天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

スペシャル番外もしかした編前編『ドラエもんを届ける』

えー、仕事やら、なんやら忙しいため、急遽考えたこの企画(笑)うまくいったらおなぐさみ!2だぁ!!何やってんねん、俺…。

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ある種の幸せに向かっていたはずだった腰越奈緒美は、幸せどころか意識不明の男を拾う羽目に陥った。小さい頃、母親に言われた言葉を思い出す。捨て犬だの、捨て猫だの、なんでも拾えばいいというもんじゃない。ちゃんと死ぬまで面倒みられるのかと、何度も動物を拾ってしまう奈緒美に、彼女はその都度言った。そんな事言ったって、事実ここで拾わなきゃ死ぬ!ってものだったら、とりあえず拾うしかないだろう。
なんだか知らないけど、生き物を拾う事が多すぎる腰越奈緒美だった。

白い病院のベッドの上に、全身血だらけだった若い男が寝ている。あれからまだ一度も目を覚ましていなかった。その枕元で刑事の朔原と言い合いをしていたら、野長瀬がさらに大きな驚いた声を上げる。
「しゃ、社長…!」
男の目がゆっくりと開こうとしている。大きな、二重の、瞳。ぼんやりとした目線が、ゆっくりと動く。
が、それを待たず、奈緒美はベットにすがりつき、わめくように尋ねた。
「岸和田は!」
その声に脅えたように、泳いでいた大きな目が奈緒美に向かう。何度か瞬きして、じっと奈緒美を見上げ、ようやく開いた口から出た言葉はこれだった。

「おばちゃん…、だれぇ…?」

「うひゃひゃひゃーっ!!」
「あたしがおばちゃんなら、朔原はおばーちゃんよぉ!」
「何言ってんのよっ!」
「野長瀬!何笑ってんのっ!!」
奈緒美パンチが野長瀬の顔面にヒット。野長瀬の姿は、宙の果てに消えた。
「あんたも!何冗談言ってんのっ!そんなことより、岸和田よ!岸和田」
「ここどこぉ」
「病院!あんたなんであんなとこ入ってたの!あんたは誰!」
キツい声で言うと、突如、見開かれた大きな瞳にじわんと涙が溢れてきた。
え?と奈緒美が一瞬体を引いたその瞬間、いい年した男がどうしたんだ!!という手放しな泣き声を上げて、彼は泣き出した。
「ど…どしたんです…か…?」
いつの間にか帰ってきた野長瀬が、びくびくと尋ねる。その視線の先では、包帯で体の多くを覆われている、20代の結構いい体した整った顔のロンゲの男が、丸っきり子供のように、エーンエーンと泣いていた。
「な、何…、泣いてんのよ…」
「おとーさんはぁ?おかーさん、どこぉ?」
「は?知らないわよ、あんたのお父さん、お母さんなんて」
「どこぉ?ボク、おうちかえる、かえるぅー!」
…気の毒に…、と、野長瀬が頭の近くで、指をクルクル回す。けれど、状況をじっと見ていた朔原が、静かに尋ねた。

「ボク、いくつ?」
ベッドの側に膝をついて、顔の高さを合わせる。ニコっと笑って、静かな声で尋ねられ、大きな目からポロポロ涙を零していた彼が、一瞬泣き止む。ギュっと握られた手が、両方の目から涙を拭った。じっと自分の手を見て、何か不思議そうな顔をしながら、不器用そうに、4本の指を立てる。奈緒美たちが、ま、まさか…!という衝撃に身構えるまもなく、彼は答える。
「4つ…」
だと。
「う、嘘ぉーっ!!」

お母さん。
その夜、腰越奈緒美は、天国の、いやいや、田舎の母親に手を合わせた。お母さん、どうして、どうしてなんです。あたしが犬や猫を拾うたびに、どうしてそれを飼うことを認めたんです。あなたが、殴ってでも止めてくれれば、あたしは動物を拾おうなんて思ったりしなかったでしょうに…!
奈緒美の豪華なマンション。その広いリビングの片隅に不釣り合いな布団がひかれていた。そこに、体は20代、精神は4歳。あげくの果てに自分の名前も解らないという記憶喪失男が、くーくー、無邪気な寝顔で眠っていた。

「あんた本当に自分の名前も解んないの?」
次の日、スイッチが入ったように、目を覚ました男に奈緒美は聞いた。布団の上にちょこんと座って、彼は不思議そうな顔で奈緒美を眺める。
「ちょっと、あんた?」
「ここ…、どこぉ…?」
うるうる、っと瞳が潤み出す。医者に言われた言葉を思い出した。精神退行は間違いないんで、見た目に惑わされず4歳児を相手にする気持ちで、って。
「…ここは、あたしの部屋、ね?」
「ボク、どしたの…?」
「ボクは、自分の事、覚えてない?名前とか、住所とか」
「なまえ…」
キョトンと首を傾げる。長い、ストレートの髪が、肩から滑り落ちた。
黒目がちの、小犬みたいな瞳が、ふいに落ち着きを無くす。あぁ、昨日と同じか…、と奈緒美は内心ため息をつく。
昨日はこれで、どうして自分の事が解らないのかと、再び大泣きを始めて、挙げ句の果て、泣き疲れて眠ってしまったんだった。
医者の診断はあっさりしたもので、もう体は大丈夫ですが、この精神退行については一朝一夕でどうなるものでも…、どうかゆっくり休ませて、気を落ちつけて差し上げた方が…なんてセリフで、体よく男を押し付けられた。

「もう、いいから」
「う…?」
もう涙が零れそうになっている男にそう言っていると、派手なチャイムの音と、うるさい怒鳴り声がする。
「社長―!社長―っ!」
「…あんのバカ…」
ドアを開けると転がるようにして飛び込んでくる野長瀬。
「どうですか!?」
「…何がよ」
「思い出しましたっ?」
「んな訳ないでしょー、昨日の今日でー!」

「おばちゃーん」
「あのね、あたしはおばちゃんじゃ…」
「そうそう、あんまり言ってると、ぶっ飛ばされるよぉー」
玄関からリビング続く廊下でぎゃーぎゃーわめいていると、そこに男も出てきた。
「おばちゃん、ボク、おなかすいた」
聞いちゃいねぇな、と二人は男をみて、同時にぽかんと口を開いた。
奈緒美宅に常備されてる男物のパジャマを着ているが、一流品好みの奈緒美だけの事はあって、イタリア製、シルクのパジャマ。その濃い紺のパジャマは、彼には少しサイズが大きいらしく、手の半分までが隠れている。その手を、胸の前にあてて、ちょっと首を傾げて二人を見ていた。捨てられた小犬の瞳に、スっと高い鼻筋に、女の子みたいにふっくらした、ちょっと開いた唇に…。
「…しゃ、社長…」
「な、何よ…」
「だ、ダメですよ」
「な、何がよ…!」
「ねぇ、ごはん、わぁ?」
「こんな子になんかしたら、手、後ろに回りますよ」

スパーン!奈緒美張り手が野長瀬の顔面にヒットする。野長瀬は廊下の壁をつっきって、どこかに消えた。
「ごはんね!ごはん!はい、こっち来なさいっ!」
手首をつかんでダイニングに向かうと、とてとて、という感じでついてくる。テーブルに座らせて、何が食べたい?と聞くと、おにぎりー!と大声で言う。が。
「朝から米なんて食ってらんないわよ」
これでも料理は得意よぉーん、と、とっととトーストとサラダ、スクランブルエッグ、オレンジジュースを男の前に置く。
「パンに何塗る?バター?ジャム?ジャムだったら、イチゴ、ブルーベリー、マーマレード。ハチミツもあるけど。あ、ピーナツバターもあるわ。サラダのドレッシングも、ショウユ、ゴマ、ラビゴット、フレンチ…、マヨネーズ?」
「…な、なにぃ…?」
「社長、4歳ですから、4歳…」
「…ボクはぁ、イチゴジャムは、好きです、かぁー?」
「すきー!」
「野長瀬、塗って」
綺麗なきつね色のトーストを野長瀬に押し付け、たばこに火をつけようとして止められる。
「社長、子供の前ですよ?」
「あんた、バカ?こいつは精神は4つでも、体はどうみても20代よ」
「だって、興味もって口に入れたりしたらどーすんです!」
「本物の4歳児だってそんな事しないっつの」
「えぇー?そうですかぁー?」
不審そうな顔で、野長瀬はたっぷりイチゴジャムをトーストに塗り、野菜たっぷりのサラダにはマヨネーズを出し、男の前に置く。
「ありがと」
ニパっ!と笑い、大きく開けた口でかぶりつくと、当たり前の事だが、口の周りにジャムがつく。
「あぁ、ほら…」
奈緒美がウェットティッシュで口元を拭くと、くすぐったそうに首を振る。その後も、口の周りのみならず、手だの、テーブルだのを汚しながら食べてる姿を、二人とも思わず『母』のような気持ちになり、こっちが汚れてるだの、まだ食べるか、だの、世話を焼きまくる。
「なんか、可愛いです、ねぇ…」
感動したように野長瀬が言う。まあね、と内心で奈緒美はうなずいた。顔立ち自体に女の子みたいな甘さがある。ぽわんとした表情が、それに輪をかけていた。
「ジュース、ほしいー」
「はいはい。えーと、オレンジジュースでいい?」
「ん」
こくん、とうなずき、野長瀬から渡されたカップを両手で受け取る。

「なんか、名前ないと不便ですねぇ」
「あぁ、そうねぇ…」
ちょっと考え込んだ奈緒美はポツリといった。
「ポチ」
「何でですかぁ!」
「だって、犬っぽいじゃないよぉ!!」
「だからってポチって!社長、年が知れますよぉ?」
「どーせあたしは『おばちゃん』よっ!」
「おばちゃーん…」
「おばちゃんじゃないっ!」
ギっ!って睨むと、ちょっとおどおどっと脅えて、小さな声で、「ごちそうさまでした…」と言う。
「あ、いいの、いいの。もういい?」
「おなかいっぱい…」

食べてすんだら、ようやく周囲を見回す余裕が出たらしい。ぽん、と椅子から立ち上がって、キョロキョロとあちこちに目をやり、触ったりしている。
「『おばちゃん』、どうします?」
「今度言ったら、殺すよ」
「だって、お、おばちゃんって…」
ククク…と肩を震わせる野長瀬。が、その彼にも魔の手は迫っていた。
「おじちゃーん」
邪気のない声。
「これ、なぁにー?」
ギャハハー!と奈緒美が笑う。
「おじちゃーん、呼ばれてるわよぉー!!」
軽く膝を蹴られ、よろよろと早く、早くと手招きする男に野長瀬は近寄っていた。

『コロ(仮名)』と呼ばれることになった男は、1日、野長瀬と遊んで、スイッチが切れたように眠った。
「どーしましょうねぇ…」
「どーしよぉー…」
大人二人が話し合った結果、明日、別の病院に連れていってみようという事になる。
「せめてどっちかはどうにかしたいわよね。記憶喪失か、精神退行か…」
岸和田と、消えた51億3820万は、二重に失われたコロ(仮名)の記憶の中にあるはずだった。

<つづく>

…なんのこっちゃか(笑)可愛い、可愛い、由紀夫ちゃんが見たかったんだよぉー。あのルックスで精神年齢4歳。ウキャキャキャー!!さて、赤い怪獣に私信。ごめん、ひろちゃん出てこんかった(笑)この可愛い4歳児の運命はいかに!

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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