天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編80話後編『新メニューを届ける』

ファミレスには体にいいもの置いて欲しいね。あのー、風邪っぴきの時似たべるといいものとか。そーゆーの。一人で入れるし、いいのになー。

yukio
 

「お待たせしました」
コーヒーと、クッキーが由紀夫の前に置かれる。
「ん?」
「サービス、サービス。また来てねっ」
唐沢はそう言い、由紀夫の前を離れる。
由紀夫は、ゆっくりとコーヒーを飲み、クッキーは甘いからなぁ、と、ナプキンでくるみ、正広へのお土産にしようと思う。
お父さんか・・・、な由紀夫だ。
由紀夫にコーヒーをサーブした唐沢は、そのままレジに入る。
レジに彼が入ったら。
それが合図だった。

由紀夫は立ちあがり、レジに伝票を置き、持っていたバックを足元に置いた。
「ありがとうございました」
にこやかな笑顔でレジを打ち、値段を告げた唐沢に、由紀夫は札を渡そうとして。
「あっ」
「申し訳ありません」
手が当たって、千円札が落ちてしまう。慌てて拾おうとする由紀夫を穏やかに唐沢が止めて、さっさと拾い上げてしまった
「すいません、先輩に」
「いやいや、いつまでも手のかかる後輩で」
あはは、と笑い合い、また来てね、また来ます、と挨拶を交わし、バックを取り上げる。
「ありがとうございました」
深く頭を下げられ、いやいやと手を振りながら店を出た由紀夫のバックは。
店に入ってきた時より、一つ多かった。

よくある、黒いブリーフケースの中には、密封容器に入ったシチューやスープが入っているはずだった。この冬は、定番だが、シチューを大事にしたいと唐沢のファミレスは思っていて、定番ビーフシチュー、クリームシチューなどと一緒に、変わりだねが何種類か。
後はこれを、本社まで届けるだけ。
シチュー入りバックを斜めがけにして、それじゃあいこうか、と思った時。

「ひどいっ!」

由紀夫は横っ腹に衝撃を受けた。相手がナイフでも持ってたらこのままさようなら、だったかもしれないほどの勢いだったが、ぶつかってきた女は、由紀夫の方など見ていなかった。
「どうして!?どうしてなのっ?」
「違うよ!誤解だって!」
「いやっ、こないでっ!」
こないでっ!と言われ、由紀夫はその女の盾にされた。
「え!?」
「何やってんだよ!」
「いやぁ!もう、何も聞きたくなぁいっ!」
「マナミ!」
マナミは由紀夫の背中にすがりつき、男から逃げるように、ぐるんぐるんと回される。今、食べたばかりで、あんまりぐるんぐるん回されると、ちょっと、具合が・・・。

「う・・・っ」
「えっ!?」
口元を押さえた由紀夫に、男が慌てて手を出す。
「だ、大丈夫ですかっ?」
「大丈夫な訳あるかぁ!!」
由紀夫に怒鳴られ、きゃあ、とマナミはしりもちをつく。
「何やってんだよ!っておまえらファミレスでいちゃついてた!」
あの寄りそうカップルが、由紀夫を挟んで左右に分かれていた。
「え、店にいたんですか?」
ノンキに聞く男に、由紀夫も、軽く自尊心をひっかかれた気がした。
何せ派手で有名な由紀夫なのだ。
しかも、店長のおかげで悪目立ちもしたはずなのだ。
そーれーなーのーにー!!
「ま、おまえら、自分たちのことしか目に入ってなかったからな」
しかしそれを前面に押し出すほどの由紀夫ではない。涼しい顔で言い、それじゃ、とその場を離れようとしたら、足をひっつかまれた。
「何!」
「連れてって・・・!」
「はぁ?」
「マナミ!」
「もう、いいの・・・!お願い私を連れてって!」

連れてってって言われても。

足首をつかまれたまま、動くに動けない由紀夫は、マナミと、男を交互に見比べる。
「・・・あんた。これ、どーすんの・・・?」
「マナミ!しっかりしろって!」
「だって・・・!あんな風に思われてたんなら、もう、一緒になんていられない・・・!」
ぎゅう。
「いででで!」
足首潰される!と由紀夫は騒ぐが、マナミは聞いちゃいなかった。
「さよなら・・・!さよなら、ミツル!」
「マナミ!」
「俺の足首が足とサヨナラするまえにこいつをどーにかしろ!」
「あ!すみません、すみません!ほら!マナミ!こちょこちょっ」
「きゃっ!」
素晴らしいフットワークで背中に回ったミツルは、マナミの脇をくすぐって、見事にひっくり返す。
「いたぁい!何するのよー!ミツルぅ!」
「そんなにいつまでもよその男にくっついてるんじゃありませんっ!」
「え・・・」
「はぁ?」
靴下のした、くっきりと指の跡がついていることを確認してしまった由紀夫が間の抜けた声をあげる。
しかしマナミはひっくり返ったまま、いやだ・・・と頬を染めていた。
「違うのよ。そんなひっついてるとかじゃあ・・・」
「マナミ・・・」
「ミツル・・・」
そして見詰め合い出す二人を置いて、由紀夫は、さっさといこうと自転車に手をかけたのだが。

「いや!ちょっと待ってっ!」
我に返ったマナミに、今度は逆側の足首をつかまれる。
「だからいってぇんだよ!このバカ力!」
「バカ・・・?」
小柄で華奢で、どこにそんな力があるんだ?というマナミは、しょっく・・・といわんばかりに仰け反った。
「ミツルもそう思ってるんでしょう・・・?私のこと、バカだって・・・」
「何いってんだよ、マナミ!そんなこと、思ってる訳ないじゃないか!」
「だってさっき・・・」
「さっき・・・?」
「さっき、言ったじゃない!まだ食べるの?って!言ったじゃない!」

マナミは涙ながらに由紀夫に訴えた。
ファミレスで食事をして店を出た時に、ちょっと、デザートも食べたいわって言っただけなんだと。
「違うんです!」
それをミツルが遮る。
「だって!だって、マナミはもうデザートも食べてたんですよ!?マナミは、秋の喜び果肉たっぷりマロンパフェをもう食べた後だったんです!」
「でも!和風のはまだだもの!」
「大根サラダと、フライドポテトと、ミネストローネをボールで頼んだし、メインは、和風ハンバーグステーキ280g、ライス大!だったんですよ!?」
「うーん、それは女としてっていうより、人としておかしい」
「おかしいの!?私、おかしいのぅーー!!」
よよ、と泣き崩れながらも、足首を離さないマナミに、由紀夫は困惑を隠し切れなかった。
まさかとは思うが、こいつらも、社内にいるというスパイなのでは・・・!?

「ともかく、一度起きたら?」
そっけない中に温かみを感じさせる口調で由紀夫は言った。
「いつまでもそんなカッコしたら、可愛い服が台無しじゃん」
「可愛い・・・?」
「うん。可愛い。な、彼氏も可愛いって思ってるよな」
「もちろんです!マナミはホントに可愛いよ!」
「ミツル・・・!」
きらり、と目じりにたまった涙が光る。
「マナミ・・・!」
ミツルが差し出した手にマナミの手がそっと重なる。

やれやれ、と足首の解放を喜んだ由紀夫は、次の瞬間、バックにすがりつかれてものすごく驚いた。
それは、映画「催眠」で、突然出てくる菅野美穂に驚いて以来の衝撃だったかもしれない。
「なんだよ!!」
「すごいいい匂いがするぅ〜〜・・・!」
「しねぇよ!」
「するぅ〜・・・!」
「マナミ!マナミ、やめろよぅ!香水だよぅ!」
「香水なんて!今日はつけてねぇよ!」
「違うの、ミツル!美味しい匂いなの!」
マナミは、間違いなくシチューが入っている方のバックをつかんでいた。

やっぱり、知ってるんだ・・・!
まさかすでにバレているとは思わなかった。
由紀夫は、マナミの手を取る。
「離して」
「えー!なんでこんな美味しい匂いがしてるのー?!」
「さっきレストランで食べたからだよ!匂いがついてんじゃねぇのっ?」
「そうなのかなぁ・・・」
自分の体もくんくん匂うマナミは、どうにも納得し切れない様子で、でも、仕方なく手を離す。
由紀夫は内心ホッとしながら、マナミを睨んだまま、由紀夫は一歩後ろに下がり、頼りの綱、自転車にそっと触れる。
その冷たい、慣れた感触に、早く走りましょうよ、と言われているような気がした。
自分だって早く走りたいんだ・・・。
心の底から由紀夫は思う。
そして今度こそ、と、自転車にまたがったのだが。その時、当然スーツのすそが動く。
「あ!」
それにマナミが反応した。
「ここ!」
マナミが再びすがりついたのは、バックではなく、その下。スーツのポケットの部分だった。
「ここ・・・!ここから甘い香が!」
「おまえの彼女はドーブツかーーー!!」
「あ、いや、時々なんです!いつもはもっと落ちついてるんですけど、なんか、今日はおなかが空いてるみたいでっ!」
「そーゆー問題じゃ・・・!」
由紀夫は、そのポケットに、クッキーを入れていたことを思い出した。
シチューやスープは完全に密封されている。ちょっとやそっとで匂いまでは解るはずはなかった。
由紀夫は、マナミの手が邪魔になるところ、苦労しながらクッキーを取り出し、マナミに見せる。
「あ、やっぱり・・・!」
マナミの顔が、きゅん、と可愛くなる。
ほんとにどこにそれだけのものが入るんだろうという華奢な体だ。
「・・・とってこーーーい!」
そのマナミの頭上を越えるように、由紀夫はクッキーを投げた。

人の彼女に失礼な、とは思ったが、マナミは、それでまんまと由紀夫からはなれたのだから仕方がない。
由紀夫は、自転車を発進させた。
「あ!」
マナミが慌てたようだったが、待ってはいれらない。
急いで、最短コースを取ろうとした由紀夫は、ファミレスから、外の敷地に出るには、柵を越えなくてはいけないことに気づいた。
自転車がギリギリ1台通れるくらいのポールが立っていて、そこは自転車を押さなくてはいけない。
でも、降りてスピードを落とすのがイヤだった由紀夫は、そのまま自転車で突っ込んでいく。
危ない!というミツルの声が聞こえたが、

由紀夫はポールに突っ込む寸前、軽くジャンプしてポールを超え、自転車にもう一度座ることに成功したのだ。
「お兄ちゃんすごーーい!」
近くの子供たちの歓声に片手を挙げ、テレビで見たことあるからな、と由紀夫は内心つぶやいた。
見ただけでできるのか!?早坂由紀夫!

そして、そのままなんの問題もなく某ファミレス本社ビルに到着した由紀夫は、当たり前の自転車便のように、書類として、出来あがっているシチューたちを届けた。
果たしてあのカップルが本当にスパイだったのかどうか。まだ由紀夫には解らない。
それどころか、クッキーを投げられたら拾いにいってしまうあたり、人間なのかどうかも解らないのだ。

果たして、マナミとは・・・!?


マナミとミツルですが、マナミはむしろ本上(笑)無表情なマナミです(笑)恐いわー、マナミー!また出てくるのかしらー!こわーーい(笑)!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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