天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

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ギフト番外編78話後編『社長代理を決める』

サッカーが決勝リーグ進出できたんですね!?なんか、番狂わせの嵐って感じ(笑)

yukio
 

「それじゃあ、はい、こっち、座って」
はいはい、と幼稚園児を集めるように、社長代理候補5名(強制参加含)を奈緒美は呼び集めた。
「第1のコース!」
お昼を食べたり、会議をしたりする大きなテーブルに5人を座らせ、奈緒美は楽しそうに、楽しそうに宣言し、いそいそと給湯室に向かう。
「もー・・・なんだよぉ〜・・・」
不平たらしく隣の正広を見た由紀夫は、もう、戻れない位置にいるんだ、ということを把握した。
お目々キラキラ、ほっぺ薔薇色、ワクワク度が高まりすぎて息が荒い。
正広や千明、典子はそれでも可愛いが、野長瀬までその状態って、どうよ・・・、と頭痛を覚えはじめたところで、奈緒美が再登場した。
「あ!」
「ふふ」
「裏切り者!?」
「そのとぉーーり!」
奈緒美の持つトレイには、パフィが宣伝している、クリスピーエッジピザが乗せられていた。
「この中に、1つだけ、この世で最も辛いと言われているスパイスがかかっていないものがあります!当てるのは誰!」
「え?」
由紀夫は聞き逃さなかった。
「スパイスが『かかってる』ものがあります、だろ?」
「かかって『ない』!ものがあります!」
「えぇっ!?」
全員がぎょっとした目で、奈緒美が捧げ持っているトレイを凝視する。
この世で最も辛いと言われているスパイスは、奈緒美がアジアのとある国から買ってきたものだった。全員がちょっと舐めて死にそうになったことを、まざまざと思い出される逸品・・・!
「全部にかかってんですかぁ!?」
「ひろちゃん、ちゃんと聞いてくれなきゃ。1つ、かかってないものが、あるのよ?」
「うーーーわーー・・・・・・・・」
通常、とあるバラエティ番組で行われている裏切り者というコーナーは、1つ、辛いものがあるだけだ。しかし、腰越人材派遣センター社長代理争奪戦においては、1つ、辛くないものがあるだけとは・・・!
「誰か一人、当たってない人が出る訳ですが、それを私が当てられなかったらその人の勝ち。その人を社長代理に・・・!?」
てことは?
全員がシミュレートした。

その1)自分が辛くないピザを食べた場合。→奈緒美にばれないようにしなくてはいけない。
その2)自分が辛いピザを食べた場合。→奈緒美に当てさせなくてはならない。

「・・・てことは・・・」
落ちついて考えようとした瞬間、テーブルにトレイが置かれた。
「早い者勝ちっ!」
「あああ!」
考えるもなにも、勢いで皿を取ってしまった5人は、コレは一体・・・、と辛い表情でピザを見下ろす。
「・・・やな、匂いしてねぇ・・・?」
「あー!奈緒美さーん!なんでこんなピザなのー!?」
「え、和風大人の味ピザ」
単なるクリスピーエッジだと思っていたピザは、奈緒美の特製だったらしい。
トッピングされているのは。
「砂肝、牛レバー、練りウニに、チーズをトッピング」
「死ね!」
「五輪ってことで、カットしたからわかりにくいけど、ピーマン三色に、たまねぎ二色つかって、五輪の輪も表現してたのよ!」
「知るか!」
「あ、そうそう。やっぱり和風で大人といえばこれよね」
由紀夫からののしられても涼しい顔の奈緒美は、5人の周りを一周しながらピザの上に、最後のトッピングをかます。
「金箔ぅ〜?」
「あら、千明のくせに、金箔は知ってるのね」
「知ってますぅ〜。なんで、ピザの金箔ぅ〜?」
「はいはい、いいからー、一気にガブっ!っていってよー!せーの!ふぁいっ!」
正広は、涙のSMAPみたい、と思いながら、ピザにかじりつき。

「ううううううーーーー!!」

腰越人材派遣センターは、阿鼻叫喚の地獄と化した。
演技している一人以外は、全員が苦しんでいるのだが、じぃーーーっと見ている奈緒美には、まだ判別がつかない。
「んー?誰ぇ〜?」
この中で演技をしている人がいるなんて、奈緒美には信じられなかった。
だって全員涙目じゃん!
一瞬、全部にソースをかけたか!?いやそんなはずない!
自分を信じ、大きく頭を振った奈緒美は、なおも、じっと苦しむ5人を見つめた。
そして、解ったのだ。
あの、大げささ。
その、わざとらしさ。
間違いない!

「野長瀬でしょお!!」

「ぢ・が・い・ま・ずぅぅー・・・・・!」
「あら」
奈緒美が誰かを当てるまで、水は飲めないルールに、勝手にされていた。
野長瀬以下、4人が慌ててコップを手にして水を飲む。氷、氷と冷蔵庫に走るものもいる。その中で、けろりとしているのは。

「ゆ、由紀夫・・・!」
大きな目にうっすら浮かべていた涙は、すでにどこにもない。
日に焼けた肌は、もっと赤くなっていたはずだった。
「何?」
「あんた、涙目だったじゃなーーい!」
「顔はぶたないでっ、あたし女優なんだからぁ〜」
うふふ、と楽しそうに言う由紀夫は、すっかり戦闘モードに入っていた。はじめるまでは、くっだらない!と思っていても、始まった途端、負けん気をあらわにするのが早坂由紀夫だ。
「これで、俺が社長代理だな?」
「そうね・・・!」
奈緒美は悔しそうにつぶやいて、手帳を広げた。
「由紀夫、1ポイント、と」
「はぁっ!?」
「由紀夫、1ポイント。リードよ!」
「これ一回じゃねぇのかよ!」
「ないわよ!私の言う運がいいってのは、恒常的にいいってことなんだから!」

だから第1のコースってゆったでしょう?
奈緒美は、ふふん、と由紀夫に笑い返し、第2のコースの準備に入った。
「はんははへへもはかんはいはも」
「なんか食べても解んないかも!?」
ソファに並んで座って、口一杯に氷を入れている正広の言葉を解析しながら、由紀夫はいらいらと奈緒美を見上げる。
「ふふふ・・・!果たしてこれではどうかしら!?」
5つの封筒を差し出し、奈緒美はおほほほほ!と上から、下を見下ろす笑い方をした。
「この中に書いてあるものを、持ってきてちょおだい!」
「借り物競争ですかぁ〜・・・?」
わさびの辛さに強いが、からしには弱く、へとへとになっている典子が涙目のまま尋ねる。
「そう。もちろん難易度にはかなり差があります。難易度が低いカードをひくのが強運か、難易度が高いのに、さっさと見つけて帰ってこれるのが強運か。ともかく、ちゃんと指定のブツを持ってここに早く帰ってきた人が勝ち!」
さぁさぁ、好きなのをひけ!と迫られ、最初に由紀夫がひいたのは。

「・・・ドーベルマンを3頭飼っている人。ドーベルマンと一緒に飼い主もつれてくること」
「あらー!難しいのが当たっちゃったかしらぁ?」
「えー!でもこれ、無理ー!」
正広がひいたのは、秋のギャル系ファッションお勧めコーディネート、上から下まで一式。千明が、フレンチレストランのオリジナルカトラリーフルコース分一式。典子が、東京−札幌間の一番安い航空券。そして野長瀬が、日本、ブラジル、スロバキア、南アフリカ、それぞれのサッカーチームのサポータ一人ずつだった。

「南アフリカのサポーターとどこで出会えって言うんですかー!」
「絶対いるの!探しなさい!」
「フレンチのフルコースって、一式って、一人で持てるくらい?」
「・・・ど、どうなんだろ・・・」
ギャル系ファッションなら、千明に言ってくれた方が簡単なのに・・・と正広は難しい顔になる。
「一番安いって、基準あるんですか?」
「あるわよ。私が思っているより」
「社長、いくら以下ならいいんですかっ?」
「そこも考えてくれなきゃだわー♪」

5人は考えた。
ドーベルマンなら、まずは犬の行きそうな公園。
ギャル系ファッションなら、大きなファッションビル。
フレンチレストランは、裏口からつっこむ!
金権ショップが固まってるのは、・・・あ、あそこ!
南アフリカの人は何語を喋るのかなァ・・・。

「はいはい!そろそろ出発したらー?早く帰ってきてねー!」
おほほほほーと楽しげに奈緒美は全員を送りだす。
そして全員でドアを出て、何気なく見下ろした道路に。

「・・・ドーベルマンだ」
「3頭いる」

本当に、ドーベルマン3頭を散歩させている若い男がいて、全員固まった。
「に、兄ちゃん、すごい!」
「俺、すごくない!?」
「すごぉい!由紀夫ったら、すごぉぉーい!」
「あれつれてくちゃいいんだろっ?」
奈緒美は呆然としすぎて声もでない。
その奈緒美を置いて、由紀夫は勢いよく階段を降り、のんびりと散歩している一人と三頭(成犬二頭、子犬一頭)を呼びとめ、さっさと事務所内につれてきてしまう。

「由紀夫・・・、おそるべし・・・!」
思えば、早坂由紀夫として生まれた時から、強運をものにしてきているのだ。
この程度のことは、当たり前といえるだろう。
「むー、ここでも由紀夫のポイントかぁ〜・・・」
でも、他の子たちの苦労も見たかったのになぁ〜、なぁ〜、とぶちぶち奈緒美は文句を言う。下手すれば、これだけで半日くらい時間が潰せて、つまりそうなると。

「あんた、何やってんの?」
その奈緒美の感慨は、ジュリエット星川の呆れたような大声でさえぎられた。
「準備は?もう出るわよ」
「え?なんでよ、飛行機、今晩じゃない」
「バカね、あんた・・・!」
こそこそこそこそ。
女二人は、お互いにこそこそ耳打ちをし、奈緒美は、ぽん!と手を叩いた。
「あ!じゃあ、由紀夫!後はよろしくね!」
「えぇ!?」
「急がなきゃ。野長瀬、車出して、車」
「えっ!じゃあ、あの!由紀夫ちゃんで決まりなんですかっ!?そうなんですかっ!?」
「だって、強運だったじゃない」
あっさり言い、奈緒美は駐車場に向かう。
事務所には早坂兄弟、典子、千明、そして、ドーベルマンと、その飼い主が残された。
子犬をだっこさせてもらっていた正広はぱちくりと瞬きし、瞬時に社長代理モードに入った由紀夫は、大変申し訳ありません。お昼ご飯でもいかがですか?会社のおごりで、と勝手に言った。

「でも、まぁ、あれだよね」
子犬と遊べて大満足した正広は、社長代理と一緒にベンツで帰りながら言った。
「奈緒美さんも、オーストラリアまでいっても、あのスケジュールじゃ、大変だよね。ほとんどツアコン・・・」
「そうかなぁ・・・」
社長代理は首を傾げる。
あの綺麗なスケジュール表に、何かの違和感を感じずにはられないのだ。
「どーよ、野長瀬くん、成田まで送ってって、何か気づかなかったの?」
「きっ、気づきませんでしたよっ、社長代理っ!」
「何がおかしいの?」
「何か、おかしい・・・・」

そして由紀夫の勘は正しいのだ。
「小島社長でございますか。はい、今、コースに出られておりました。えぇ、戻られましたら、ご自宅にご連絡ですね。はい。まぁ、奥様もご一緒してくださればよろしかったのに。まぁ、ご主人様方は会合ばかりですから、奥様はお買い物もできますし、観光も。ほほ、えぇ、本当に。それでは失礼いたします」
日本人らしく、携帯電話を手にしたまま深々と頭を下げた奈緒美、電話をきった途端、隣のジュリエット星川に尋ねる。
「小島社長ってどこ!?」
「えーっとねー。ニュージーランドあたりかなぁ。ホテルのビーチでごろごろってとこね。実家に連絡?」
「1時間あとにするように連絡して」
腰越人材派遣センター主催のオーストラリア研修旅行は、きゃわゆい子猫ちゃんと旅行がしたいおじ様の夢をかなえるアリバイツアーにほかならなかった。
事務所の人間も知らない現金を手に、豪遊中の二人は、日本で大変なことが起こっていることをまだ知らないのだった!


テレビッ子ながら、スポーツは見ない私に、ちょっと辛い最近(笑)夜になったら見る番組がなーい!と苦しむばかりなのでした。でも、そこそこ勝っててよかったっすね!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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