天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen@gallery様から使わさせていただいております!皆様も遊びにいらしてくださいね!

ギフト番外編80話前編『新メニューを届ける』

久しぶりにファミレスにいったら、いろんな人がいました。面白かった・・・!

yukio
 

「兄ちゃん。これは、なかなかの仕事かもしれなーい」
「はぁ。そうですか、担当課長」
「あっ。そうなんだよ、早坂くんっ」
デスクの上においた書類を、前かがみで見下ろしていた正広は、あ!と顔をあげ、課長らしい口調になる。『えっへん』と胸を張る様子が大層可愛らしかったので、由紀夫はわざわざ正広のデスクまでいき、その横に神妙な様子で立った。
「あのね、早坂くん。えーっとね」
偉そうな口調を心がけたはいいものの、まだ話す内容が自分のものになってなかったため、えーっと、のまましばしフリーズ。
もう1度書類に目を落とし、うんうん、と頷いた後、もう一度顔を上げる。
「食品を至急かつ極秘に運んで欲しい!」
「・・・出前?」
「ちっがーう!」
「出前じゃん!食品を至急に運ぶって、出前だろ?」
むー!課長に対してなんだその口調ー!と正広は頬を膨らせながら、違う!と注意する。
「しかも、極秘!」
「人に言えないような食品の出前?」
「人に言えない食品って何ーっ?」
「そりゃあ、人間としての倫理に反するようなおっそろしい食品で」
「えーーー!!何ぃぃぃーーーー!!!」

「それはあれよ!ひろちゃん!」
オーストラリア帰りの奈緒美が言った。
「×△■トカゲを、◎○して、蒸し器で、×★。その後・・・・・・・」
こそこそと耳打ちされた正広は、ぎゃーーー!!と悲鳴を上げる。
「いやだーー!!そんなのーーー!!」
「つまり、由紀夫はそういう食品を極秘かつ迅速にデリバリーしなくちゃいけないのね!?」
「えーー!由紀夫さんがそんなものを運ぶなんてぇーーー!」
「匂いそー・・・」
「俺だってやだよ!そんなもん届けるのっ!」

「ちっがーーーう!!!」
いやーー!!とデスクに顔を伏せ、本来の書類が目に入った正広は、瞬時にして体勢を立て直した。
「そじゃなくて。ちゃんと人の口に入れられるものです」
「あら。その×△■トカゲを、◎○して、蒸し器で、×★。その後・・・ってやつだって、口には入れられるわよ?」
「喉も通るんです!」
きっ!と騒ぐ四人を睨みつける、早坂由紀夫担当課長溝口正広だった。

「はい。早坂くん、そこ座って」
正広は、自分のデスクの横に丸い座面の椅子を運んできて、ぽんぽんと叩く。
「はーい、課長ー」
「はい。書類こっちです。えとですね、今日はまずファミレスにいってもらいます」
「・・・ファミレス・・・?」
「はい」
「モーニングを食べに?」
「時間は、十四時頃」
「十四時」
「ランチのお客さんがひいて、ちょっと落ちついた頃にいってもらいます」

十四時。
その正広の言葉に従い、由紀夫はとあるファミレスに来ていた。
ランチの客は減ってはいるが、人気のある店らしく、そこそこ席は埋まっていた。
「いらっしゃいませ、お一人ですか?」
にっこり笑顔に、きゃわゆい制服のウェイトレスに頷き、喫煙席に案内してもらう。
「こちらどうぞ」
「あの」
「はいっ?」
ウェイトレスとて人の子。男前に呼びかけられれば、笑顔も5割増してなもんである。
「こちらの店長さんって、おいくつくらいの方ですか?」
「え?店長・・・、唐沢ですか?」
「はい。さっき、入り口で見たんですけど」
由紀夫、ニコ。ウェイトレス、ウキっ♪
「先輩と同じ名前だなと思って」
「あら、でも、店長・・・。確か三十台半ばすぎ・・・だったと思うんですけど」
「あ、そうですか・・・。そしたら、先輩かなぁ。寿明って、トシアキって読みます?」
「そうですー!店長、およびしましょうか?」
「よろしいですか?」
由紀夫、再び3割増で、ニコ。ウェイトレス、ウキウキウキッ♪♪

「お待たせしました。店長です」
「はーやーさーかーー!」
朗々としたいい声とともに、ギュウ!と抱きしめられ、由紀夫も、「先輩ーー!」と抱き返す。
「なんだおまえー!生きてたかー!」
「生きてましたよ。なんですか、先輩こそ」
まま、座れ、座れ、と席を勧められ、大人しく由紀夫は席につく。その迎えに唐沢が座って、ウェイトレスに話す。
「こいつなー、こうやって今はすましてるけど、昔はマヌケなことばっかやっててなー。あ、俺が注文取るわ。ありがと」

ちっ。
ウェイトレスは心の中で激しく舌打ちしたが、にっこりと笑顔は崩さず引き下がる。メニューと、二人分の水を置いていくのも忘れない。
「・・・どうも今日は」
「よろしくお願いします」
お互い朗らかな笑顔のまま、小声で挨拶を交わす。もちろん、由紀夫には初対面の相手だった。
「とりあえず、うちのご自慢メニューを食べていただいて、仕事はその後、ということで・・・」
「はい。お願いします」

「それじゃあ、ゆっくりしていけな!」
「はい、ありがとうございます!」

立ちあがった唐沢に頭を下げて、由紀夫は、手にしてた新聞を読み始める。
遅いランチタイムのサラリーマンを演じようとはしているものの。スーツを筆頭に、全身グッチ。
「目立つ・・・」
店長唐沢は、小さくつぶやいた。

今日の由紀夫の仕事は、某ファミレス冬の新メニューを本社まで届けること。
メニュー開発は、ファミレスの命だ。材料費は安く。それぞれの店舗で作りやすく。そういう会社として必要だと思われる条件は色々あるが、なによりも、美味しくなくては意味がない。
それぞれのスペシャリストが、色々考えて、考えて、思考錯誤の末メニューが決まり、実際それを食べてみて、またそこから詰めていく作業が延々続く。
そして、それらの調理作業は、本来、本社にあるキッチンで行われるはずだった。

「でも、どうやらおかしいんだって・・・」
「おかしい?」
「レシピとかね、パソコンに保存してたりするでしょう?それが、どうも開けられてる様子があるんだって・・・!」
「・・・なんで、パソコンの中のことが解るよ」
「・・・し、知らないけど。でも、お客様がそうゆってるから・・・」
ごにょごにょと口の中で言う正広は、もう1つ聞いたことを、勢い込んで告げる。
「それと、食材を入れてる冷蔵庫の中身も、なんか変わってるんだって!」
「つまり、スパイがいるってことか」
「そうみたい。だから、本社内では、メニュー決定作業が進まないよーって言う感じにしておいて、よそのお店で試作したものを、兄ちゃんに運んで欲しい訳」
「こっそりと」
「もちろんこっそりと」

唐沢じきじきに運ばれたメニューは、この店の自慢だという和風ステーキセット。肉も美味しかったが、セットについてるご飯が美味しく、む、ナイス。と由紀夫は思う。
これなら、ご飯好き正広もお気に入りのはず!
そういえば、めったに来ることなかったけど、また来てもいいなぁと思っていた時。
由紀夫は、何か違和感を覚えた。
ん?
何気なく店内を見まわした時、無意識の中で、センサーに何かがひっかかったのだ。
もう一度同じように店内をサーチして、その違和感の元を発見した。
それは、四人がけのテーブルに、二人で並んで座るカップル。
最初は、向かいの席にいる人が席を外してるだけかと思ったが、いつまでたっても帰ってくる様子もなく、テーブルの上には、どう見てもコップは二つ。
こーゆーことを、恐らく野長瀬とかがやりたがるんだな・・・、と、すっと目を逸らした由紀夫だったが、どうにも場所が悪かった。由紀夫と、そのカップルの距離は相当離れてはいたが、真正面の位置。そして、二組の間にいた客は、すべて出ていってしまったのだ。
特別イチャイチャする訳ではないが、なぜ、そんなに寄りそう必要がある・・・?
兄として、正広が人前でそーゆーことをするカップルになりませんように、と祈ってみたりもした。
もし、そんなカップルになったら、取りあえず殴る。とかも思ってリしていると、食べ終えた由紀夫に気づいた唐沢がやってきた。
「どうだった?」
「美味いっすね!」
「だろー。これ、解るかなー。肉はもちろんいいもんなんだけど、ひっそり自慢なのが」
「ご飯でしょう?」
「お!早坂ー。いいから、もううちの会社に来い!」
ご機嫌な顔で、また向かいに座った唐沢は、由紀夫の仕事を一切忘れたかのように、ご飯に対するポリシーを熱く語った。
「パンで有名なレストランはあるけど、ご飯で有名っつったらあんまないからね」
「確かに美味しい・・・。これ、どうやってるんですか?」
「ふふん。ひ・み・ちゅっ♪」
微笑みながら、人差し指で、鼻の頭をとんとん、とされ、どーしたらいいんだ・・・!と困惑した由紀夫に、唐沢は真剣な顔でいった。
「でも、教えてやろっかな。これ、絶対秘密な。よその店いってしゃべんなよっ?」
「あ、はい」
耳貸せ、というジェスチャーに、身を乗り出していくと。
「炊きたてをぉ〜♪ラップっしてっ、ジップっして、フリージングして、ちーんよぉ〜♪だっ!」
「えー・・・・・・・・・?」
「やってみろ!美味いから!」
それじゃあ、食後のコーヒーをお持ちします、と皿を引き上げていく唐沢がいなくなると、また真正面に、寄りそうカップルが見えた。

まだ寄りそってんのか。
その時の由紀夫は、このカップルにえらい目に合わされることをまだ知らなかった。

つづく


寄りそうカップルはもちろんいましたが、後は、ものすご話し込んでいる、おじさんとおばさん。夫婦ではないらしいけども、ずーーーっといろんな話をしていた。最初は、いや、自分の気持ちが納得いかなくて、という恋愛風味な話だったのに、最終的には、お年相応の健康の話題へ(笑)
また、やたらウェイトレスさんを呼んでは、ものすご丁重ながら、その注文の仕方って何?という変なものを頼んでいくおばちゃんとか(笑)おもろいなー!ファミレスー!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

今までのGift番外編へ

What's newへ

SMAPレポートへ

SMAPメニューへ

トップへ