天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編97話後編『黒ラブを届ける』かと思いきや!

ギフト番外編98話『ポスターを届ける』

いえね、キャンプにいくんです。キャンプってゆーか、スポーツ合宿。それで、時間がなくって!ううう!

yukio
 

「想像してください!」
「あっ?」
今朝の朝ご飯は和風、和風。厚焼き卵〜、と、卵焼き器に卵液を流し入れようとしていた由紀夫は、その液が零れそうになったことで、眉間にシワを寄せながら振り向いた。
「想像!」
しかしパジャマのまま、飛び跳ねんばかりに浮かれている正広は気づかないらしい。
「想像して!想像!」
「何」
「えっとね、えっと。想像してください。青い海、青い空、そして白い砂浜。あなたは今、沖縄にいます」

沖縄・・・。
早く卵を巻かなくちゃと手は動かしながら想像してみる。あまりアウトドアではない由紀夫なので、マリンスポーツに大した興味はない。あるとすると沖縄料理とかの方が。

「ふと見ると、一本のパラソルの下に横たわっている人がいます」

あぁ、ビーチなのね。ビーチビーチ・・・。沖縄も、タヒチも、変わらないよなぁ、ビーチは。って、タヒチ行ったことないけど。

「あなたは、その人の方にかけよります」

ビーチを走ってかい。ビーチを走ってパラソルの下の人へ。

「その人は振り返ります」

うん、うん、振り返って。

「それがあなたの理想のタイプです」
「えっ?」
がしっ!
菜ばしが卵焼き器の奥に向かって力いっぱいすべってしまい、出来あがりかけていた厚焼き卵が半分に割れた。
「あっ!ねぇねぇ!誰っ?兄ちゃんの理想のタイプって!誰!?」
「え?ええ?あぁ!やりなおししなきゃ!」
幸い、まだ途中だ、この割れたものも、中に巻き込んでしまえば、それで・・・。
「ねー!だーれぇー!あっ!知ってる人っ?」
「えっ!?」
「知ってる人だ・・・!は・・・っ!やっぱり?やっぱり千明ちゃんとかっ?」
「はいっ?」
「奈緒美さんとかぁーー???」

「うわー!やだなー、沖縄のビーチ、パラソルの下の奈緒美!おそらく水着は極彩色!もしくは、黒」
「そこまで想像したんだ・・・!奈緒美さんかぁ〜・・・」
ふむふむ、とキッチンを出ていく正広を引きとめるべきか、由紀夫は迷った。
動揺は、指先に現れ、いつもは苦もなくつくれる厚焼き卵が、がたがたになっていく。

しかし。

理想のタイプが腰越奈緒美だと思われることと、沖縄といえば、最近はMAXとか、ダ・パンプとかより、ガレッジセールなどと思って、ゴリが振り向くところを想像してしまったことを知られるのであったら、人間であり、女である奈緒美の方がマシか・・・!

「ご飯と、卵」
「納豆もあるぞ」
「この卵、あの・・・」
正広の目の前に置かれた厚焼き卵は、「厚い」という言葉に、一切恥じない出来あがりだった。ぐちゃぐちゃになっているところを、ごまかそう、ごまかそうとしていたため、断面は荒れている。
「ん?」
「ううん、なんでもないでちゅ」
「なんだ、なんでもないで『ちゅ』ってよ」
由紀夫は不機嫌な顔で、分厚い卵焼きを箸で真っ二つにしてもぐもぐした。
「だって、兄ちゃん、奈緒美さんが理想のタイプって、やっぱりセンスいいのに・・・」
「へっ?」
「だって、奈緒美さん、なんでもできるし、大人の女だし」
「いいから。その事には、2度と触れるんじゃねぇ!」
「んもー、照れちゃって!てっ!」
照れちゃって、の「て」で、由紀夫のチョップが、正広の頭頂部にヒットしていた。

「想像してください!」
びしっ!
「いてっ!」
ネクタイを結んでいる由紀夫に背中から聞くと、軽い後ろ回し蹴りが正広の腰にヒットする。
「なんなんだ、おまえ、朝っぱらから!」
「想像ぅー!」
「だから、沖縄だろ?」
「ちっちっちっ」
嬉しそうに正広は指を振る。不器用に。
「想像してくださいっ!」
その指を、びし!と鼻の前につきつけられ、由紀夫はしぶしぶ想像することにした。

「爽やかな風。どこまでも続く地平線。あなたは今、夏の北海道にいます」

今度は北海道か。北海道な、北海道・・・。沖縄より好きかな。バイクとかでいくのもいいかも。免許はないけど、また作ってもらえばいいし。

「おや、あなたの前に突然一羽のうさぎが」

うさぎ?ってことは、草原とか?草の中からうさぎが。うさぎ・・・。

「うさぎはあなたに話かけます。『おまえ、俺見てどう思う?』あなたはどう答えますか?」
俺は・・・。
「あなたは回りからそう思われています」
「そうなのか!?」
「そうなの!何?どう答えたのっ?」
わしわしわしわし。
納豆かけご飯をわしわしかっこむ由紀夫だった。

「ねー、兄ちゃんー!なんて答えたのぅー!」
「うるさいってのにっ」
会社に行く間、2台の自転車は事故するわ!と思うほど近寄ったり、離れたりしていた。
「ねぇー!」
「だってそう思ってんだろっ?」
「えー、だって、だって、なんて答えたのか解らないとぅー」
「いいんだよっ!」

ウサギと言えば野長瀬智子。
巨大なミニウサギ、しかもオスの野長瀬智子と早坂由紀夫の確執は結構深かった。そのため、その野長瀬智子から、「おまえ俺みてどう思う?」と聞かれたら、「にくったらしい」としか答えようがなかったのだ。

ちっ。
どうせ俺はにくったらしい存在だよっ!

案外傷つきやすい、センシティブな由紀夫だった。

なので。

「正広ー、これなーんだ!」
「何?」
その日の夕方、由紀夫は丸まった紙を持って帰ってきた。
「え、何何?」
「ポスター」
「え・・・っ!?」
正広の目がキラリンと輝く。
今朝からわーわーやっていた心理テストは、SMAPが、ANAのCMでやっているものだった。
ポスターもある。
だから、もしかして、それは・・・!それは、ANAのポスターじゃあ!?
「何、何?見てもいい?」
「何だと思うぅ〜?」
「もしかして、もしかして、ポスタぁ〜?」
「そう。ポスター。超新作」
「きゃー!見せてー!」

正広は由紀夫の手からポスターをひったくるようにして受け取り、ゴムをとって、えい!っと広げて。

「・・・・・・!フィギィア編じゃないかーーー!!!んもー!にくったらしぃー!!」

ふ。

やっぱり、にくったらしいか。
確認までして、もう一度傷つく、結構複雑な由紀夫だった。

<つづく>


いやーん、由紀夫ちゃん、にくったらしくなんかないよぅ〜(笑)!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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