天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編93話『荷物を届ける』

引越しをしました。全然終わってないけど。寝泊まりは新しいところでしまして、旧居はまだ荷物がどっちゃり・・・。
運送屋さんも帰り、がっくりしていた私に赤い怪獣がメールをくれました。
「引っ越し終わった?テレビは見られる?御近所にソバ持って行った?」
まぁ、なんて優しいのかしら。テレビはまだ見られないのよ、オール砂の嵐。近所にソバなんか持ってかないわよ。うふ。しかし。

「明日のギフトは更新される?おかあさんは心配です…。」

おまえの心配、それだけかーーーーい!!!

なので、今日も無理やり更新っす!

yukio
 

「千明ちゃんが引越ししたんだって」
「は?」
「引越し」
金曜日の夜、正広が言った。
「引越しって、どこ?」
「んっとねぇ」
バッグの中からメモを取りだし、はい、と由紀夫に渡す。
「ん?前んとこと近いじゃん」
「明日遊びに来てねって言われたんだけど」
「・・・やめとけ」
「なんでぇ?」
「そんなの片付け手伝わされんに決まってんじゃん」
「あ、そっか」
と答えたものの、正広はもう約束をしていた。
というか、させられていた。
ケーキ持って遊びにきてね!や・く・そ・く!とからめられた小指は、折れる!というほどの力で上下に激しく振られた。

「ん、でもぉ・・・」
だから仕方なく正広は言う。
「行ってくる、約束したし・・・」
約束は守らなくては!という正広の精神は非常に高潔なものであったけれど、相手は千明・・・。
俺はいかないからなっ!と言いながらも心配な由紀夫だった。

ぴんぽーん

「いらっしゃーい!」
「うわ!可愛いー!」
「あたしぃ!?」
千明が満面の笑顔で自分を指差すものだから、一瞬黙った正広は、うん!と折れよ!とばかりに首を縦に振る。
確かに千明も可愛かった。
ミルクティーカラーの髪はくるんと大きくカールされ、家の中だというのにマスカラもばっちりだ。ネイルアートされた爪もちょっと長目で可愛らしい。
「何?どっか行くの?」
「行かないわよぅ。ひろちゃん、待ってたんじゃなーい」
入って、入って、と言われる玄関からして可愛かった。ドアが開いた瞬間、可愛いー!と言ってしまったのは、視界に飛び込んできたピンクの洪水のせい。
「ピンクだねー」
「やっぱり、インテリアに必要なのは、統一感かなと思って」
ワンルームマンションのため、ドアをあけると全体が見渡せるので、それを避ける為のシェードがピンク。下駄箱もピンク。冷蔵庫までピンク。
「すごーい。これ、塗ったの?」
下駄箱に触ると、そういうシートがあるんだと言われた。
「あ、そうなんだ。すごいなー。あ、これ、ケーキ」
「わいっ!ありがとー!お茶にしよっか!」
ピンクの小さな丸いテーブルは、座卓というのにふさわしいサイズで、ピンクのカーペットの上に、ピンクのクッション。それぞれの色合いが違うから、頭痛いって感じではない。
ふわふわした感じで、可愛いなぁ。
あちこちきょろきょろ眺めながら正広が座っていたら、あ!と千明の声がした。
「どしたの?」
「忘れてきたぁ・・・」
「忘れた?」
「これー!この蓋がなーい!」
「蓋?」
千明が持っていたのは、ピンクの丸いポット。それで紅茶をいれようとしていたらしく、ピンクのマグカップからは、ティーバックのひもが、てろん、と見えている。
「忘れたって、前の部屋に忘れたってこと?」
「だと思うのよぉ〜・・・」
しょんぼり、と千明はうなだれた。せっかくお茶をいれようとしてるのに、ポットに蓋がないなんて・・・。

そのしょんぼりさには、別にティーバックなんだし、気をつけていれたら大丈夫なんじゃないの?とは口に出せなかった正広は。
「取りにいってこようか?」
なんて言ってしまうのだ。
「えー・・・、でもー・・・」
「いいよ、だって近いんでしょ?」
「うん。そうなんだけどぉ・・・」
ぐずぐずと言っていた千明は、ぐずぐずとポケットに手を入れ、さっ!と鍵を差し出した。
「じゃあ、これ・・・」
「あ、うん」
受け取った鍵を持ち、部屋への行き方を聞いたら、本当に近いんだなということがよく解る。
「ごめんねひろちゃん」
玄関先で千明は手を合わせる。
「もし、他に忘れてるものあったら・・・」
「うん。チェックしてくる」
ニコ、と微笑み合い、ドアの内と外に分かれた二人だったが、2分後の正広の顔に笑顔はなかった。

「・・・・・・・・何。これ・・・・・・・・」

千明の前の部屋に、確かにピンク色をしたポットの蓋はあった。本体よりも、濃い目のピンクで、千明が手にしていたポットにかぶせると、それは可愛い丸さだろうなと思う。
けれど、その蓋を片手に、正広は小さく震えていた。
忘れ物があったら持ってくるどころの騒ぎではない。
千明の部屋には、ついさっきまで千明がいたんじゃあ?と思えるほど、大量の荷物があった。
しかも、使われてた状態のまま。

「引越ししてないじゃん!千明ちゃん!!」
『したわよ〜。だって、あたしは移ってるじゃない』
「どーすんのこれ!この荷物!捨てるの!?」
『違うわよぅー!一人で運べなかったからぁ〜』
「だって俺だって一人じゃ無理だよ!」
「一人じゃないわよ」

携帯で千明と話していた正広は、すぐ後ろに千明の生声を聞く。さっきまでの綺麗な髪、綺麗な顔はそのままだったけれど、爪は短くなっている。どうやら付け爪だったらしい。
さらに、体にピッタリフィット!というTシャツ、パンツだったのに、今はジャージの上下に。
「・・・俺、手伝うの・・・?」
「お願い・・・。この部屋、今日中に明渡さなきゃいけないの・・・」
「無理だって・・・」
「大丈夫。ひろちゃんが、電話一本かけてくれれば・・・」

『だから言っただろうがよーーー!!』

普通に話してた正広も、耳をくっつけていた千明も、きゃーー!!と腕を伸ばして携帯から耳を背ける。

「ご!ごめん!でも、今日中なんだって!それで、千明ちゃん兄ちゃんだったらできるって!」
「多分、昔の由紀夫なら、いらない女を切っては捨て、切っては捨て、してたと思うのよ!だから、捨てる技術を持ってんじゃないかと思って!」
『余計なこと言ってんじゃねぇ!』
「あ!食っては捨て!?」
「うわ、兄ちゃんったら、大人!」
『じゃあな』
「あーん!ウソウソー!由紀夫おねがーい!千明ちゃんのお部屋に、荷物を届けてよぉーん!」

結局千明は、持っていくものと、捨てるものが決められなかったのだ。
結構ものを大事にする千明なので、服も靴も、雑貨も、山盛り持っている。
「捨てろ!」
「えー!でもこれ可愛いしー、あんまり着てないのにぃー」
「だから捨てろっつってんだよ。それ着てるの見たことねぇもん」
鬼の形相で由紀夫が言うと、千明はうっとりと由紀夫を見上げた。
「覚えてるの・・・?あたしの着た服」
「覚えちゃうんだよ!覚えたくなくても!」
これもゴミ!と投げられるワンピースを、正広は広げたゴミ袋で受けとめる。すでに、服だけで3袋になろうとしていた。
「あ!あ!何すんの!」
「こーゆーアクセサリーとか、まだ使う訳?」
「だって可愛いじゃないのー!」
「もう花なんて流行ってねーだろー!」
「えー!だって可愛いのにー!」
髪につけていた花飾りも、ぽんぽん捨てられる。雑貨のほとんども捨てる方に回された。
「いやーーー!!もったいないーー!!」
「正広」
「何っ?」
ポンポン投げられるゴミ行きのブツを、とりあえず燃える燃えないで分別していた正広が顔を上げる。
「こいつの新しい部屋ってここより広い?」
「んー?ちょっとは広いけど・・・。でも」
「ゆわないでーーー!!!」
「収納があんまりない」
「じゃ、これも捨て」
「きゃーーーー!!」

「おまえこれ!」
「えっ、何っ?」
ゴミ袋をかかえて、ごめんね、ごめんね!と謝っていた千明は、玄関からの由紀夫の声に顔を上げる。
「これと、これ、どう違うんだ?」
由紀夫の左右の手には、寸分たがわぬミュールが。
「あ。気に入ったから、なくなる前に買っとこうかなって思って。1000円だったし」
「そんで。俺、これも見たことないけど?」
「うーん、ちょっとね、ちょっとサイズが合わなくて」
「だったら2足も買ってんじゃねぇよ!」
「きゃー!だってしばらくはいてたら伸びるかもって思って!いやー!捨てないでー!」
が、すでに、正広が広げていたごみ袋の中にミュール2足は突っ込まれている。
「おまえはほんっとにがらくたばっかり持ちやがって!」
「そんなことないわよ、一個一個思い出があるのよ!この箸袋はねぇ、高校の時に付き合ってた彼とぉ!」
「おまえ、高校なんて行ってたの」
「行ってましたよ!だからその時付き合ってた彼が社会人でぇ、あ、嫉妬しちゃう?」
うふ!と古い箸ブクロを持っていた千明だったが、それも取り上げられ、捨てられる。
「いやーん!前の彼との思い出ぐらい持っててもいいじゃなーい!いくら嫉妬しちゃうからって、由紀夫横暴〜!」
「あ!?」

「・・・千明ちゃん」
つんつん、と正広が後ろからつつく。睨まれて硬直してしまった千明は、ぎ・ぎ・ぎ・と音を立てそうなぎこちなさで振り向いた。
「もう、無理・・・。捨てモードに入っちゃったら、兄ちゃん、捨てまくりだよ。特に」
ふぅ、とため息をつく。
「人のもの捨てるの、大好きなんだって・・・」
それが、ここまでとは・・・!
あれもー、これもー、と捨てられていく品々を見ながら心を痛める千明だった。
でも、正広にしてみれば、こっちも所詮他人のものだしとかなり楽しい気持ちだ。自分の荷物が捨てられた時は辛かった。
大事にためていたのに・・・。

「こらーー!!」
由紀夫の声がする。
「おまえも、おばーちゃんか!」
「え?なになに」
「なんだこれ!包装紙!」
「え、綺麗じゃない」
「あ!千明ちゃんもだ!」
綺麗に畳まれた包装紙や、リボンを見て、正広が声をあげる。
「やっぱりとっとくよねぇ!」
「とっとくわよ、可愛いもの。何かに使えるかもしれないし!」
「やめんか!おばーちゃんズ!」
キッチンの上の棚を占領していた包装紙を由紀夫は引っ張り出して、二人を正座させる。
「何かに使える『かも』しれないって程度ならとっとくな!こんなもん!ホントに使うんならともかく!」
「だってー・・・、高かったブランドのだしー、勿体ないしー」
「だから、流行りの手作りものをするような、マメなヤツなら取っといてもいいけど、どうせ持っとくだけだろぉ?」
「だって、ねぇ」
「ねぇ」
顔を見合わせる二人の頭を、包装紙の束で一発ずつ殴った由紀夫は、これでイモでもやいたら、役に立つじゃねぇの!?と怒るのだった。

こうして、千明の部屋はすっかり片付いた。
千明の部屋に運んだ荷物は少しで、後は業者に持っていってもらうだけ。
「はー、よかったー、もうどうなることかと・・・!」

今日までに片付けなかったら、1月分、家賃取られるところだったの!得しちゃった!とウキウキの千秋は、まま、ケーキでも、と正広のお土産ケーキを二人に勧める。
「どーぞ」
と可愛いケーキ皿が由紀夫の前に置かれたと同時に、由紀夫の手がテーブルをすべり、千明の前に1枚の紙が置かれた。
「何?」
由紀夫からラブレターっ!?とウキウキしている千明に渡されたものは。

「せーーーきゅーーーーしょぉーーーーーー?????」

「俺に荷物を届けさせるってのは、そーゆーことだからな」

引っ越し屋に頼むより。
もちろん一月分の家賃より。
由紀夫に荷物を届けさせる方が高い。

「ま、分割でもいいんで」
腰越人材派遣センターの正式な請求書を置いて、由紀夫は立ちあがる。正広が持ってきたケーキは、2口で食べられるほど小さかったので、すでに胃袋の中だ。
「兄ちゃん・・・」
「でも、俺って優しいよな」
玄関で由紀夫は言う。
「予約なしでも休日でも対応だぜ?」
「う、うん・・・、そ、そだね・・・」
正広はただ、小さく薄くなっていく千明を見守ることしかできなかった。

がんばれ千明!ピンクで気持ちを高揚させろ!


由紀夫が来てくれたらなー。服も捨ててくれたらなー。ずっとはいてないスカートがあって、でも、可愛いんだよなー、でもサイズがもう合わないよなーと思ったら、あら!はけた!と思ったりして、じゃあ、とまた吊るしてみたりして・・・。やっぱり着てない服は捨てるべきよね!?そうよねぇ・・・。ほんとに着てないんだもん・・・。でもいくら由紀夫に言われても、SMAPさんのものは絶対捨てん!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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