天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

ギフト番外編57話中編『お母さんを何度も届ける』

海外に行くと、色々と楽しい経験ができますね。後でネタになるかもしれないと思うだけでも、海外に行きたい・・・。それは何か間違っているのか、と思いますが、ネタになるのならぜひ行きたい(笑)でも先立つものが。
年末ジャンポは
50人でかって、ようやく5万円があたりました・・・。

yukio
 

いつもいつもホテルの朝食ビュッフェでは飽きてしまう。いやもちろん、値段の3倍くらいは元を取っている健啖家兄弟ではあったが。
ということで、早坂兄弟は、散歩ついでに何かを買ってホテルの部屋で食べることにした。
行き先は、前から目をつけていたデリカテッセン。
「何にしよっかなー」
トレイを手に正広は目をキラキラさせる。普段は朝ご飯を食べないこともあるのに、旅行中だと食欲が出るのが由紀夫には不思議だった。
ちなみに由紀夫は、朝からカツカレーオッケーの男。
「サラダー・・・、パン〜、あー、悩むぅ〜」
楽しそうにあれこれ眺めていた正広は、店の壁に貼ってあるポスターに気がついた。
「兄ちゃん」
ちょいちょいと由紀夫を手招きする。
「ビバリー・ウィルシャー」
「あ、ほんとだ」
正広はただそのポスターの写真がビバリーウィルシャーだとしか解らなかったが、由紀夫は何のポスターなのか、ちゃんと見てとった。
「ふーん」
「何、何?」
「海外でもこーゆーのあるんだな」
「だからなぁにぃぃぃぃ〜」
「福引ってゆーか、まぁこの店で買い物したらクジが引けて、特賞がここの宿泊券」
「クジ!引こう!引こう!」
正広はクジ引き好きだった。
いくら買えばいいの!?とトレイを山盛りにしつつ、レジにダッシュ。
「あ?おい、正広!」
「ぐっどもーにんぐっ」
止める間もなかった。ばん!とトレイを置き、元気に挨拶すると店主らしきおじさんも挨拶を返してくれている。おじさんは、「アメリカのおじさん!」というでっぷりした体をして、ニコニコ笑っていた。
「ジャパニーズ?」
「いえーすいえーす、あいあむじゃぱにーず。まいぶらざーいず、じゃぱにーず、つー」
そらそうだろ。
心で突っ込みながら、由紀夫もレジに向かい、二人分と合図をする。
そこで、店主が正広に声をかけた。
「「え?」」
正広は何を言われたか解らなくて、由紀夫は何を言ってるんだ?という驚きで首を傾げる。
「兄ちゃん、なんて?」
「・・・日本語の数字の読み方を教えろって」
「数字?いち・にい・さん?」
指を折りながら正広が言うと、店主が笑顔になった。
「イチ・ニィ?」
「いち・にい・さん・しー」
正広は1本、1本、指を折りながら教えていく。
「イチ・ニィ・サン・シィ」
それについてくる店主の言葉に一つ一つうなずき、最後に、ぱっ!と手を広げて
「ご!」
「ゴゥ!」
ははははは!!
二人は顔を見合わせて笑った。
店主は「イチ・ニィ・サン・シィ・ゴゥ!」を繰り返しながらレジを叩き、正広も「いち・にい・さん・しー・ご!」とリズムを取っている。
そんな正広の心は、すでにクジに向かっていた。
あぁ!特賞!あたらないかなぁ、あたらないかなぁ。

クジは、フォーチュン・クッキーの形で、好きなものを選ばせてもらえる。
正広はかなり真剣に一つを選び、由紀夫も何か特徴がないかなとさりげなく目を配りながら一つを取った。
そして結果は。

「わーい。わーい。m&mのチョコレートだぁ〜。嬉しいなぁ。わぁいわぁい」
「えー、正広くん、m&mのチョコレートなのぉ〜?いいなぁ〜。僕なんて、ベーグルだよぉ。しかもプレーン」

「・・・プレーンのベーグル1個もらったって、ちょっと、あれだよね」
「ジャムくらいくれっつんだよな」
見事、特賞を外した早川兄弟は、早くもリターンマッチを心に決めていた。
明日も・・・!明日も行ってやる・・・!

ディズニーランドにも行かなくちゃね!と、その日はディズニーランドでふらふらになるまで遊んだ。
「本気でディズニーを堪能するんだったら、オフィシャルホテルなんですよ!お客様!」
「なんで」
由紀夫が持ってきていたポラロイドは正広に取り上げられていて、今、なぜかミニーマウスをツーショット写真を撮られている。
「なんと!オフィシャルホテル宿泊の人だけの特別企画があるんです!」
「何?」
「えーっと」
さっ、と手帳に目を走らせ、にっこり笑顔で答える。
「先に、入園できるんです!」
「先に?」
「オフィシャルホテルに泊まってる人だけ、先に入れるんです!」
「マジで?」
「・・・た、多分・・・」

それは本当。ディズニーランドのオフィシャルホテルに泊まると、開場の1時間半前に入場できるため、人気のアトラクションにも簡単に乗れる(らしい)。
東京ディズニーランドに引けを取らない混みっぷりに、今度はここに止まって・・・!という気持ちを強くもった正広。そしてその正広の目は、あのお母さんを見つけてしまった。

「兄ちゃん」
「ん?」
「あの人・・・」
ドナルドダックと写真を撮ろうとして、あら?カメラマンがいないわ、と気づいた様子のその女性は、由紀夫と正広が1度ずつ迷子になっているところを発見してしまったお母さんだった。
あらあら?とあたりを見まわしていたお母さんは、目ざとく由紀夫を見つけ手招きをする。
「ごめんなさい!ちょっと写真撮ってくださる?」
「え、はい!」
兄ちゃん、いい?と目で尋ねると、おまえも入る?と由紀夫が手を出す。
あ、あ、どうしようかな、ドナルドと写真!と思ったけれど、ツーショットで撮りたいかしら、と思いなおし(そもそもポラロイドだし)、正広はシャッターを切る。
「撮れました!」
「ありがとう。あら、ポラロイドなのね。すぐ見られる」
「そうです。はい、どうぞ」
「まぁ、ごめんなさいね。あら」
正広の後ろに由紀夫を見て、お母さんは目を丸くした。
「あら?お知り合い?ご兄弟かしら」
「はい。兄です」
「弟です」
お互いに紹介しあう早坂兄弟を見て、お母さんは微笑んだ。
「まぁ。仲がよろしいのね。うらやましいわ」
「え、でも娘さんといらしてるんですよねぇ」
由紀夫が言うと、お母さんは、やれやれ、というように首を振る。
「もう、あの子はすぐに迷子になるし、なのにすぐに怒るし、もう怖くって!」

「誰が怖いってっ?」

「あら、千恵」
振り向いたお母さんは、よかった!というように千恵の手を取った。
「よかった!こんな広いところで迷子になったら、もう二度と会えないんじゃないかって!」
「私も思ったわよぉぉぉ〜!お母さんを置いて一人で日本に帰るのかってぇ〜!!」
「あら、グーフィーちゃんよ?写真撮ってあげましょうか?」
ひし!と抱きつく娘に、ほらほらと教えてやって、また怒られていた。
「ほら!怖いでしょう?もう、私も我慢することばかりが多くて!」
ねぇ!と同意を求められ、ははは、と乾いた笑いを返す早坂兄弟だった。

そうして4人はようやく自己紹介を始める。
二人は木田親子といい、お母さんのおごりで来ているらしい。千恵は由紀夫よりもちょっと年上のようだった。
「え!じゃあ、正広くんからの誕生日プレゼントで!?」
しかし、もちろんインパクトが強いのはこっちの話題。
「えぇ、そうなんです」
正広の分は保護者の自分が出している、なーんてことは一切言わずに由紀夫は答え、二人から驚嘆の目で見られた正広は、恥ずかしそうにうつむく。
「私にも、そんな甲斐性のある娘がいれば・・・!」
「何言ってんのよぅ!その分ツアコンしてるじゃないのぉ!」
二人は、こういう女性同士の言い争いには免疫があった。
大体、腰越人材派遣センターの女性陣は言いたいことをばしばし言うタイプが多い。
どうしてるのかなぁ、今ごろ日本で。
年末の買出しで、大好きな銀座か大好きなアメ横か大好きな築地に行ってるんだろうか、奈緒美は。
「どうかしました?」
お母さんに尋ねられ、ちょっと奈緒美を連想し、ちょっとお茶でも飲みましょうか、と軽いナンパをしてしまった由紀夫だった。

「今なんかすごい失礼な発言がなかった!?なんでお母さんで連想されてるの!?ちょっと!どゆこと!?出番ないし!」(腰越奈緒美談話)

いかにもディズニーランドらしいホットドックショップで
「お母さんは、方向音痴なんですね」
と由紀夫に言われ、千恵はゆっくりと首を振った。
「方向音痴というより・・・。集中力がないんです」
「集中力?」
正広と、お母さんはホットドックを取りに行っている。
「庭で遊んでいた子供が、目の前をちょうちょが飛んでいるからって追いかけて道路に出て、車に跳ねられるって感じで・・・」
「それじゃあ、猫じゃないですか」
「そうなんです・・・。でも、本人は、その瞬間は集中してるから、解らないんですよね。ホントに子供なら手もつないで歩けるんですけど・・・」
困ったなぁ、とため息をついた千恵と、それは大変だなぁ、と思った由紀夫は、正広が片手に4人分のホットドック、ドリンクの乗ったトレイを持ち、空いた手でお母さんと手をつないでいるのを見た。
「「・・・解ってる・・・!?」」
二人は驚嘆した。
そして帰ってきたお母さんの言葉にも驚嘆した。

「ひろちゃんがどこかいったら大変!と思って、ずっと手を握ってたのよねー」
「ね、ねぇ〜・・・」

『付き合いのいい子だ・・・』由紀夫と千恵は心の中でだけ思った。

さて、やってきました。大晦日。
あれから、毎日、毎日、デリと早坂兄弟の勝負は続いていた。
どういう訳か、毎日毎日、数字を教えろというから、現在、じゅうご、まで教えることができた。楽しかったのは、「7」の読み方。
正広が、「ろく・しち・はち・きゅう・じゅう」と教えたところで、由紀夫が両手を開いた状態から、1本ずつ指を折り、「じゅう・きゅう・はち・なな・ろく」と教える。
店主は、「7」が「しち」なのか「なな」なのか混乱してしまうのだが、どちらも本当。
これで二日目に大いに受けたのが失敗したのか。その日のクジ引きでは、二人ともプレーンベーグル1個ずつ。
意地でもこのままで食べてやる!ともそもそさせながら食べたもんだった。

「今日が最終日だ」
「年末大売出しですね」
「ということは、今日、特賞が入る可能性が高い」
「なるほど!」
二人はドアベルを鳴らしてドアをあける。
すっかり顔なじみになった店主が、両手を広げて迎えてくれた。

「今日こそは・・・!」
「今日こそは負けない・・・!」

早坂兄弟の年末ジャンポくじ引きの結果やいかに!

つづく


ボルケーノ様も、無事戻ってらっしゃいました。ラスベガスで楽しんできたそうです。早坂兄弟にも行かせてあげたかった、でも!!でも、カジノは21歳からじゃないと入れない。ということはひろちゃんはいけない。ということで、ただひたすら遊びコースとなった訳です。ごめんな由紀夫・・・!君がカジノにいるのは相当カッコよかったと思うよ・・・(笑)!

てことで、次回は来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずってことを人々はもう知りすぎている!