天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編85話後編『21世紀に届ける』

正広が捕まってしまった!
山に住む謎の男、キノコの人に捕まってしまったのだ!
どうする由紀夫!どうなる正広!!

yukio
 

新年早々、弟が訳の解らないキノコの人に人質に取られる、というとてつもない事態が勃発!
こう見えて体が弱い弟に何をしでかす!
正広は青い顔で、ただでさえ大きな目を見開いて、じっと由紀夫を見つめている。

秒殺!!

どうせ山奥。
このまま埋めてしまったとて誰に気づかれようか!!

「兄ちゃん!」
そんな不穏すぎる気配が顔に出ていたのか、正広が声を上げる。
ふっ。
由紀夫は心の中で小さく笑った。
キノコの人は、本当に『キノコ』なんじゃないのか?というほどにひょろりとして、色白だ。キノコはキノコでも、シイタケではなく、エノキダケ。
それも、スーパーで売ってるパックではなく、そのうちの1本。
今すぐにでも茹でてやれるぜ!

「に!兄ちゃんってばぁ!!!」
「正広、動くなよ」
「兄ちゃんも動かないで!」

何!?こう見えて、実はこの辺りには地雷が!?
はっ!と自分と正広の間の数メートルをスキャンする由紀夫の目は、本当にセンサーがついているのか!?というほど鋭かった。
いけない・・・!
正広は焦った。
兄はただでさえ過保護傾向が強い。まして、自分の体のこととなったら、相当キレやすい。
このままではほんとにこのキノコの人を、茹でてしまうかもしれない!!
まず、兄に動かないように指示した正広は、キノコの人を助ける方法はただ一つだと、小さく深呼吸した。
「えーと・・・」
後ろに話しかけようとして、『キノコの人』じゃまずいだろう、と頭を振る。
「正広!?」
「だ、大丈夫かだら!兄ちゃん動かないでよ!?」
相手を説得する時は、ちゃんと相手の名前を呼ばないといけない・・・、ってテレビでゆってた、ような、気がする・・・。
昔見た、ネゴシエーター(交渉人)スペシャルみたいな番組を思い出しながら、正広はキノコの人の名前がなんだったか考える。
えーとえーと、キノコの人、キノコの人って、ずーっといってたけど、これってハムの人みたいってゆってて、なんでハムの人を連想したかっていうと、この人の名前が・・・!

「別所さん!」

「あれ、君も、僕の名前知ってるの?」
「知ってます。別所さん。いつもありがとうございます」
「正広、何ノンキなこと!」
「別所さん!」
兄のセリフを遮って、正広は凛とした声で言った。
「本気じゃ、ないですよね?」
「何・・・?」
本気って、おまえ、つかまってんじゃん!と思ったが、由紀夫は過保護気味とはいえ、正広を信用もしていた。
「いや、本気だよ」
キノコの人こと別所は、静かに答えた。
「僕は、本気で・・・」
「本気なんですか?」
「本気だよ・・・!」
「これでも?」

ぱしっ。

軽い音とともに、正広の両腕は自由になっていた。
「これ、本気の力ですか?」
「あ、あれ・・・?」
「ま、正広・・・?」
その時の正広は、仕事がたてこんで、忙しいー、忙しいぃーー!!って時に、千明から、ねーねー、ケーキ食べようよー、食べようよー、一緒に食べようよーーと腕をつかまれて、だめですよぅ、とやさしく跳ね除ける程度の力しか使っていないように見えたし、そして実際そうだった。

「・・・弱っ・・・」
「あああああ・・・・!」
由紀夫の言葉に、別所は崩れ落ちる。
「僕なんて・・・!あぁ、やっぱり、僕はもう・・・っ!」
すっかり色をかえた枯草の中で、地面を弱弱しく叩く、細すぎるその姿は、
「・・・ほんとにエノキみたい・・・」
ベージュのニットに、ベージュのパンツという姿は、まさしくエノキダケだ。
「早坂さん・・・!」
顔をあげた別所の顔は、涙で汚れていた。
「えっ!?」
驚愕する早坂兄弟。
「なんでおまえが泣く訳!?」
「さ、最後に・・・、早坂さんに会える、なんて・・・!」
「最後って・・・?」
さっきまで捕まっていたというのに、正広はおずおずと近づこうとして、由紀夫に阻まれる。
「どういうことだ?」
「もう、最後だから、早坂さんのものが、欲しくて・・・、でも、早坂さん、人にばっかり、花束あげたり、名刺あげたり、チョコレート上げたりしてるから!」
「ええええええーーー!!!」
「す、ストーカぁー・・・!!」
初めて見た、初めて見た!と思わずしげしげと観察してしまった早坂兄弟だったが、その対象が自分か!ということに慌てる。
「僕なんて・・・、僕なんて、もう・・・長く、ないのに・・・」
よよ!と泣き崩れた別所を、放置しておくわけにもいかず、仕方なく、小屋の中に運び込む。小屋の中も、キノコだらけだった。
「・・・昔、こういうマンガあったぞ・・・」
「そうなの?」
「押し入れあけたら、布団からキノコが生えてるってやつ」
「あ、布からでも生えるんですよ、それは、こっちの」
「見せなくていいぃーー!!」

いいから寝てろ!!

と、ベッドに放り込んだが、あまり清潔とは言えないような感じだった。
「・・・お正月なのに・・・」
お正月だからと、早坂家では、大掃除の際、家中の布類はすべて洗濯、もしくは新調した。ボーナスが出ていい気になっていたため、カーテンや、ソファカバーは買ってしまったし、布団カバーも、シーツも新品ピカピカだ。
しかし、この別所の子やは、きのこのせいか、なんとなーく湿気たイメージがある。
「・・・大掃除、しなかったんだね・・・」
「しなかったんだろうな・・・」
「掃除なんてやったって・・・」
か細い声がする。
「何度も言うようで申し訳ないんですけど・・・、僕、もう、先がないんです・・・。いつも、早坂さんを見て、いいなぁ、って思ってました・・・。こんな山奥まで自転車で一気に登ってきてしまうなんて・・・、なんて、イキイキしてるんだろうって・・・!」
今日なんて二人乗りだけど・・・。
早坂由紀夫のストーカーとして、その姿は見ていなかったらしい。
「都会は苦手だったけど・・・、どうしても早坂さんを見たくて・・・、降りていったんです・・・。そしたら早坂さん、サンタクロースだったんだって、思って・・・。そうですよね。僕、いつも届けてくださいってお願いしてたけど、ほんとは、届けてもらってたんだって思いました」
うっとりと、夢みてるような口調だった。
「僕は、最後に・・・、何かを、届けてもらいたくて・・・。あのお花でも、名刺でも、チョコレートでもよかったのに、花束しか、持ってこれなかった」
「・・・重かったろ」
「重かったけど・・・、でも、早坂さんが届けてものだったから・・・。名刺も、欲しかったのに、バックには入ってなかった。チョコレートは・・・・・・」
「あ!それはひどいじゃないですかぁ!草g先生が死んじゃったら!」
「し、死ぬなんてことは、ないです!自分で確認しましたからぁ!」
「え。飲んだんですか・・・?」
「もう、死にかけの僕が飲んでも平気だったんですから・・・あの人、疲れてたけど、健康そうな人だったし・・・、だからなんの・・・問題も・・・・・・」
「だからって、おまえ!」
吐き気は問題じゃないのか!と胸倉つかもうとする兄を、正広は止めた。

なんとなく、気持ちが解るような気がしてしまったのだ。
自分だって、この先生きられるのかどうか解らない時があって、なんだかヤケになってしまった時もあった・・・。
許しちゃいけないことだけど・・・。
「謝ってください・・・」
静かに正広は言う。
「ちゃんと、みんなに謝って、それで、病院にも行ってください」
「正広・・・」
由紀夫は、正広の横顔を見つめる。
静かな、深い情感を感じた。
「ぼ、僕は・・・!」
ううぅっ、と、またエノキ別所は涙にくれ、そして言った。
「でも、でも・・・!もう病院にいったって、手遅れだと思います・・・!僕はもう、ここで、キノコとともにいるしかないんです・・・!」
「どういう状態なんだ??」
「・・・キノコしか、食べたくないんです・・・」

「はぁ????」

「・・・だから、もう・・・!力もなにもでなくて・・・!でも、他のものを食べるのは、キノコへの裏切りのような気がして!でも!!早坂さんのチョコレートは食べたかった!」

「ただの偏食かーーい!!!」

こうして、冗談のような、エノキストーカー事件は幕を下ろした。
早坂兄弟は、いくらキノコにいい環境でも、人とキノコは違うぜ!とからっと!こざっぱりと!した空間を演出していく。
「21世紀まで生きているつもりじゃあなかったんです・・・」
「いるいる、そうやって、二十歳になる前に死ななきゃとか思ってるヤツな」
「ダメだよそんなことじゃあ。えーと、えーと。後はどうしたらいいのかな」
「とろみでもつければ?中華風にして」
「はーい」
由紀夫は、さっむい中、キノコを安全な場所に離し、窓を前回にして空気の入れ替えをしていた。正広は、キノコメインのお正月料理を、どうにか作ろうとしている。
今は、体があったまる、中華風キノコばっかりお雑煮を作り上げているところだ。
「はい、そっち持って!」
ベッドごと天日干しじゃあ!と、由紀夫はベッドを運び出そうとしたが、別所には、荷が、まさに重かったようで、フラフラしている。
「しっかりしろよ!自分のことだろ!?」
「お、重いですぅ!」
「キノコばっか食ってっからだよ!肉食え、肉!」
「猪とか出そうなのにねぇ」
出たからといって、捕まえて食べろというのか、正広よ。包丁の背を縦にして唇にあてている正広は、じーーっと山奥の方を見つめていた。

肉だ!正月は肉!
由紀夫がダッシュで買い求めてきた肉で、バーベキュー。一緒に焼かれる数々のキノコ!これぞ、山の醍醐味!
「た、食べられません・・・!」
「あれー、本当かなぁー?兄ちゃん、兄ちゃん、あーーん」
ぱかーーと、つばめの赤ちゃんのように口をあけた正広の口に、いい具合に焼けた肉を、ふーふーしてやって、入れてあげる由紀夫。
「ああああ!!!!」
「はーい、別所くん、あーんしてー??」
にっこりと、それは魅力的な笑顔を浮かべた由紀夫に、別所が逆らえようか!
あぁ!!早坂さんから、食べさせてもらえるなんてぇ!しやわすぇぇぇーーー!!
うわーーい!!と、口をあけたところに。
「えい、えい!!」
由紀夫と正広で協力しあって、肉やらキノコやらを放り込む。
「×◎■★・・・!!!」
「ダメ!!食べて!飲みこんでぇーーー!!!」
「出すなよ!!ぜってーー!!」
両脇から挟み、口元押さえつけ、無理やり食べさせて。
「ま、草gさんの恨みはこれくらいにしといてやるよ」
「・・・ず、ずみまぜんでぢだ・・・」
涙目だったが、果たして苦しかったからの、涙かどうかは、早坂兄弟には判別できなかった。
・・・ひょっとしたら喜ばせただけだったかも・・・。

「キノコしか食べられないんだったら、栄養価のあるキノコを作ったらいいんじゃねぇの?」
「早坂さん・・・!」
その後も、何度も同じことをやられ肉の大半を食べさせられた別所は、ウルウルしていた。
やっぱり・・・!
やっぱり、早坂さんは、届けてくれる・・・!21世紀にもなって、キノコに未来なんて、と思っていた僕に・・・!新しい夢を届けてくれるんだーー!!

「そしたら、もう山から下りなくても暮らしていけるからなーー!がんばれよーー!!!」
「はーーーい!!・・・って降りるなってことぉぉぉーーーー?????」

「変な年始・・・」
「正広、ほんと大丈夫か?」
「だって、千明ちゃんより、力弱いんだよ??ホントに死ぬんじゃなかって思ったよぅ!」
帰り道の神社で、パンパンと手を合わせた二人は、どうなんのかねぇ、21世紀。まぁ、ノンキな世紀になったらいいけどねぇ、などと語り合いながら家に帰った。
なにせ、元旦は、世にも奇妙な物語SMAPの特別編があるのだ。
これだけでも、正広はいい1年になる!と確信してしまうほどだった。

 

そして。

「ありました!!ありましたよ!ノイハウス!これですよねぇぇ!!」
最近のデパートは遅くても、2日は開けている。
稲垣アニマルクリニック院長の稲垣医師の自宅に、年始の挨拶にやってきた草g助手が持っていたのは、まごうことなき、ノイハウスのチョコレートだった。
「ノイハウス?が?どしたって?」
お正月はお着物ですごすのよん。うふふん。自分では着られないけどねぇん♪な稲垣医師は、不思議そーーな顔で、大きな箱を見つめる。
草g助手、一世一大の覚悟で買ってきた、5桁を下らない額のチョコレートだ。
「え、だって・・・ノイハウス、欲しいって・・・」
「・・・あぁ、20世紀の俺が、そんなことを言ってたかもしれないねぇ」
「・・・え!?」
「お正月にチョコレートって言うのはねぇ・・・」
「そ、そんな・・・!」
「やっぱり和菓子がいいなぁ。あれが食べたい。マスカット最中」
ええええ!!なんですとーーーーー!!!

どうする、どうなる、草g助手!がんばれ!21世紀は長いぞ!!


マスカット最中は、美味しんぼで出てきた、その場で作って、すぐ食べないといけないという大変なお菓子です。多分、草g助手には見つけられません。・・・大丈夫かなぁ、草g助手・・・(笑)
びっくりするほどバカバカしい話でしたが、がんばって欲しいですね、キノコの人(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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