天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編67話後編『花見をする』

「紅いジンジャーブレッド事件」
あれは、花見にはもってこいの暖かな春の一日のことだった。野長瀬定幸は、会社の花見のため、会社近くの公園にやってきていた。どの場所にしよう。野長瀬は公園の中でも、一番大きな桜を選び、その下にビニールシートを引こうとした。
その時、野長瀬はその木の根元に、パンが置かれているのに気づいたのだ。
おっとスペースがもうないや(笑)この続きはまたいつか(笑)!

yukio
 

ふわりと拭いた風にあおられた花びらが、ビニールシートの上の五人に振りかかる。
綺麗だなぁ、と正広がそれを見上げた時、ガガっ!という巨大な音とともに、地面から振動が伝わってきた。
地震っ!?
あわわ!と慌てた正広がみたものは、ビニールシートを転がって、桜の木に激突していた慎吾助手だった。
「しっ、慎吾さんっ?」
驚いて立ちあがると、慎吾助手は、ころころ・・・と木から離れた。
ホっと息をついたところで、突然逆走!桜の木に再び激突!その激突の瞬間、体育座りの稲垣医師は確かに宙に浮かんだ。
「いっ!痛くないんですか!?慎吾さん!?慎吾さんっ!?ねっ、森医師!慎吾さんがっ!」

「ガガっ!」

また、何か音がした。
なんだこの、狭い角を曲がろうとしたら、車体がよそんちの塀に食いこんでしまった車みたいな音は!
しかし正広の視界の中に見えるのは、森医師一人・・・。
車なんてどこにも・・・!
と思ったら、森医師が喉の奥を鳴らしている音だった。

がんっ!

また慎吾助手は木に激突。
このまま桜を折る気か!と正広を慌てさせ、なお起きる様子なし!
激突する慎吾助手!宙に跳ね上げられる稲垣医師!森医師の目は半開きであり、剛助手のくしゃみは止まらない!
こんな四人をそのまま重し代わりに使っていいのだろうかぁぁぁ!!
正広がパニックになった、そんな時だった。

 

典子は正広のために、おやつを届ける、という崇高な使命を帯びて腰越人材派遣センターを出発した。
途中、コンビニにより、日本の、そして世界の情勢に目を向ける。
すなわち、女性週刊誌と、海外旅行雑誌に詳しく目を通した。
ふんふん、やっぱり女性ZとS女性は、同じ事柄についても、まったく反対の報道をし続けているわね。こうして、反論に反論を重ねていくのが一つの事柄をうすーく伸ばして引っ張れるだけ引っ張って、雑誌の売れ行きをお互いに補完し合う有効な方法なんだわ。さすがマスコミ、しっかりしてるわねぇ。
なんて思っていたかどうかは解らないが、ふと手にとった月間女性誌が、春のコスメ特集をしていたのが致命的だった。
コスメ・・・!
典子はどこにでもいる普通のコスメフリークだ。
どうして自分の顔は一つなのか!と思ったこともある。試したい化粧品は山盛りあるのに、使える顔は一つだけ。
あぁ、悔しい!
そう思って、舐めるようにその雑誌を見ていた典子は、公園にいくのが遅れた。

いけない!イチゴ大福が堅くなっちゃう!
今月の星占いまで見てからはっ!と我にかえった典子は、急いでコンビニを出て公園に向かい、大変なものを見てしまった。

『たっ!大変ですっ!』
由紀夫の携帯に典子の悲鳴が響き渡った。
『ひろちゃんがヤクザに絡まれてますっ!!』

キュキュキュキューーっ!!
由紀夫は自転車が悲鳴をあげるほどのスピードで帰ってきた。
典子は、見てるのも怖いけど、目を離すのも怖い!といった感じで、こっそり隠れている。
「ゆっ、由紀夫さんっ!」
「どうなったっ?」
「まっ、まだ大丈夫です・・・っ!」
そりゃあ電話を受けて、2分後にはここにいたのだから状況の変わりようがない。
「それにしても、なんだヤクザって・・・」
典子が隠れていた生垣から、そっと顔を出して、由紀夫はこれはいけない、と表情を引き締めた。
青いシートの真中で、正広はこちらがわに背中を向けてちょこんと座っており、今まさにシートに土足で上がろうとしている男を見上げていた。
その男は、頭を剃りあげ、しかし不精ヒゲで、まともな目をしていない男だった。
ヤクザとか言う以前の問題だろう!
由紀夫は思う。
そういう社会的な身分がどうこうじゃなく、ヤツは存在自体がすでに危ない・・・!

刺激してはいけないと、由紀夫はゆっくり近づいていく。
由紀夫も、ビニールシートのほぼ四隅にいる重し4人組に気づいてはいたが、ぶっちゃけた話、その辺りはどうでもよかった。
まずはともかく正広の正面に出ないと・・・と、じわじわと円を描き、正広の視界に入った途端。
「あ!兄ちゃん!」
正広がにっこり笑って手を振った。
ちなみに慎吾助手はまだ木に激突しており、森医師は目と口半開きの上、ががっ!となぞの音を響かせ、稲垣医師は宙に舞い、剛シェフはティッシュケースに顔をうずめていた(いちいち鼻をかんでいたら荒れてしょうがないので、ティッシュの上に顔を伏せ、流れ出るにまかせる。ティッシュ一箱がどれだけ早く湿るかを楽しむこともできる)。
なんという異常なシチュエーションか・・・!
この団体に因縁をつけてきたってだけで、その男の異常さが解るってなもんだ。
満開の桜の下に、その下には死体が埋まっているとも言われる桜の下、剃りあげた頭、不精ヒゲ、そしてなによりも、普通じゃない目をした男は、逆に似合うほどで、正広から、由紀夫に視線を移す。
由紀夫はゆったりと正広に笑いかけ、落ち着かせようとした。
が、正広は立ちあがって、その男を指差し大声で言った。

「松本さん!」

・・・・・・・・松本さん・・・・・・・・・・・?
由紀夫の脳内インデックスに、「異常な松本」という項目はない。
「松本・・・?」
「あ、松本じゃわかんないか。あのー、ひーちゃんライスの」
「あ!?あぁっ!?」

ひーちゃんライスの松本さん。
どこから見てもヤクザ、通り越して、春先に多いおかしな人にしか見えなかった男は、早坂兄弟が何度か入ったことのある、まっちゃん食堂の料理人松本人志だった。
「・・・コック帽がなかったらそういう頭なんですか」
「あぁ、そうなんですよ。あの、そこにね、帽子をね」
松本が、シートの上に落ちたニットキャップを指差した。
「俺ね、取ってあげるって言ってるのに、靴のまま上がろうとするから、叱ってたの」
笑いながら正広はいい、ニットキャップを拾って松本に手渡した。
それを被ると、まだ怪しいながらも、キャップがなかったときに比べると、怪しさ8割引。
「松本さん、今日はお店は?」
「いや、これからです。花見弁当でも、持ってきましょか?」
「いえ、準備してますので」
由紀夫はにっこりと笑って断った。
まっちゃん食堂一押し人気メニューひーちゃんライス(別名バターいためご飯)は冷えたら食べられるようなものではなかった。

ドン!

「なっ、何やってんのあいつは!」
「慎吾さん、どぉーーー!してもっ!あの先に行きたいみたいで!もう今に桜おっちゃうと思うんだぁ!」
「そんなもん、方向転換してやりゃあ・・・!」
がんっ!と乱暴に慎吾助手の背中を蹴り、方向転換に由紀夫は成功した、が。
その慎吾は、自分的には同じ方向に回転を始め、そちらには何も、いや、一つしか障害物がなかったため、一気に転がり出した。
唯一の障害物、まっちゃん食堂の松本が慌ててよけたせいで、広い公園を転がり続け、いつしか見えなくなった。

「ごらん、正広。慎吾はお星様になったんだよ」
「あ・・・!あれが慎吾さんの星・・・!ってダメじゃん、兄ちゃんっ!」

それから由紀夫、正広、成り行きで松本は転がる慎吾助手を捕獲するのに全力を尽くさされた。
一度ビニールシートを外れた慎吾助手は、公園中を転がりまくった。別にただ転がるだけなら本人が大変なだけだが、そろそろいろんな人たちが場所取りを始めだしていたのだ。
「きゃー!」
「あー!すいませーん!」
ころころころ〜〜〜
「そっちじゃなーい!こっちこっち!」
「おーもーたーいぃーーー!!」

 

慎吾が、はらりと額に落ちかかる花びらの重みに、そっと目を覚ましたのは、空が、透明な水色から、オレンジへの美しいグラデーションを描きだす頃だった。
よく寝た・・・。
起きあがって大きく伸びをする。
「森医師〜?まーた目ぇ開けたまま寝てぇ〜!」
ぎゃはは!と笑った慎吾助手は、その森医師の密集まつげの上にも落ちていた花びらをそっと取ってあげる。
「よく寝たなぁ〜」
こきこきと首、腕を回し、大あくびをした慎吾は、由紀夫、正広がじぃーーっとこっちを見ているのに気づいた。
「・・・あ、お、おはよ・・・ございます・・・」
「・・・平気ですか?」
「何が?」
ぎょっ!
正広が目を丸くするのを慎吾は不思議そうに眺めるだけだった。
「あぁ〜、食べますぅ〜?」
そして、ごはんの乗ったお皿を差し出され、どうも、と頭を下げた慎吾は、思わずそのお皿を取り落とした。
『ヤ・ヤ・ヤ・ヤクザっ!?ヤクザの作ったご飯!?このご飯、何味!?シャブ味ぃ〜!?』
「ひーちゃんライスです」
『ひーちゃん?ひーちゃんって何・・・・・・・・・ひっ、砒素ぉぉぉぉーーーーーーー!?????』

ひーちゃんライスは、結局、冷えた状態で全員の前に置かれた。
冷えたバターいためご飯・・・。
砒素入り!と恐れおののく慎吾助手以外の起きている4人は、ブルーな気持ちになった。
松本は、神妙な顔で、どうぞと勧める。
解っている。
松本は悪い人間ではないと思うが、このルックス、この夜桜、この場所で言われると、恐ろしい・・・。
食べなくてはいけないのか・・・!

「由紀夫さん!」
なーんだ知り合いかよ、つまんねー。それより、コンビニコスメ買ってかーえろ、と大福も渡さずに帰ってしまっていた典子の声がした。
そして、奈緒美、野長瀬の声も。千秋の、ジュリエット星川の、菊江の声もした。
「お待たせしましたぁ〜!お花見弁当ですー!」

天の助けだ・・・!
由紀夫、正広、稲垣医師、草g助手、慎吾助手は神に手を合わせ、深い感謝を捧げたのだった。

「あっちむいてほいっ!いえっ!俺の勝ちぃー!野長瀬、野長瀬!これ!イッキイッキ!」
「えっ、これなんですかっ?」
「おまえ負けたんだから、これイッキだよぉー、イッキぃ〜!」
あっちむいてほい大王、由紀夫はご機嫌に言った。
「でもなんかこれ、変じゃないですか・・・?なんか変な・・・・なんか、変な油が・・・」
「人のひーちゃんライス罰ゲームにすんなやーーー!!!!」

宴会はいつまでも続いたが、ついに森医師は目を覚まさなかったという。

ま、目が開いてるから、それであんまり違和感なくっていいらしんだけどね(笑)

<つづく>


結局お花見にはいけませんでした。
すでに花もありません。
お花見で寒さのあまり、ハンカチ落としをしたことがあります。会社の花見で、課長とかもいたのにハンカチ落とし・・・。無邪気だったな、私たち・・・(笑)しょうがないので、淡路花博でもいってやろうか!と思っていますのよ。おほほほ(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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