天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen@gallery様から使わさせていただいております!皆様も遊びにいらしてくださいね!

ギフト番外編73話前編『ヨウちゃん(仮名)登場』

ヨウムは、高い。しかし、可愛い鳥なのだ。ビバヨウム!!できれば、喋って欲しい。あぁ、ヨウム!

yukio
 

ヨウムという鳥がいる。
いやいや、オウムではなく、ヨウム。なんでも、漢字では、洋鵡、と書くそうだ。
オウムというと、色鮮やかな鳥を想像するが、ヨウムは、ん?あれっ?ここの映像って白黒っ?と思うほどのモノトーンのシックな色合いをしている(笑)
さらに、相当頭もよく、値段にすれば、ちょっとびっくりするような高価な鳥だが(パソコンだって楽勝で買えちゃうぞ!)世間一般の認知度はあまり高くない、鳥マニア垂涎の鳥。

「そういう、鳥マニア垂涎の鳥を、こんなペットショップが仕入れるのがどうかしてるんだって」
稲垣アニマルクリニック院長、稲垣吾郎は、商店街にある小さなペットショップ「パンチ鳥獣店」の店内で、懐かしいグリーンのドーナツ型座面の椅子に座って、店内を見渡した。もちろん、床はセメント剥き出しだ。
「いや、でもねぇ、先生。やっぱり、うちの店も、こう、目玉商品としてね、このヨウムを仕入れた訳ですよ!」
「2年前にね」
「えぇ、もうあれから2年。あの日は、パンチ鳥獣店、始まっていらいの騒ぎでしたよ。セールしましたよ、セール!ヨウム購入記念、ペットフード2割引セール!」
「せせこましい・・・」
「うちみたいな零細ペットショップにはそれが限界なんですってば!」
ずずず、とお茶を飲み、なおも、稲垣医師の目線は店内を動く。鳥獣店というだけあって、この店は鳥の比率が大きい。一般的な、文鳥や、カナリヤ、十姉妹、それに小型のインコがメインで、ニワトリもいたりする。
稲垣医師は、鳥、小動物が得意分野なので、ざっと見ただけでも、具合の悪い鳥はいないな、ということが解るのだ。
しかし。
「それで?ヨウムがどうしたって?」
「えぇ。それでですね、もう2年もうちにいる訳ですよ。ヨウちゃん(仮名)は」
「かっこかめい?」
「そうですよ!だって、ペットショップで売り物に勝手に名前をつける訳にいかないじゃないですか!だから、あの子は、ヨウちゃん、かっこかめい、って言うんですよ」
「知らなかったよ・・・」
「何言ってんですか。何回も診察してもらったじゃないですか」
「いや、でも・・・。ここ最近はなかったよねぇ」
「えぇ、なかったですけど」
「ここのヨウムって、喋るんだっけ?」

ヨウムは喋る鳥だ。しかし、その頭の良さは、単なる言葉のオウム返しではなく、会話が出来る可能性を秘めている。
「おはよー、ヨウちゃん(仮名)」と呼びかけると、「おはよー、パンチ」くらいの会話が可能。もっと賢くなると、「ヨウちゃん(仮名)は、アイスが食べたいの」っくらいの希望を伝えられる個体もいるという(と聞いた(笑))

「喋りますよ。ちゃんと訓練してありますからね!ね、ヨウちゃん(仮名)!」
『・・・』
「喋らないじゃん」
「そうなんです・・・」
パンチ鳥獣店を親から引き継いだ、二代目パンチは、よよ、冷たい床にひざを折る。
「ヨウちゃん(仮名)は、すっかり元気がなくなってしまったんです、先生・・・!このパンチ鳥獣店でゴールデンレトリバーを押さえ、一番の高値を誇っておりながら、ヨウちゃん(仮名)は、ヨウちゃん(仮名)は・・・!」
「そのかっこかめい、っての辞めてくれない?」
「ヨウちゃん(仮名)はっ!!」
パンチは、まるで聞いていない。おまえは星飛雄馬か、はたまた伴忠太か、という滂沱の涙を流していた。
「ヨウちゃん(仮名)は、ご飯も喉を通らないんですっ!」
「え」
動物は、食べられくなったら相当やばい、というの定説だ。
「食べないの」
「食べないんです」
「・・・好き嫌いじゃなくて?」
「ヨウちゃん(仮名)は好き嫌いをしません」
パンチは胸を張る。パンチ鳥獣店の自慢は、病気なんかのないペットたち。食事には大層気をつかい、低脂肪、高蛋白で、元気な子たちを育てている。
ヨウちゃん(仮名)にも、鳥のえさだけでなく、野菜や、果物なども与えて、本当に元気に、ツヤツヤとした羽毛をしていた。
目もキラキラしていた。
ちょっと顔が怖いから、ハムスターを見に来た幼稚園児が、びびってしまったこともあったけど、でも、『コンニチハ!』と挨拶なんかもして、すっかり人気者だったのに・・・!
「どーしてしまったんだ、ヨウちゃーーーん(仮名ーーーー)!」

稲垣医師は、店中で一番いい位置に置かれているヨウちゃん(仮名)のケージに近づいた。
ケージの中で、ヨウちゃん(仮名)はしょんぼりして見える。
「ヨウちゃん(仮名)?」
声をかけると、ちらっとこっちを見るけれど、そのまま、しょぼんと、うつむいてしまうヨウちゃん(仮名)。
「うーん・・・。ちょっと、うちで預からせてもらっていいかな」
「お願いします!お願いします、先生!ヨウちゃん(仮名)は、この店の看板なんです!パンチ鳥獣店をヨウちゃん(仮名)鳥獣店に買えてもいい!と思っているほどに!」
「・・・かっこかめいは辞めた方が・・・」

「わぁ。ヨウちゃん(仮名)久しぶり」
草g助手がニコニコといった。
「ん?」
重たいケージを持たされ、すっかり左腕がしびれてしまった稲垣医師は、不思議そうな顔になる。
「なんで、ヨウちゃん(仮名)の名前、知ってんだ?」
「稲垣先生・・・」
草g助手は困った顔で、稲垣医師を見た。
「今まで、何度か来たじゃないですか、ヨウちゃん(仮名)・・・」
「名前なんて言ってたか?」
「か、カルテに・・・」
「あ、そっか」
着ていた外出用白衣を脱ぎ、診察用白衣に着替えた稲垣医師は、ケージを開いて、ヨウちゃん(仮名)を取り出そうとして。
「うーんうーーーん」
「引っ張ってどーすんですか!」
「ヨウちゃん(仮名)!どーして出てこないんだ!」
ヨウムは大きい。力も結構強い。ヨウちゃん(仮名)は、止まり木にしっかりつかまり、出たくないっ!とがんばった。
「なんだ、この思春期の中学生みたいな態度!」

「ん?」
草g助手は、ピンと来た。
「思春期なんじゃあ・・・」
「思春期?」
「恋・・・?」
「ヨウちゃん(仮名)が、恋・・・!」
ぱああ・・・・!と稲垣アニマルクリニック診察室に、ほわほわと、恋の花が咲く。それは、小さくも可憐な、可愛らしい花々だ。
「バカか」
しかし、その繊細な花は、稲垣医師の一言で、散り果てた。
「この近辺でヨウムはこの一頭だけだと断言できるぞ」
「いや、だから、誰か自分にふさわしい相手はいないのかと、まだ見ぬ運命の相手に恋焦がれ」
「えーっと、栄養剤の注射、と」
「こ、恋・・・」
「注射!」

しかし。
稲垣医師は相手にしなかったけど、本当は。
確かにヨウちゃん(仮名)は。
恋をしていた・・・。

ヨウちゃん(仮名)は、パンチ鳥獣店で、十分に可愛がられている鳥だった。
愛されていると、ヨウちゃん(仮名)は満足していたし、のんびりとした日々を過ごしていたのだ。
でも、それが変わってしまったのはあの日・・・。
あの運命の昼下がり。
ヨウちゃん(仮名)は、店の外を行くあの子に心奪われてしまったのだ。
あぁ、あの子に会いたい、あの子に会いたい。一体どうすればあの子に会えるのか。あの白く、可愛い、あの子に・・・!
ヨウちゃん(仮名)の心は、奪われてしまった。
もう、店長のパンチとお喋るすることも楽しいとは思えない。

そこに。

「こんにちはー」
呼びかけに答え、草g助手が診察室のドアを開ける。
「あれ。正広くん?」
「こんにちは、稲垣先生、草g先生」
「ううん、剛は助手だから」
「・・・草g、さん・・・」
はは、と困った顔の剛に、正広は申し訳なさそうに声をかける。
「どうしたの?智子ちゃん?」
「あ、はい。なんか、智子ちゃんが怪我しちゃって・・・。ついでにしぃちゃんも連れてきちゃいました。
正広は、胸に抱いていたミニウサギ(大。そして♂)の野長瀬智子を診察台に置く。智子は、人間で言えば、苦虫を200匹噛み潰したような顔で、じっとしていた。
「どうしたの?」
稲垣医師が、ちょっと血のにじんだ前足を見ようとした時、背中ですごい音がした。
ヨウちゃん(仮名)が、ケージに体当たりをかましていたのだ。
「ヨッ、ヨウちゃん(仮名)っ!?」
「うわ!びっくりしたっ!」
正広がのけぞり、肩にいたしぃちゃんは飛び立つ。
「ヨウちゃん(仮名)!出たかったら上が開いてるからっ!」
草g助手が手を出すと、ヨウちゃん(仮名)は、あ、そうですか、と大人しく、ケージから出てきて、ケージの枠に止まった。
「うわー・・・。これ、なんて鳥ですか・・・?」
正広は、その白とグレーが絶妙に配置された、水墨画のような鳥に近づく。正広にとっては、初めて見る鳥だった。
「ヨウム」
「あ!これがヨウム!しぃちゃん!ほら、ヨウムだって。高いんだよー。それで、喋れるんだよ、ヨウムって」

呼びかけられたしぃちゃんは、あら。そりゃあ、私はただで貰われた鳥だけど、でも、ブリーダー出身なのよ。と思う。喋れないけど、でも、ひろちゃんのゆってることもわかるもの。とも思った。
でも、しぃちゃんも、ヨウムを見るのは初めてで、正広の肩に止まり、側に寄ってみた。

そして。
ヨウちゃん(仮名)は、運命に感謝していた。
ここで、こうやって、運命の相手に出会えるなんて!なんて!なんて!!なんて・・・・!!!
なんて俺って幸せなんだーーーーーっ!!

運命の相手にめがけて羽を広げ、飛び立ったヨウちゃん(仮名)の飛行は邪魔された。
診察台にいたはずの智子が、傷ついた足で、ジャンプをし、さえぎったのだ。

何を!?
何だ!?
ケージの上と、診察室の床の上。
ヨウちゃん(仮名)と、野長瀬智子は、異種でありながら、にらみ合った。
確かに今、二人の間には、はっきりとしたライバル関係が出来上がっていたのだ。

ああ!!私!?私のために!?
私のためになんか、ケンカをやーめーてーーーー!!!!
しぃちゃんは悲劇のヒロインになりきっている。

つづく


埼玉にあるペットショップでは、このバカ高いヨウムとコミュニケーションが取れるぞ!2時間でも3時間でもいられる鳥好きには夢のようなペットショップだ(笑)!!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

今までのGift番外編へ

What's newへ

SMAPレポートへ

SMAPメニューへ

トップへ