぁ」
「そう?」
「ほら、旅行とかって、向こうに行って美味しいもの食べたりするのが楽しみだもん」
「あ、そっかぁ…」
ここのところ趣味化しはじめている料理。せっかく紅葉を見に行くんだし、その下でお弁当って思ったんだけど…。大人はそういう事、しないんだ、と正広は心で呟く。
「秋だったら、あたし、京都がいいなぁー。紅葉眺めながら湯豆腐!」
「秋と言えば、食欲の秋!」
次から次へと食べ物の名前をあげていく野長瀬を、驚いたように正広は見つめていた。

「田村ぁー」
珍しく油断していたのか、田村のペントハウス(という名のボロ屋)のドアを開けた由紀夫は、思いっきりスモークをぶちかけられ、ムッと険しい表情になる。
「て…めぇーっ!」
足音も荒く部屋に入った。
「何すんだよっ!」
部屋のあちこちに仕込まれたスピーカーから、田村の笑い声が響く。
『ノックグライ、シロー!』
「おまえがそんな繊細なタマかよっ!ちょっと!どこ!」
部屋の中央に仁王立ちで言えば、えっ、うそぉ!という隙間から、ずるずると田村が現れた。座り込んで、由紀夫を見上げてるその表情は、親し気な雰囲気を醸し出してないと言えないこともなかった。
「な、なぁんだよぉ」
そのままの表情で、田村が口を開く。
「あのさぁ」
その田村の前に、ひょいと屈んだ由紀夫は、部屋のあちこちに目線をやった。
「前、カーナビ作ってなかったっけ」
田村はめったに外出をしないし、もちろん、車も持っていない。当然、カーナビにもなんの用もないのだが、どういう訳か、何台も部屋に置いてある。単なる趣味で、あれこれ改造をくわえているらしかった。
「あれってさぁ、ポータブルで、歩いてる時も使えるんだろ?」
「そ、そーだけど…」
「それさぁ」
にーっこりと、とびっきりの笑顔を田村に向ける由紀夫。
悪魔の笑顔だ…、と田村は思った。
「貸して」
由紀夫は、田村に要求を退けられたという記憶がない。また、田村も、要求を退けられた試しがない。あるのは、ただ、とにかく抵抗した記憶ばかりで、結局今日も田村の傑作カーナビは、由紀夫に奪い取られる運命を甘受した。
「これって、経度、緯度、とかで目的地設定すんだろ」
「そう、色々あんだけど、ピンポイントでそこってのが、できる」
ふんふんと肯き、立ち上がった由紀夫は、ついでのように言った。
「今朝、8時前のテレ朝で、紅葉の山が映ってたんだけ、それがどこの映像だったか、調べてくんない?」
「…あぁ?」
「解る?」
「…おい、元記憶喪失。俺をなんだと、思ってる??」
「…?田村、だろ…?」
心の底から不思議そうな顔で、由紀夫は答え、そして出て言った。

なんで…、と呆然とした田村はだったが、もしかしてあいつと、奈緒美って、本当に親子じゃねぇのか?あの強引さはそっくりだぞ、と思いながら調査にかかった(電話でテレビ局に問い合わせすりゃあ済むんじゃあ!?)。

翌日、出張(実際はエステ)から奈緒美が帰って来た。
「あれ?」
ご機嫌で帰ってきた奈緒美は、正広を見て言った。
「顔色悪いけど。大丈夫?」
「え?んな事ないですけどー…」
そう答えたものの、ほんの少し正広は元気がなかった。紅葉を見に行く=お弁当と直結する発想は、やっぱり子供っぽいよなぁと思えて。
「ひろちゃん、由紀夫ちゃんとお出かけするらしいんですよ、秋の行楽で」
何でも、社長には報告!という野長瀬が、几帳面にも報告した。
と、聞いた途端、奈緒美はあら!と手を叩く。
「じゃあ、お弁当作らないと、お弁当」
「え?」
「行楽にはお弁当よ、お弁当。そーだ、ひろちゃん、あれ作ったら?」
「え、何を?」
いそいそとキッチンに向かいながら奈緒美は楽しそうに言った。
「おいなりさん」
「おいなりさんー?」
お母さんのエプロンをおいかける子供のように奈緒美にくっついていきながら、正広は尋ねる。
「社長のおいなりさん、絶品なんですよ!」
同じくくっついて来ていた野長瀬が言う。
「そうなんですか?」
「そーなのよぉー」
ふっふっふっ!と得意げに奈緒美は笑った。
「これはね、由紀夫も気に入ってんの。ひろちゃんには、この奥義を教えてあげましょうともさ!」
綺麗なスーツの上にエプロンをして、綺麗に手入れした爪が汚れるのも気にせず、奈緒美は正広に、腰越家特製いなりずしの作り方を懇切丁寧に教えた。

そっか。お弁当作るのが当たり前だって思う人も、いるんだ。
なんで俺ってこんな単純なんだろ。
いきなりケロリンとした正広は思う。やっぱ、お母さんは違うなぁ…。
かなり綺麗なカッコしてるんだが、どうも『お母さん』のイメージからの脱却を図れない腰越奈緒美(年齢不詳)であった。

端から見てて、はっきりと浮かれてると解る正広とは対照的に、由紀夫は非常に落ち着いて見えた。が。田村からカーナビを奪った足で、そのままレンタカー(4駆)の予約をし、なんなら下見にでも行くか?というくらい、ひっそりとノリノリだった。
そんなこんなで金曜日。週末の天気は晴れ。
「しーちゃんも行く?明日、一緒にさぁ」
「逃げんじゃねぇか?」
「逃げないよ、しーちゃんはー。なー?」
肩に止まったしーちゃんに、そっと顔を寄せると、しーちゃんもそのまま大人しくしていて、と、突然、正広がくしゃみした。しーちゃんが驚いて、肩から頭に動く。
「…あー、びっくりした」
「大丈夫か?」
「ん、しーちゃんの羽根かなぁ」
くしゅくしゅと鼻の下を擦り、もう寝よ、とベッドに潜り込んだ正広は、あ、と体を起こす。
「兄ちゃん、じゃーんけーん」
「ほい」
ビール片手にテレビを見てた由紀夫が、正広を見もせずにグーを出し、正広はパー。
「また、兄ちゃんの負けー!」
「えっ!?おまえ、人が見てないと思ってズルってんじゃねぇのかっ?」
「ちがうもーん。兄ちゃん、いっつもグー出す」
けたけた笑いながら再度ベッドに潜り込んだ正広は、由紀夫がわざとグーばかり出す事に、まだ気付いていなかった。

翌朝。目覚ましがなるより先に起き出した由紀夫は、とりあえず朝食の準備にかかる。
広くもないキッチンには、絶対作る!と正広が宣言したいなりずしの材料がすでに準備されていて、それをどうにかしないよう気をつけて、大してレパートリーのない朝食を作った。トーストは正広が起きてから、と思いながらいつまで寝てんだ?と様子を見に行くと。

「…正広?」
明らかに様子がおかしい。
「おい、正広」
寝息の荒い正広の額に手を当てて、その熱さに驚いた。
「熱?」
パっと手を離して、正広の眠りを妨げないようにしながら、冷蔵庫に直行。冷凍庫の定番アイテム、アイスノンを取り出す。
もう、この辺り手慣れたもんで、正広が熱を出したからといって、いちいち驚いたりはしない。
アイスノンをタオルでくるんで、そっと正広の後頭部に腕を差し入れる。なるべく動かないように気をつけながら頭を上げさせたんだが、その振動で正広が目を覚ます。
「おはよ…」
低い声で静かに告げると、寝起き+熱で潤んだ瞳が、じっと由紀夫を見上げる。
「…俺…?」
「熱あんね」
「うそぉ…っ!」
大声を上げた正広だったが、その声は掠れていて、よく聞こえない。
「ない、ないよぉ…」
「自分でも解んだろ。ちょっと待ってな、体温計…」
「ない、って、ばぁ!」
由紀夫を止めようと体を起こした正広は、目の前がぐらりと揺れるのを感じて、そのままベッドに倒れ込む。由紀夫の腕がその体を支えて、なんとか衝撃はカバーした。
「いいから、寝ろ」
「やだぁ…」
「やだじゃなくって」
寝起きの正広は、とにかく言うことを聞かない。何を言っても、いやだ、いやだと首を振る。
「俺、起きるー…」
「ダメー」
「やだ、起きる!だって、おれ、おいなりさん作る、んだもん」
「だーめ。材料もうしまった」
「なぁんでぇ!」
動けないように、毛布でぐるぐる巻きにされそうになっていた正広が、それを跳ね除けてまで起きようとする。
「俺、行くのに!」
すごく楽しみにしてて、おいなりさんの準備もして。なのに、なんで…!と、思わず涙が落ちそうになって、正広は慌ててベッドに潜り込んで、頭から毛布を被る。
「行く、のにぃー…!」
毛布の下の、くぐもった声。
どれくらい正広が楽しみにしてたのかは重々承知の由紀夫も、心が痛い。ベッドに腰掛けて、毛布の下でじっとしてる頭に手を当てる。
「また、来週にしよ。な?」
「…この週末が見頃だって、言ってた、もん…」

正広が落ち着くのを待って、フリージングしている正広特製スープを温める。薬を飲むのに、すきっ腹じゃあと渡したら、じっと俯いたまま、大人しく大きなカップを両手で持って、でも飲もうとしない。
「正広?それ、いやか?」
由紀夫に言われ、ちらっと由紀夫を見上げた正広は、小さく首を振って自分で作ったスープを口にする。

諦めたか。
由紀夫は思った。
正広が、あんまり静かで、素直な時は、もうどうだうにもならないと諦めモード入ってる時。
「はい、薬」
正広はあんまりキツい薬は飲めない。だから、解熱剤じゃなく、体調を調える漢方を飲ませる。
一度由紀夫も舐めてみた事があって、その時、ゲっ!と思うほど苦かったその薬を、文句も言わずに正広は飲んで、言われるがままに横になる。
「どっか、痛いとことか、ない?」
熱が下がるはずもないのに、額に手を当てながら尋ねると、正広はううん、と首を振って目を閉じた。

ゆっくりと熱が上がってくるのを正広は感じていた。今までに何度もこんな事はあって、上がってる間は、もうどうすることもできない事を知っている。
どうしたって、どんなに頑張ろうとしたって、全部熱が邪魔をする。熱はきっとまだ上がるだろう。そのうち、関節が痛くなって、それが当分続く。
「正広」
低い声がする。重たい瞼を上げると、由紀夫がグッチのシャツと、ボクサーパンツという、どないやねんそれ、という寝間着姿から、Tシャツとジーンズに着替えていた。
「ちょっと…、出てくるから」
「…え?」
「そんな時間かかんないと思うんだけど」
嘘。驚いた正広はじっと兄を見上げる。出かける?
「食欲なさそうだけど、ジュースと、ゼリーと、置いてあるから」
ベッドサイドにおいてあって、その向こうでしーちゃんが首を傾げてる。
「何かあったら、すぐ電話しろ?」
…そんな、遠くまで?近くのコンビニとかじゃなくって?
正広は、それでも何も言えなくてじっと黙っている。
「…解った?」
そう言われて、小さくうなずいた。
休みの日に、兄がどこに出かけようとそれは自由だろうと思う。

眠れちゃえばいいのに、と、一人になった部屋で思う。そしたら、一人でも平気なのに。ブラインド越しに、外の天気がやたらといいのは見えていた。
紅葉、見に行きたかった…、な…。
どうしてここぞってところで熱が出たりするんだろう…。入院してる時もそうだった。多少元気な子供たちを集めて、近くの公園まで出かけましょー!っていう企画の時も、その朝熱を出して欠席した。
『知恵熱だね』と主治医の森先生に笑われたのを思い出す。
また知恵熱なのかな…。だったら、大した事ないと思うのに…。
それでも、目を開ければ世界がグルグルしていて、膝、肘の関節が鈍い痛みを持っている。
「苦しい…よぉ…」
1人だから言える言葉。由紀夫がいる時は、心配かけるかなと口にしないし、そもそもあんまり苦しいとは思わない。

チッ、と、綺麗なしーちゃんの鳴き声。泣きそうになって、正広は毛布の下に入り込んで、体を丸めた。

ひんやりした手を首筋に感じる。閉じた瞼の裏側に、チカチカと派手な映像を感じていた正広は、ゆっくりと瞼を開けて、視界が曇っているのに気付く。
「兄ちゃん…?」
「ただいま…。熱、あんま下がってないなぁ」
「…どこ、行ってた、の?」
「ん?ちょっと…。正広っ?」
由紀夫の驚いた声で、正広も何があったのかと驚く。
「何…?」
ゆっくりと首を巡らせて、何がおかしいのか見ようとするが、別に何がどうということもなく。
「…ん?」
「ん?じゃなくって」
由紀夫の手が正広の頬に当てられ、親指だ瞳の下で動く。
「あれ…」
「何、泣いてんの」
「だって…っ!」
熱が最高潮に上がって来て、もう訳が解らなくなってきた正広は、その訳の解らないままに、グズグズと正広はぐずる。
「だって、俺、行きたかったのにっ。おいなりさん、教えてもらって、俺、練習もしてっ、そんで、兄ちゃんと、紅葉見に行くんだって、でも、兄ちゃん、一人でどっか、行っちゃうし、おれ、一人で、頭痛いし、膝とか、すっごい痛いしぃー!」
「えっ?」
毛布の下に手を入れて、膝に触れる由紀夫。
「そじゃなくってぇー!」
「あぁ、そうだ」
立ち上がった由紀夫が、正広に言う。
「届け物」
「へ…?」
ぽかんと由紀夫を見上げた正広は、突然、頭から振ってきた落ち葉に驚く。
「え、え?」
綺麗な、もみじが、ベッドに、ベッドサイドに撒かれる。
「兄ちゃん、これ…」
「結構綺麗だろ」

これを取りに行ってたんだ。
しかも、どれもこれも綺麗なもみじばかり。

あ、また…。涙が落っこちそうになって、正広は慌ててベッドに潜り込む。
「正広?」
「…バカぁ!どーすんだよ、こんな散らかしてぇー!」
可愛くない事言ってる、と、どうしていいか解らなくなる正広の背中を軽く叩いて、由紀夫が笑いを含んだ声でいう。
「紅葉前線、ゆっくり南下中だってよ。来週は、行けるように、ちゃんと治せよ」
下手に口をきけなくて、毛布の下で何度か首を縦に振った。
熱は高いけど、今はもう全然苦しくないなと、正広は思った。

しばらくして、多少「ご機嫌よく」なった正広の写真を由紀夫は撮った。陽の光を浴びて余計明るく見える金茶の髪に、明るいオレンジの紅葉がついていて、そのすぐ側にはしーちゃんが乗っているという、やたらとメルヘンな写真は、早坂家の伝言用コルクボードに張り出されている。

<つづく>

「今週は野長瀬すっぺしあるにしようと思うんだが」と大阪の赤い怪獣に言ったところ、そ、それもいいんですけど、私はこんな話が…。と彼女が言ったので、それを書いてみました。というように、リクエスト受付中!それって、ネタをよそから探そうとしてるって事じゃあ!?ばっバレてるぅ(笑)!!

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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