天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen@gallery様から使わさせていただいております!皆様も遊びにいらしてくださいね!

ギフト番外編73話後編『ヨウちゃん(仮名)登場』

ヨウのヨウちゃん(仮名)は恋をしていた。それは、相手の素性すら解らない苦しい恋だ。しかし、ヨウちゃんは稲垣アニマルクリニックで、ついに運命の恋の相手と出会うことができたのだ!ヨウちゃん、ラッキー!」

yukio
 

「あぁ、智子ちゃんっ?大丈夫っ?」
いきなり飛び降りた智子(巨大ミニウサギ・オス)に驚いて正広が抱き上げる。
「痛かったよねぇ、可哀想に・・・」
よしよしと毛並みを撫で、また治療台に乗せる。
「どしちゃったのよ、智子ちゃんは」
「あぁ、今日事務所に来てたんですけど、ゴミ箱倒しちゃって、中に、空き缶の蓋があったんですよ。それ踏んで」
「可哀想に」
草g助手が眉をひそめ、怪我の様子を見ている。
「なんで、事務所に智子ちゃんがいたの?」
「あの、水曜日は、ペットデーにしようって、こないだ、奈緒美さんが・・・」
「奈緒美さん、ペットを飼ったね?」
「まだ預かってるだけだって言ってるんですけど、ミニチュアダックスを・・・」
「ポメラニアンとかが似合いそうなのに」
あはは!と笑う稲垣医師は、智子の治療をする気はないらしい。
「ん?そうそう、ヨウちゃん(仮名)?どした?」
ヨウちゃん(仮名)はケージの上で、じっとしぃちゃんの方を見ていた。
「何?しぃちゃんが気に入ったのかな。異種だけど」
「えっ?え、でも、しぃちゃん、お嫁さんには出しませんよっ?」
あぁ!
しぃちゃんは、正広の頬に、そのすべらかな体をすり寄せた。
もちろんです、ひろちゃん!しぃちゃんは、ずっとひろちゃんといるんですっ!
「ねー、しぃちゃん」
正広もまんざらではなく、よしよししていたが、そこい強い視線を感じる。
智子と、ヨウちゃん(仮名)が正広を睨んでいたのだ。
「・・・し、しぃちゃん・・・・・・、モテモテ・・・?」

そっと肩に止まらせ直し、ともかく智子の様子をと見ると、小さな前足には、テーピングが施されていた。
「大丈夫ですか・・・?」
「うん、大丈夫。薄く長く切っちゃってるだけで、すぐに直りますよ」
「よかったぁ」
智子を抱き上げると、しぃちゃんも、心配だったようで、大丈夫?と顔を寄せる。

「うっ!」

草g助手がその瞬間声を上げた。
ヨウちゃん(仮名)につつかれたのだ。
「なんでっ?」
「ライバル!?」
稲垣医師が、まるでハレルヤ!と声を上げているような、楽しげな、晴れやかな声と顔で立ちあがった。
「稲垣先生っ?」
「ライバルだね!ヨウちゃん(仮名)と智子ちゃんは!そうなんだね!」
「ライバルって・・・、し、しぃちゃんっ!?」
え!やっぱり私っ?
がーん!しぃちゃんはショックを受け、固まり、危うく正広の体から落っこちそうだったが、片足1本でTシャツに捕まった。結構器用だ。
「えー、ヨウちゃん(仮名)はともかく、智子ちゃん、ウサギじゃないですかぁ」
「人間がみたって、しぃちゃんは可愛いんだし、ウサギの気持ちなんか解らないんじゃないか?ん?それとも草g助手にはウサギの気持ちが解るとでも?」

じゃあ、稲垣医師には解るんですかぁ!ウサギの気持ちがぁぁ!!!

そんな言葉が出せるくらいなら、今までに何度だって叫んできたさ、ふ、バカだな、俺。
ヨウちゃん(仮名)のケージに寄りかかり、再びつつかれた草g助手だった。

そして事態は硬直してしまったのだ。
正広に抱かれつつ、しぃちゃんに気遣われている智子は、ふふん、とあごを上げ、無理やりヨウちゃん(仮名)を見下ろしている。
ヨウちゃんは、ふっ、俺だって飛べるんだぜ!しかも喋れるし!と喋る準備をする。
解っている。
この気持ちに言葉をのせるとしたら、これしかない。
やっと出会えた運命の子に、ヨウちゃん(仮名)は万感の思いを込めて喋った。

「アイチテルヨ、ハニィー」

正広は驚き、草g助手も驚き、稲垣医師は頭を抱えた。
ああ、この言葉は、まさに、パンチ鳥獣店店長、パンチのくどき文句に他ならない!
そんな人間の驚きをよそ目に、ヨウちゃんは飛んだ。
来るな!と再びキックを食らわせようとした智子だったが、正広に抱かれていてはそうもいかない。
ヨウちゃんは、悠々と、正広の肩に止まった。
「お、重いです・・・っ」
「すご!なんて言うの?人間止まり木っ?」
「バカなこといってないで、あの、どの子か・・・」
正広は、右肩にしぃちゃん、左肩にヨウちゃん(仮名)、腕の中に智子と、なにやら、メルヘンの王子様のような状態になっていた。
「面白い!写真、写真!」
「そーじゃなくってー!あー!草g先生もやめてくださいー!」
「ううん、剛は助手だから」
「・・・草g、さん・・・」
しかし、哀しいかな、草g助手。体はもう条件反射で稲垣医師のいうことを聞いてしまう。
不必要に高機能なデジカメを用意し、稲垣先生は入らないんですか?まで聞いてしまっているのだ。
「後で入るから、ともかく先にこっちを」
ぱしゃ。
「後でHPにのーせよっと」
「なんでですかー!」
「動物とのふれあいでしょうがー!」

さて、人間がノンキに言い争っているうちに、動物たちはもう少し切羽詰ったことになっていた。

『どけ』
『あ?後から来といて、でかい顔すんなよ。おまえがどけ』
『順番?恋にそんなもの関係ないのさ』
『あぁ、関係ないな。おまえが何番だろうと相手にされないんだから』
『なんだとー!』
『何をーーー!』

「いだだだだ・・・っ」
正広は暴れる智子を押さえようとしているが、力強い四つの足は、ともかく離せ!ともがく。
「ヨウちゃん(仮名)正広くんが重いって、わっ」

草g助手を威嚇したヨウちゃん(仮名)は、くい、っとあごをしゃくり、表でろ、と智子に言う。
『てめぇ!ちょっと羽があるからっていい気になるんじゃねぇぞっ!』
『やめてくださいー!智子さんも、ヨウちゃん(仮名)さんもぉーー!』
しぃちゃんの叫びも虚しく、ついに智子は自由を手にし、正広の肩の上のヨウちゃん(仮名)に向かってジャンプした。
飛びのくヨウちゃん(仮名)!
「いたっ!」
智子の後ろ足が、正広のあごにヒット。正広がよろけ、智子もそのまま、正広の後ろにあった出窓に飛び降りた。
「な、なんと身軽な!」
稲垣医師、これは保存しておかねば!と、また無駄に高機能なデジカムを取り出す。
「ミニウサギVSヨウム!値段にすれば、楽勝で100倍差のこの二頭!勝つのは雑草の強さのミニウサギが、さすが高貴なお生まれのヨウム様か!しかし、勝ったからといって、愛するものの微笑が得られるとは限らないっ!」
「稲垣せんせー!そんなバカなこと言ってないでー!」

それは、空中戦といっていい闘いだった。
ヨウちゃんは鳥とはいえ羽を切られていたし、智子は、並のウサギとは比べ物にならない脚力で跳びまくった。

止めなくちゃ!
智子のキックをあごに受け、ちょっと足に来ていた正広だが、とにかく二人の争いを収めなきゃ!と間に割って入る。
『ひろちゃん!あぶないっ!』
しぃちゃんは間に合わなかった。
しぃちゃんが、肩に止まるより早く、それぞれジャンプして二頭の間に入った正広の。

胸にヨウちゃん(仮名)が跳び込んでくる。

そしてヨウちゃん(仮名)は高らかに宣言した。
「アイチテルヨ、ハニィー」

「・・・はい?」
胸の中で、抱っこして、抱っこして、撫でてっ!と擦り寄ってくるヨウちゃん(仮名)を、正広は呆然と見下す。
「正広くん・・・?」
「しぃちゃんじゃなくって?」
デジカメとデジカムを手に、稲垣アニマルクリニック二人組もあっけにとられた。
そして、正広の足元では、智子が、おまえはアルプスアイベックス(アルプスの少女ハイジに登場の大角のダンナ。もちろん、めちゃ岩場を跳びまわっている巨大なヤギ。だか、羊だか)か!!というほどにジャンプして、ヨウちゃん(仮名)威嚇しまくっている。
『こいつは俺の世話係だってのー!安心しろよ!今助けてやるからなっ!』
と、時折、正広の足に体をすり付けたりなんかもして。

そしてここにもう一匹、置いてけぼりにされているものが。
しぃちゃんである。しぃちゃんは、今、正広から1mほど離れた止まり木で、女のプライドを力いっぱい傷つけられていた。
いくら可愛くったって、ひろちゃんは男の子なのよーー!!
智子さんまで、何よーーー!!
そして、ひろちゃんは、私のひろちゃんなのよーー!!!

しぃちゃん参戦!

溝口正広争奪戦により、稲垣アニマルクリニックは、その日の診療を不可能にさせられた。

夕方。
稲垣アニマルクリニックは、オレンジの光で満たされる。
そして、その鮮やかな光の中、ホコリがキラキラと舞い、鳥の羽も舞い、ウサギの羽も舞い、なんだかとっても・・・
「美しくないわー!!!」
一声叫び、稲垣医師がほうきを乱暴に振りまわす。
「ヨウちゃん(仮名)!ヨウちゃん(仮名)、大丈夫っ!?」
パンチ鳥獣店の店長もやってきていた。
「智子ちゃああん!!美脚なのに、美脚なのにぃぃぃ!」
野長瀬は、そもそもの原因になった前足のテープを見てよよと泣き崩れる。
「なかなかいないよな。顔面にウサギのキックいれられるやつって」
「兄ちゃん・・・」
「保護者の方ー!片付けの手伝いもー!」
「保護者って!しぃちゃんの保護者は俺ですぅ」
「でも、正広くんの保護者はお兄さんなんだし。ねぇ」
「はぁ・・・」
正広の顔に軽く残っている痣をしげしげを眺めていた由紀夫は、一仕事終えて帰ってきたところに急遽呼び出しをかけられたため、何のことだかよく解っていない。
「お兄さん、気をつけてくださいね。正広くんを夜道、一人で歩かせてると、いつ野犬に襲われるか解りませんよ?」
「野犬!?」
「いや、真昼間の公園でも危ない。いつハトにさらわれるか!」
「ハトぉ?」
「きっと、弟さんは、対動物フェロモンを出してるんですよ」

真面目な顔の稲垣医師から目を逸らし、由紀夫は正広の肩に止まっているしぃちゃんに向き直った。
「おまえも、ちっちゃい体であんなのに向かってくんじゃねぇよ」
『だって、だってお兄さん!私がひろちゃんを守らなくって、誰がひろちゃんを守ってくれるんですっ?それに智子さんまでひどい!』
『何がひどいんだよ!俺だって助けようとしてたんだろっ?』
「あぁ、もう、もめんな!おまえら仲良かっただろっ?」
『そうよ、お兄さん。友達だと思っていたのに・・・!』

そんなしぃちゃんを、ヨウちゃん(仮名)は羨ましそうにみていた。
初めて、あの子を見た時、あのちっちゃな鳥も一緒だったっけ。
お店の外を、すぅっと通っていったあの子は、パンチが見せてくれるテレビに出てくる子たちよりも可愛いって思った。
これが、好きってことなんだって、ようやく気づいた。
今まで、好きって言うのは、小松菜が好き、と変わらないものだと思っていたのに、そうじゃなかったんだね・・・!

「ともかく、さっき正広くんが上げた小松菜をヨウちゃん(仮名)食べたし。原因も解ったんだから、食べられうようになるだろ」
「ありがとうございます、ありがとうございますっ!」
パンチは何度も正広に頭を下げ、いえいえ、と正広は手を振った。
その仕草。
その照れた様子。
なんて可憐なんだろう。
ヨウちゃんは、ケージの中に入れられていたけど、嬉しくなった。
「正広くん、よかったら時々、顔出してやって。お茶、お菓子くらい出させるから。出すよな」
「お食事だってー!お酒だってぇー!」
それはいいです、と首をふる正広。
あぁ、さらさらの髪も可愛い。

嬉しくなったヨウちゃんは言うのだ。

「アイチテルヨ、ハニィー」

その上、

「ハニィーハ?」
とまで!
ぎっ!智子としぃちゃんの目が正広に突き刺さる。ヨウちゃん(仮名)のハートの目も突き刺さる。
正広は、周囲をうかがい、どうしよう、と困惑しきりの顔をして、ようやく返事をした。

「そゆことは、二人っきりの時に・・・」

パタパタと羽を動かし、満足しきりのヨウちゃん(仮名)!果たして、ヨウちゃん(仮名)が正広と二人っきりになるチャンスはあるのか!?

とりあえず由紀夫は大ウケで笑っている。しぃちゃん、智子は、ヨウちゃん(仮名)を睨んでいる。そしてなおもホコリは舞っている(笑)


犬、猫を筆頭に、小動物もそこそ写真集がある。しかし、鳥の写真集というのは、もっぱら野鳥に限られているのだ!なぜ!?なぜインコとかの写真集はないの!?インコ好きのいわしくんはいつも嘆いているのだった。

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

今までのGift番外編へ

What's newへ

SMAPレポートへ

SMAPメニューへ

トップへ