天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

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ギフト番外編76話後編『朝ご飯が届いた』

初登場1位をGET。CD売り切れ店も多い慎吾ママ・・・!やるな!慎吾ママ!!

yukio
 

「あらっ!」
改めて冷蔵庫を物色していた慎吾ママが、かなり厳しい声を上げた。
「えっ?」
「ひろちゃん!ないじゃないのっ!」
「な、なにが・・・、あっ!!」
「日本中どこのおうちでもあるでしょー!!あるでしょおーーー!!」
慎吾ママはかなりご立腹だ。ほっぺをぷぅと膨らましてぷんすかしている。
「ごめんなさい、あの、うち、作るから・・・」
「作るぅ!?」

そう。
男兄弟二人暮しだというのに、早坂兄弟は、変なところでマメ。
早坂家のマヨネーズは、早坂家オリジナル手作りマヨ。
「な、生意気・・・!」
慎吾ママは、手の甲を口元にあて、軽く仰け反り、正広を見下ろす。しかしどんなに見下ろされても、マヨネーズがチューブに入っていないのは仕方がない。可愛い小さなガラス瓶に入っているのだ。マスタード入りとかもあったりするのだ。
正広は、困ったなぁと、目線を泳がせ、あ!と顔を上げた。
「ちょ、ちょと待ってください!」
男兄弟二人暮しだというのに、正広の精神は、ちょっとおばちゃん。奈緒美の薫陶が行き届いているようで、ちょっとおばちゃん。(誰がおばちゃんよ!!)
「これ!」
キッチンの戸だなをがたがた言わせていた正広が取り出してきたのは、試供品の小さなマヨネーズ。
「あら」
「もらったんです!」
「あるんじゃないのよ〜。もー、何ぃ〜?」
試供品だって、きちんととっていたりするのだ。
べりべりと外のパッケージをはがし、そっと蓋をあけ、銀色のシールをはがす。
銀色のシールは、エプロンのポケットにきちんとおさめ、にっこりと幸せそうになった慎吾ママは。

「えーと、じゃあ、何を作ろうかなっと」
「マヨチュッチュじゃないんですかーー!!」
「何いってんのっ!あんなの、どこでも、かしこでもしてるって思わないでちょおだいっ!ほら、正広くん、お顔でも洗ってきたら、まつげ、目の下にはりついてるわよ?」
ばっ!と顔を押さえ、正広は慌ててキッチンを出ていった。
「もぉ。可愛いわねぇ、正広くんったら」
うふふ、と低く微笑みながら、慎吾ママは、キッチンを覗き、じゃあ、これと、これと・・・と材料を取り出す。
夏バテには、豚肉がけっこう効く。さらに、夏の野菜もぴったりだし、ピリ辛もいいし、ニンニクだってもちろん。後、すっぱいものも結構効くのよね。
それにマヨを使うとすると・・・・・。
うーーん、と・・・・・・・。
考えつつ、そっと、マヨネーズを口元に持ってくる。
大丈夫。
誰も見ていない。
大丈夫。
料理に使うのは、あっちのお手製の方にするから。
この。
このちっぽけなマヨネーズなんて・・・!!!

ちゅちゅーーーーーーーーーーーーーっっっ!

「あーーーーー!!!一気にぃぃぃーーーーーー!!!!」
「きゃーーーーー!!!!正広くんっ!女の秘密を覗き見するなんてぇーーーーー!!ひぃーーわぁーーいぃぃーーーー!!!」

ミニサイズマヨネーズをイッキ飲みし、チューブをぺっちゃんこにしてしまった慎吾ママは、変質者にあったかのように、顔を洗うと見せかけて隠れてみていた正広を責めるのだった。

「あの・・・」
散々責められ、すみませんでした、熟女のヒミツを覗いてしまって、と謝った正広は、誰が熟女よ!!と倍叱られ、倍謝り、慎吾ママの気が落ちついたところで、ようやく聞けた。
「今日も、マヨネーズで炒めるんですか・・・?」
「風味までついて、いいのよー?」
「でも、朝から油っこいのは・・・」
「大丈夫!正広くんでも、朝から食べられるものにするから、安心してっ!さ、ほんとに顔洗っちゃいなさい?ホントのこと言うと、髪も相当爆発・・・」
きゃあ!!
ダッシュでバスルームに飛び込んでいった正広だった。

正広は、基本的に寝起きが悪い。
寝起きが悪い上、完全に覚醒するまでに時間もかかる。
今までは、慎吾ママがいる!という非日常にひきずられ、はっきりと意識を保つことができたが、一人でシャワーを浴びていると、あれ、これって、ひょっとして、夢・・・?
そんな気になってきた。
頭からお湯を浴びてても、正広は容易に覚醒しないのだ。
毎朝の由紀夫の苦労がしのばれる(笑)

ぼーーっとしたままバスルームを出て、ぼーっとしたままバスタオルで体を拭いて、ぼーっとしたままかわゆらしい部屋着を着る。
かわゆらしい部屋着とは、タオル地のパーカー、当然フード付き、あまつさえ、こぐま風お耳つき(奈緒美のプレゼント)。
それに、かわゆらしい短パンなんぞを合わせてよろよろとリビングに出てくると。

「うわ!」
「あら!かわゆいお耳ねぇ、ひろちゃん!」
慎吾ママは、圧倒的な存在感を持って、部屋の中央に仁王立ちになっていた。
「ゆ、夢かと・・・!」
「えっ!?」
ママは片手を耳にあて、大きく正広の方の体を傾けた。
「夢のように綺麗!?」
「・・・え。あ。はい・・・」
時々、自分の気の弱さを憎んでしまう正広だった。
「ひろちゃん、ちゃんとお耳の後ろも洗いましたかぁ?」
「はい。洗いましたっ」
「いいこねー!」
よぉし、よぉし、と慎吾ママに頭を撫でてもらいつつ、テーブルの上を見た正広は、さすが慎吾ママ!と感動した。
「すごい!」
「ふふ。でも、冷たいさっぱり系が多いのよー」
テーブルの上は、お料理山盛り。
「冷シャブサラダに、鶏肉と枝豆のスープに、夏野菜のピリから炒めでしょー」
「わー、綺麗ー」
「サラダには、梅マヨソースを!」
「こ!ここにマヨが!」
「ピリ辛炒めも、ピリ辛さに微かにマイルドを与えるため、このようにマヨを!」
「あああああ!マヨをかけるなんて!!」
「美味しいのよ!ひろちゃん!!あ、ところでひろちゃん。お兄ちゃんも、一緒に仕事なんでしょう?」
「あ。そうだ。兄ちゃん起こさないと」
「それ!それは、慎吾ママにお・ま・か・せ!」
るるん♪と鼻歌まじりにベッドに近寄った慎吾ママは。

ずさっ!と後ずさりし、正広の元に戻ってきた。
「ちょ、ちょっと!あの子がお兄さんっ?」
「はい」
「あらー・・・・21世紀の裕次郎には応募しなかったのー?」
「しようとしたんですけど、妨害されました」
当然、腰越人材派遣センターでは、賞金の多さに目が眩み、由紀夫こそ21世紀の裕次郎だ!と応募の準備を着々と進めていたが、すぐさまバレて、すぐさま、書類を捨てられた。
野長瀬が泣いて悔しがったのだが、捨てられた書類の中に、野長瀬の、年齢を偽り、履歴書の写真はここ!とお墨付きのあるようなホテルの写真室で撮った写真を貼った書類が入っていたことは、彼しか知らない。
「この子をみちゃったら、21世紀の裕次郎なんて、しょぼくみえちゃうわねぇ・・・」
そろそろと、慎吾ママはベッドに近寄っていく。
正広も、なんとなく、その後をつけた。
確かに、兄の寝顔は綺麗だと思う。ときおり、ぱっくり口が開いていたりすることもあって、それはご愛嬌だけど、でも、いい顔してる。
今日は、軽くうつぶせていて、ふっくらした唇が、うっすらと開いて、前歯がちらりと見えるくらいで・・・・・・・

「あなたーーーーー!!!!」
「ぎゃーーーーーー!!!!!」

いきなり慎吾ママが由紀夫に抱きつき、その勢いと重さに、由紀夫は飛び起きた。
「あなたーーーー!!!!ここにいたのねーーーーー!!!!」
「なんだなんだなんだおまえだれだーーーーーーー!!!!」
「いやっ!おまえなんて!慎吾ママってよんで!慎吾ママって!」
「正広!なんだよこの巨大な物体!」
「し、慎吾ママ・・・」
「慎吾ママぁ!?おまえが呼んだのかぁ!?」
なおも、ぎゅうぎゅうと抱きしめられ、由紀夫はくるしげに暴れる。
「いや、あの、なんか、奈緒美さんが・・・!」
「奈緒美ぃ!?」
「いやっ!奈緒美って誰なのっ!奈緒美なんて、奈緒美なんて、他の女の名前をベッドで呼ぶなんて、ルール違反だわーー!あーなーたー!!」

ごいん。

由紀夫は、慎吾ママを、ベッド下に叩き落した。
後頭部から落ちた慎吾ママは、後頭部からえらい音をさせたが、それでも元気に起きあがる。
「・・・死ぬか?」
「これくらい殺されちゃうのぅっ!?」
痛いじゃないのよぅー!と跳ね起きた慎吾ママは、後頭部をなでなで、正広に尋ねる。
「・・・昔の兄ちゃんなら・・・」
「・・・昔、ヤンチャしてたんだ・・・」
「はい・・・」
「うっせーな!なんだよ慎吾ママって!」
「え!だからあたしが慎吾ママよ!ほら!由紀夫ちゃん!ママでしょう!?」
「・・・俺の母さんは、死んだ母さんだけだ・・・!」
「由紀夫ちゃん・・・!いいえ、すぐに、すぐにお母さん、なんて呼んでもらおうとは思わない・・・!ただ、ただ私は・・・。あなたのことを、あなたのお父さんよりも、大事だと思っているの・・・!だから、だから、あなたが反対だというなら・・・・・・・・」
慎吾ママは、よよ、と泣き崩れる。
巨体がフローリングの床に倒れ付し、ひざが、ごいん、とえらい音をたてた。
「私は、私は、二人の前から姿を消すわぁーーーーーー!!!」

「だったら消せよ」
「いったーー!いったーーーー!!!ひざ、マジいたーーーー!!」

パチパチパチパチーーー!!
「・・・正広、何手ぇ叩いてんの・・・」
「ミニコント!すごい!いつ合わせたの!?」
大喜びで手を叩いている正広は、可哀想に。少し、頭が弱い子みたいにみえた、という。

その後も、実は、ミニコントが3本くらい行われたのだが、ようやく、3人はテーブルにつくことができた。
正広は、さっきの、3人でやったミニコント、「父帰る2000」は素晴らしかったな、と思っている。台本にして残しておきたいほどだけど、これは即興性が命なんだろうなと思いとどまる。
もちろん、自分と由紀夫の二人ミニコント、「ビューティフルライフは突然に」も、いい線いってると思うのだが。

「はい。じゃあ、いただきますっ!」
慎吾ママに言われるまま、二人は手を合わせ、いただきます!と復唱する。
由紀夫は、グレてた割に根が日本的というか、食事の時に手を合わせるのは自然にできるし、正広もその兄を見ているため、そのあたりはばっちりだ。
慎吾ママが提唱する、まずは挨拶、という部分に関して、早坂兄弟になんの問題もない。
素晴らしい兄弟だわ。
慎吾ママは目頭を熱くしつつ、冷シャブサラダに、たーーーっぷり、マヨネーズをかけてもりもり食べる。
慎吾ママに夏ばては関係ないのだ。
由紀夫は、朝からカツカレーでもなんでも食べられる男なので、負けずにもりもり食べる。
問題は、夏は食欲が落ちる正広だが、さっぱりしつつ、とろみのついたスープが特に美味しくて、これの作り方は聞いておかなくちゃ!と固く心に決めたほど気に入っていた。
さすが慎吾ママ・・・!
「ね、ひろちゃん」
口の端にマヨネーズをつけた状態で、慎吾ママが尋ねる。
「いつものお兄ちゃんと、私のお料理と、どっちが美味しいっ?」
「え」
ほ、本人を前に聞くですか・・・!?
「どっち?正広」
「え!」
ここで、「どっちも」なんて、つまんないことゆったら、どうなっちゃうんだろう!そんなつまらない答えってないから、なんかもっと。えっと。なんか・・・えっと!
「ど、どっちも」
「どっちも?」
ああああ!なんで口が勝手にどっちもとかゆってんの!えーとえーとえーーーーと!!!

「ど、どっちもまだまだっ!!」

もちろん、なんだとおまえー!!!と正広が朝っぱらからプロレス技をかけられてしまったことは言うまでもない。

朝ご飯が終わったら、後はでかけるばかり。
正広は、いつも通りに準備をしていた。
が。
その空気には気づいていた。
何かおかしい。
自分が背中を向けている空間で、ある種のゆがみが発生しているような・・・。そんな気がする・・・・。

「えーと、兄ちゃん、いける・・・?」
「いけるぞ」
兄は、夏だというのにスーツを着て、ネクタイまでちゃんとしめている。ソファに座り、足を組み、慎吾ママを見ていた。慎吾ママも、兄を見ていた。
「・・・・ど、どしたの・・・?」

「いや。行こう」
立ちあがったけれど、まだ由紀夫の目は、慎吾ママから離れない。
そして、お見送りにやってきてくれた慎吾ママの目も、由紀夫から・・・。
「そ、それじゃー、慎吾ママ、ありがとうでしたー!」
精一杯元気に正広が言うと、ようやく由紀夫から目を離して、慎吾ママがいってくれる。
「はいはい。後片付けもしとくからね!がんばって元気にいってらっしゃい!」
にっこり笑った慎吾ママは、二階の部屋のドアのところで、元気に手を振ってくれた。
いつ見ても、慎吾ママの笑顔は特別だと正広は思うのだ。いいな、あの口。いっつも幸せそうだし。やっぱり笑う角には福がくるって感じで、いいよね。
階段の途中で、もう1度手を振り返そうと立ち止まった正広は。

そのご機嫌な口が。
まさしく下なめずりする様を。
思いっきり見てしまった。

な。何・・・?

見なかったことにしようとビデオ屋に降り、スーパースペシャル正広ケッタマシーンを引き出すべく、鍵を外したりしていると、いつもは待っていてくれる兄が、さっさと出ていってしまった。
「あれ。兄ちゃん・・・?」
と、出ていく後姿を見送ったところ。

「あーーーなーーーーたーーーーーーーー!!!!!」
階段が壊れる!!壊れる!!それは言うなれば、インディージョーンズが洞窟にいる時に上から落ちてくる巨大な球のようだった。
慎吾ママが、疾走のように階段を降り、疾風のように、店の外に飛び出す。
「わーーーーーすうーーーーーーーれーーーーーーーもぉーーーーのぉーーーーーーーー!!!!!」

は!!
そうだ・・・・・!!
慎吾ママには、マヨチュッチュだけじゃなくて、おでかけチュッチュが!!
「に、兄ちゃん!!!」
道に飛び出した正広に見えるのは、すでに姿の見えない兄と、そしてその兄の自転車を追いかけていく慎吾ママの小さな背中だけだったという。

「・・・兄ちゃん・・・」

でも、遅刻するからいかなきゃ。
と、反対方向に向けて自転車を発進されるあたり、割と、薄情だったりもする正広だった。

あぁ由紀夫!
お出かけチュッチュはどうなったんだ!由紀夫!!


どこまで逃げたのかな。由紀夫。ちょっとやったげるくらい、いいじゃん、由紀夫(笑)きっとマヨ味のするほっぺよ(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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