天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編77話『ドラクエZが届いた』

決まってるやん!慎吾ママの次はこれやな(笑)!

yukio
 

ドラクエZ。
正広が入院中に読んでいたゲーム雑誌にすでに書いてあり、もうこのまま永久にでないんじゃないかなぁ、と思っていたドラクエZ。
そのドラクエZがついに発売!しかもCMがSMAP!
キュゥン、と胸の高鳴る正広だったが。

「・・・おまえ、これ予約したんだろ」
「え?」
冷静飛び越えて冷たい声で由紀夫に言われ、ムズムズしていた正広はえっ?と振りかえる。
「予約?」
「予約」
じっと見た兄の顔には、24ポイント極太ゴシック体で、わざわざゲーム予約して買うヤツなんていんのか?と書いてあったので。
「ううん」
と首を振った。
「え?」
「してないよぅ」
正広も、スタイリッシュを気にするお年頃。流行りものにいかにものっかってるって感じで、イソイソと予約に行くのは、ひょっとして、あんまし、カッコよくないかも?と思っていたのだ。
「そんな、わざわざ予約なんてしないよぅ」
きっぱり言いつつ、しかし、あ!CM!となるたびに、画面には釘づけの正広だった。

それでも、おもちゃ屋の前や、ゲームショップの前にいくと、ポスターをしげしげと眺めてしまう。
可愛いなぁ、欲しいなぁ。
今なら、発売当日お渡しって書いてある。
でも、大丈夫だよね。
きっと買えるよね。
ちょっとドキドキしながらも、予約までするのはカッコよくないと、持論を貫こうとする正広だった。

そのうち、SMAPのCMも変わった。
前のも可愛いなぁと思ったけど、こっちの方がカッコいい!
ちょうど渋谷のスクランブル交差点の巨大スクリーンでそれを見た正広は大喜びして、電話までして兄に伝え、『解った、解った、解ったから、いい加減帰ってこい。おまえはどこまで小松菜買いに行ってんだ!』
あ。そうだった、しぃちゃんの小松菜を探してたんだった。
はっ!と我にかえり、しぃちゃんの小松菜を、わざわざデパ地下で探してしまう正広だった。

「ただいまー!ごめんね、しぃちゃーーん!」
「『あぁ!ひろちゃん、ひどい!しぃちゃん、ひろちゃんの小松菜、ずぅっと待っていたのに。いたのに。お兄ちゃんのいれてくれるエサなんて、エサなんていらないわ。しぃちゃんは、ひろちゃんの小松菜がぁ!』」
「兄ちゃん・・・」
黒子のようにしぃちゃんを操っていた由紀夫が、いた。
「さっきまでそういって、さめざめと泣いてたんだよなー、しぃちゃん」
お兄さん!違うって!そんなことないって!
しぃちゃんはそんなことないっ!と首を振るが、その振った視線の先には小松菜が。
あぁ!小松菜!
ダッシュ!で飛びつくしぃちゃん!
「あぁ!まだ洗ってないから、待ってね、しぃちゃん!」
キッチンに白文鳥ともども走りながら、それでも、あのCMカッコいいよなぁ、となおも思っている正広だった。
なお、正広のお気に入りは、無敵の殺し屋である木村拓哉はもちろんとして、貴族、という稲垣吾郎だったりした。
貴族って、貴族って、日本に貴族がいた時代は大昔!?一体どんな(笑)!?
でも、似合うよねぇ〜。

こんな風にいや増す期待感。
やっぱり予約したい。
でも、予約したくない。
予約したい。
したくない。
正広の葛藤は日々深まっていった。

そんなある日。
仕事のお使いで、文具屋をうろうろしていた正広は、女の子同士の会話を耳にした。
「え!ホントに買ったの?PSone」
「買ったよぉ。でも、ほんとにすんごいちっちゃくて可愛いの!」
はっ!!!
PSone!
プレイステーション2が出てしまえば、旧プレステが売れるはずもなく、サイズダウンして売っているというあのPSone!
持ち運びできるほどのサイズだと聞いている・・・!
うちにPS2はあるけど、でも、PSoneはまだ・・・!

「兄ちゃん!」
文房具屋で買った、ボールペンの替え芯パックを握り締め、正広は事務所にいる兄に言った。
「PSoneが欲しい!!」
あ、私も、私もー。と野長瀬がゆっていたりしたが、由紀夫は、じっと正広を見つめて。
静かに。
「却下」
と一言答えた。
「なんでー!」
「えー!なんでですかー!いいじゃないですかー!ちっちゃいし、可愛いしぃー!」
「おまえたちの考えはぜんぶおみとおしだぁー!」
(由紀夫は最近、金曜深夜にやっているトリックがひっそりお気に入りらしく、思わず山田奈緒子風口調になってしまっている。すなわち、スピードアップで軽く棒読み(笑))
「おまえら、『ここ』でやるつもりだろ」
「ギク」
古典的な表現で、正広は自分の気持ちを表した。
「家でやれ!家で!」
「だってー!夜になったら、テレビあるし、遊びにもいくじゃないですかぁ!休みの日の予定も一杯だしぃ」
「ウソつけよ!野長瀬の週末なんて、予定ある訳ねぇじゃん!」
「ありますよぅ!」
「あれか?近所の老人ホームでボランティアとかか?」
「なんでそーなるんですか!忙しいんですよ!日々は!」
そんな野長瀬がドラクエの予約をしたことは、腰越人材派遣センター中の人間が知っている。
その予約券を肌身はなさず持っていることも。
「だって、盗られたら困りますからね。いや、みなさんを信用してない訳じゃなくて、いらない諍いのタネは作りたくないんです」などと言い、由紀夫からけ蹴りを食らったのは、もう何週間も前のことだ。
「ともかく、正広は、PSoneとか買わない!こーゆーアホな大人になるんじゃねぇぞ?」
「ふわぁ〜い」
「返事は短くっ!」
「はいっ!」

良い子の返事をして、じゃあ、PSoneはやめとこうと、素直に思う正広だったが、そう言えば、野長瀬が予約をしている、ということで、少し気持ちがぐらつく。
いや、野長瀬さんほどカッコいい人がやってるんだったら、僕だって予約するぞ!という訳じゃなく、野長瀬が先に手にいれると、絶対に、絶対に、ゲームの話をされてしまうからだった。
夢中になって喋るため、うるさいし(正広正直モノ)、知りたくないことまで色々いわれちゃうし、そうなのかと思ってやってみると、間違ってるし。
あぁ!どうしよう!やっぱり初日に手にいれたいかも!
土曜日だし!土・日、やり倒せば、野長瀬さんに負けずに先に進めるかも!進められるはず!
やっぱり欲しいぃーー!!

その思いがこうじて、近所のおもちゃ屋を覗いた正広が見たものは。
「ただいまの予約で、29日お渡しになります」
という無情な張り紙だった。

29日・・・!?火曜日・・・!?26日発売なのに・・・!
こんなことでは、土・日、寝ずにやるであろう野長瀬から、あれこれいらん情報を入れられてしまう!それくらいなら、26日から1週間くらい休みをとって、野長瀬と顔を合わせたくない!
兄ちゃん怒るかな・・・。
いくらなんでも、体調悪いとかってゆったら、叱られるよな・・・。心配かけるしな。
・・・野長瀬さん、28日から、どっか出張行ってくれないかな。んーと。例えば。えっと。マグロ漁船とか。
・・・いく訳ないよな。
どうしようかなぁ。
そこは、正広が信頼を置いていたおもちゃ屋だった。すなわち、あまり客がいないから気軽に買えると思っていた。ここで、予約が一杯になっているということは、他のおもちゃ屋、ゲームショップだと、もっと大変なはず・・・。
これは困った・・・!
それから、しばらく、他の店も当たってみたが、どこも予約で一杯だと言われてしまう。
キャンセル待ちもしてみたが、ついに前日までに、連絡はこなかった。

こうして、正広はドラゴンクエストZ発売当日を迎えた。
いつものようにぐずぐずベッドの中で、寝たり、起きたりを繰り返していると、窓の外を元気な子供の声が通過していく。
「やったあー!ドラクエー!」
あぁぁ!!もう!もうGETしてるヤツがいる!
やっぱ、探しに行こう!
勢いをつけて起き上がった正広、あたたた・・・と頭を押さえた。
「正広?」
「あ、にいちゃー・・・ん、なんか、俺・・・、頭、痛いかもー・・・」
「えっ?」
すっかり起きていた由紀夫はすぐに正広の額に手を置き、顔をしかめる。
「熱あるぞ」
「え・・・」
「はい、体温計」
「うそぉ。昨日飲み過ぎたからだよぅ〜」
「ダイエットペプシな」
ペプシマンのボトルキャップ欲しさに、ダイエットペプシを飲み倒していた正広だったが、それくらいで頭痛には襲われない。
えー、熱かなー。困ったなー、と大人しく体温を測り、ぴっ、と軽やかな音とともにそのデジタル表示を見て、ギョっとした。
「何度?」
「た、大したことないみたいー!」
大したことはあった。
38度を越えていた。
越えていたが、38度越えていると兄に言えば、恐らく、外に出してはもらえまい。大丈夫。これくらい熱が上がってくれば、逆にふわふわしてくるものだから。
いけるはず。
どっか、もっと大きな街に行けば、きっときっと手に入れられるはず・・・!

「ウソをつけ!」
「ウソじゃないもぉん」
「ウソです。ほら、もっかい測れ」
「ウウ、ウソじゃないのに・・・。兄ちゃんは、マロが嫌いかぁ〜?」
兄の、トリック山田奈緒子風に対抗し、おじゃる丸風ですがってみると、
「ウソをつく子は嫌いです」
ときっぱり言われる。
「だって・・・。大したこと、ないもん」
ぷんっ!とそっぽを向いたところに、新兵器、耳の穴で一瞬測定体温計をつっこまれ、ぴっ!と。
「あっ!」
「38.5!?」

「俺の中では、39度を越えないと大したことじゃないんだもんっ!」
逆ギレしたところで、兄に勝てる訳もなく、毛布でぐるぐる巻きにされ、寝ろ!と横にさせられてしまう。
「だって、だって!」
「だってじゃない!」

そして、ようやく正広は黙る。
体調が悪くなったら、兄には逆らわないことにしているのだ。
それだけで心配かけてるから、大人しくしようと思っていた。
でもな。
ドラクエ・・・。
欲しかったな・・・。
「ほい、薬。の、前に、プリンでも食って。なんか、腹にいれとけ」
「ううう・・・、マロは、プリンが好きな、みやびなお子様じゃからのぉ〜」
冷たいプリンは、ざらざらした口の中に柔らかい。ちょっと口の中、あまーくなるけど、冷たい水飲むから大丈夫。
「なんだよ、急に大人しくなって」
ぷっちんプリンに、冷たいみかんの缶詰を添えて正広に渡した由紀夫が笑う。
「大人しく寝てたら、いいもんやるからな」
頭を撫でられ、うん、と頷いた正広は、いいものって、メロンだったらいいなぁ、と思うのだ。
歯にしみるぅーー!!てくらい冷たーくしたメロンが食べたい。
でも、歯にしみるぅーー!!ってくらい冷たかったら、桃でもいい。白桃希望。
でも、スイカでもいいや。歯に染みるぅぅぅーー!!ってくらい冷たかったら。

これだけ冷たいものが欲しいってことは、やっぱり熱が高いんだな、ということを自覚しながら、薬の力で眠ってしまった正広だった。

そして目を覚ました正広が枕元に発見したものは。
「ああああああ!!!!!」
「起きたか?」
「起きた起きた起きた!どしたの兄ちゃん!どしたの兄ちゃん!!」
「どしたって。今日、発売日だろ」
紛れもないドラゴンクエストZが、正広の手に中にあるのだ。
「どうしたの!どこで売ってたの?買えたの!?まさか、店から出てきた小学生を脅して!?」
「するか!それより熱は?」
ぴっ。
また耳ではかられ、36.9まで下がっていることが確認され、だったらゲームやってもいい、ということになった。

わーいわーい!と大喜びで、PS2の前に座る正広。
そして、さっそくドラクエの世界に没頭した正広は知らない。
このドラクエ、随分前に由紀夫が予約をしていたものだということを。
そして。
田村によって、軽い改造が施されているということを。

正広のディスクは、PS2との組み合わせにおいて、およそ2時間おきに、かならずフリーズするという恐怖のディスクなのだ!
ゲームは1日2時間まで!
小学生の母親のような早坂由紀夫だった。

兄ちゃん!ひどすぎる!!


ひどいよ!兄ちゃんひどすぎるよ!!そんなのってないよーーー!
それにしても、ゲームやってる最中に、敵からの攻撃だけでなく、ゲーム機の暴走まで気をつけなくてはならんとは、驚かされるのであった。ゲーム機がより複雑になってどーするよ(笑)
そしてトリックは、どうしても好きなので使ってみました。「おまえたちのことはすべておみとおしだー!」な仲間ゆきえは素敵です。「えへへへへへっ」とすごい勢いで笑うのは、赤い怪獣の笑い方に似ています(笑)
・・・つたわらねーなぁ・・・(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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