天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編76話前編『朝ご飯が届いた』

やっぱり今はもっとも話題なこの人でしょ、この人(笑)

yukio
 

正広は、基本的に寝起きが悪い。
正広を起こしてくれるのは、恐ろしく寝起きのいい兄、由紀夫であり、その起こし方は、アメ、ムチ、使い分けて、多彩すぎるほどに多彩だ。
こんなことなら、早くに起きた方がマシだったと思うこともままあった。
しかし、そんな正広は、寝つきも悪く、寝が浅い。
起き上がれないだけで、意識はあることも多いのだ。

その朝の正広もそんな状態だった。
うすぼんやりと浮かんだり消えたりする意識を、扇風機からの風とともに感じている。
あれ。
何度目かの浮かび上がった意識は、うっすらと開けたまぶたの向こうに明るいピンク色を感じた。
ピンク・・・。
早坂兄弟のうちに、ピンク色のものはたいして多くない。
UFOキャッチャーでGETしたぬいぐるみがピンクだったことがあるかもなー、という程度だ。
しかもこのピンクは、正広の視界全体を埋め尽くすほどの大きさで、ちらちらと目の前で揺れて。
・・・カーテン・・・?
正広は、手を伸ばし、そのカーテンをつかんだ。

「・・・っ!」
「えっ!?」

でも、そのピンクは、びくっ!と反応し、正広はその衝撃で目を開けた。
「え・・・・・・・?」
「・・・・・・オッハー・・・・・・・・」
「おっはー・・・」
ピンクの巨大な布は、慎吾ママのワンピースであり、慎吾ママは、目覚し時計を片手に、無理やりオッハー、と正広に挨拶した。


慎吾ママが今朝お邪魔したお宅は、男の子二人兄弟のおうち。
お手紙をくれたのは、二人の『姉』がわりだという女性からだった。
都会の夏は、朝であっても暑い。
慎吾ママは、お気に入りのワンピースに、お気に入りのエプロンを身につけ、お手紙を読み上げる。

「慎吾ママ、私の弟たちを助けてあげてください。兄は毎朝の家事で、弟は夏バテでぐったりです。美味しい朝ご飯で弟たちを元気付けげ下さい。まー、男の子二人兄弟なのねー。どーして、このお姉さんがやってあげないのかしらっ!」
送られてきた鍵で、そぉーーっとドアを開け、ビデオ屋の店内に足を踏み入れた慎吾ママは。
「んまっ・・・!」
大きな手を頬に当て仰け反った。
「なんなのなんなの!なんなのこのビデオは!きゃーー!!イヤらしぃぃぃーーー!!!ん?でも古いのが多いわね?」
両手で顔を隠し、しかし、指の間からそーっとビデオを見ながら近寄っていく。
「あらっ!あらー・・・、いやっ!不潔だわっ!あ!でもこれはプレミアムついてそうっ!」
きゃあ!きゃあ!とひっくり返し、ひっくり返ししていた慎吾ママは、きっぱりと決意を秘めた表情で立ちあがった。
「男の子二人兄弟のとこに、こんなものがあるなんてっ!これはレツアクな環境だわっ!私が責任もって片付けてあげなくっちゃっ!」
よし!
可愛いエプロンについたほこりを払い、慎吾ママは、足音を忍ばせながら2階に向かう。
兄弟が寝ているのは2階だと聞いていたのだ。

静かに入っていった2階は、男兄弟二人とは思えないほど、綺麗に片付いていた。
「あら・・・、偉いわねぇ・・・」
入り口から一番遠い奥の部屋に大きなベッドがある。
「あそこで誰が寝てるのかしらぁ・・・?」
そーーっと、そぉーーっと、目覚し時計を解除するために近寄っていった慎吾ママは、ベッドの上に二つの山を発見した。
「これは・・・・・起こすのが、大変・・・・・・・ね・・・・・・・・」
窓際に目覚まし時計を発見し、ベッドの脇を回り、その目覚まし時計を手にする。
「ん・・・?これって、どうやって・・・?ん??」
その目覚し時計は、未来、をイメージされたかのようなキューブ型。どこにスイッチがあるんだか、ないんだか、という時計を相手に、あーでもない、こーでもない、と弄繰り回していたところ。
急にスカートを引っ張られた。

「・・・っ!」
「えっ!?」

びくっと振り帰ると、寝ていた男の子が、驚きの目で慎吾ママを見上げていた。
慎吾ママは、どうにか声を出すのは我慢できたが、今度はその子も黙らせなくてはいけない。
短い小指までを駆使しながら、右手の中指から小指までの3本指で時計を押さえつつ、
「・・・・・・オッハー・・・・・・・・」
「おっはー・・・」
ぽやんとしているけど、年齢的にきっとこの子がお兄ちゃんだな。あーあ、起こしちゃったけど、今から寝てちょうだい、と思っていると、もそもそと、タオルケットの中に入りこんでしまう。
あ、よかった。
夢かなにかと思っているかしら、お兄ちゃん。
てゆーより、この目覚まし時計はどうなってんの!?これ、とてつもない音がするんじゃあ!?
よし、弟くんに聞こう。
慎吾ママは、反対側に回り込もうと、こそこそと移動を始めた。


・・・なーんだ、慎吾ママか。
朝ご飯作りにきてくれたんだ。
慎吾ママ、慎吾ママね。
・・・・・・・・・・・・・・。
慎吾ママぁっ!?

タオルケットを頭まで引き上げていた正広は突然起きあがった。
ベッドの足元のとこまで移動していた慎吾ママが驚いて倒れそうになる。
「なっ、なに、いいのよ・・・っ!お兄ちゃんは、寝てて・・・っ!」
「お兄ちゃん・・・?僕、弟です」
「えっ?」
目覚まし時計を手にしていた慎吾ママ、ちょっと来て!と、リビングに正広を連れ出す。
「これ・・・、どうやって切るの・・・?」
「あ、これは・・・」
単なる継ぎ目のように見える部分に、小さな、小さな、解除ボタンがあるのだ。これは、ピンなどで押さないと設定も解除もできない。
すざましい音がする中、それを止めようと細かい作業をするため、よく目が覚めるという、田村謹製目覚まし時計だった。
「ふーん、すごいのねぇ」
解除する正広を感心したように見ていた慎吾ママだが、正広は、なんで慎吾ママが!?と訳がわからず見つめてしまう。
「兄ちゃんが、頼んだんですか?」
「いいえー、あの、二人のお姉さんからよ」
「お姉さん・・・?」
早坂兄弟は、世界のどこかに訳の解らない父親がいるだけで、基本的には二人っきりの兄弟だ。
「あら?お姉さん、がわりだったかしら」
「・・・奈緒美さんだ・・・」
「そうそう。それより、えーと、弟ってことは、正広くん?」
「そうです・・・」
「お兄ちゃんが、由紀夫くんよね?」
「はい」
「由紀夫くんが朝ご飯作ってくれるの」
「はい」
「なぁに、かしこまっちゃって!んもっ!」
ばしん!と叩かれ、正広はソファに座ったまま倒れそうになる。
「もぉ、オーバーねぇ〜!」
うふふ、と笑った慎吾ママは、正広くん、まだ寝ててもいいのよ、と言いながらキッチンに入っていく。

でも!
そんなことのできる正広ではなかった。
まさしく、お母さんのスカートにまとわりつく子供のように、慎吾ママにくっついて歩く。
「あらあら。なぁに、正広くんったら」
「あ、だって、何か解らないこととか、あったら・・・」
「・・・さっきの目覚ましみたいなもの、たくさんあるの・・・?」
ビクビクしながら冷蔵庫を開けた慎吾ママは、その中はまるで普通であることにちょっと安心した顔をする。
「色々あるけどぉー・・・。お菓子が多いわね」
「暑いし・・・」
「アイスとかばっかり食べてんでしょう!」
言いながら開けた冷凍庫には、アイスがぎゅうぎゅうと。
「んまー!おなか壊すわよっ!」
め!と正広に恐い顔をしてみせたかと思ったら、その中の一つ、イチゴアイスバーを、いっきに口の中に!
「うわ!」
「あ、いたたたた・・・・・・・」
やったはいいものの、キーン、とこめかみを押さえる慎吾ママだった。
「だ、大丈夫・・・」
「へ。平気っ!平気よ!慎吾ママはこんなことくらいでへこたれないっ、正広くんは、夏は食欲ないのっ?」
一気に胃まで冷たいアイスを流し込んだらしき慎吾ママは、平気!と仁王立ちで正広に聞いてくる。
「あ。うん。あんまり」
「どういうの食べるのっ?」
「そうめんとか、冷麺とか・・・」
「ざるそばとか?」
「そーですねぇ」
「それじゃあ、余計にバテちゃうわね。うん。まかせて!慎吾ママが美味しいもの作ってあげる!」
貼り切って冷蔵庫の中身を物色する慎吾ママ。
そして慎吾ママの料理が、いつも、朝から濃いぃよなぁ、と思っていた正広。
正広は、あ!でも!と止めたい気持ちで一杯になっていた・・・。

このようにキッチンは大騒ぎになっていたのだが、以上に寝つきがよく、寝が深い由紀夫は微動だにせず、眠り続けていた。

つづく


慎吾ママ・・・。ほんとに紅白も不可能じゃないと思う。キャラクターとして登場くらいはあるんじゃないのかしら。慎吾ママ、やるぅーー!!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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