天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

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ギフト番外編57話ついに後編『お母さんを何度も届ける』

これまでのお話
「兄の誕生日に海外旅行をプレゼントした太っ腹な弟、溝口正広。そして二人でやってきたのは、ロサンゼルスだった。海外生活を満喫する二人。しかもその二人の楽しい海外旅行には、あたかもアクセントのように、迷子になるお母さんが散りばめられていた!どこいくねん!お母さん!!そして正広までどこにいってしまったねん!!」

yukio
 

「正広・・・?」
「え?正広くんもいないの・・・?」
二人はきょろきょろと当たりを見まわす。観光客の姿は多くはないが、小柄な二人が紛れ込んでも解らない程度には賑わっている。
「ここにいろっつったのに・・・」
「多分、お母さんが連れてっちゃったんだ・・・。もー、自分だけならともかく、人様の弟までぇ〜!」
千恵はぷんすか怒っているが、由紀夫は静かに周囲に目をやる。
親子に見える日本人観光客。正広は本質はともかく、見た目が幼い。木田母は本質はよく知らないが、見た目が上品だ。

・・・いいカモだと思われて連れてかれる恐れがある。

日本だろうが、アメリカだろうが、悪事を考える人間にそう対した違いはない。由紀夫は、昔とった杵柄、自分だったらどうするかについて思いをめぐらしつつ、日本人観光客に尋ねてみた。
「あの、すみません」
声をかけられたのは、初めての海外旅行にちょっと緊張している女の子だった。精一杯気を張っていたところに、優しいトーンの日本語を聞き、ホっとして振り向く。
「え」
そして言葉を失った。
あぁ、神様・・・。勤続2年、毎日、マジメに働いて、生まれて初めて海外旅行にきた私に、ご褒美をくださったのですね、神様ぁ!
というおっとこまえが、にっこりと微笑んでいる。
このままダマされて、売り飛ばされたってかまうものか!と思うほどだったが、その男前は、にっこり笑顔の後、心配そうな顔で彼女に尋ねた。
「連れとはぐれてしまったんですけど、17歳っくらいのちょっと小柄な男の子と、えーと」
「限りなく60に近い50代です・・・!」
「それくらいの女の人見ませんでしたか?女の人は、カシミアのハーフコートを着てて、グレンチェックのパンツで、茶色のローヒール、サーモンピンクの手袋。男の子の方は、ジーンズにスニーカー。白のダッフルコートを着てるんですけど」
「そ、そんな細かく」
「もうちょっと細かくいっときます?」
千恵も驚いたが、いきなり詳しく言われた女の子も驚いた。
「か、カシミア、と言われても・・・」
「まぁ、色で言えば単にキャメルなんですけどね。それで、多分二人は手をつないでいると思います」
「あ」
ぽん、と彼女は手をたたいた。
「いました。仲良しだなって思って見たから」
ビンゴ。由紀夫はひっそり親指を立てる。
いかにも旅なれていなさそうな子に狙いを定めたのは正解だ。どうしたって不安になるだろうから、近くに日本人がいれば、気づく率が高い。
「二人だけでした?」
「はい。手を繋いで、急いでるみたいでしたけど、あっちの方へ」
指差したのは、ヴェルサーチだの、アルマーニだのがある方向。
「一体・・・」
二人が行ったという方向を見据えて、由紀夫は彼女に笑いかけた。
「どうもありがとうございました」
「あ、いえ〜・・・」
あぁ、やっぱり女連れ・・・!

がっくし。という彼女と、ふふふ・・・!とほくそえむ千恵。
神様ありがとう!と思っているのは千恵ももちろん同じだ。
「千恵さん?」
「あ、いえいえ。お母さん、どうしちゃったんだろ」
そして二人はそっちへ歩きだそうとして、由紀夫だけが足を止めた。
「え?」
「千恵さん、ちょっとここで待っててもらえます?」
「ここ?」
まだ二人がいるのはクリストフルの店先だった。
「もしかしたら二人が戻ってくるかも知れないんで」
「あぁ。そうですね、母一人なら不可能でも、ひろちゃんがいれば」
身内ならではの残酷な判断を下した千恵は、由紀夫の判断力にうっとりする。一緒に行けないのは辛いけど、でも素敵!素敵っ!

うふうふと千恵は待っていることを約束し、由紀夫は急いで走り出す。

アルマーニの前で、また日本の女の子に声をかけると、二人はまだ先に向かっていたようだった。
「何やってんだ、あいつ・・・!」
これ以上はなれると、千恵の方も心配だし、一旦戻るかどうかの判断をつけかねる。けれど、他にも見た人がいるかも、と、先に進んだ。
3人目の日本人女性は、小さな子供を連れていて、それだけに子供に敏感だった。
「可愛いなと思ったんですよ。おばあちゃんと、お孫さん二人かなって」
「二人?」
「えぇ。でも、ちっちゃい女の子は金髪だったから、あら?って」
「ちっちゃい女の子!?」
「天使みたいでしたよ!やっぱりこっちの子って可愛いですよね!うちの子は、純和風の顔立ちでねぇ・・・。日本にいてもあんまりいまどきの顔じゃあ」
「雛人形みたいで素敵ですよ」
最近は、心にもない言葉がするっと出るほど営業をしている由紀夫。
まぁ、心にもないとはいえ、その女性の連れてる女の子は、一重ではあったが可愛くなりそうな顔立ちだった。お母さんからして一重の涼しげな美人だ。
・・・こうして見ると、美人にしか声をかけてないのか、俺・・・。
それを、節操なし、ではなく、美意識の高さにすりかえてお礼をいい、さらに500mほど行ったところで、別の美人に聞いてみたら。
「なんか、黒い車に乗ってたみたいでしたけど」

「はい!?」
由紀夫から、その途端、ザっ!と血が引いた。

「く・・・車・・・!?」
「はい・・・・」
千恵は、ちゃんと、おとなしく、クリストフルの前で待っていた。
あたりの人、店の人に、二人を見なかったかと聞いてもいて、確かにその二人は、ここにいて、突然二人していなくなったことの確認も取れた。
それなのに・・・。
「金髪の女の子と、車って・・・」
「よその子を勝手に連れまわしたら、誘拐ってことにもなりかねない・・・」
「あぁ!そうですよね!実の親でも逮捕されたりしてますもんねぇ!」
ど、どぉしよう・・・!母親が犯罪者に・・・!千恵は青ざめ、由紀夫も考えた。
車は、タクシーではなかったらしい。
ということは、その女の子をエサにした、誘拐ってことも考えられる。犯罪者ではないだろうが、犯罪に巻き込まれている可能性も・・・。
誘拐されたからには要求はホテルに入るはずだ。ビバリーウィルシャーに連絡を・・・。木田親子はヒルトンだったか・・・・・・・・・・・。

「あぁ!!にいちゃーん!!」

「あ!?」

クリストフルの前に黒の日本車がつけられた。
その窓から身を乗り出し、力いっぱい手を振ってるのは正広で、その後ろに木田母の姿もあった。

 

それより前。
二人はクリストフルの前で大人しく立っていた。
木田母は、ウィンドウの中の銀器を見て楽しそうだったし、正広も綺麗だなぁ、と眺めていて、そんなのどかな光景が何人かに目撃されている。
と、突然、木田母が正広の手を取った。
「え?」
「ひろちゃん、あの子!」
「あの子って?」
見ると、金髪の4・5歳の女の子が、一人で歩いていた。
「あの子が?」
木田母を見上げた途端、強い力で腕を引っ張られ、歩き出さされた。
「え!ダメですよ、ここにいないと!」
「でも、あんな小さい子が一人で、心配じゃないの!」
「し、心配って、ねぇ!ちょっとお母さん!」

日本でも小さな子が一人でいると心配。ましてアメリカで、あんな可愛い子が一人でいたらそりゃあ心配。
心配なのは解るけど、お母さん!!だから迷子になっちゃうんだよぅ!!
振りかえり、振りかえりしながら、兄の姿を探す正広は、でも、ここで木田母をはぐれたら、またえらいことに!
絶対戻ってくるから!!
心の中で兄に誓い、ともかく、木田母とともに正広は走った。

金髪の女の子は、天使のように可愛かった。
「まぁ、可愛い!ママは?お一人なの?」
キョロキョロと歩いていたが、ふいに立ち止まった女の子に追いついた木田母は、日本語だということを気にせず、女の子の前にひざをついてにっこりと笑いかける。
ふいに現れた大人に驚いた女の子は、何歩か下がって首を振る。
「お母さん、日本語ですよぅ」
「だって、英語でなんて喋れないわよ。ひろちゃんは?学校で習ったでしょう?」
「が、学校・・・」
まさか小卒とも言えず、知る限りの英単語を並べてみる。
「えーっと。ママ、ママ・・・。マミー!どぅーゆーはぶ、まみー?・・・違うな」
「それは違うわよ・・・」
こそこそと言い合っていたら、女の子は、「マミー」に反応してくれた。
「マミィ・・・」
「そうそう!まみー!まみーつっても、ミイラじゃないよ?お母さん。ママ!」
「マミィ・・・?」
辺りを見まわし、後ろも前も横も見て、ようやく彼女は自分が一人で歩いていたことに気づいたらしい。自分が迷子であることを自覚した女の子は、なんの前触れもなく、大粒の涙をこぼして派手に泣き始めた。
「あー!どーしよー!」
「まぁまぁ、怖くなっちゃったのね、大丈夫、大丈夫」
木田母が、よしよしと背中をさすっても、その子の涙は止まらない。
「泣かないで、泣かないで・・・・・・、あ!どん・くらい・べいびー!」
「ま!ひろちゃんすごい!」
「まかせて下さい!どん・くらい・べいびーだよ!俺、歌ってあげようか?」
にっこり笑って、正広はいきなり歌い、踊り出した。曲はもちろん、SMAP、「Don't Cry Baby」
「あーーーーーっ!むじゃきなっ、えがぁおがっ♪」
「ひろちゃん、お歌はあまり得意じゃないのね・・・」
「えっ!歌は心ですよぅ!ほら、笑ってるじゃないですか!」
笑っているというか、女の子は突然踊り出した正広に驚いて、泣くのを忘れていた。
「ここのフリが可愛いんだよなーここっ!」
正広は、頼りない手がそっと揺らしてるー♪の左手をぱくぱくさせるところがお気に入りのようだ。
「でもよかった。ほらほら、涙を拭いてね」
ハンカチで涙を拭いてやって、後はお母さんを探さなきゃあ、ということになる。
「お母さん、もう、兄ちゃんたち戻ってきてると思うから、戻って一緒に探しませんか?」
正広の提案は、もっともであり、また、まっとうだった。
が。
「え?あっちなの?」
女の子は、正広の手をきゅっとつかんで、あっち、と進行方向を指差した。
「マミィ・・・」
子猫が鳴いてるような声で言われて、反対方向に引きずっていくような真似は正広にはできなかった。あぁ、どうしてヘンゼルとグレーテルみたいに光る小石を持って歩いてなかったんだ俺・・・!

いくら嘆いても、光る小石は現れないし、今から置いてもしょうがない。
3人、仲良く手をつないで女の子のお母さんを探していると、向こうから決死の形相の女の人が走ってきた。
それはもう、200m離れてても解る、女の子のお母さんだった。
「う、うりふたつ・・・!」
「そっくりね!」
そして派手な再会劇。
マリア様と天使、といった風情の親子が、大げさに抱き合い、よかったよかったと再会の喜びを分かち合い、正広たちにお礼を言う。
英語はわからないけど、多分。
「いいえ、ほんとによかった。ねぇ。ひろちゃん」
「ホントですねぇ。ほんと、よかったねぇ」
女の子の頭を撫でて、よかったよかった、と正広も喜び、そして冷静に木田母に言った。
「クリストフルに戻りましょう」

それはカタカナ発音だったが、なぜか女の子(アンジェラちゃん。コテコテのネーミング)のお母さんには通じたらしい。
一生懸命な笑顔で話し掛けられて、正広は驚く。
「え?今、なんて?」
話し掛けられて、木田母に振ると、木田母も一生懸命聞いていた。
「・・・連れてってくれるんじゃないの?」
「連れてって、って・・・クリストフルに?」
そして、また怪しい英語で尋ねてみる。
「みー、あんど、まみー、ごーとぅー、くりすとふる?」
イエスイエス!とうなずかれ、角を1度曲がっただけだから解るけど、でも、一緒の方が安心かなぁ、と正広は考えた。
ともかく、一刻も早く戻らなきゃ、と、さんきゅー!!とゆったところで。
アラスカヒグマ(などというのがいるのかどうかは解らないが)のようなお父さんが運転している日本車がやってきた。
「え。車・・・・・・・?」
正広は青くなった。木田母もやや青かった。助手席にお母さんが乗り、アンジェラちゃんがまたもや正広の手を引っ張る。
「お母さん・・・・」
小さな声で正広は言った。
「ドアのかぎは閉めないでください。なんかあったら、飛び降りますから・・・」
「まぁ、ひろちゃん・・・!ジェームス・ボンドみたいね・・・!さしずめ私はボンドガール・・・!」
違う!お母さん、違う!!
神様!こんなノンキなお母さんを、犯罪に巻き込まないで下さい!神様ぁっ!!!

が。神様に3回も祈ろうか、という間に、車はきちんとクリストフルの前につき、30分と離れていなかったにもかかわらず、会いたくて、会いたくて仕方のなかった兄と、千恵と再会することができた正広だった。
あぁ神様ありがとう!!

「正広!」
車のアンジェラちゃん親子に丁重にお礼を言い、お礼を返され、当分頭下げ合戦は続き、そうしてにこやかに別れた後、由紀夫は正広を怒鳴りつけた。
「はいっ!」
「俺はここから離れるなって言ったよな!?」
「言いましたっ」
「日本ならともかく、海外に来てんだから、他の人のこともちゃんと考えて勝手なことはしない!」
「はいっ」
「ちょっと考えたら、俺らがどれくらい心配するか解るだろ?」
「はい・・・。ごめんなさい。心配かけて・・・」

素直に謝る正広に千恵は感動した。
あぁ。ひろちゃんが悪い訳じゃないのに・・・!私の代わりにお母さんにゆってくれてるのね、由紀夫さん!そして素直に謝って見せるなんて・・・、ひろちゃん・・・!なんて、なんて!立派なご兄弟なの、早坂兄弟ぃーーー!!!

「まぁまぁ、ひろちゃんだって悪気があった訳じゃないんだから」

「あんたにゆってるのよおー!おかぁーーーさぁーーーーん!!!!」

え?私?なんで??
そんなきょとんとする母親に、この母親だけは死んでも治らん。とがっくり肩を落とす千恵だった。

 

その夜のカウントダウン&ニューイヤー・パーティーで早坂兄弟は、会場に話題をさらった。
日本人なら着物だぜ!と、急遽着物で出席したからだ。古着屋でジーンズと一緒に売られていた着物を見つけ、外国人用に用意されていた着付けの本をGET。二人で、あーでもない、こーでもないと着つけあった。前に着物を着せられた時の記憶が由紀夫に残っていたのも幸いし、結構ちゃんと着つけられ、パーティーでは人気の的。
ホテルサイドが面白がって日本酒まで持ち出してきて、日本の大晦日って言うのは、とトークなんぞさせられた。
『もちろん紅白です。紅白歌合戦。そして、こたつに入ってみかんが定番。さらに、年越し蕎麦を必ず食べます』
『紅白歌合戦は、性別で分かれますのが、よく解らない人は、見た目の印象で組を分けられます。美川憲一は白組ですが、美輪明宏はどっちででるのかは疑問です』
『大晦日は鐘をつきます。108回。これは人間の煩悩の数だと言われています。そんなもんですむのか、と思う時もありますね。俺ですか?そうですね。まぁ、50くらいじゃないですか?弟?弟は、2くらい。嘘ですよ。天使じゃあるまいし』

「にいちゃん、なんか適当なことゆってるでしょ」
「いや?」

紅白歌合戦も、こたつでみかんもないけれど、早坂兄弟の2000年は、シャンパンと、日本酒、派手に鳴り響くクラッカーで幕を開けた。

 

「もー、帰るのかー・・・」
空港で、大荷物をかかえ(もちろんベーグル13個入り)早坂兄弟はぐったりしていた。
「明日っから仕事だぁ〜・・・」
日本についたその翌日が、腰越人材派遣センターの仕事はじめなのだ。
「飛行機乗ったら寝るぞ」
「はいっ!」
そーゆー、よく眠れる薬もGETしており、それなりに準備万端にしていた早坂兄弟の目の前を、すーーーっと横切っていったのが。

「千恵さん!?」
「あ!由紀夫さん、ひろちゃん!」
「またお母さん、迷子なんですか?」
「あ、いえ、あの。こないだ由紀夫さんがゆってくれたでしょう?それで、私も、ほんとに心配だから、うろうろするのはやめてってお願いして、あれから先はなかったんですけど・・・」
「最終日で気が緩んだんですかねぇ・・・」
「・・・私が迷っちゃって・・・・・・・・・・・」

遺伝だ・・・・・・・・。
これは木田家の血なんだ・・・・・・・・・・・・・・・っ!

「正広、荷物持て」
「はいっ。はい、これ、兄ちゃんの」
「え?ええ??」
「待ち合わせ場所まで一緒に行きますから」
そして、早坂兄弟も、旅先で別れるのはやめましょう、と約束をしたので、チェックイン前で、まだ荷物を持った状態のまま、木田千恵と歩き出した。

後日、どこの、を告げずにお土産として渡したふざけたベーグルはなぜか事務所で大好評。買ってこい!といわれたため、また行こうか、と二人はたくらんでいる。


終わったわ!やっと!やっとお正月が過ぎたわ(笑)!おそいっちゅーねん!!!
ちなみに私は
3月に韓国に行く予定!ちゃんと行けるかしら!韓国!

てことで、次回は来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずってことを人々はもう知りすぎている!