天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編85話前編『21世紀に届ける』

「いいんだよ!いや、気にしないで!」
「いえ!行ってきます!」
稲垣アニマルクリニック助手、草g剛は急いでクリニックを飛び出した。
稲垣医師が、「あー、疲れた。こんな時にはノイハウスのチョコレートだよねぇ〜」と言ったからだ。
急げ草g助手!
稲垣医師の機嫌はいつ直る!?

yukio
 

「あ!」
師走の夜の町をとぼとぼ歩いていた稲垣アニマルクリニック助手、草g剛は、ベンツから降りてくるサンタクロースを発見した。
夜目にも解る華やかさは、早坂由紀夫のものだった。
「こんばんは!」
「え?あ、こんばんは。どしたんですか?」
花束を肩にかついたサンタクロースからどうしたと聞かれるのもどうかと思い、え?と首を傾げた草g助手に、由紀夫は、元気なさそうだから、と答える。
「あぁ・・・」
実際、元気はなかった。
稲垣医師の誕生日を1日間違えたことで、日々は針のむしろだったから。今日も、ノイハウスがどこにあるのか解らない。
「チョコレートでも食う?」
そうしたら、タイミングよくサンタのポケットから、チョコレートが出てきたではないか!さすがサンタ!
・・・ロッテアーモンドチョコレートだったが。
それでもありがたく、3粒もらった草g助手は、
「いえ、実は・・・」
そんな辛い日々を、聞いてくれるのかな、由紀夫さんは、と口を開いたのだが。

「あ、わり。俺いかなきゃ」

聞くふりもなしかぁぁぁーーーーい!!!」

大きな袋ではなく、大きな花束をかついだサンタクロースは行ってしまった。

大きな花束をかついだサンタクロースが向うのは、クリスマスパーティー会場。
しかし、パーティー会場は、見事な忘年会会場と化していた。
「お届け物です」
「んっ!?」
受付に座ってはいたけれども、アルコール度数は相当上がっているらしい若い女の子が、きらっ!とした目で立ちあがった。
「あたしにっ!?」
「あたし、ってゆーか・・・」
「あなたからっ!?」
「残念ながら、それだけは違います」
「なぁんだ」
座りなおした彼女は、手元のワイングラスを一気に開けて、飲む?と尋ねる。
「車なので、えーっと・・・、野本りこさん、おられますか?」
「はぁ〜い」

呼ばれて登場したのは、奈緒美と同年代らしき女性で、これだけアルコールが顔に出る人は珍しいというほど真っ赤な顔をして現れた。
「大丈夫ですか?」
「ぜぇんぜん!大丈夫っ!お花?」
「はい。こちらです」
顔どころか、足も、腕も、赤かった彼女は、黒いドレスが花粉で汚れるのも気にせず、嬉しそうに受けとってにっこりと笑った。
こんなマヌケなカッコをしてても、そういう笑顔を見るのはやっぱりいいもんだな、と、受け取りの写真を撮った由紀夫は帰ろうとしたところで引きとめられた。
「一緒に撮りましょ!一緒に!」
「一緒ですか?」
「あ、ずるぅーい!私も撮りたいー!」
由紀夫が持っているカメラはポラロイドだから、撮影枚数には限りがある。全部フィルムがなくなったところで、由紀夫は開放されたが、受付の女の子が、会場になっていたレストランの外までついてくる。
「何?寒いでしょ」
ほっそりとした腕が、オーガンジーの下から覗いていた。
「あのね、あたしね」
ニコっ、と微笑みかけてくる子は、まぁるい目がちょっとタヌキみたいに可愛らしい。
「クリスマスイブ、まだ予定がないの」
腕を取られながら、由紀夫は、大げさに驚いた顔をした。
「うっそぉ!」
「ホントー!ね、どっか行かない?」
「あー、行きたいけどなぁ〜・・・」
辛そうな顔をして、由紀夫はサンタの衣装のすそを持ち上げた。
「俺、これだから・・・」
「イブもぉ〜?」
「超掻き入れ時」
「・・・じゃあ、届け物頼んだら、来てくれるのぉ?」
「あ、そうだねぇ」
んじゃ、ここがうちの事務所だから、と、事務所用の名刺を渡す。
俺って、ちょっとホストみたいと思いながら、由紀夫は残りの仕事を終え、家に戻った。

「え?・・・あ、はい・・・、はぁ・・・。はい、そうですか、はい。わざわざどうも・・・」
翌日、歯切れ悪く電話を切った正広が、困惑した顔で由紀夫を見た。
「何?」
「・・・昨日さ、お花、持ってったよね」
「持ってったぜ。おかげでサンタの着ぐるみ、花粉だらけ」
「着ぐるみじゃないでしょー!由紀夫ちゃーん!」
野長瀬の言葉は聞かず、由紀夫は正広に先を続けさせる。
「・・・会場から、無くなったんだって」
「あんなでかいのが!?」
「・・・あれ、重たかったし・・・、持ってる人がいたら解ると思うんだけど・・・」
「それで、弁償とかってことですか?」
典子が尋ねて、正広は首を振る。
「ううん。せっかく届けてもらったのに、って、まぁ、教えてくれただけなんだけど・・・」
「レストラン一軒借り切ってのパーティーだったし、人も多かったし、9割が酔っ払いで、残り一割は大酔っ払いだったからなぁ。訳解らなくなって持って帰ったヤツがいるんじゃねぇの?」
受け取った野本りこ自体も、相当酔っ払っていたから、人に頼んでおいて忘れたのかもしれない。

その事について、腰越人材派遣センターでは、特に気にしなかったのだが、その日の午後、事務所の外で悲鳴があがった。
「何!?」
驚いた正広が立ちあがるより早く由紀夫が外に出て悲鳴の方を見ると、事務所に上がる階段の下に若い女の子が倒れている。
「大丈夫ですか!?」
「バックが!」
「ひったくりかよ!自転車!?バイク!?」
「じ、自転車っ!」
転んだままながら、気丈に声を上げ、あっちと指差した女の子の面倒は残った人間に任せ、由紀夫は自転車を飛ばした。
自転車同士の勝負で、そうそう負けるつもりはなかった。
しかしそれも、行き先が解っていればこそだ。しばらく、あちこち走ってみたが、それらしい自転車も、それらしいバックも、由紀夫は見つけることができなかった。

「あれ?」
「あー・・・ムリだったぁ〜・・・?」
手ぶらで帰った由紀夫を迎えたのは、心配そうな正広たちと、昨日の受付の女の子だった。
「あぁ〜・・・もぉ、ミミ、ショックぅー!」
「兄ちゃん、警察に」
「そうだな。カードとかも早めに止めないと」
「あ、そか。そうだよね。あーーん、んもーー!!ねぇ〜!クリスマスイブに、バック届けてよぅー!」
彼女の手の中には、由紀夫が渡した名刺があった。ほんとに頼みにくるとは!と、思ったが、そのまま放っておく訳にはいかない。
「どんなバック?相手のこと、見た?」
「・・・後ろから来てたし、転んじゃったから・・・。でも、普通の自転車だった。派手でもなかった、と思う」
「バックは?」
「あ、バックはねぇ・・・。あーーー!プラダなのにぃぃーー!グアムで買ったばっかりでーー!」

「それって、このバック?」

声がして全員が入り口に向くと、プラダのバックを持った奈緒美がいた。
「あ、それ!」
「なんで!?」
外出してた奈緒美の元に、わっ!と全員がよっていき、奈緒美が倒れそうになる。
「何よ!何!?これがどしたの!」
「さっきひったくられたんです!」
ミミはバックの中身を確認していく。財布も、化粧ポーチも、携帯も、覚えているものは全部ある。携帯が使われた形跡もないし、財布の中身も、変わっているようには見えなかった。
「カードも?」
「カードも全部あるし・・・、お札も・・・、あるしぃ・・・」
「奈緒美、これどこにあった?」
「階段のところ。外から見えないような場所にちゃんと置いてあったから、誰かの忘れ物かと思ったんだけど・・・。ひったくられたバックなの?」
そう。
由紀夫がうなずくと、奈緒美の眉間にもシワがよった。
「わざわざ返しにきたってこと・・・?」

さて、その頃の草g助手は、まだノイハウスを求めてさ迷っていた。デパートに行けばあるはずだ!が、どのデパートにノイハウスが入っているのかが解らない!
思いつくデパートを次々回っているのだが、どこなのかが解らずに、疲れた草g助手は階段の踊り場にあったソファに座り込む。
あらかじめ、電話か何かで確認すればいいんだ。
ようやくそれに思い当たった草g助手の隣に、若い男が座った。
「大丈夫ですか?」
と尋ねられる。
「え?」
「顔色悪いみたいですけど、大丈夫ですか?」
あぁ・・・!
見ず知らずの自分のことを心配してくれる人がいるだなんて・・・!世の中って素晴らしい!

と。感激した草g助手だったが。


どうなるんだろうなぁ・・・草g助手・・・(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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