天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編81話前編『正広にたくさん届ける』

先週はどうした!?いやー、コンサート中でさー・・・(笑)

yukio
 

「兄ちゃん」
「ん」
「寒い」
「・・・」
「寒いよー、兄ちゃん、さーむーいーよぉー」
「・・・・・・」
「寒いのに・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・兄ちゃん、俺のこと、可愛くないんだ・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「寒いのにぃ〜〜〜!!」

「正広っ!!」

自転車をおしながら歩いていた由紀夫は、びしっ!と立ち止まり、後ろを振り帰った。
「いつまでぐずぐずゆってんだっ!」
「寒いってゆってんだよっ!」
すぐ後ろを歩いていたはずの正広は、かなりの距離を由紀夫との間にとっていた。
「それ以上どーしろってんだよ!」
「だって、寒いじゃん!」
「寒くないっ!」
「10月末なのに!寒いに決まってんじゃん!」
「そうかぁ!?」

由紀夫は薄手のシャツ1枚でぬくぬくとしたカッコの正広を眺める。
「さっ、寒いよっ!」
額にうっすら汗を浮かべながら、正広は言い張った。その日の最高気温は、東京で20度を越え、温かい一日だった。

「ぷくー」
正広は頬を膨らませながら兄の自転車の後をついて歩く。
「なんで、そんなふくれっつらっ?」
「ぷくー」
上目遣いの正広は、顔全体に不服です!と書いてあった。小さい顔ながら、インパクトのある表情だ。
しかし由紀夫は兄として、弟のその程度のワガママに追従する気はさらっさらない。
「ちょっと、それで、今晩何食うって?」
「ぷくー」
「ぷくーじゃねぇーー!」
商店街の真中でキレる由紀夫、拗ねてます!と全身で表現し、なんなら夕日に向かって小石を蹴ってもいい!というほどの正広。

「ゆっ、由紀夫ちゃーん!今晩はお魚にしたらぁーーー!!」
「何ゆってんだよ、肉だよなぁ、ひろちゃん、肉肉!」
商店街の平和を守るため、商店街の人たちから自主的におまけされた食材が押しつけられ、早坂家の夕食は一家団欒の象徴、鍋となった。

しかし、なおも正広は膨れているのだ。
寄せ鍋がふつふつと美味しそうに沸いているというのに。
「・・・正広」
「だって・・・」
「何」
「もう、ないかも・・・」
うるっ、と目を潤ませる正広だが、それでも、兄由紀夫は心を動かされたりはしない。
「無くなってりゃいいんだ」
「兄ちゃんひどいっ!!」
その時の正広は、まるでおじゃる丸の大人しく素直な狛犬、にこりん坊が、兄狛犬おこりん坊に泣きながら抗議をする時にさも似たり。(解りにくっ(笑))
しかし、おこりん坊よりは、意志の堅い兄由紀夫。さっさと、ホタテを取ってポン酢ではぐはぐしつつ正広の言うことは聞かない。
「無くなっちゃったら、無くなっちゃったら・・・!もう、もう、二度と手に入らないかもしれないんだよぅぅっ!!」
うううっ!とソファに崩れ落ち泣き伏す正広。
身も世も無く、はらはらと零れ落ちる涙は。

「ロートZIΦか」
「ちっ」
「ちっ、じゃねぇーーーー!!」
「でも、残念。千明ちゃんのを間違えてもってきてしまった、リセです」
「リセ使える年か!あいつが!!」
泣きまねも無理か、と悟った正広は、とりあえず食べよう、と鍋に箸をツッコミ、よいせ、と取り出したのは、エノキの塊だった。
「・・・これ・・・」
「それはおまえがいれたんだろう!」
一袋分のエノキが、分けられることもなく、丸まま煮られているというすごい風景に、むっ、と眉間にシワを寄せ、箸を突っ込んで、乱暴に引き分けていく。
「ぷくー」
「ぷくーって、それおまえがやったんだからな?」
「そーだけどー」
座っている正広の足元は、ぱったんぱったんと動いている。
「あのなぁ」
由紀夫はついに箸を置いた。
「どーよ、その態度。俺が悪い訳?」
「ぷくー」
「ぷくーじゃねぇの!なんだそのほっぺた!」
うりゃ!と両方から正広のほっぺを叩くと、ぷしゅっと空気が出て、それはそれで面白い。
ぷくー、ぷしゅっ、ぷくー、ぷしゅっ、ぷくー、ぷしゅっ。
「やめてよーーー!」
「そーゆー顔してるからいけないんだろーー!!」

むぅーーーーっ!!

睨み合う早坂兄弟だが、健全な胃袋を持つ彼らは、温かな鍋を無視することはできないのだった。

「寒い・・・」
最後のおじやまで食べ切って、改めて正広が言う。
「汗かきながら言うセリフか!」
「明日は寒いよ!寒いんだよ!」
天気予報を見ていた正広は、ほら見ろ!と画面を見るように強制する。ちらっと画面を見た由紀夫は、
「北海道がどれだけ寒かろうとおまえには関係ない!」
「でも北海道がそれだけ寒いってことは、日本全体だって寒いよ!寒いよ、絶対にぃーー!!」
「寒いかもしれない」
「ね!寒いよねっ!」
「寒いが、おまえにこれ以上の防寒具は必要ない」

ぴしぃ。
由紀夫は正広を指差した。
いや、正確には、正広の後ろ。クローゼットを指差した。

今まで、比較的すっきりとしていたクローゼットは、今はぎゅうぎゅうだ。新入りに、前からいたグッチのコートが苦しそうに身をよじっている。
「だ、だって」
「これ以上増えたって、おまえは着られない」
「でも!でもっ!でも、ここにいるもん!」
クローゼットに駆け寄った正広は、ここ!!とハンガーにかけられているアイテムの真中あたりに手を突っ込む。
「ここ!ここには、もう2色入らないとグラデーションがおかしいじゃん!」
「どこの世界にクローゼットのグラデーションを考えて服買うヤツがいるんだぁーーー!!」
「でも欲しいんだもーーん!!綺麗なんだもーーーん!!ユニクロのフリースぅぅぅーーー!!!!」

どうして、50色ものフリースを出す必要があるんだ・・・。
思わず遠い目になってしまう由紀夫。
全色集めるぞっ!とわぁくわくしている正広。
ユニクロの50色のフリースはインターネットでならどの色でも買えるが、店頭では、期間限定で、何色かずつの販売になっていた。正広はそれを狙い、こつこつと買い集めていくつもりだ。
「だから、おまえ一人で、すでに10枚フリースあんだぞ?どーすんだよ、おんなじデザインで色違いなのに!」
「毎日きたら50日だもーん」
「どこに置くんだよ!50枚も!」
「・・・っ!お、おけるもんっ」
「どーやって!」
「・・・布団、圧縮袋にいれて・・・」
「それじゃあ持ってる意味ねーだろ!」
「いやーー!!でも、いるーいるーいるーーー!全部いるぅーーー!!!」

ユニクロの床に大の字になって手足ばたばたさせかねない勢いで騒ぐ正広!
どうする!どうなる早坂兄弟!

<つづく>


いや、なんかそんなひろちゃんが可愛いかな、って思って・・・(笑)ぷくー、って(笑)いや、私だけの中で「ぷくー」がお気に入りなんです。ぷくー(笑)。

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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