天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編92話後編『証人を届ける』

HERO最終回ほんとよかった!8月にはスペシャルも!!もーー!しやわせーー!しーやわせぇぇーーー!!

yukio
 

「あれ?江上さんは?」
速攻で出かけただけに、ダッシュで戻ってきた久利生は、がらんとした部屋を見て雨宮に尋ねた。
「久利生さん、次これです」
てきぱきっ!と荷物が渡される。
「え?」
「江上もお届け中ー」
地図を見て、ここ、と印をつけた中村が顔を上げた。
「え、いいの?末次さんは?」
「末次さんのとこには、芝山さんが行ってるんです」
「江上ったら、舞いあがっちゃって。一番遠いところの荷物持って、バイクですっとんでったの。・・・遠藤遅いわね」
「久利生さん、何してんですか?急がないと」
「あ、うん。じゃあ、早坂さんは、芝山さんと?」
「行っていただいてます」
早く行け!という女性二人の睨みの前に、そそくさと部屋を出た久利生だった。

『末次さーーん!どうしてなんだ、末次さぁーーん!』
江上はまだ錯乱していた。
錯乱しながら、バイクを走らせていた。
江上にしてはスピードを出している。江上は、こう見えて安全運転な男だ。
しかし錯乱しているので。
「どこだここ!?」
迷っていた。

警察の中を歩く由紀夫は、どうしても居心地の悪さを感じる。何度も来たことがあるけれど、消して気分のいい場所ではない。
「あぁ。すみませんね」
芝山が由紀夫の表情を見て言った。
「馴れない場所で」
「あ、いえ」
馴れてはいるんだけどもね、と由紀夫は内心で付け加えつつ、神妙な顔をする。多分、久利生と自分なら、確実に自分の方がお世話になった経験は多いだろうと思った。
「芝山検事!」
「あぁ、どうも。昨日の事件のことで、ちょっとお話が」
顔見知りをつかまえて、芝山が高い位置からにっこりと微笑む。
言うこと聞かなかったら頭からバリバリ食うぞ、と言っているように由紀夫には見えた。

『どこ!ここ!』
「江上さん・・・」
順調に届け続けていた久利生は、江上の電話に脱力した。
「ここはぁー・・・」
と周囲を見まわしても、それはもちろん、自分の周囲。電話の向こうの江上がどこにいるのかなんて、神ならぬ身の久利生に解るはずもなく。
「江上さん、近くになにがあります?」
『コンビニ!?』
都内にコンビニがいくつあると言うのか・・・。でも、念のため、聞いてみる。
「コンビニって、どの?」
『7−11!』
セブンイレブン・・・。果たしてどれくらいあるのか・・・。
「いや、あの。もうちょっと、解りやすい・・・。ビルとか、見えません?」
それに、久利生は都内に来てまだ日が浅いのだ。

雨宮に聞いてくれればいいのにと思ったけれど、そりゃ、好きな女に、道に迷ったとかは聞きにくいかと協力してあげようと、携帯を持ちなおした時。
『あ。地図あったわ。悪いな、久利生選手』
ブチ。
つーつーつー。

「・・・俺、今、末次さんの気持ち、なんか解った気がする・・・」

街角によくある周辺地図を見つけて、やれやれと側に寄っていく江上はようやく自分の現在位置を確認することが出来た。
「目的地はここで・・・、ん?ここ、が?あれ?ん?あれっ?」
江上は落ちついていても、十分に方向音痴だった。
そんな彼が無事に現場につけていたのは、末次の導きがあってこそ・・・!
「すっ、末次さん・・・っ」
末次さーーん!!と再びバイクを走らせる江上だったが、残念なことに。
真北に向かっている!と江上が選んで走り出した道は、緩やかにカーブを描き、むしろ東へ向かっているのだった。

「え?そうそう。いや、気分転換。そうなんだよ。どうしてもって、古くからの友人に頼まれちゃってさ。でもよかったなぁ、こんなに可愛い子がいるなんて。受けつけの子より可愛いよね」
『東京地検城西支部検事』でありながら、友人のために、荷物を持ってきてあげたりするんだよ。俺って、エリートだけどフレンドリーだろ?と、遠藤はアピールしていた。
「もー、検事さん嘘ばっかり!」
荷物を受け取ってくれた女の子は、確かに可愛かった。
「その笑顔が可愛いよねぇ〜」
こうして散々盛りあがった後、合コンしようねと約束までした遠藤は、帰った後、遅い!と中村からこてんぱんに叩きのめされることをまだ知らない。

「ちょっと雨宮。まずいわよ」
「まずいですね、美鈴さん」
こうして、江上と遠藤が脱落中の今、荷物を運んでいるのは久利生一人になっていた。
本来、由紀夫が一人で届けられるものだが、それは、都内の道を知り尽くしている由紀夫だからできること。久利生にはハンデがある上、帰ってこない二人の荷物がどうなっているのかまでフォローさせられるおそれがあった。
「こうなったら・・・」
「こうなったら?」
すっく!と中村は立ちあがり、部長室のドアをノックする。
「え!美鈴さん!部長に!?」
「部長!」
「へっ?」
書類に埋もれていた部長が顔を上げる。
「車貸してください!」

「い、いってらっしゃーい・・・」
城砦支部支部長用の高級車に、リッチなコートを着て乗り込む中村を、雨宮は呆然と見送った。
「早坂さんが、あんなだから・・・」
高級スーツで、たっかい自転車を乗り回している由紀夫に対抗意識を燃やしていたらしい。
「おー、雨宮、って、今の美鈴さん!?」
ちょうどそこに帰ってきた久利生がぎょっとしたように黒塗りの車を見送る。
「あ、よかった。久利生さん、次がですね」
実質、たった一人で働いている久利生は、疲れた様子も見せず、次の荷物を届けに向かった。

そして末次は。
警察の取調べを受けていた。
「家に帰ったのが何時ですか?」
「え、っと、1時、ごろだったかなぁ〜」
「家族以外に、それを証明してくれる人は?」
「・・・家族もいないので・・・」
しょんぼりと座っている末次は、なんだか哀れを誘う。おまえがやったんだろう!なんて言ったら、すぐにやったと答えそうに見える。
まだ、経験の浅い刑事は、そう言ってみたい衝動にかられた。
少なくとも、目の前にいる、この男は一番の容疑者なのだ。
自白さえ取れたら・・・!
「おまえがやったんだろう!」
ばん!!と机を叩いて言ってみたら!
「やってません!!!」
3倍くらい強く言い返されて、きゃいん!と尻尾を丸めてしまう羽目に陥った。
末次、よわっちい外見の割に、これが意外としっかりもの。

「そうです。あの人」
その取調室の外。マジックミラーで繋がった部屋で、由紀夫は頷いていた。
「昨日と同じコートですね、えりのここんとこ、汚れてるでしょ、あれ」
机に置かれているベージュのコートを指差す。
「スーツは、上は見えなかったけど、ズボンの方は同じじゃないかな。靴も」
「そんなことまで覚えてるのか?」
刑事はもちろん、連れてきた芝山も驚く。
「同じのを何本も持ってたら解らないけど、でも、柄は間違いないし、靴も。ちょっと縦結びになってるでしょ?あれ一緒ですよ」
小さいところまで、由紀夫の頭には鮮明に蘇ってくる。
「・・・だから。あのコートなり、靴なりから、何かが出てもいいんですよね?」
芝山を見上げて由紀夫は言った。
「被害者は後頭部を殴られて、血も流している。同じコートなら、そういう反応が出ても不思議はないか」
「靴も、足跡とかもあるんじゃないんですか?」

「あれぇ〜??」
江上はまた道を見失っていた。
真っ直ぐでつけるはずのところだったというのに、念のために住所を確認してみると、またもやまったく違う地名になっている。
指定された時間までは、後30分。どれくらい離れているのか解らない。
今度こそもうダメかもしれない。
江上は携帯を取りだし、誰かに助けを求めようとして、その手を下げた。
ぴっ、と電源を切る。
「いや、やれる・・・!」
いつもいつも、誰かの助けを求めてどうするんだ!江上!
コンビニで都内の地図を買った江上は、そのコンビニの場所と、目的地をチェックする。江上は、こう見えてもIQが低い方じゃない。ただ、方向音痴なだけだ。
なので、独自の解決方法を今編み出した。
道の数を正確に数え、何本目を曲がるか、ということだけを覚えるのだ。
普通の人間のように風景などをあてにしても、方向音痴には無駄だ。後は地図を信じるのみ!
「3本目、右。2・3・・・・・、7本目、左。次が、三叉路か、一番左。これが五本目。後は道なりで、えー・・・っと、22本、か。22本で、もう1度右・・・」
末次を助ける仕事は、早坂由紀夫に頼んである。
自分は、由紀夫の仕事を助けるのみ!
末次がいないからといって、道に迷ってどうする!城西支部のエース!江上達夫!!
交差する道を、一つ一つ数えながら、頭の中のメモを実行していく。
そして、奇跡的に、江上は荷物を届けることができたのだった。
やりとげた・・・!
俺はやったぜ!さすがだ!エース江上!!
お坊ちゃん検事江上は、自ら考えついた方向音痴克服方が気に入ったため、城西支部にも最短距離で帰りついてやるぜ、と同じ方式で道を数え、きちんと覚えてバイクをスタートさせたが、残念なことに、そのうちの1本は、工事中で見えなくなっていた・・・。

「あれ!?末次さんっ!」
「江上さん!」
「よかった・・・届いてた・・・」
そのため、江上がぼろぼろになりながら城西支部に戻って来られたのは、7時を回り、全員がぐったりと待っていた。
「あれ!?もう末次さん帰ってたの!?あれっ?」
「もー、江上さん、何やってたんですかぁ!」
雨宮が声を上げる。
「末次さん帰ってきましたって連絡しようとしても携帯電源切ってるし!」
「どこいってたんすかぁ〜?」
「え、荷物・・・。あ、届けたから」
「はい。確認しました、どうもすみません」
由紀夫もぐったりした様子でサインをいれてもらった受け取りを貰う。
「携帯?俺、あ、電源切ったままだった」
「もー、何やってんだよぉ〜」
呆れたように芝山は立ちあがり、帰っていく。

「ほーんと。どーなのよ」
そのすぐ後を中村も出ていったのだが。その後二人がどうなったかは、誰も知らないことだ。
「け、結局、どうなった、の?」
「末次さんの靴なんですけど、被害者が倒れていたところの土が全然出てこなかったんですよ。そのうち、被害者のカード使った犯人が捕まっちゃって」
「あ、はい。そうなんです。彼女、電話がかかってきて、もう公園のすぐ外でマンションだからって言うんで、そこで分かれたんです」
「あ、そうなんだぁ・・・」
「だから、俺の証言とかなくても、まぁ、すぐ末次さん、帰ってこれてたんで・・・。かえってご迷惑かけてすみませんでした」
「いや、あぁ。よかった、よ。うん」
やれやれとソファに座った江上は、ほうけたように、よかった、よかったを繰り返していて、末次は、あぁ、江上はこんなに自分を心配してくれてたのか、と、少しジーンとする。
「そだ、あの」
帰りかけてた由紀夫は、江上に言った。
「末次さん、ショールーム見てたって言ってたじゃないですか」
「え?」
「あ、は、早坂さんっ、それっ」
「バイクのショールームでしたよ」

「えぇ?」
全員の目が集まって、末次はおろおろと手を振る。
「いや!一度乗せてもらったら気持ちよかったから、免許とったら、自分でも買おうかなぁって・・・」
雨「末次さんがバイク!」
く「江上さんとツーリング!?」
遠「江上さんと再婚!?」
部「媒酌人は俺!?」
江「なんでだよぉ!!!」

やっぱりやだ。
東京地検城西支部・・・。

強く思った由紀夫だった。


江上ったら、方向音痴過ぎるわ!!・・・多分(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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