天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

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ギフト番外編78話前編『社長代理を決める』

シドニーオリンピックって、開会式の前にサッカーの試合やるんやって!それってどゆこと!?

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オリンピックだ。
4年に1度の夢の祭典。
フジテレビ、トクダネの小倉さんは、オリンピックのテレビ中継が始まった年から開会式を欠かしたことはなく、そのたびにウルウルしてしまうほどのオリンピック好き。
しかし、彼は特異なケースではあるまい。
日本中に、そんなオリンピック好きは蔓延している。
そこで、腰越人材派遣センター社長である腰越奈緒美は、お得意様感謝企画、シドニーオリンピックとコアラ&カンガルーツアーを決行することにした。

「ウソだ!自分がオリンピック見たいだけだぁ!」
小倉さんより年が若いため、回数は少ないながらも、もちろん、開会式で涙してきた男、野長瀬は、敬語を忘れて叫び、奈緒美に睨まれる。
「何いってんの!?オリンピックが見たいだけなら一人で行くわよ!」
私にやましいところがあるもんですか!と奈緒美は胸を張る。
「うるっさい、社長だの、常務だの、会長だのつれてのツアーよ!自由な時間なんて全然ないんだからねっ!」
ツアー日程がかかれた書類が、全員の前に配られる。
「うわー・・・」
「奈緒美さん、こんなに見るのぉ??」
「チケット手に入れるのも大変だったし・・・」
ふぅ、と大げさに疲れた顔をする奈緒美作成スケジュールは、ひたすら観戦!というものだった。
「こんなの、おっさんたち疲れんじゃねぇの?」
「自分で自分のことをおっさんとは思ってない人が多いからねぇ〜。ほら、ゴルフのスケジュールまで。これはね、地元の商工会との懇親もかねてるの」
「コアラやカンガルーも見るんでしょう?」
「そりゃあ、オーストラリアらしいものだし。一応お約束としてね」
そのスケジュールは、オリンピックをかねつつ、ビジネスにもしっかり対応。値段も、日程・内容にてらしあわせて、高くもなく、安くもない、まったくの適正値。
文句のつけようがない。

これが、この不況下、腰越人材派遣センターの売上を着実に伸ばしている、女の幸せを、ビジネスの成功のために捧げた女、腰越奈緒美の実力なのか・・・!

それにしても、社長が2週間も会社を開けるなんて!と、由紀夫たちが文句を入れるすきを探しているところで、奈緒美が言った。

「という訳で、社長代理を決定します!」
「社長代理?」
「だって、何かあるたびに、電話とかかけられたらうっとーしーでしょー!権限の委譲よ!」
そんな奈緒美の新しい携帯は、auグローバルパスポート対応だ。
「社長代理って、そんなの別に誰だって」
由紀夫はまるでそういうことに興味がないので、バカバカしいよなぁ、と仲間たちを見て、うを、と半歩後ずさった。
「しゃ、社長代理・・・!ですか・・・!?」
野長瀬が、ふるふる震えている。それはもう、伴、俺は今、猛烈に感動している、とかいった星飛雄馬のように。
「そう!社長代理!でも、代理というのは、社内での格付であって、対社外では、社長となるのよ!腰越人材派遣センターの社長!と呼ばれることになるのよ!」
「うわーー!!!どーしよーかなあーー俺ぇーーー!!」
代理とは言え、社長になったら、やっぱりスーツもそれらしいのにしないと。そう、せめて由紀夫ちゃんくらいには!いや、さすがに由紀夫ちゃんのグッチは無理だから、くっち、くらいの・・・!名刺も、作ってもらっちゃわなきゃな。そんで、代理ってところ綺麗に削って、田舎に送ろう。
俺って、社長なんだなぁ〜〜〜。

「ほい」
「はい?」
由紀夫から、ペンを渡され、野長瀬は、ちょっとキュートに首を傾げる。
「線、ひいて。おまえもう、ここ決定だけど」
「線?ここ決定?」
社長以外に、何が決定?
野長瀬がデスクを見ると、そこにあるのは、子供の頃から慣れ親しんだ。
「・・・あみだくじ・・・?」
「だから、1本線足せっつってんだろ!?」
「な、なんのあみだなんですかっ?」
「社長代理争奪、大あみだ大会ーーーー!!!」
奈緒美から高らかにに宣言され、野長瀬の顔色は土になった。
「えっ!?社長代理って、あみだで決めるんですかぁっ!?」
「そんな訳ないわよ!」
あ、そっか。そうだよな。そんなことないよな・・・。
野長瀬は信じているのだ。年齢、勤続年数、適正など、どう考えても、社長代理は自分だと。
自分だと!

「野長瀬、1本でいい?」
「え?」
「正広とか、さっき、3本くらい引いてたけど」
「あ。えーと」
HBのシャーペンで8Bくらいの強い1本線を引いた野長瀬は、え、そうなんですか?と適当に、2本、線を追加した。
そうしたら。

「野長瀬、ビリ」
「え!?ウソですよ!」
「野長瀬さん、最後の2本足さなかったら、1番だったみたい」
正広の言葉に、自らの目であみだを確認した野長瀬は、おぉ!まいがっ!!と天を仰いだ。
「由紀夫ちゃんが、あーゆーことゆーからぁーー!」
「言ったけど、2本付け足せとは言ってない」
「ひっでー!じゃあ、誰が一番なんですかぁ!?」
「俺」
「由紀夫ちゃーーーん!!」

「えっと。じゃあ、あみだは由紀夫、典子、ひろちゃん、ボケ、ね」
「なんですか、ボケって・・・!」
「すーぐ人の言うことに左右される!そんなことで社長代理が勤まるもんですか!」
ガーン!
野長瀬は激しいショックを受けた。
そうだった。
奈緒美は、人の言うことを聞かない。一度言い出したら、ガンコまでに、自分の意思を貫く。
それこそが、彼と迎える休日の朝を、取引先とのゴルフ接待に振り替えた女の行き様なのか・・・!
「結局のところ、あんたたち4人の社長としての能力は、どっこいどっこいなの」
「そ、そぉなんですかぁぁぁぁ??????」
「そーよ!一緒なの」
「俺、別に社長代理なんかしたくないんだけど・・・」
「うるさい!社長代理をさせてあげる、なんて誰も言ってないでしょ!この、腰越人材派遣センターのために、私が選ぶ!とゆってるの!やりたいも、やりたくないもなーい!
奈緒美の目はすっかりすわっている。
「だから、能力として、まだ誰も足りてない。足りてないならどうするか。私がいない間、何も起きない。起きたとしても、大したことにはならないって言う強運を持ってる人を選ぼうと思ってます」
「じゃあ、野長瀬、最初から外れじゃん」
「まぁ、ぶっちゃけた話そうなんだけどね」
「社長ーー!」
確かに。確かに今まで運のない毎日を送ってきた。送ってきたけど、それは今日からのため。
人生の幸不幸は、誰でも同じ量のはず。今までの不運はこれからの幸運を・・・!
『ね!天の神様っ!』
野長瀬は、キラキラ光る瞳で、天を仰いだ。

天の神様は、う、と一瞬目を逸らした。

こうして、腰越人材派遣センター、社長代理ポスト争奪!強運さんを探せ!がスタートしたのだった。

「まず、特典です。1.社長と呼ばれる。2.社長の椅子に座れる。3.出社は運転手付きベンツで。4.」
「ちょ、ちょと待って下さい」
「はい。野長瀬くん」
奈緒美がカルチェのボールペンで野長瀬を指す。
「・・・私が、勝った場合は、誰が、ベンツの運転を・・・」
「・・・由紀夫が」
「そっ、その目!勝てもしないくせいに、なーにいってんのよ、このバーカ!って言う目ですねぇ!?」
「違うわよ。勝てる訳ないのに、これだから小心者はイヤなのよ、ほんっとにヌケサクなんだからってゆったのよ!」
「あんまりですぅぅぅ〜〜」
「えーっと、だから、運転手は野長瀬で、っと。4.社長代理の肩書きがついた名刺が貰える。5.これがでかいわよ!つつがなくつとめあげたら、社長代理退職金が貰える!」
「え!お金!?」
基本的に、軽く守銭奴エッセンスが振りかけられている正広は、瞳を輝かせ、頬をばら色に染めた。それは、ピカピカの炊きたてごはん、秋刀魚の塩焼き、トン汁を前に置かれた時の正広に匹敵する素敵な笑顔だ。
「兄ちゃん!俺がんばる!兄ちゃんもがんばろう!?」
「退職金・・・!ボーナスですねぇ!!」
典子の目も、キラキラと輝く。なぜって、もう秋なのだ。もうコートが店頭に並ぶのだ。ブーツだってあるのだ。欲しい欲しい・・・!欲しいものだらけの秋がやってくる。
「負けないわよ!ひろちゃん!」
「俺だって!」

オリンピック前に一勝負。
腰越奈緒美の思うがままになっている、腰越人材派遣センター一堂であった。

そこへ。

「おっひさっし、ぶりぃ〜ん!」
「千明ちゃん!」
「あー!久しぶりー!」
千明、正広、典子で、女子高生3人のようにキャイキャイはしゃぐ。
「でも、千明ちゃん、焼けたねぇ」
千明はすっかり肌の色が黒くなっていた。ガングロ、というほどではないが、かつての色白どこへやら、という程度の黒さはある。
「夏だからぁ、ずっと、海、行ってたのぉ。でもぉ、これ、メイクだよ?」
ホントは白いの、と、ちょっとメイクを落とせば、その下には白い肌が隠れている。
「千明」
奈緒美は、さっきのあみだを千明に見せ、どれがいい?と聞いた。
「え?これ!」
迷わずに千明が選んだところをたどれば、見事に1番。
「・・・そういえば、こいつもバカみたいに運がいい・・・!」
どうせお飾りの社長なら、誰だって構わない!さらに、人数が多い方が面白い!
「あんたも、参加しなさい!」
ただ、由紀夫の名前が書いてあったから、というだけの理由であみだを選んだ千明までが、なぜか、参戦し、腰越人材派遣センター社長代理カップ争奪、って段々名前変わってきてる!?は、いよいよ激しい様相を呈することになってきたのだ!

「明かに千明ちゃんは違うでしょー!」
野長瀬の悲鳴が、孤独に響くが、そんな理屈が通用する相手ではないのだ。
誰がなる!腰越人材派遣センター、社長代理!

つづく


私は香川に住んでますが、香川でオリンピックが行われても、見にいかないこと間違いなし!というほどオリンピックに興味のない女(笑)これから、オリンピックのために、テレビ番組とかが変わるのかうっとーしいってくらいなのでした(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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