天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編79話『社長代理の月曜日』

朝のワイドショーで、コーナーの時間が移動したりするのが結構迷惑・・・(笑)

yukio
 

月曜日。
社長不在の腰越人材派遣センターに最初に出社したのは野長瀬だった。鍵を開け、いい天気だなぁ、と空を仰ぎ、まずはお茶でも、とティーブレイク。
といっても、お湯を沸かして番茶をいれるというジャパニーズスタイル。
土・日の間の新聞をしみじみ眺める。腰越人材派遣センターは、上は日経、下は東スポまで、何種類もの新聞をとっているので、読むのも大変だ。
主に下の方から読んでいるうちに、今日の二人目、典子が出社。
彼女もティーブレイクするが、彼女は、最近気になっている、痩せるお茶。
「野長瀬さぁん」
「んー?」
「昨日、見てましたぁ?マラソン」
「見てたよ!見てたよ!見てたに決まってるじゃないかぁぁ!!」
「あ、じゃあ、見ましたっ?」

「だから、見たって」
「あー、気がついてなーいぃ〜」
「何が、何が?」
「いいんです、気がついてないんだったら」
「なーにーよー!」
すがりつく野長瀬を無視して、典子も新聞を眺める。主に広告。
お前らは、ランチ中のイタリア人か!というほどゆったりしてしまう二人だった。

が、お茶も残り少なくなり、最初の電話がなる頃から、ばたばたし始める。
週末に届いていた手紙、FAXに目を通し、あれこれ手配をしたり、連絡をとったり、ばたばたばたばた・・・・・・・・・・

「あれ!?」
典子が時計を見て声をあげた。
「由紀夫社長代理たちどしたんですかっ!?」
「あれっ!?もう十時っ?」
「野長瀬さん、迎えにいかないとー!」
社長代理の椅子争奪カップで、屈辱の敗北をした野長瀬だったが、由紀夫とて鬼ではない。道もせまいし、いちいちベンツでなんか迎えに来なくていいよといわれていた。どうせ仕事するのに自転車がいるんだし、と、社長代理になっても自転車で通っていた由紀夫なのだが。
「え、でも、月曜日は迎えに来いとかって言われなかった・・・」
「単なる遅刻?」
野長瀬は、ちゃちゃちゃ!と由紀夫たちのうちに電話をかける。

ぷるるる♪ぷるるる♪ぷるるる♪ぷるるる♪ぷるるる♪ぷるるる・・・・・・・・♪

「いない・・・?」
とつぶやいた次の瞬間、受話器があげられる音がした。
「あ。おはようございます!由紀夫ちゃんっ?」
「・・・休む・・・」
「え?今日ですか?どうしたんですか?具合でも?ひろちゃんがっ?」
「・・・眠い・・・・・・・寝る・・・・・・・・・・・」
ブツ。

ツーツーツーツーツーツーツーツーツー・・・・・・・

「野長瀬さん?」
「・・・休むって・・・」
「由紀夫社長代理ですか?」
「おそらく、早坂由紀夫担当課長も・・・」
「あらー、連絡もできなかったなんて、具合悪いんでしょうか」
「眠いって」
「え?」
「眠いから、寝るって」

「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「ま、社長代理ですからね」
「社長代理だからな」

そこで納得してしまうほど、腰越人材派遣センターにおける社長の地位は高い。

さて、その社長代理兄弟は、寝ていた。
微動だにせず深い眠りに落ちていた。
由紀夫は、受話器を握ったまま、ベッドから半分落ちそうになりながらも寝ている。なにせ二人がベットに入ってから、まだ二時間もたっていない。
前夜の早坂家は大変だった。
寝起きの悪い正広は、六時から起きてオリンピック女子マラソンを見た。自分も走るけど、短距離の方がずっと得意な由紀夫は、あんな距離を走るなんて・・・と思っただけで具合悪くなりそうなので、見ないで寝ていたのだが、叩き起こされた。
「すすすすごいよ!すごいよ、兄ちゃん!」
すごいって言われても・・・と思ったが、でも寝るといったら、何をされるか解らなかったので、しぶしぶ起きて、残り一時間を付き合った。
やったー!金メダルー!と喜ぶ正広に、お祝いでなんか食べにいくか、と言ってみたら、ダメだよ!と叱られる。
「だって、この後インタビューとかあるよ!きっと!」
と、その後のニュースも全部付き合わされた。
さらに、続くオリンピック中継も見せられた。食事は正広お気に入りの宅配ピザを頼む。
今日は一日テレビ観戦かー・・・。
ぼんやり思っていた由紀夫は、

「兄ちゃん!準備はっ!?」
と急に言われ、えっ?と顔を上げる。
「準備ってなんの?」
「なんのって!今日は東京ドームいかなきゃあ!」
「・・・チケットあんのか・・・?」
「あるよ。ふふふ・・・!もうずっと前に買ってあったんだ!今日の東京ドーム!」
今年の巨人は、最初から調子がよく、これで優勝しなきゃあウソだろう、という勢いだった。正広は相当な巨人ファンの上、下手な野球解説者なんかに負けないだけの知識を誇っている。その正広は、冷静に巨人、および、他球団の戦力、投手のローテーション、怪我人の数、個人の記録などなどからはじき出した結果は、優勝決定は、9月24日!だったのだ。
そこにいたる方程式は正広にしか解らない。
ともかく、正広は、発売当日に、この日のチケットを押さえた。ダメならダメで早くに優勝が決まってればいい。
落ちついて試合が見られたらそれでいいや、と、思っていた。
「今日は優勝だからねー。監督の胴上げみなくっちゃ」
しかし由紀夫の表情は暗い。前日も負けているし、相手は二位のチームだし、勝たせてはもらえないだろうと思う。

そして向かった東京ドームで、巨人は、奇跡的な優勝を成し遂げた。
正広、興奮のあまり軽い失神状態に落ち込み、由紀夫を死ぬほど慌てさせたが、すぐさま息を吹き返し、見知らぬ隣の席の人たちと、大騒ぎになった。
最初は正広を押さえなくちゃと思っていた由紀夫だったが、ノリの良さなら負けてはいない。
球場を出たところで、打ち上げいくぞー!と大勢引っ張っていったのは、由紀夫の方だった。
「あ!兄ちゃん!」
「正広ー、久しぶりー!」
大きな居酒屋は、ほぼ貸し切り状態になっており、でも、全員が立ったり座ったりしながら、あちこち動いている。さっきの試合のことだけじゃなく、様々な話題が飛び交っていた。
早坂兄弟が出会えるのも、そういう移動中のほんの一瞬だったりした。
「おまえ、飲んでないだろうね?」
「のんでませんよー!ビールなんてー!」
「あ!てめ、日本酒飲みやがったな!吐け!吐いてしまえ!」
「そんな勿体ないことーー!そんなこといわないでぇーーーー!お兄さぁぁーーーん!」
のし!と由紀夫の背中にのしかかってきたおじさんは、かなり泣き上戸らしく。
「うわー、今、背中かなり濡れてる感じ・・・・」
「うっひゃひゃ!兄ちゃん!面白いっ!」
おもしろーい!おもしろーい!と去っていく正広を追いかけようにも、背中にはおんぶおばけじいさん。
「ちょ・・・っと!大丈夫ですかぁっ?」
「おじさんはねー、監督と同い年でねぇー」
「あ、そうなんですか。え、見えませんね。監督も若いけど」
由紀夫も、結構なアルコールのため、集中力が途切れ勝ちになってるようだった。

そうして、居酒屋を二軒ほど、飲みつぶしてきたおそろしき一行は、それぞれに散っていった。次は日本シリーズで優勝した時に遭おう!
それだけを約束した、連絡も何もとらないけど、その時には、また会えるはずの仲間たち。
「スポーツいいなー・・・。秋だし、なんか、やろうかなぁ」
眠さとアルコールで潰れた正広をおんぶして帰りながら由紀夫は言ったが、正広からの返事はない。しかし由紀夫は喋り続ける。
「でも、マラソンはやだ・・・。卓球?やっぱ、今は卓球?なぁ、卓球かなぁ〜!」
気づかず喋っている由紀夫も、相当なかなりな酔っ払いだったので。

そして月曜日。
眠いから寝るといったことさえ覚えていなかった二人が目覚めたのは、六時。
朝焼け?と思ったら夕焼けだった。

「に、兄ちゃん・・・・・・」
「夕焼けかぁ・・・・・・・」
そして二人は顔を見合わせ。
「「ま、いっかぁ」」
と忘れることにした。
ともかく、昨日はいい日曜日だったな。
早坂兄弟のカレンダーの中から、その月曜日が静かに消えていった。


なんでも、典子が見ていたら、マラソンの最中、画面に必死の形相の奈緒美が映ってたそうですよ(笑)!恐いなー、やるなー、奈緒美ー(笑)
そして今回は、短いです。意味がないのはいつものこととしても、かなり意味がないのです。なぜって今私はとっても大変なことになっているから!来週はもーちとコマシと思います。もーちとね。わずかにね。あ、りる、ね(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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