天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編86話中編『栗を届ける』

甘栗食べたいなー・・・。前、甘栗ばっかり食べたら痩せたって人がいいともに出ていた気がする。
それで痩せたらいいよなー、甘栗

yukio
 

「だから矛盾してんじゃん!!」

翌日、11時前にウキウキと現れた奈緒美は、綺麗にネイルアートされた指先で、天津甘栗の鮮やかな赤い袋をぶら下げていた。
「何よ、矛盾って」
グッチのバックをデスクに置きながら奈緒美が不機嫌に振り向く。
「だから!なんで甘栗むいちゃいましたじゃダメなんだよ!」
「はぁ?」
あんたバカ?って顔をして、奈緒美は甘栗の袋をぶらぶらさせた。
「あの甘栗むいちゃいましたって、どうやって剥いてるか知ってんの?」
「あ!」
正広が声をあげる。
「あれどーやってんの!?」
兄の背中と、左右の野長瀬、典子を見た。
「え」

「ホントねぇ」
「俺、あれは知ってる!」
はい!と正広は手を上げる。
「缶詰のみかん!」
「何だよ、缶詰のみかんって」
振り向いて由紀夫は訪ねる。
「兄ちゃん、缶詰のみかんってどうやって作るか知ってる?」
「どうやってって・・・」
「ど!どうやるんですかっ?ひろちゃん!」
野長瀬が世紀の一大事!みたいな声をあげる。
「そうよねぇ。全部皮向くのなんて大変じゃない」
「ふふふふふ・・・」
正広は得意げに笑った。
「あれはね、酸を使うんだよ・・・!」
「サン!?」
「硫酸?」
「りゅっ、りゅうさんっ!?」
由紀夫の言葉に、野長瀬が驚いた顔になる。かなり恐い。
「硫酸って!硫酸ですか!?硫酸!?みかんの皮って硫酸で!?」
「うそぉ!硫酸なんかかけたらみかんが溶けちゃうでしょう!?」
「りゅ、硫酸じゃない!!・・・と思う」
あわあわと両手を振る正広は、もう!と兄を睨む。
「硫酸じゃないと思うけど、薄めた酸で薄皮だけ溶かすんだって!」
「えええ!でも、皮が溶けるようなもの食べたら危ないじゃないですか!」
「その後水洗いするんだよぅ!」
「じゃあ、甘栗むいちゃいましたも、酸なの?」
典子は真剣だった。
「・・・栗の殻が溶けるほどの酸なら、間違いなく実も溶けるだろ」
真剣だっただけに、真っ赤になった。

「じゃあねぇ」
放っておかれた奈緒美が、腕を組み正広に尋ねる。
「そもそも、そのみかんの皮を剥くのは誰なの?」
「え・・・」
だから、酸で、って言おうとした正広は、雷で打たれたように立ち尽くす。
一番外側の皮は!
一番外側の皮はどうやって剥いてるんだろう!
「・・・み、みかん剥きマッシーンが・・・!」
「えーー!!そんなもんがあるんですかぁぁーー!!」
「そんな細かいことができるロボットなんて、まだ出てねーだろーー!」
「どうやるんですか!?」
正広は、困り果てた顔で奈緒美に尋ねる。上目遣いのお願いフェイスは奈緒美のお気に入りだったので、ご機嫌をちょっと直して笑顔になる。
「それはね」
「それは?」
「知らないけど、甘栗は」
「えーーーーー!!知らないんですかぁぁぁーーーーー!!!!」
「社長ーー!じらさないで下さいよぅーーー!」
「だから!!私はそもそも甘栗の話をしてたんでしょうが!!」

えー?そうだっけぇ〜。

腰越人材派遣センター社員一同は、会話の流れを遡っていく。
「あ、そうだそうだ。だから、矛盾があるじゃんって言ったんだよ、俺」
「そう!兄ちゃんが剥いた甘栗食べるんだったら、甘栗むいちゃいましたでも一緒じゃないのって」
ちっちっちっ。
奈緒美が指を振る。
「だぁかぁらぁ。甘栗むいちゃいましたの作り方を知らないのかって聞いてたのよ」
「作るのは一緒だろ?なんか、丸いドラム管みたいなヤツで、ぐるぐるやって」
「ほんっとに口の減らない男ねぇ!『甘栗』じゃなくて!『甘栗むいちゃいました』の作り方ってゆってるでしょーがぁー!」
口は一つしかありませーん、みたいなことを由紀夫は言わず、ふと、考えてみた。
甘栗むいちゃいました、の作り方・・・。
「・・・何かで、剥いてんだよな、殻」
「えーと、えーっと・・・!殻と殻をこすり合わせる!」
「こすり合わせる?」
「なんか、入れ物にいれて、高速で回転させんだよ。そしたら、削れるんじゃない!?」
「削ってんじゃねぇだろ、あれは!」
「ふふふふふ」
奈緒美が高みから見下ろす口調で笑い出す。
「あんたたちも、まだまだね」
「しゃ、しゃちょお!」
見下ろされなれている野長瀬は、それだけですごい!と思ってしまうのだ。
「削ったり、溶かしたりじゃあ、あの形は残らない!甘栗むいちゃいましたは、まさしく、甘栗をむいて作るのよ!」
「だから何で剥くんだよ!」
「人に決まってるじゃない」

 

「・・・えーっと。あ、電話しなくっちゃー」
「あ、銀行、銀行〜」
「あれー、チャリのタイヤ、空気入ってたっけなー」
「もしもしー、腰越人材派遣センターでーす」

「聞けーーーー!!!」

「なんだよ、人が剥くってよ!!」
きしゃーーー!!しゃぎぃーーーー!!にらみ合う奈緒美と由紀夫。
「人が剥いてんのよ!中国で!」
「ちゅーーーーごく!!なんだ!ガレー船の奴隷みたいに、ひたすら甘栗剥かされてる中国の可愛いクーニャンがいるとでも言うのかよ!」
「なんで可愛い女の子だって決めつけるのよ!」
「で、でも、おっさんじゃあ、イヤでしょう・・・」
おずおずと野長瀬が言うと、鬼の首でも取ったかのように、奈緒美が高飛車に決めつける。
「そうでしょう!?おっさんが剥いた甘栗はイヤでしょう!?」
びしぃ!と、奈緒美はまだ残っていた甘栗むいちゃいましたのパッケージを社員の前につきつける。
「この中に入っている甘栗は、私の知らない『誰か』によって剥かれたものなのよ!甘栗のロマンってそうじゃないでしょう!?こたつ。その上に、みかんと甘栗。ねぇ、みかんを剥かずに中の房の数を当てる方法、知ってる?はは、何言ってんだよ。ほら、甘栗食べなよ。あ、知らないんだぁ〜。じゃあ、おまえこそ、甘栗の上手な剥き方知ってんのか?えー、知らなぁ〜い・・・。ほらな、おまえ、何にも知らないんだから。あっ、でもでもっ。知ってることあるもん!みかんの房の当て方かぁ〜?ううん。あなたが、私のために、とっても上手に甘栗を剥いてくれるってこと・・・・・・・・・・・・・・」

奈緒美の一人芝居の間に、社員たちは、それぞれの仕事に戻り、精力的に業務をこなしていた。

「皮を剥かずにみかんの房の数を当てる方法って、何かな」
その日も、結局、延々甘栗の皮を剥かされた由紀夫に、正広が訪ねる。
早坂家にはこたつがないので、みかんは、ソファ前のローテーブルに転がされていた。
「何、おまえ知らないの?」
由紀夫の爪は、柔らかいみかんの皮すら拒否するので、由紀夫の前に、白く剥かれたみかんが置かれる。
「知ってるの?」
早坂兄弟は、みかんの白い筋をイチイチ取るような女々しい兄弟ではないため、そのままぱかぱか口にいれる。下手したら、3ふさくらい1度にいれて、豪快に食べる。
「そこ、取るんだよ。へたのとこ」
「ここ?緑の?」
「そう。そしたら、中に白い点があんだろ。それ。房の数」
「へー!そーなんだーー!じゃあ、これ、は、13だ!ね?正解?」
急いで皮をむいた正広は、由紀夫にそのみかんを渡して数えてもらう。
「お。正解」
「そっか。それだけなんだぁ〜。あ、でもさぁ、甘栗むいちゃいましたって、ホントに人が剥いてんのかな・・・」
「まぁ、そう考えるのが一番自然だけどな。人じゃなきゃ、あぁは剥けないって気がするし」
「だから、誰が剥いたかも解らないものは、食べたくないってこと?」
「あいつがそんな神経質な女かぁ?」
「でもさぁ」
みかんも食べあきた正広は、チョコレート食べたいなー、などと思いながら、言った。
「あの甘栗、美味しかったよねぇ」
最近、新作と見ればチョコレートを買ってしまう弟の目線が、チョコレートを向こうとしているのを察し、チョコレート入れ(可愛い文鳥柄のボックス)を取り上げた由紀夫はそうだなと頷く。
「あの甘栗上手い。確かに。個数食ってねぇけど」
剥くそばから食べられてしまうので・・・。
「暖かいまま持ってくるってことは、近所なんだよね?」
「奈緒美のマンションから、事務所までの間なんじゃねぇの?」
「・・・でも、奈緒美さん、今日は野長瀬さんに迎えに来させてなかったってことだよね」
「・・・秘密の甘栗屋か?」
キラン☆
キラリン☆
「それは探さないとなぁ」
「美味しいものは、みんなで分け合わないとねぇ」

「・・・だからって、おまえ、どこに手をいれてんだよ・・・っ」
「じゃあ、兄ちゃんこそっ、それ、どぉするつもりなの・・・っ!」
「どうもしねぇよっ、何時だと思ってんだよっ」
「いたたっ、いいじゃんっ、それくらいっ!」
「いいから、手ぇ離せってのにぃ!」

新作チョコレート入り、文鳥柄BOXの取り合いは、深夜まで続いた。

つづく


暴露します。
赤い怪獣は、今、チョコレート中毒です。
めちゃめちゃ食べてます。
自分が食べたチョコレートをHPに載せようかってゆってましたけど、そんな人間じゃあもちろんなかったのです。だって怪獣だから(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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