天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

スペシャル番外未来編『女神様が届けた』

えー、仕事やら、なんやら忙しいため、急遽考えたこの企画(笑)うまくいったらおなぐさみ!

yukio

「あ」
隣を歩いていた友達が突然立ち止まった。私もつきあって、立ち止まる。どうせ立ち止まる原因は、いつだって同じ。
「自転車」
ふわふわの髪を揺らし、嬉しそうな顔で指差すその先には、必ず銀色の自転車がある。我が友達ながら可憐な美少女である彼女は、どういう訳か、シンプルなデザインの、シルバーの自転車に弱かった。
「綺麗」
ぽわんとした口調で、しばらく自転車を眺めて、嬉しそうな笑顔になる。いいところのお嬢さんで、おっとり育ってるもんだから、同じ16歳でも随分と幼く見える、可愛い笑顔。
「あんた、自転車好きね」
「うん。好き」
「乗れないけどね」
意地悪く言うと、ぷっと膨れて軽く叩く仕種をする。

「そーいや、あんた、何で自転車好きなの。それもシルバーばっかり」
「ん?」
ようやく歩き出した彼女に聞けば、小首を傾げて不思議そうな顔になった。
「ん?って。何で、自転車が、好きかって聞いてるの」
じっとその言葉を聞き取って、あら、と口元に軽く手を当てる。
「言ってなかったっけ?」
「知らない」
「私はね、銀色の自転車に乗った女神様に会った事があるの」

乙女チックなヤツだとは思っていたけどもさ。しっかりして欲しいわな…。
「だぁって本当なのにぃ!」
彼女の倍のスピードでさっさか歩くと、半分つっ転ぶようにしながらついてくる。
「女神様!女神様ってのは、6頭立ての馬車とかに乗ってんじゃないの。なんてんだっけ、チャリオットとかってヤツ。それがなんで自転車なのよ、自転車!」
「ギリシャ神話!」
パン、と顔の前で手を合わせる。
「あれって、2輪じゃなかったっけ?自転車と一緒よね」
「一緒じゃなーい!」
チャリオットは「自転」しない!
「だって、女神様よ、すっごく、すっごく、綺麗だったんだから!」
珍しく強情に言い張る。
珍しいな、と立ち止まった。ふっくらした頬を赤くして、不服そうな顔。
「…女神様?」
「女神様」

「入院してた時ね」
彼女は幼稚園の頃、1年ほど入院していたことがあるらしい。
「私、病院からいなくなった事があるんだって」
「はぁ?いなくなった?」
「うん。んーと、なんかね、よく覚えてないんだけど、知らないお兄ちゃんと、お出かけしたみたいなの」
「知らないお兄ちゃん?」
「ママが呼んでるよって言われて」
「…あんた、それ…」
「でも、車に乗ってって言われて、その頃、私、車に乗れなかったの」
「乗れない?」
「すぐ気持ち悪くなって、車見ただけでも、気持ち悪くなるくらいだったから」
今でも、その傾向はあった。バス移動の時は毎回大騒ぎだ。
「それで、乗りたくないから、お母さん呼んで来て、って言ってたら、そこに女神様が来たの…!」

目が、ハートマークになってる…。

「銀色の綺麗な自転車が最初に見えて、足が見えて、あれ?って思ったら、すごく綺麗な女神様が私を見てたのぉー…」
「そんな美人?」
友達も綺麗だし、この子のお母さんもすっごい美人で、ちょっとやそっとの美人は見慣れてるはずなのに。
「綺麗!あんな綺麗な人、あれからも見た事ないもん。あー…、どうして私の髪はこうなのかなぁ」
ふわふわとした天然ウェーブの髪は、ずいぶんと可愛いと思うけど。
「だって、すごく綺麗な髪だったのよ。まっすぐでさらさらで、綺麗な色で」
うっとりと宙のどこかを見つめながら彼女は話す。
「それで、私を自転車に乗せてくれて、走ってくれたの」
「え、でも、それって」
「でも、私ね、おうちの住所も知らなかったし、病院の名前も知らなかったから、なんか女神様、ちょっと困ったみたい」
「いや、そうじゃなくってよ!」
「困った風だったんだけど、よしよしって頭撫でてくれて、それで、どうしてだか私、ちゃんとおうちに帰ってたのね。時々お母さんが言うんだけど、うちの玄関で、私、帰っちゃやだって、女神様にしがみついて泣いたんだって」
やぁねぇ、と笑う彼女だったが、こっちはそれどころじゃない。
「あんたそれ、誘拐じゃん!!」
「ん?そうだったみたい」
ケロリンという。車乗ってたら、危なかった。車酔いもたまには役に立つって…。

誘拐されかけたところを助けてもらった女神様(という名の、美女)が乗ってたのが銀色の自転車だった。それじゃあ、気になるかもしれないよね…。

「あ、もうこんな時間…」
「え?あ!遅れるわよ!急がないと!」
二人してスピードアップする。
「あんたが、プレゼント選ぶのに時間かけるから!」
「だって、上げたいもの、一杯あるんだもの」
あ、と彼女が立ち止まる。また自転車かっ!と駆け戻ると、じっと私を見て言った。
「思い出した」
「何?」
「女神様が、なんて言ったか」
「なんて?」
「ギフトです、って」
「ギフト?」
「あれ、私の事だったのかなぁ。お母さんには、そうじゃない?帰ってきた娘って、ギフトじゃない?」
そう言って、にっこり笑う。この能天気なぼんやりした友達が、小さい頃に誘拐されかけたなんて知らなかった。でも、もしかしたら、その「女神様」がいなかったら、私はこの子と出会わなかったかもしれない。
そうであれば、そのギフトは、私にとっても、大きなギフトだ。

「それくらいのプレゼントしたいなぁー」
待ち合わせ場所に急ぎながら、彼女が言う。
毎年1回、入院してた時に可愛がってもらってたというお兄ちゃんに会いに行く途中。その時、いつもお誕生日プレゼントを交換してるんだって言ってた。
私も今年は乱入。
「それより、遅刻することの方を気にしなさいよ」
「正広お兄ちゃん、そんな事で怒らないもんっ」
待ち合わせまで、後3分。私たちは本格的にダッシュを始めた。

<つづく>

…なんのこっちゃか(笑)長いのが書けそうもなかったんだもんよぉ(泣)!来週はもう時間あるのかなぁ?あるじょ、きっと!

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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