天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen@gallery様から使わさせていただいております!皆様も遊びにいらしてくださいね!

ギフト番外編70話前編『トラウマを届ける』

GWがあけた。休んだような休んでないような気分だが、腰越人材派遣センターの人々は元気に仕事をしているようだ。GWは何をしていたのだろう(笑)

yukio
 

「・・・なんか、由紀夫さん、機嫌悪くない・・・?」
こそこそと、典子が正広に言った。言われた正広は、小さくうなずく。
その由紀夫は、おそろしく不機嫌そうな顔でソファに転がって本を読んでいた。
「何・・・?何かあったの・・・?」
「ううん・・・。あの、朝起きたら、あんなだった・・・」
「なんだろ・・・」
「なんだろお・・・・・・」

「ああ!由紀夫ちゃん、あのこの書類ねぇ、ハンコがねぇ」
そんな状態に気づきもせずノンキに話しかけた野長瀬は、ギロリと睨まれ、ようやく口を慎んだ。
「怖い・・・っ!ひろちゃん・・・っ!由紀夫ちゃん、どぉしたのっ・・・!」
半泣きでやってきた野長瀬にすみません、と謝った正広だったが、どうして由紀夫の機嫌が悪いのかが解らない。

朝起きたのは、当然正広の方が遅かった。正広の寝起きの悪さは定評がある。
いくつもかけた目覚ましを、1つ、1つ消しながら、もー、朝なんて来なきゃいいんだよ、朝のばかやろぉーー、な暗黒の気持ちになっている。動きも、軽く暗黒舞踏入っている。暗い洞窟の中で蠢く、得体の知れない生き物のように、ごそごそ、ぐずぐず動き、完全に目を覚ますまでは、正味1時間くらいはかかるのが定番だった。
今朝も、そんな感じで朝を呪い、太陽を呪い、今日か休日じゃないことを呪っていた正広は、自分が毛布を握り締めていることにも気づかずベッドを出て、リビングをつっきり、洗面所に向かおうとしていた。
何分毛布を引きずっているものだから、その当たりにあるものをひっぱったり、倒したりしているが、それにも気づかない。
ずるずるべたべたぼけぼけ歩いていても、リビングのソファに兄がいることは認識できた。
「おばよ・・・・・・・・・」
低い、かすれたような声で言うと。

返事がなかった。

「・・・・・・・・?」
何せ目も悪いものだから、何かと見間違えたか?と目をすがめてソファを見つめると、どうみてもそれは早坂由紀夫。
「・・・兄ちゃん・・・?」
まさか対千明用ダッチ由紀夫ではあるまい!と声をかけてみたら、「あぁ・・・おはよ」低い声がかえってきた。
「・・・どしたの・・・?」
正広の意識は急速にまともになっていく。
「どっか具合悪い?」
弟の問いかけに、由紀夫は、いや、と首を振る。
しかし、首を振られたって!そんなもの、正広には信用できなかった。
兄の寝起きのよさを、時々正広は憎むほどだったのだ。目覚ましがなった、止めた、もうベッドから出た、もうシャワーを浴びた、もう朝ご飯を作っている。
そんな様子が、海棠の眠り未だ足らず、から2000万キロ離れた寝姿の正広に伝わってくる。
なぜぇ〜なぜだぁ〜、なぜ朝っぱらから、あんなに動けるんだぁ〜。
解ったぁ〜。兄ちゃんはぁ〜。悪の組織に改造された、改造人間だぁ〜。でも、悪の心回路が動かなくなって、今は正義の味方だぁ〜。だから、朝からあんなに元気なんだぁ〜。ちきしょー、悪の組織めぇ〜、兄ちゃんを返せぇ〜。

っていつも思っているのに!
今朝の由紀夫は、起きたままの姿で、すなわちグッチのシャツと、おパンツというあられもないお姿で、ソファにもたれている。
「熱でもあるんじゃないの?」
何でこんなもんもってんだ?と握っていた毛布をその場に捨て、兄の額に手をやる。
「ないって」
「でも、調子悪そうだって。風邪とかじゃない?」
「だから、なんでもないって」
額やら、頬にぺたぺた触っていた手を、結構無造作に払われた。

払われた!

はーらーわーれーたーー!!!というか、はたき落とされた!!!

ガーン!!!!

ショック!正広くん、しょーーーっくっ!!
もう、兄ちゃんは俺のことなんか好きじゃないんだぁーーー!!!こんなに可愛い弟なのにぃぃーーー!!!
心の中で200mダッシュをした正広は、その200mを20秒フラットで戻ってきて、これは大変なことだ!と思い直す。
由紀夫は、こう見えて家族思い、友達思いの優しい人。人の親切を無にしたりはしないのに、それなのに!
「兄ちゃん、ほんっとまずいって!今日、休んだらっ?」
正広は、今日の由紀夫の予定をちゃんと覚えていた。
今日は、大きな仕事はないはず!
「いけるって」
「いけるって、兄ちゃんっ!」
「いけるの。いいから、おまえさっさと準備しろ」
「兄ちゃんってば!」

しかし、正広の思いは届かず、由紀夫は仕事に出た。

そして今、1件仕事を終えて帰ってき由紀夫は、不機嫌そうな顔を隠しもせず、ゴロゴロしている。
「正広ぉ」
「あっ、はいっ」
「他に、仕事ないの」
「えっと、今日は、はい。それだけで・・・」
とことこ近寄り、予定表を見せた正広は、小さな声で兄に言った。
「早退した方が、いいんじゃない・・・?」
由紀夫の眉間の皺は、朝よりも、ふかぁくなっている。
由紀夫も、うっとおしそうに頭を振り、どうしようかなぁ・・・という顔をした。

その日、腰越人材派遣センターにいたのは、早坂兄弟と、野長瀬、典子の4人だけ。
そして空気は、入学試験会場よりも緊迫していた。
一体何がどうして、そうまで由紀夫の機嫌を損ねさせたのか。
誰もが、由紀夫の次の言葉を、固唾を飲んで見守った。

「・・・いや、なんか仕事する」
「えぇ〜!」

そして再び、腰越人材派遣センターは、針が落ちても解るほどの静寂に包まれた。
ちなみに腰越人材派遣センターは、カーペット敷きだか、当然そこに針が落ちたって解るほどの静寂だ。

時間は遅々として進まず、3人は、針のむしろで仕事をしているような気持ちになっていた、そんな午後2時。
「う・・・っ」
突然、由紀夫がうめき、折っていたちらしの上に突っ伏した。
「兄ちゃんっ!」
「由紀夫さんっ!!」
「由紀夫ちゃんっ!?」
慌てて3人は駆けより、由紀夫にすがりつく。
「どしたの!兄ちゃん!やっぱりムリだよ!休もうよ!病院行こうよ!」
「い・・・いかねぇ・・・」
「なんで!死んじゃったらどーするの!兄ちゃんいなくなったら、俺どーしたら・・・!」
「そうですよ!由紀夫さんがいなかったらこの会社からおっとこまえが消えるんですよ!ひろちゃんは、将来おっとこまえ候補ですけど、今はかわいこちゃんですし!」
「由紀夫ちゃん!由紀夫ちゃんっ!!死なないでぇーー!!!」
「うるっせ・・・、て・・っ、いて・・!」
「どこ!どこが痛いの!兄ちゃん!兄ちゃんーー!!」
正広は錯乱のあまり、渾身の力で、由紀夫の肩を掴み、前後にがくがくゆすっていた。脳を打った人がいたとして、それやったら、ちょっと多分まずいよ?というほどの勢いで、由紀夫の頭も、がぁくがく揺れる。
はっ!と典子が立ちあがった。
何か、こういう時には何か飲ませた方がいいんじゃあ!!
給湯室にダッシュした典子は、冷蔵庫の中から冷えたスポーツドリンクを取り出した。
なんか、こーゆーものが体にいいんじゃあ!!
「ひろちゃん!これ!」
正広は、渡された500mlペットボトルを、ムリやり由紀夫の口に持っていく。
え!?と驚愕する由紀夫の顔には気づかず、そのまま口の中につっこんで、兄ちゃんしっかり!水だよ!と飲ませた瞬間。

「いってぇーーーーーっっ!!!」

由紀夫は叫び、由紀夫にまとわりついていた3人は吹っ飛んだ。

「に、兄ちゃん・・・!!」
そして正広には解った。
「兄ちゃん・・・・・・・・・!!!歯が痛いんだね!?」
右頬を押さえ、ぐったりしている由紀夫は、小さく舌打ちをした。

 

痛い。
そう感じたのは、その日の明け方のことだった。
ふと目覚めた時のうっとーしい感じ。何がこんなにうっとーしいのか・・・と考えていたら、それが口の中の不快感だった。
あぁ、歯が痛い・・・。
痛い、痛い、歯が痛い・・・・・・・・。
それを意識していると、なぜか、その痛みが拡散していく。歯がいたかったはずなのに、頬が痛くなり、首が痛くなり、頭まで痛くなってくる。
痛いなー・・・・・・・・・・・・・・。
でもなー・・・・・・・・・・。

「歯医者さん、行きたくないんだねっっ!?」

その通りなのだった。
由紀夫は、もうながーーーいこと、歯医者なんて行ってないのだ。
歯医者の、キュイーーーン!って音が、結構苦手だったりするのだ・・・。
だから、一生懸命仕事して気を紛らわそうとしていたのに・・・。
「兄ちゃん。虫歯だけは、人間、自然治癒できないんだよ・・・?」
「知ってるよ・・・」
「いつかは行かなきゃいけないんだから、悪くならないうちにいかないと」
そんなこと由紀夫だって解っていた。軽いうちに行けば、今時の歯医者はそんなに痛くなんかないってことだって、もちろん知っている。
しかし、由紀夫には、由紀夫なりのトラウマがあり・・・・。

え!?由紀夫のトラウマ!?
それって一体!?

以下次号(笑)


歯は丈夫ですか?私は、歯医者さんから、生まれつき歯が弱いです、と太鼓判を押された女です。後、右足の骨が一分足りないんだか、欠けてるんだかしてるところもあるそうです。長時間歩くと、どうしても足が疲れると言われ、それは誰だってそうなんじゃあ、と思いましたです(笑)
アァ!由紀夫!どうして歯医者にいけないの!行って!行ってちょうだい、ゆーきーおぉーーー!!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

今までのGift番外編へ

What's newへ

SMAPレポートへ

SMAPメニューへ

トップへ