天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編87話『・・・を届ける』

バレンタインが来週には来ますね。ジャストバレンタイン。何が書けるのかしら♪いや、自分でもさっぱり解らないですが(笑)

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「あ。あれ?」
由紀夫の顔を見上げて、かなりインパクトのある顔をした受付の男は目をぱちくりさせた。
「な、何してるんです、か?」
「・・・は?」
何を言われているのか解らなかった由紀夫は、
「届け物です」
と普通に答える。
「珍しいカッコ、してます、ねぇ」
その日の由紀夫は、新作!と持ってこられたグッチで全身を固めていて、そりゃ、届け物するのにこのカッコは珍しいだろうと思う。
・・・怪しいかな・・・。
「あの、怪しいもんじゃ・・・」
「あ、はい。それは。どうぞ」
しげしげと上から下まで眺められ、なんだろ、と思いながら執務スペースへ向う。
正面にテレビがあり、部屋の周囲にいくつかドアがついている広めの部屋だった。
人は誰もおらず、どうしようかと思った由紀夫は、とりあえず奥の部屋にも届くだろう声で
「お届ものですー!うわっ!」
言った途端、恐ろしい勢いで5つあるドアが全部開き、全部から人の顔がのぞき、その圧力で由紀夫は思わずのけぞった。

東京地検城西支部のエースと言えば、江上。
由緒正しい家に育ち、由緒正しい学校に行き、由緒正しく検事になった彼は、エースと呼ばれることに、実はあまり慣れていなかった。
江上家のエースは、兄であり、姉であったから、末っ子江上の影はちょと薄い。
でも、やっぱり僕は大器晩成だったね、おばあちゃま。
今も、健在な母方の祖母から江上は大層可愛がられて育ったものだ。
その、おばあちゃまの可愛い江上は、今。

恋を、している。

恋。嗚呼、その甘美なる響き。
美しの君よ。
知性的な眼鏡に、薔薇色の頬。
陶器のように滑らかで、けれど、ぷちゅぷちゅとした、あの頬・・・!
君にぴったりのプレゼントが、今まさに、ここに届こうとしているんだよ!

東京地検城西支部の芝山は、実際のところ、とても優秀な検事だ。
部長は、江上のバックグラウンドを見てエースと呼ぶけれど、真のエースはこの俺。と、芝山は確信している。
学生時代はモデルのバイトをしたこともある長身男前。
裁判の時も、芝山の押し出しの強さは、その事件自体を支配しているかのように見えた。
なまじな弁護士では相手にもならない。
ふっ。さぞかし、犯罪者や弁護士から怨まれてもいようが、それこそもステイタス。いつか、有名タレント弁護士になるための、第一歩!
そんな野望を持っている芝山は、今。

恋を、している。

恋。嗚呼、その甘美なる響き。
麗しの君よ。
確かに俺は君ではない女と婚姻を結んでいる。けれど、この恋心は、止めることはできないのだ。なぜって。この恋心は、俺が自由にできるものじゃあ、ないから。そう。
もう、この恋心は、君の自由になるものなんだよ。
君、美しきアマゾネス。
闘わない女に、なんの魅力があろうか。
アマゾネスの虜となった哀れな魂は、ただ、君の周りを光に群がる虫のように飛ぶだけだ・・・。
けれど、たかが虫であっても、君へのプレゼントを用意するくらいのことはできるんだ。今まさに、それは届こうとしているはずだ。

東京地検城西支部の中村は、城西支部唯一の女性検事にして、起訴率ナンバー1の攻撃型検事だ。
あぁ、あたし、朝は弱いの・・・。えぇ、カフェオレだけ、いただくわ・・・、的ルックスをしていながら、ひとたび取り調べとなれば(いやならなくても)、表情も変えずに、刃物のような言葉を投げつけてくるあたり、実は、ある種の性癖を持つ犯人たちには、どうせ取り調べられるならあの人に・・・!とまで思われているらしい。
趣味の一つは、「拘留期限の延長」
柔らかなスーツに包まれた中村は、今日もバッサバッサと男たちを、女たちも、切って切って切り捨てて、明日も切って切って切り捨てるだろうし、昨日も切って切って切り捨てた。
そんな、切り捨て御免の中村は、今。

恋を、している。

恋。嗚呼、その甘美なる響き。
愛しのあなたよ。
マヌケなところも、こずるいところも、まとめて全部愛しいあなた。
あなたが子供に向ける、その無償の笑顔に、憎さや、愛しさが爆発してしまうことがある。
でも、あなたは気づいているかしら。
私が、本当は、子供のように傷つきやすい心をして。

いるかもしれないってことを。

えぇ、それは私にも解らないことなのだけど。
あなたのくれるプレゼントには、時々マニュアルの匂いがするけれど、これこそ、プレゼントというものを見せてあげたくなったの。早く、驚くあなたの顔がみたいわ。

東京地検城西支部の部長である牛丸は、有能かつ個性的な部下に囲まれ、今日も快調に仕事をしている。
・・・とは言いがたかった。
これが、中間管理職の悲哀なの・・・?
と、時々お星様に問い掛けたくなる牛丸だが、部下はともかく、上司には恵まれているんだからまだマシだろうと思われる。
基本的には部下を信頼し、そして、自分は胃の痛みに耐えている牛丸は今。

別に恋はしていない。

牛丸は、これで結構愛妻家で家族思いだ。
ま、強いていうのなら、
『今もまだ、妻に恋をしている♪』
といった感じだろうか。
しかし、そんな彼は今、じっと待っていた。今日、届くはずなのだ・・・。あの、憧れのブツが・・・!

東京地検城西支部に今年になって赴任してきた、久利生公平は、『型破り』な検事といわれている。
とりあえず一般的なドレスコードという言葉は、彼の中に存在しない。
動きやすい、仕事がしやすい、服を選ぶ基準は、そういうことろにあるため、検事のバッチをつけるにつかられる持ち歩きをすることも多い。
そして彼は無類の通販好きだ。
テレビの通販番組は欠かせない。実は通販生活も、定期購読をしている。1度くらいは、フェリシモもとってみたいなぁ、とかも考えている。セシールもいいかなぁ、とかも思っている。
そんな、通販好き検事、久利生公平は、今。

もしかしたら、恋を、している。

目と目が合って意気投合。今日は楽しく遊びましょう〜♪的な付き合いが大好きなのに、仕事中でもなければ食事も一緒にできない女の子に、恋を、しているかもしれない。
どうしてなのかなぁ。
なんでか気になるなぁ。
本を読みながら俯いて歩いていて、壁にぶつかっているのに気づかなさそうなところが気になるのかなぁ。
気になるってことは、好意の始まりだもんなぁ。
そんなフワフワした気持ちを、久利生は、素直に楽しもうと思っている。これから先、もうグッチャグチャ!のドッロドロ!のすんごい騒ぎになるかもしれないけれど、でも、それすら楽しいかもしれない。
そんな久利生も、届け物を待っていた。
別に、なぜか気になる女の子に贈るプレゼントではない。
もちろん。
通販の品物だ。
なんでも落ちる、しかも、手肌にも環境にもやさしいあの固形洗剤♪歴代の検事によって、おそらくはヤニ色になっているであろうこの壁が、どんなに綺麗になるのかと想像しただけで、通販魂と、お掃除魂に火がつくぜ!

「お届ものですー!」

来た!!!

江上は。
芝山は。
中村は。
牛丸は。
久利生は。
一気にドアを開け、
「うわっ!」
という悲鳴に迎えられた。
「え!?」
江上が周囲を見る。
「いや、これ僕が・・・」
「いや、俺だろう」
「芝山さん?違うわよ、私が頼んだものでしょう?」
「あれ?でも、今日の午前中にくるって・・・」
「部長も頼んだんですか?あれ?それって、洗剤じゃないの?」

5人から口々に言われ、由紀夫は荷物に目を落とす。
大丈夫、ちゃんと受取人の名前は書いてある。この中の誰かだろう。
「すみません、末次さんって・・・」

「はぁ〜い」

左の手前のドアから出てきた、ひょっとして歌舞伎で女形とかやったら似合いそう?な中年の男がウキウキと出てくる。
「あぁ、届いた、届いた」
「す、末次さん!?それ末次さんの荷物なんですかっ?」
「そうです。末次さんに。えっと。・・・ダンスシューズ・・・?」
内容のところを見ていなかった由紀夫の目線は、その届け物と、ニコニコ微笑んでいる末次を何度か往復する。
「社交ダンスをやっているんです。いかがですか?」
「あ、俺は・・・」
「なんで末次さんなんだよー!」
絶望している5人だったが、由紀夫が持ってきたのはこれ1つ。
恐る恐る受け取り用の写真を取り、急いでその場を後にした由紀夫だったが、それからすぐに、この東京地検城西支部に足を踏み入れることになる。
それを、由紀夫はまだ知らない。


江上が末っ子かどうかも知りませんし、牛丸の家族のことも知りません(笑)バックグラウンドは調べてないのさ!おっとこまえ〜♪
今度は直江先生にも出てもらうんだ♪

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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