天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen@gallery様から使わさせていただいております!皆様も遊びにいらしてくださいね!

ギフト番外編85話中編の2『21世紀に届ける』

「はー・・・。20世紀ももう終わるね。20世紀は暗黒の世紀だったなぁ・・・」
「え、そんな、大げさな」
「いや、暗黒だったよ・・・」
「だって、稲垣先生、20世紀は27年しか生きてないじゃないですかぁ〜」
「・・・そうだったなぁ。27年・・・。1日間違われてたけどね、27年」
はううう・・・!!!
まだ!まだ忘れていなかったのですねぃ、稲垣医師ぃぃーーー!!
「そういえば、ノイハウスのチョコレートはどうしたのかなぁ・・・」
はうぅぅぅぅ!!!
「かっ!買ってきまぁぁぁーーすぅぅぅぅーーーー!!!!」
しかし、未だにノイハウス発見できず!がんばれ草g助手!

yukio
 

「早かったなー・・・」
「もう、年末だよ、兄ちゃん」
早坂兄弟は、シンプルグリーンを片手にしみじみとつぶやいた。
シンブルグリーンとは、深夜の通販番組で売られている、異常に落ちるが手肌や環境に優しいという洗剤だ。
「今年一年は、どうだったかなぁ〜・・・」
「2000年、2000年ってうるさかったけど、別にどーってこともなかったなぁ」

「口より手を動かしなさぁぁぁーーい!!」

早坂兄弟は、事務所の大掃除中だ。
奈緒美に怒られて、窓ガラスを拭き始める早坂兄弟だったが、その気持ちは晴れやかではなかった。

田村からの連絡を受けたのは昨日。
包装紙に残っていた成分は、チョコレートと、ある種のきのこだったという。軽い毒性があって、それが草g助手の吐き気に繋がったようだ。
そして、指紋は。
『イロイロやってみたけど、おまえと、クサナギ?の分しかでなかったなぁ』
「なんで、俺の指紋が解るんだよっ!」
『だから、クサナギの分も解るぞ?』
「うわ、さっぶー!どこで採取してきてんだよっ!」
「えー、俺のは俺のはー?」
「とにかく、指紋は二人分なんだな!?」
電話に加わろうとする正広のおでこに手をおいて、ぐぐぐ!と引き離そうとしながら由紀夫は尋ねる。
『二人分!触ってないね、犯人は』
「それじゃあ、なんも解んねーじゃん、なんだよそれー!」
『でも、このキノコは、そうそう手に入るもんじゃなさそうだな』
「え?」

そのキノコは、奥多摩のとある鍾乳洞の近辺に棲息するキノコなのだ。
そして、由紀夫も正広も、奥多摩のキノコ、という言葉でピンときてしまった。
「奥多摩のキノコの人・・・!」
「言うな、正広・・・」
奥多摩のキノコの人、とは、お中元お歳暮におけるハムの人のように、年に2度ほど、必ず由紀夫に仕事を頼んでくるお客さんだった。
キノコの研究やら、栽培やらをしてるらしく、獲れたキノコを届けるように言われていた。
若いのに、おだやかな、物静かな『奥多摩のキノコの人』
「・・・そうなのかなぁ・・・」
「特徴のないところはあってんだよ」
しかし、めったに都内に(というか、奥多摩も都内だが)出てこないといっていたキノコの人が、都内のデパートで、よりにもよって、毒キノコ入りチョコレートを人に食べさせていたというのは相当猟奇。
心当たりがあるだけに、止めた方がいいんじゃなかろうかと早坂兄弟は考えていたのだが。

「いつまでそこやってんのー!もう、あんたたちは同じ場所掃除するの禁止ー!!」

あはれ、早坂兄弟!
嗚呼、兄さん・・・!嗚呼、おたうとよ・・・!
兄は右に、おたうとは左にと、哀しきかな、生き別れ・・・!

「・・・キノコの人のとこ行ってみようかなぁ」
大晦日、おせち料理の準備をしながら、由紀夫はつぶやいた。
「・・・そうだよねぇ」
正広は、栗きんとんを大量に作りながら頷いた。
草g助手は、翌日から元気に働き始め、その後なんの悪影響も出てはいない。だからといって、その行為を容認する訳にはいかなかった。
「俺、電話で話したことあるだけだからなぁ〜」
「えっ?おまえも行くの?」
「えっ!?行くでしょ?俺も!」
驚いたように、見詰め合う早坂兄弟。
「そんで、初詣に行きましょう」
「あぁ、初詣な。・・・って、明日行くのか!?」
「善は急げってゆーでしょう?」
大量の栗きんとんを、お重丸々一段積め込みながら、正広は満足そうに微笑んだ。
「え!?どーすんの、これ!こんな丸々一段!」
「だって、栗きんとんなんて、年に1度しか食べないじゃん!」
「食べないじゃんって、お重全部栗きんとんって!」
「だって、栗の甘露煮、まだこんなにあるんだよ!?」
「誰が業務用買ってこいって言ったよぉー!!」

早坂家のおせちは3段がさねのお重だが、品数は異常に少なかった。

アシモくんと木村くんが握手してるー!俺もするー!俺もするーー!と騒いだ正広に、どっちと握手したいんだ!と由紀夫がツッコミながら見た紅白歌合戦。
ぶっといエビ天をいれていただいた年越しそば。
意外に深夜は映画ばかりだったので、ゲームで開けた平成13年、西暦2001年にして、21世紀。
早坂兄弟は、奥多摩にいた。

「ここがキノコの人のうち?」
事務所の車を我が物顔で。すなわち、ベンツで、奥多摩の地に足を踏み入れていた由紀夫だったが、正広の言葉には、小さく首を振った。
「あ、違うの」
ベンツが止まったのは、いかにも女の子の好きそうな、ログハウスの側だった。
「はい、降りて」
「降りるの?ここじゃないのに?」
車の中は暑いからと薄着だった正広は、由紀夫から、ダウンやら、マフラーやらをどんどん渡され、1.5倍くらいに膨れ上がる。
「何?なんで?」
「寒いから」
「あ。歩くんだ」
道幅はどんどん狭くなっていたから、確かにベンツじゃあキツいなと正広は思ったのだが。
「な、何それ!」
トランクから出てきたものを見て、ものすごく驚いた。
「自転車。こっからは、まぁ、バイクの方がいいんだけど、さすがに持ってくるのが大変だから、自転車持ってきた。ほい、乗って」
バ、バイクの方がいいって・・・!
自転車の荷台に乗せられて、山道をどんどん奥へと入っていく。
「に、兄ちゃん・・・っ、すごい、ねぇっ」
後ろに自分がいるうえに、こんな山道を自転車でどんどん登っていけるなんて。
「仕事ですから」
「すぅっげー!かーっこいぃーー!」
「暴れんな!暴れんな!!」

山道で自転車を走らせておよそ30分。
これは、まさしく山小屋・・・!
ログハウスではない、あくまでも、山小屋だ・・・!この建物にふさわしいのは、またぎ・・・!
「ここ、キノコの人・・・?」
「そう。ここがキノコの人の家。そしてあれが、栽培中のキノコだ!」
「うわー!おいしそー!」
見たこともないキノコが、たくさん生えていた。
色鮮やかなキノコもあった。
そして。

「・・・カサブランカ・・・?」
なぜか軒下から逆さに吊るされている、1本のカラブランカに由紀夫は気がついた。
「あれ。なんで?ドライフラワー、には向かないよねえ・・・」
1月の山の中は、色が少ない。その中に、まだ白いカサブランカは妙に鮮やかに目に飛び込んでくる。
「おいおい・・・」

車が入れる道から、自転車で30分以上かかるような場所に、花屋はない。
由紀夫が前回ここにきたのは、11月の末だったが、その時にも、花なんて見たことがなかった。

「なんか。まずいとこに来た、かも・・・」
「え」
「・・・このカラブランカ。俺が運んだヤツ、かも」
「・・・ここに?」
首を傾げた正広は、あ。と口を開けたままにした。
「・・・パーティから、なくなった、花だ・・・」
「ひょっとしたら、な」
二人は、並んで山小屋を見ていた。角度が悪く、部屋の窓から中が見えないから、ちょっと移動しようとした時、急に正広が悲鳴を上げた。
「いらっしゃい」
「正広!」
「びっくりしました。早坂さんから来てくれるなんて」
キノコの人が、正広を後ろ手に拘束している。
急に後ろからつかまえられて、正広は最初の驚きの悲鳴以外、声もあげられない。
「あ、そうか。明けましておめでとうございます」
正広を捕まえているとは思えない穏やな微笑を浮かべながらキノコの人は頭を下げ、自分が捕まえている正広にも、顔をのぞきこみながら挨拶をした。


いやーーん!終わらなかったわー!こわーーい!キノコの人ぉーー!奥多摩にそんなキノコがあるのかないのかしらんけど、多分ないー(いや、絶対ないだろ(笑)!)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

今までのGift番外編へ

What's newへ

SMAPレポートへ

SMAPメニューへ

トップへ