天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編74話『カーナビで届ける』

「山下公園まで」とゆってる女の子を追いかけようとするCMが気になっている。「はしたないな」と友達をたしなめながら、すかさず双眼鏡で彼女のカーナビを見ている彼を、稲垣吾郎様にやってもらいたくてしょうがないのだ(笑)」

yukio
 

今時カーナビがないなんて!
腰越奈緒美は、誰よりも衝動買いをする女だ。
ある日の午後、営業いってきまーすと出かけて、夕方帰ってきた時には、もうベンツにカーナビが搭載されていた。
「・・・なーに考えてんだ?」
「あんた、今どきカーナビのない車なんて日本に存在する!?ねぇ、するの!?」
「するだろ!全然!!」
由紀夫のセリフになんて一切耳を貸さず、奈緒美はウキウキとカーナビー♪と歌った。

が。使い方がよく解らなかった。

奈緒美は、そろそろそういう世代に片足を突っ込んでいたのだ。

「兄ちゃん、今日の荷物大きいんで、奈緒美さんが車使ってもいいって」
正広に言われて、ほいほい、と由紀夫は頷き、依頼された届け物、ダンボール2箱を搬入した。やたら重たい中身はビデオテープらしい。なるべく怪しいもんじゃありませんように。
頑丈に梱包されているダンボール2つを見ながら由紀夫は思う。
「由紀夫、由紀夫っ!」
運転席に座って、出ようとしたところで奈緒美が駆けよってきた。
「あんた、カーナビ使えんのっ?」
「使わねぇよ。道なんて、ここに入ってるし」
とんとん、と頭をつつくと、奈緒美がやれやれと呆れた顔をした。
「あんたの頭の地図は更新されてないでしょお?こっちは最新よ、最新!新しい道とかあるかも!」
頭に人差し指をつきつけたまま、由紀夫はじっと奈緒美を見上げた。
由紀夫の頭の中の地図は、常に更新、更新されていて、最新の情報が入っていくものだ。ニューロンくんも、シナプスくんも、脳の中でフル稼働している。
それを、一度焼いたらそれまでよ、が基本のCD−ROMと一緒にするとは!
「違うわよ、それDVDナビだもん」
「じゃあ、DVDナビはデータの追加は可能なのか?」
「・・・知らないけど。i−modeともつなげるのよ?」
「どうやって?」
「・・・・・・知らないけど」
「だから、いいって。俺はそのまま行けるの!」
「でもぉーーーっ!」
「じゃあなっ!」
「あっ!待ちなさい、由紀夫っ!あんた、ひょっとして使えないんでしょおっ!!」

キュッ!

発進しかけていたベンツが乱暴なブレーキに揺れながら止まった。
「おれをその辺の携帯電話にも出られないおっさんだと思うなよ?」
ピピピピ!と、DVDカーナビを操作し、颯爽と公道に出た由紀夫だった。

今回の届け先は、東京都下。
地図で十分わかるけど、カーナビがあるからって邪魔になる訳じゃないしな、と、立体的な画面を由紀夫は楽しんでいた。
示されている経路にも深い注意を払わず走っていたが、カーナビは喋る。
何百メートル先右ですだの、左ですだの言う。
はいはい、ということを聞いていた由紀夫は、二百メートル先、右方向です、と言われ、ん?と首を傾げた。200m先には、確かに信号がある。しかし右に曲がったのでは高速に乗れないが?
あれ?
カーナビを信じるか、自分を信じるか。

早坂由紀夫ともあろうものが、自分よりカーナビに信頼を置くはずもなく、由紀夫は1秒の躊躇もなく、とっとと左に曲がり、とっとと高速に乗った。
高速に乗った時、カーナビが黙った。
それは、黙ったとしかいいようのない間だった。
あれ?と由紀夫がDVDの画面を眺めたところで、急に、カーナビは喋った。

『しばらく道なりです』

・・・高速だしな。
その晴れやかなアナウンスを聞き、由紀夫はそうとだけ思い、混んだ高速を運転していたところ、突然。

『およそ二百メートル先、右方向です』

「はあっ!?」
由紀夫はカーナビと前方を何度も見比べた。
200m先には、出口すらない状態で、右方向って!?
そし気づいたのだ。
カーナビの世界では、このベンツが一般道を走らされていることに。
「・・・・・・・・・・・・!?」
え、なんでっ!?と思ったところに、脱力を誘うマークが見えた。
あぁ、そうか、この先には、ローソンがあるんだ・・・。
さっすが首都高。

こうして、由紀夫は自分の判断で高速を降り、カーナビVS由紀夫の勝負は、まず由紀夫の一勝。
一般道に降りたところで、また無言になったカーナビは、画面をくるくる回して、あれ?あれ?と位置確認をしようとした結果、進行方向とは真反対の方向に矢印を出した。
真反対の方向に。

「おまえは、スタート位置からやりなおさねーと解んねぇのかっ!」

由紀夫の怒鳴り声にもびくともせず、こっち!と指差し続けるカーナビ。
「ぜってーもどらねェからなっ!」
こっちぃぃぃーー!!と真反対をさしつづけるカーナビを振り切ってひたすら全身する由紀夫。
そしてついにカーナビは諦め、再検索します、という文字を画面に表示した。

二勝目。

いや、いちいち張り合ってるつもりはない由紀夫だったが、どーしてこのカーナビはこんなにも?と気になりはじめてきた。

それから先も、どうもカーナビと由紀夫の気持ちが合わない。
だって、この信号を真っ直ぐって、明かに混んでるのに!?ここはまっすぐいった後、左に曲がるんだし、先に左に曲がってから真っ直ぐ行ったっていいじゃないか!
「だから、左折〜♪」
カーナビに聞こえるように言うと、カーナビが黙る。
大きな道より、裏道を愛する男由紀夫なものだから、どうしてもカーナビの指示に逆らうように、逆らうように運転をしてしまう。そんなことをしているうちに。
徐々に、カーナビが黙る時間が長くなってきた。
確実に目的地には近づいているのに。

由紀夫も、もう気にせずにいたのだが、目的地は初めてくる民家だったので、カーナビの画面を見ながら運転をしていた。
目的地のマークを確認しながら走っていると、風景が徐々にのどかになってくる。
道は曖昧になってくる。
カーナビはすっかり無口で、右でも、左でもありゃしないのだ。

まぁ、地図があるからいいや、と思っていたら。

『およそ200m先、斜め左方向です』

突然カーナビが喋った。
「斜め左?」
その、やけに具体的な指示は初めて聞くものだった。
そして200m先に、確かに斜め左に入る道がある。地図と、目的地との位置関係も間違っていない。
なんだ。
やるときゃやるんだ。
と、由紀夫は素直に左に入った。

その先、カーナビは順調だった。
右、左、と的確に指示を出してくる。時には、お、こんな細い道まで!やるじゃん!カーナビと思わせる一こまもあり、由紀夫はすっかり安心し、カーナビを信じ切っていた。

そして、最後にカーナビが言ったのは、

『およそ100m先、右方向です』

そこは左には道があるが、右には入れるような場所のない道路だった。
100m・・・と由紀夫が眺めたところ、細い路地があった。
ここを入るのかな。
由紀夫は、おのれのドライビングテクで、ベンツを最大限小回りさせ、その路地に頭からつっこみ!

「うわ!!」
「えっ!?」

危うく交番に突っ込みそうになった。

その路地、と見えたところは、ちょっと奥まったところにある交番の、通路だった。

『目的地に到着しました。案内を終了します』
得意気なカーナビの声。
早坂由紀夫、逆転サヨナラ負け。

怒ったカーナビに復讐をされることがあるとは!

人工知能型ロボットとして一番発達しているのはカーナビに違いない、としみじみ由紀夫は思った。

「なーにやってんですか!なんですか!なんかあったんですか!出られますか!?」
制服警官が慌てたように飛び出してきたが、通路は、ベンツの横幅一杯。
大阪の駐車場で働いているという、左右の余裕が5cmずつであっても、すり抜けられるというほどのテクはないにせよ、由紀夫は、どうにかバックで道路に戻る。
ベンツの左右には、木の枝でやったらしき、かすかな傷が残った。急ブレーキを踏んだため、後部座席に乗せていたビデオのダンボールが、運転席、助手席の背中に突っ込んでもきた。

「ふぅ」
ため息をつき、由紀夫はおもむろに、カーナビのスイッチを切った。

再戦はまだ行われていない。

なお、この日由紀夫が運んだビデオは、すべて大切だけど中身が何か解らないので、調べて欲しいという姉から弟への荷物だった。テレビ好きとして、色々な番組やCMが入っているらしい。
弟はうんざりした顔でうなだれながら二つのダンボールを受け取り、写真を撮る。
そして、その、後50cmでベンツに突っ込まれていたはずの警官が、転属になった未だ新米警官、はんぺんくんだった。
はんぺんくん、一体なにをして、こんな田舎に・・・!?


カーナビって本当にバカなことをしでかしてくれ素敵よね!そういう人間味あふれたカーナビでいて欲しい!どう考えても中に小さいおっさんがいるとしか思えないようなカーナビが(笑)!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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