天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

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ギフト番外編81話後編『正広にたくさん届ける』

秋田のコンサートがあるのですが、秋田も寒いんでしょうね・・・。フリースは必須ですか?そうですか・・・!

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『ユニクロフリース品ギレ続出』

朝、事務所に届けられた新聞でその文字を見た時、正広は、はっきりとめまいを覚えた。このままめまいを覚え続けたら、また病院に入らなくちゃいけないんじゃあなかろうか!と思うほどのめまい、動悸、息切れだった。
「ううう・・・!」
兄には止められていたけど、やっぱりいかなきゃ!やっぱりユニクロへーーー!!
ぎゅっ、と手を握り締め、兄のスケジュールに目をやると、お、今日は夕方からの仕事がありますね?
そうなると、正広の方が先に帰ることになるため、帰り道で、あのユニクロへ寄れる・・・!
うふ。うふふふ。

「ひろちゃん?ひろちゃん??」
野長瀬に肩を揺らされても気付かず、しばし、心の中でうふうふ笑っていた正広は、急に真顔になった。
「ひろちゃん!?」
「あ、野長瀬さん。この新聞、もうごらんになりました?スクラップしちゃっていいです?」
「え?どれ、あ、うん。いいよお願いします」
「はーい」
シャキン!
大きな裁ちバサミは、新聞スクラップ用のもの。正広はその記事の裏を確認し、大丈夫だと判断するやいなや、その品ギレ記事をカット。小さく小さく切ってゴミ箱に捨てた。
由紀夫がこの記事を読むと、過剰反応するかもしれないと思ったのだ。
自らの過剰反応は棚に上げ、変なところで冷静な正広だった。

その日、由紀夫は予定通り夕方から仕事に出た。
指定時間が7時だから、帰ってくるのは早くても8時過ぎ。それまでにフリースを買い、夕食の材料を買い、フリースを着て、夕食の準備をして、フリースを隠すなんて楽勝だ!
きちん、きちん、と仕事を片付け、定時には机の上もすっからかーん。お先に失礼しまーす!と元気に事務所を出た正広は、帰り道にあるユニクロに向かった。

「あ。これって」
「そうなんですー、その色、最後になっちゃったんですよぉ〜」
柔らかな、ピンクというより、桃色のフリースを正広は手にする。
「最後?」
「今回の入荷では、それが最後の一着なんですー」
最後の一着!
その言葉にとっても弱い正広は、そのフリースをぎゅっ、と握り締め、店員に微笑まれる。
よかったー!今日来といてー!
自分のフリースと、後、由紀夫に似合いそうなマフラーなんぞを買い、ウキウキと店を出る。着ているのは、その桃色なフリース。しばらくは兄の目から隠さなくてはいけないため、着れるチャンスはとりあえず今だけだった。
嬉しいなー、嬉しいなー、温かいし、可愛いなー♪
一歩一歩に、キュルン♪とか音がしそうな軽やかな足取りで歩いていた正広は、目の前に急に出てきた子供のこめかみに、膝蹴りがヒットしそうになり、慌てて方向転換する。
「びっくりしたぁ!」
わき道からよちよち出てきたのは、まだ2つ3つくらいの女の子。
「どしたの?大丈夫?」
くるっ!と見事なターンを決めた正広は、流れる動作でしゃがみ、その女の子の顔を覗きこむ。
女の子は、長い髪を二つにくくっていて、可愛らしいブラウスにチェックの吊りスカートを身につけていた。
可愛いけど、もう寒いんじゃないかなぁ、と思いながら、お名前は?と聞いてみると、「みーちゃん」と答える。
「猫ちゃんみたいだね、みーちゃんか。お兄ちゃんは、正広です」
「みーちゃんっ」
「あ、そうだね、みーちゃんだよね。みーちゃん、ママは?どしたの?」
「まま・・・・・・・・」
しばらく考え込む顔になったみーちゃんは、そろっと手を動かして、正広の腕に触れ、そのまま正広に抱きついた。
「まま!」
「ママ!?いやいや、僕はママじゃないから!みーちゃんっ?」
「まぁまぁ!」
正広が慌てても、みーちゃんはぎゅっとしがみついたまま離れ様としない。
「ママって、ママって、ママじゃないのに・・・!」
みーちゃんのママー!と周囲の人に声をかけても、ママは見つからない。そのうち、みーちゃんがしがみついているのは、自分ではない、ということに正広は気がついた。
みーちゃんが、必死になってしがみついているのは、正広ではなく、桃色のフリースなのだ。
このまましがみつかれていちゃ、お母さんを探しにもいけないと思った正広は、みーちゃんをしがみつかせたまま、器用にフリースを脱ぐ。案の定、みーちゃんはフリースにしがみついたままで、ただなんだか軽くなったよ?という顔で正広を見上げていた。
「みーちゃん、ママ探さないとね」
「まぁま」
「えー、みーちゃんのママって、そんなへにゃへにゃじゃないでしょー」
「まぁまぁー」
「よいしょ」
みーちゃんをおんぶして、正広は当たりを見まわす。みーちゃんの軽装ぷりからしても、お母さんは、すぐ近くにいるはずで、そして、多分、どこかの店の中。
「みーちゃんのママー」
最初は小さな声だった。

「みーちゃんのママ、いませんかー?」
フリースを着てる人を目で探しながら、段々声は大きくなっていく。
「みーちゃん、さっき、ここから出てきたよねぇ」
彼女が出てきたわき道を見ると、そこにもお店はあった。
「こっちかな。ね、ママこっち?」
背中のみーちゃんに尋ねても返事はなかった。
「みーちゃん?」
首だけで背中を見ると、みーちゃんは、フリースにしがみついたまま、うつらうつらと眠りに入ろうとしていた。
「あ」
一瞬、困ったなと思った正広だったが、起こすのも可哀想だしなぁ、とわき道に入っていき、一軒、一軒、お店を覗きながら確かめていく。
小さな雑貨屋屋、花屋、ブティック・・・。

そしてそのわき道を歩ききってしまったけども、みーちゃんのママらしき人はいなかった。
パパ!?
いや、男の人もいなかった。
あれー!?

どっちだ!?と道の真中でキョロキョロしていると、突然背中に衝撃があった。
「えっ!?」
「みーちゃんっ!」
桃色ではなく、ピンクのフリースを着ている女の人が、必死の形相でみーちゃんを見ている。
「あ、あの、みーちゃんのお母さんですか?」
「そうですー!みーちゃーーーん!!」
手にしているのは、子供用の、やっぱりピンクのフリース。
「まぁま?」

「あぁ、よかったーー!」
「どうしちゃったんですか?」
「あのデパートにいたんですけど・・・」
「え」
みーちゃんはわき道から出てきたのだけど、二人がいた、というデパートは、そのわき道から出てきて、なおその先にあった。
「・・・ってことは。みーちゃん、行って帰ってきたって、ことですか・・・?」
デパートからそのわき道までが、100m。わき道の長さは、300mはあるだろう。
「歩くの、得意なんです・・・!でも、まさかデパートから出てるとは思わなくて、店内で探してもらってたもんですから、もう、みーちゃんったら!」
ぎゅっ!と抱きしめられたみーちゃんは、楽しそうに声をあげたけれど、そのままもう1度眠りについてしまう。
「よかったですね」
「よかったですーー」
背中が軽くなった正広と、みーちゃんを抱いたお母さんは、やれやれ、とお互いに頭を下げる。
「それじゃあ」
「あ、でも、これ」
お母さんがみーちゃんからフリースを取り返そうとしたけれど、がっちり抱え込んだ上、寝ているだけに、いい感じに、・・・・よだれも。
「あっ」
慌てるお母さんに、正広はにっこり微笑んだ。
「それ、みーちゃんのママらしいんで、大事にしてあげてください」

ちょっと寒かったけど、最後の一着だったけど、あれがあったから、みーちゃん泣きもせずにいられたんだなっ。

・・・寒いけど。
いや、着てきたフリース着ればいいんだけど・・・。

ううん!いいんだよ!あれでいいんだ!なんてーの?傘地蔵!?

そして一週間が過ぎ、ユニクロ店頭で発売されるフリースは、すっかり入れ替えになっていた。

結局あの桃色を諦めた正広は、また新たな3色GETに力を入れていた。が。今週の由紀夫の仕事はむしろ午前中に固まっているくらいで、なかなかユニクロにいくチャンスがない正広は、こうなったら一気に3色買うしかない!そして隠すんだ!隠す場所は!
1階のビデオの山の中!
よっしゃ!!

「にーちゃーん、ちょっとしぃちゃんの散歩に行ってきますー」
白文鳥しぃちゃんの散歩、というおっそろしい理由で家を出た正広は、ユニクロに急いだ。しぃちゃんはぽっけに入って外の空気を味わっている。
今回の3色は、比較的シックな色あいで、渋いじゃーん、秋じゃーん、と正広はそれぞれ1枚ずつ手にしてレジに並んだ。
後はこれを由紀夫に見つからないように隠すだけーー。大丈夫、ビデオ屋に積まれてるビデオの奥にスペースあるんだーえへへーー。
Hビデオの山の奥にフリースを隠す。
逆だ、逆!
というツッコミを受けそうなことを考えながら、正広はこっそりと家に戻り、まずポケットのしぃちゃんに、しー・・・と合図した。2階にいるであろう兄に気付かれないように、ビデオの奥にフリースを・・・

「お帰り」
「ぎゃーーー!!!」
「何がギャー!!だ!」
「に、兄ちゃんっ、何やってるのっ?」
由紀夫は、まさに正広が隠そうと思っていたビデオの山を崩しているところだった。
「見るのっ?見るのっ!?いやーー!!兄ちゃん、不潔ーーー!!」
びしっ!
由紀夫チョップが正広の頭頂部にヒット。
「片付けてんだよ!」
「え。そりゃまた、なんで?」
「あれ。置くの」
あれ?と、由紀夫が顎でさした方を見ると、組み立て式の家具の段ボールがあった。
「何あれ」
「クローゼット」
「クローゼット?」
「あれくらいなきゃ、50色のフリースなんてはいらねぇだろ?」

「兄ちゃん・・・!」

あぁ!
やっぱり由紀夫兄ちゃんは、由紀夫兄ちゃんは違うんだねぇぇーーーーー!!!!
正広の目の前を星がまたたいた。
キラキラ輝く視界の向こう、Hビデオの山と兄が微笑んでいる。
「兄ちゃん、ありがとーーー!!」
兄の手をがしっ!と掴んだ正広は、その手をいきなり引っ張られて驚いた。
「兄ちゃんっ?」
「おまえ、どした?」
「どしたって?」
「手、熱いぞ?」
「感激してるから?」
「なんでそんな目も潤んで・・・」
自覚なく首を傾げると、額にも手を当てられ、
「熱あるじゃん!」
「・・・そっか。だから寒かったんだ」
「寒かったんかいーーー!!」
「だから、寒いっていったじゃーーん!!!」

そんな訳で、3色のフリースは、正広の布団の上に広げられ、暖を取るために使われていた。
さらに、あの売り切れた桃色のフリースもあった。どうにかあの人を探さねば!と正広を探していたみーちゃんのママが、正広と一緒にいた由紀夫に託した品物で、こちらは新品。
みーちゃんのママも買っていたものだった。
傘地蔵正広は、残りのフリースもすべてGETし、50色揃えることが可能になったのだが、それもこれも、今の熱が引いてからの話だ。
がんばれ正広!来年の1月で全色揃うぞ!


あっ!今回ぷくーってやってないわ!ひろちゃんったら!ぷくーー(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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