天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編71話前編『『お菓子』を届ける』

今日の腰越奈緒美。
「そろそろ夏なので、水着のオーダーに行こうと思ったが、そのためには、体を綺麗にしておかなくちゃね、とエステに向かったところ、サイバーエステにはまり、結局1日、エステティックサロンで過ごした。さすが社長。こうじゃなくっちゃ!!」

yukio
 

パトカーの音がしていた。
「迎えに来たんじゃん・・・?」「迎えに来たんだったりして」
由紀夫と正広は野長瀬に向かって同時に言い、いぇい!と親指を立てた。
「必ずそゆこと言うんですねっ!」
「お約束じゃんねぇ」
「テツ&トモもそう言ってるんだし」
テツ&トモとは、正広の最近のお気に入りお笑い芸人。彼らのネタに、救急車の音がすると、必ず「迎えに来たんじゃないの?」というヤツがいるのはなんでだろう、というものがあるのだ。
「救急車なんて迎えに来ませんよ!」
「だからパトカーってゆってんじゃん」
「パトカーもありませんっ!」
「えーー!はいっ!」
「はいっ!正広くんっ!」
ぴしっ!と手を上げた正広を由紀夫が指差す。
「先生っ!野長瀬くんはっ!こないだ駐車違反のプレートをミラーにつけられてましたけどっ!そのワイヤーを切ってっ!捨てましたっ!」
「んまー!!野長瀬くんっ!国民としてなんてこと!なんてことぉっ!」
「あっ!あれは由紀夫ちゃんもヤレって言ったじゃないですかぁっ!社長を迎えにいくのにそれじゃあまずいだろおってぇ!」
「いやーー!犯罪者よ、犯罪者っ!正広っ!こっち来なさいっ!」
「きゃー!!怖いぃーーー!!」

そんな風に、腰越人材派遣センターお留守番3人組がのどかな昼下がりを楽しく騒いでいた間、パトカーの音はどんどん近づいてきていた。
「おいおい、ほんと近所じゃん」
「由紀夫ちゃん、迎えに来たんじゃないですぅ〜?」
「警察が俺になんの用だよ」
「はっ・・・!あたしのハートを盗んだわね!っておねいさんが!いてっ!」
「正広っ!」
正広の頭をはたいた丸めた書類を片手に、由紀夫は宣言した。
「お兄ちゃんは、訴えられるようなへまはしない!」
「さすが!!」
「さすがです!由紀夫ちゃんっ!」
「ハハハハハハハ!!!!・・・にしても、うるせぇなぁ、パトカー・・・」

腰越人材派遣センターは2階の高さにある。その窓から外を見た3人は、ギョっとして硬直する。
ヤクザが乗ってなかったら誰が乗ってんだ!?という黒塗りベンツが恐ろしいスピードで走ってきている。その黒塗りベンツのサイドミラーには、似合わない、似合わなさすぎる、黄色いプレート。
「・・・駐車違反・・・?」
「駐車違反したベンツがばっくれようとしてるのを、パトカー3台が追いかけてる?」
そんなバカな。
3人は顔を見合わせた。
ともかく、ビデオにでも撮るか。最悪ポラロイドでも、と、取りに行こうとした時、ベンツが急ブレーキを踏んだ。
「あれ」
「どしたんだ!?」
窓に貼りつくようにして見おろすと、ベンツから男が降りてきた。
『ヤクザ』
と、全身に張り紙をしているような男だった。
角刈りで、黒いサングラスで黒いスーツに黒いシャツ。ネクタイは西陣織!?それともゴブラン織り!?というような鮮やかで分厚そーなもの。
「いいガタイしてるよな」
由紀夫が言った。
「スクリーンで見たらカッコいいって思うかも」
「でも、顔怖いよ・・・?」
「おまえねぇ」
呆れた顔で弟を見やる。
「これを毎日見てんのに、まだ怖い顔なんてあんの?」
「これってなんですか!これってぇ!!」
これ、と親指でさされた野長瀬は抗議の声をあげたが、その声がそのまま悲鳴になる。
「きっ!来ます!」
「え?」
「あっ!なんでぇーー!!なんでうちにぃー!!!」

男は、同じく停まったパトカーから降りてきた警官を睥睨していた。
その迫力に、まだ若い警官たち(その中に、新米巡査はんぺんくんもいた)は躊躇し、ただちには動けない。
警官たちの足止めに成功したところで、男は急に身を翻し、腰越人材派遣センターの階段を駆け上がり出したのだ。

「いやー!!人質にされるぅーーー!?」
「そんなバカな!」
「かっ!鍵!鍵しめなきゃ!!」
あわあわとドアに向かおうとした野長瀬は、ドアの外に男の姿を見た瞬間見事なターンを決め、由紀夫の後ろに隠れようとする。
しかしその場所はすでに正広に隠れられていた。
「ひっひろちゃんっ!いれてくださいよっ!」
「なんだよっ!野長瀬さん、大人じゃんっっ!」
背中でおしくらまんじゅうをされながら、由紀夫は一人、男と対峙した。
とりあえずの一言はこうだ。
「いらっしゃいませ」
それを受けて、男も言った。
「お邪魔します」
「・・・邪魔すんなら帰って・・・?」
吉本新喜劇のお約束なセリフを言わずにいられないのは正広。
「何のご用でしょう」
ともかく、相手が『素人さんに迷惑かけんじゃねぇ!』的ヤクザであることを見取った由紀夫は、落ち着いた対応に終始する。
「これを、届けていただきたい」

「ま、待てぇ!に、逃げるなぁ!!」
ようやくびびっていた警官たち(はんぺんくん含む)が腰越人材派遣センターに乱入。彼らだって必死なのだ。たとえ黒塗りベンツであっても、駐車違反は駐車違反。取り締まるのだ!それが市民に対する正しい態度だ!!
最初の一人が勇気を持って駐車違反のプレートをつけ、そしてその車がそのまま行ってしまうのを見た次の一人が、慌ててパトカーでおいかけだしてしまったのだ。
さらに慌てた同乗者が応援を要請。
かくして、4台のパトカーが黒塗りベンツにくっついてきていた。
「ど、道交法違反、と、えっと・・・」
拳銃を出そうかという勢いで、おどおどしながら罪状を挙げようとしている警官を、男は睨みつける。
ひゅっ!と息を呑んだ警官たちをもう一度睨みつけ、由紀夫の方に向き直る。
「これを」
「これ・・・ですか・・・」

さっきからおかしい、おかしいと思っていた。
黒尽くめの男の手に、大事そうに、大事そうに置かれている、白い箱。
由紀夫には、それがケーキの箱にしか見えなかった。
正広にも、ケーキの箱としか見えなかったし、野長瀬にも見えなかった。
ショートケーキが2つほど入りそうなサイズの白い箱。
「3時までに、任天堂大学病院の、13階4号室に」
縁起悪さダブル!
大事そうに、その白い箱は、由紀夫の手のひらにそっと置かれる。
眠る子供の頬に落ちる桜の花びらよりも、そっと。
「報酬は・・・」
スーツの内ポケットから登場するは、分厚ーーい札入れ。
「こちらで・・・」
無造作に取り出されたのは、手が切れそうな新札。
それは、正広に渡された。
「えっ、あの、こんな・・・」
「お納め下さい」
丁重に頭を下げた男は、警官たちの方に向き直る。
「ご迷惑をおかけしました」
そして、深深と頭を下げ、両手を差し出したのだった。

「・・・なんだったんだ・・・?」
『お上にもお慈悲はあるぞ』などというセリフを口にしながら、男を連れ去った警官たちがいなくなり、由紀夫たちは小さくつぶやいた。
「任天堂大学病院って言えば・・・」
「ゲームやり過ぎの人が入院するって言う」
「そうそう、それで新しいゲームのモニターもさせられてなかなか退院できないらしいぜって、おい」
「よく、大物政治家とかが入院してる!あの病院ですね!?」
「その病院の、13階4号室・・・?」
「絶対、絶対、特別室とかですよ!絶対ヤクザですよ!!あ」
騒いでいた野長瀬は、自分のデスクに飛びつき顧客リストをめくりはじめた。
「さっきの人・・・。ここの人じゃあ・・・?」
腰越人材派遣センター、特に届け屋である由紀夫の顧客には、やばい筋の人間も多かった。その中でも、トップクラスにやばいと言えばやはりヤクザ。
広域暴力団、寅田組のファイルを見せられた由紀夫は、あぁ、とうなずいた。
「このバッチだったわ」
寅田組のバッチは、金に、牙の意匠。男がつけていたのがこのバッチだった。
「寅田組・・・」
正広は恐ろしい、という表情でファイルを受け取り、組長の名前を読み上げた。
「寅田熊男・・・」
「待て。なんだその名前は」
「だって!寅田熊男ってなってるもん!」
写真も添付されており、そこに映っている男は、「寅田熊男」という名前の非常によく似合う背は低いががっちりした男だ。
「入院してるのは・・・こいつか?」
田村に照会すると、その通りだという返事もきた。
任天堂大学病院13階4号室はニ部屋続き、バス・トイレ、ミニキッチン、コインランドリ−、応接セット、AV機器などなどが揃えられた特別室。

そんな部屋で入院している組長に届けろと言われた荷物・・・・・・・。
小さな白い箱に、ずしり!とした重みを感じた由紀夫だった。

ともかく時間がない。
グラスに入ったジュースもこぼさずにお届けできます、というスペシャルマッシーンを自転車に装着。そこに白い箱を収める。もちろん、スペシャルマッシーンの大元の考えは、出前用カブの後部に設置されていた、あのマッシーンだ。
「じゃあ、いってくる・・・」
「に、兄ちゃん・・・!気をつけて・・・!」
今生の別れをかわす早坂兄弟。
そんな二人は、自分たちを見ている影があることに気づいていなかった。

つづく


こんなもったいない使い方でいいのかしら・・・。はんぺんくん・・・(笑)
はんぺんくんの名前が知りたくて紀文のHPまで行ったけど、はんぺんくんとしか書いてなかったです(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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